チームハダルとそれにまつわる短編集 作:FlankerのFnキー
これまでに起きた3つの出来事
1つ、
ライスシャワーを発見した!
2つ、
ライスシャワーと春雲雪は相性が悪かった!
3つ、
ライスシャワーに別のトレーナーを紹介することにした!
いきなり、初対面で食事に誘うのは女の子に対するコミュニケーションとしてどうなのか?と思うかもしれないがウマ娘は食べることが大好きな子が多いので相手にリラックスした状態で話し合いたいなら食事に誘うのはというのはかなりの有効打だ。食事で簡単に釣れる女の子って逆にそっちこそ、どうなんだ?と俺は問いたい。
しかし、忘れてはならない。というか、俺は忘れていた。故に今、俺はライスシャワーを食事に誘ったことを激しく後悔している。
ウマ娘は見た目以上にとてもよく食べるヤツがいる。で、ライスシャワーは見た目以上にとても、とっっっても食べるウマ娘だった。シリウスのオグリキャップと比べたらマシ…いや、あれを比較対象に持ってくるのはダメだろ。その可愛らしい小さな身体のどこにその量を食べられる胃があるんだ胃?…心のエアグルーヴがぐったりしてるわ。
「トレーナーさん…?どうしたの?」
「いや、いっぱい食べる子はかわいいなーと思っていたところだ。」
「か、かわいい…かな?」
「あぁ、見ていて安心できるからな。」
忘れていたのは絶対アルダンのせいだ。間違いない。今日の請求書をメジロ家におくりつけておこう。あと、ライスシャワーの仲介料は高くしよう。候補のトレーナーは全員、G1勝利経験あるし安いものだろう。世間的に見て、中央のトレーナーは高給取りと思われているが、担当のいないトレーナーの給料なんてたかが知れているのだ。
「さて、本題に入らせてもらおうか?」
「あ、うん。ごちそうさまです…!」
「とりあえず、候補を3人出した。」
3人についてまとめた書類をライスシャワーに見せるとすぐにすっとんきょうな声をあげた。
「シリウス、フォーマルハウト…リギル!?」
「あ、候補に出しただけで選ぶなら、上二つを選ぶのをおすすめする。リギルは最終手段みたいな物だ。」
「えぇ…!?リギルになんてライスが入れるわけ無いよ…!」
「俺が推薦出せば、簡単に入れると思うぞ?」
「と、トレーナーさんってすごい人なんだ……」
ライスシャワーはさっきからずっと驚きっぱなしだ。
「で、この書類を見ただけならどこを選ぶ?」
「あの、待ってっ!欲しいです」
「いくらでも俺は待つぞ?」
「あ、そうじゃなくて、その、ライスダメな子だから、こんな強いチームでやっていけないと思うよ…?」
「俺は言ったはずだ。君は強い。才能がある。」
確かに自己評価が低いことはダメな点かもしれない。
ライスシャワーはこの世の誰かが喉から手が出るほど欲しいと願ったモノ、才能を持っている。それをライスシャワー本人が蔑ろにしてしまうのは俺は絶対に許せない。
「でも、ライスがいたら皆を不幸にしちゃって迷惑かけちゃう…」
「別に俺たちトレーナーからしたら、ライスシャワーが勝ってくれれば、そんなことどうでもいいと思うんだけどな。」
ライスシャワーがいつも一人で外で練習していたのはそれが理由か。
「でも、勝てなかったら…?」
彼女はライスシャワーを否定し続けた。
「勝てる。君は強いから。」
俺は彼女の言葉を否定し続けた。
そして、ライスシャワーはゆっくりと本音を話し始めた。
「……じゃあ、ライスが勝っても誰かを幸せに出来るかな…?」
ははぁん?ちゃんと分かっているじゃないか。自分が走れば勝てる強さを持っていることを。まぁ、今はOPが限界だと思うが。
「それはわからない。レースには必ず敗者がいるからね。」
「でも、敗者も魅了できるようなレースが出来れば皆を幸せに出来るんじゃないか?」
「皆を魅了する走り…?」
「ようはスターウマ娘になれってことだな。」
「スターウマ娘……なれるかな、ライスがスターウマ娘に」
「それはライスシャワーとその担当がどんなレースをするかで決まることだ。少なくとも、俺ならライスシャワーをG1で勝つ、というか、君が勝ちたいレースで勝てるウマ娘にするよ。スターウマ娘にはなれないがな。」
「トレーナーさんの下だとなれないの!?」
「他のトレーナーならなれるかもな。」
「なんだか、トレーナーさん投げやりな気がするよ…」
それ、思っても言わないことだぞ。
「俺はいつだってウマ娘に全部投げてるよ。それにせっかく見つけたダイヤモンドを自分で他のトレーナーに渡さないといけないんだから…投げてしまうでしょ?」
