チームハダルとそれにまつわる短編集   作:FlankerのFnキー

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しばらくは書き貯めがあるので定期投稿出来そうです。…そろそろ、もう1人に動き出してもらいましょうか。


これまでに起きた3つの出来事
1つ、
グラスワンダーと再会し、彼女の闘志を感じ取った!
2つ、
約束とスカウトのために選抜レースを観戦した!
3つ、
特になし!



グラスとキングと選抜レース その2

 

結論から言って、この選抜レースを見終えた俺の機嫌は最悪だった。レース中にウマ娘をバカにしていた一部のトレーナーをウマ娘の聴力の届かない所に連れていき、怒鳴り散らした後なので当然だ。

 

『お前みたいな外道が俺たちに言うことかよ!?』

 

確かに。

 

そう言われると俺も言い返せない。なので、少し煽って相手から暴力を振るってもらいカウンターでおねんねしてもらった。俺は悪くないし、謝らない。あぁ…あとで駿川さんに呼び出される…。まぁ、全てのレースが終わってからスカウトしに行くぞって時にやったから相手的には最高な嫌がらせだろう。

 

おかげで俺もスカウト戦線に今日のレースで出遅れたスペシャルウィークもびっくりな大差の出遅れをしているわけだが。

 

一応、今期のチームの今後が俺のスカウトに懸かっているのでターフに戻り、他のトレーナーのスカウトを眺める。キングヘイローは…あそこか。

 

注目株かつレース1着のエルコンドルパサーに意外と一番、人が集まってる感じか。ダートだから集まらないかな?とほんの少し希望を抱いていたんだけど。意外…とは言えないか。レースはダートを走ったが、芝でも同じように走れるって分かってるわけだし。

 

同じく1着のセイウンスカイも結構集まってる…ん?……一番前に居るあのトレーナーがスカウト成功した場合は別の意味でマークした方がいいな。

 

スペシャルウィークは…まっ、結果だけ見たら最下位だけど、レースの過程をみたら欲しくなるよな。派手に出遅れ。からの外からごぼう抜き。で、斜行で降着。結果、一位入線。ある程度、レースに慣れたら十分に強い子だ。

 

グラスワンダーは2着。しかし、こちらもだいぶ人気が高いらしい。…スカウト全部断ってるけど。能力はスピード、パワーも非常に高い。けど、敗因でもあるスタミナが低いのが課題かな?あとは……最後の末脚、何で…だろう?見覚えがあるような気がする。薔薇…の幻視?……まさかな。別の薔薇だろ。多分。偶然ってヤツだ。

 

「今はスカウトに集中しろ、俺。」

 

人の感情を受け取りやすいウマ娘と対話するにあたって今の俺のコンディションは最悪。絶不調だ。この状態で今回の本命に見定めたエルコンドルパサーのスカウトは無理だろう。あの人混みに突っ込んで行く勇気は俺に無い。しかし、惜しいな。芝と砂どっちもイけるエルコンドルパサーと桐生院は育成的にもレースのローテの組み方的にも相性抜群だと思ったんだが…しょうがない。対抗バだ。

 

「俺はやっぱり、本命だとか一番人気より対抗バの方が好きなんだな。」

 

そんなわけで、対抗バという名の俺の本命(スカウトするのは俺なんだから多少は俺の好みで選んでも別に良いだろ?)、キングヘイローを……あれ、居ない?え、さっきまで『一流のトレーナー』じゃないからってスカウト蹴ってたのに!もう、帰った!?

 

どうする?流石に誰にもスカウトせずに今日を終えるのはちょっと不味いぞ。例え、桐生院が気にしないとしても俺としては流石に桐生院に申し訳ない。というか、スカウト以外でチームに貢献出来ない俺の唯一の貢献ポイントが潰れてしまう…。

 

「桐生院なら、キングヘイローも認めるだろう一流のトレーナーなんだけどなぁ…」

 

あの様子だと、まだ担当は決まってないだろう。きっと、今日1日で彼女の印象は気性難の扱いづらい子と他のトレーナーには染み付いている…と思う。なら、俺にもチャンスがあるはず。少々、考え方が年頃の少女に対して腹黒いかもしれない。俺は彼女を自分の保身の為に利用しようとしているのだ。罪悪感が無い訳じゃない。だが、そんなものは割り切っている。自分の心も相手の心もどうでもいい。スカウトは僕が俺に許した唯一の()()()トレーナーの仕事。これはトレーナーの、トレーナーが出来る負けられない戦いひとつなのだから。

 

けど、だけどね、

 

「やっぱり、ファーストコンタクトぐらいはしときたかったぁ……!」

 

一応、俺は狙った子は確実に墜とす、スカウトにはそこそこ自信がある方なのだが…うちのチームというだいぶ奇異な運営体制でキングヘイローの言う一流と認められるのか?これがこのスカウト成功の重要なポイントだろう?