結局、最後に走って結果を出すのはウマ娘。トレーナーが出来ることは見てるだけだ。実のところ、俺個人はアレがあるからそうでもない…と言いたいが、ラストスパートの頃となると後は本当にウマ娘の精神力に祈るしかない。どれだけ、レースメイクしたとしても最後のラストスパートで全てを壊されることだってあり得るのだ。
「…そのトレーナーさんはライスのトレーナーさんになる気は無いの?」
「あるけど。でも、俺だと君の夢を叶えてあげられない。トレーナーはウマ娘の夢を叶えることが仕事だろ?なら、無責任と言われるかもしれないし、無責任だと思うが、夢を叶えられるトレーナーの下に君を連れていくのが俺の仕事だ。」
「なんて言うか、トレーナーさんってすごいトレーナーさんなんだね。」
こんな無責任なトレーナーのどこがすごいトレーナーなのか俺にはわからない。
「俺はすごくない。…話が脱線しすぎた。俺の悪い癖だ。とりあえず、君は“強い!”し、“才っ能”もある。トレーナーは担当ウマ娘に迷惑かけられるのが仕事だから君はこの3つのどれかのチームで十分にやっていける。それを理解しろ。」
「ひゃ、ひゃいっ!…あぅ…そんなに言われたら照れちゃうよぉ」
「照れるな、誇れ。」
「さて、本題の説明をするぞ。」
「はいっ」
「これから一チーム、2日間で向こうに目的を言わずに観察する。目的はもちろん対象のチームが普段どんなことをしているのか、だ。」
本当ならもっと時間をかけたい作業なのだが、ゆっくりしてると6月後半のメイクデビューに間に合わなくなる。俺としてはジュニア期のG1に出走できるチャンスを潰したくない。
「全てのチームの観察が終わったら、模擬レースでライスシャワーの走りを観てもらう。で、向こうからスカウトさせてライスシャワーがどのチームにするかを選ぶ。」
「ライスが選ぶ側なの…!?」
「レースを観たら3人ともライスシャワーにゾッコンになるさ。シリウスとフォーマルハウトはステイヤー育成の名人、リギルは…あそこ、ステイヤーの絶対強者って言える子がいないからステイヤー欲しがっているはずだから君は結構な人気者になれるんだよ。」
「でも、そんな人たちを魅了できる走り、今のライスに出来るかな…」
今の走りだと伸び代はあるけど、良い結果は無理だろう。相手をメイクデビューで当たるぐらいのウマ娘にしたら問題ないだろうけど。残念ながら、俺が今、レースのために声をかけようとしてる子達は重賞狙ってるような子達だからなぁ。マチカネタンホイザとミホノブルボンとニシノフラワーは流石に外した。というか、ニシノフラワーは脚部不安だし。大丈夫かな。
「そこは俺が面倒をみる。観察の後は俺が教官の代わりに簡単なモノだが、トレーニングをつける。」
「トレーナーさんがトレーニングしてくれるの…!?」
ずっと不安そうにしてたライスシャワーが突然、明るくなった。
それ、そんなに嬉しいことか?
「あぁ。観察にも同行するから暫くは俺の顔をよく見ることになるだろうよ。」
「そうなんだ、えっと、よろしくお願いします…?」
「ま、一週間ちょっとな。よろしく、ライスシャワー。」
「あ……待ってっ!やっぱり、ごめんなさいっ!」
「どうした?何がごめんなさいなんだ?」
「ライスといたら、昨日みたいにトレーナーさんも不幸なことに巻き込んじゃうかもしれないから…」
昨日。あぁ、バイクのこと気にしてるのか。
昨晩のこと、俺は迷子のライスシャワーを発見したまではかっこよかったはずなのだが、ライスシャワーと2ケツで帰る途中にヘッドライトが死んでしまったのだ。(未だにLEDじゃないからね、しょうがないね。)辺りは真っ暗だというのにライトが点かないバイクが安全に走れるわけがない。というわけで、ライスシャワー深夜徘徊事件はライスシャワー捜索に駆り出されていたマルゼンを呼び戻してライスシャワーを寮に送ってもらうことで解決となった。その後の俺?まぁ、それはまたのお話ってことで。
「それは問題ない。なぜなら、俺は運がいいからな。」
「そうなの…?」
「そうだよ。なんなら、放火された監禁部屋から生還したこともあるし、コンビニの立て籠り事件で人質になったけど大丈夫だったこともある。あぁ、あと、なぜか誘拐事件に巻き込まれたこともあったな。」
「それって、もしかしなくてもライスより運が悪いんじゃないかな!?」
「そうか?でも、1度も大事にはなってない。ほら、運良いだろ?」
「巻き込まれた時点で大事だと思うなぁ」
あれ、もしかしてライスシャワーさん引いてる?