 

「はぁ…観察眼も見誤るし…もう本当に駄目なのかもしれないな…俺。」

 

実は今日、俺は人生で初めて距離適性を見誤った。対象は…件のキングヘイロー。あれは名優もびっくりな役者だぞ。ん…?つまり、桐生院と相性悪いのでは?おいおい、ここまで来て雲行き怪しいぞ。俺はもう絶対にキングヘイロー墜とすつもりなのに。

 

「トレーナーさん、またお困りのようですね?今度はどうされたんですか?」

 

「あーと、対抗バを探してるって、どわっ!?グラスワンダー!?……あーコホン。」

 

思考の海を遠泳していたらいつの間にか、スカウトを全て蹴り終えたグラスワンダーがすぐ側まで来ていた。

 

「レース、お疲れ様。…んー、誉めるコメント、慰めるコメント、辛口コメント、どれか選んでくれ。」

 

一応、今日はスカウトのためだけにレースを見に来たのではない。彼女に来てほしいと言われていたからこそ、彼女のレースは注目していた。さて、どれを選ぶ?まぁ、1択だと思うけど。

 

「ふふ、何ですかその質問~」

 

「いや、君ほど勝ちたいと思っていたウマ娘にどう言葉をかけるべきか、分からなくてな。分からないなら本人に聞くべきだろう?」

 

「…!ふふ、1歩間違えたらとってもデリカシーが無い殿方ですね?」

 

「うっ、他者への配慮が無いとよく言われていてな。一応の善処という奴だ。で、どれがいい?」

 

「では、辛口コメントコースをお願いします」

 

「辛口か…言っておいてあれなんだが、ありきたりな事しか言えないからな?」

 

俺は別に指導力のあるトレーナーという訳じゃない。ただ、眼が良いだけでこれまでやって来たのだ。

 

「いいえ、大丈夫です。第三者からの意見は貴重で大切ですから。」

 

ウマ娘は基本勝利に執着する生き物だ。どうやら、彼女はそういう執着心をあまり表に出したがらない性格のようだ。おっとり、マイペース、大和撫子。その実は他のウマ娘と対して変わらない…いや、他より一バ身、大差レベルの負けず嫌いか。

 

「そうか…うん。」

 

「まずは自分でも分かってると思うけど、スタミナだな。今のままじゃマイルでの活躍は確約できるけど、それ以上の距離はちょっとキツいだろう。」

 

「やはり、持久力が課題ですか…」

 

「あと、これは気がついてなさそうだな。グラスワンダー、君に中距離は向いてない。」

 

「えっ……」

 

やっぱり、気がついてないか。流石のグラスワンダーも中距離に向いていないという評価は想定外で驚いているらしい。

 

「驚くのはまだ早いぞ。君は中距離には向いていないが、スタミナさえ何とかすれば長距離には向いている。」

 

「…中距離は向いていないのに長距離は向いている…?」

 

「あと、さっきも言ったマイルだな。ちなみに短距離は中距離以上に苦手だな。」

 

正直、自分で言っていても変な話だと思う。マイルがイケて中距離は駄目。長距離がイケて中距離は駄目。

 

「そう…ですか。中距離に向いていないという評価を受けるのは初めてです」

 

「まぁ、鍛えれば走れないことは無いからなぁ。得意か苦手かで言ったら別に苦手じゃない。むしろ、得意な方。という感じだ。」

 

「分かりました。貴重なご意見、感謝します~ありがとうございます」

 

「別に。見て分かる奴が見れば、誰だって言うありきたりな薬にも毒にもならない評価だ。」

 

彼女の感謝にこれは感謝されるほどのことではないと返すと、彼女は笑い出した。と言っても大和撫子らしい笑い方だが。

 

「ふふ、見ただけで距離適性を判断するなんて簡単に出来ませんよ~所で何か困っているようでしたら力になれるかどうかは分かりませんが話してみてください」

 

彼女はキングヘイローの同期だ。なら、彼女の動向を知っているかもしれない。

 

「なに、スカウトしようと思っていた対抗バが気がついたらどこかに行ってしまって今日はもう諦めるか、となっていたところだ。」

 

「そうなんですか~ちなみに本命は誰だったんですか?」

 

「エルコンドルパサー。」

 

ピシッ

 

空気が凍った音がした。

 

あれ、俺なんかやらかした?え、何?この空気感。ピリピリし過ぎじゃないですか?あの、グラスワンダーさん?

 

「へぇ~エルですか~因みに彼女を選んだ理由は?」

 

「え、芝と砂両方走れるからうちのチーム向きかなと思った次第です。」

 

「……」

 

青い、蒼いよ、グラスワンダー。ここ、レースじゃないから。領域がほんの少し展開されかけてるから…!

 

「あと、うちの相方…メイントレーナーと相性が良いと思ったから?」

 

その瞬間、先程までの空気感は一気に霧散した。

 

「……?あの、待ってください。」

 

「何だ?」

 

「トレーナーさんはどうしてそのメイントレーナーさんとの相性をスカウトで気にする必要があるんですか?」

 

「それはうちのチームに入る=メイントレーナーの担当ウマ娘になるからだけど?」

 

「…トレーナーさんは担当を持たないんですか?」

 

「そりゃ、俺はチームサブトレーナーだから担当は居ないよ。」

 

「ええぇえ!?」

 

突然の大和撫子らしからぬ驚いた声、それはもちろんグラスワンダーが発したものではなく、

 

「あ、キングヘイロー居たッ!」

 

何と、灯台もと暗し。キングヘイローはどうやら、茂みの陰から俺たちの話に聞き耳を立てていたらしい。これはあっちこっち見渡しても見つからない訳だ。まあ、いい。見つけたなら見敵必殺。

 

「尋ね人が自らやって来てくれるとはありがたい。これが飛んで火に入る夏の虫って奴か?」

 

「違うと思います~」

 

ばっさり切り捨てるグラスワンダーは無視してスカウトだ。

 

「キングヘイロー…」

 

「な、なに?」

 

「君、一流のトレーナーを探してるんだってなぁ?」

 

あえて、友人を真似て煽ってくスタイルで。…何か平成のネタキャラっぽい文面だな。面白いし、最後まで通してみるか。

 

「そうよ、この一流のキングに相応しい一流のトレーナーをキングはご所望よ?」

 

「はは、望み通りにしてやろう。うちのチーム…サークルケンタウルスの一角、チームハダルに入らないか?キングヘイローの望む一流のメイントレーナーがうちには居るんだが。」

 

「……いやよ。」

 

即、蹴られた。…一流のトレーナーだけだと駄目なのか?それとも一流と認められていないのか?

 

「何が不満なんだ?」

 

「何が不満って、キングのことを直接スカウトしに来ないところよ!」

 

あーそこを突くか。確かにスカウトマンと実際のトレーナーが別って言うのは少し不安かもしれないな。

 

「それは確かに不誠実かもしれない。けど、言っただろう?一流のトレーナーだって。こういう場に居ると色々と目立つんだよ。君たちウマ娘はあまりトレーナーに詳しくないかもしれないが、桐生院って名前は聞いたことあるだろう?だから、トレーナーとしては三流…いいや、それ以下だが、スカウトマンとしては一流な俺がスカウトに精を出してるんだ。」

 

「まぁ、桐生院トレーナーがメイントレーナー何ですか。」

 

ここまで沈黙していたグラスワンダーが反応する。が、

 

「あら、キングをなめないでほしいわ。キングは一流なんだからある程度は一流を名乗れる功績があるトレーナーは調べてるわ。」

 

キングヘイローの反応は悪い。…ウマ娘をなめるようなあの言い方は不味かったかもしれない。

 

「だから、あなたのこともキングは知ってる。…あなたも長距離でなら一流を名乗っても良い実力を持ってるんじゃないかしら?…元ライスシャワーの担当トレーナーさん?」

 




キングヘイローのヒミツ
実は、春雲の情報は同室のウマ娘から聞いた。
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