「とにかく、俺は運が良いから。もしも、ライスシャワーが運が悪いとしても俺と一緒なら運を相殺出来るから問題ない。」
「…なんだか、もっと悪いことが起きそうだよ」
「そうか?でも、まぁ、事が起きたらその時はその時だ。優秀な策士は非常事態に対応出来てこそ優秀を名乗れるんだよ。」
優秀なら、そもそも非常事態を未然に防げという意見は求めていません。
「策士…?」
「俺のトレーナーとしてのあり方だ。だからこそ、君とは相性が悪いんだが。」
リギルには最強のステイヤーを名乗れるウマ娘がいない。だからこそ、俺は君が欲しかった。
「策士とライスは相性が悪いの…?」
「あぁ、とっても食べ合わせが悪いだろうな。」
「「・・・・・・」」
クソ、ご飯って基本的に食べ合わせが悪い例が少ないから良い例えが思い浮かばない!
「とりあえず、模擬レースまで俺がトレーニングをつけるんだから、それで相性の悪さはよーく理解できるはずだ。」
「あ…うん、そっか。うん、ライスがんばるよ!がんばるぞ、おー」
え、何それ。最高にかわいいんだけど?
『ライスのことを見つけてくれて、自信を持つように励ましてくれて、育ててくれる。何だか、お兄さまみたい』
「お兄さま?」
「ひゃうっ!?な、なんでっ!?も、もしかして、ライス、声に出してた…!?」
あ、え?……マジか、やらかした。
「あぁ、悪い。俺、母がウマ娘だから耳が良いんだ。」
すまない、ライスシャワー。君の勘違いを利用して嘘を吐かせてもらった。正確には『母がウマ娘だから精神干渉型の領域が使えて君の心の声が聞こえてしまった。』だ。あまりにもはっきりと聞こえてしまったのでつい返事をしてしまった。
「わああぁ~恥ずかしいよぉ~」
しかし、どういうことだ?こっちから繋げに行った訳じゃないのに繋がって向こうの声が届いたなんて。俺の声は届いていないみたいだし。ライスシャワーが心の声が大きいのか?漏れやすいのか?
「お兄さま…あぁ、絵本のか。確かに俺は君を少し育てて皆を幸せにするために送り出すんだからお兄さまなのかもしれないな。」
ライスシャワーと関わりを持つのはこれが初めてだ。なら、ライスシャワーのウマソウルに関わりがあるウマ娘と繋げたことがあるとか?
「…じゃあ、トレーナーさんのことお兄さまって呼んでもいい…かな?」
そういえば、アルダンも異様に繋がりやすかったな。関係あるのか?
「何を言ってるんだ君は?」
実際、この領域について俺自身分かっていることが少なすぎる。俺自身のことは俺は視ることが出来ないおかげで。未だに条件もよく分かっていないし。
「ダメ……?」
くそ、小首傾げてかわいいじゃねぇか。さっきまで恥ずかしがっていた可愛いライスシャワーはどこへ?…可愛いまんまだったわ。
「駄目だ。俺と君はあくまで一時的な関わりだ。今後、関わりを持つなら敵かライバルのどっちかだろ。」
「そっか……そうなんだね」
そうやって耳を垂らされると罪悪感を感じるな。
「そうだ。観察は今日から始めるつもりだが、何か用事あるか?」
「ううん、大丈夫だよ」
「よし、じゃあ、放課後にここで集合…いや、俺が教室に迎えに行く。」
実はライスシャワー、詳しくは省くが危うく昼休憩を学園の中をぐるぐるして過ごす羽目になりかけていたのだ。昨晩の件もあったから、心配になったので迎えに行って正解だった。
「わかった。その…ごめんなさい「謝らなくていい。迷子ぐらい俺だってたまになる」
「あわ、ごめんな……ああ、ちがう…えっと、待ってましゅっ!噛んじゃったぁ…!」
「こいつ、本当にかわいいな。」
「へ……?」
おっと、つい本音が。
「じゃあ、放課後な。」
こういう時は素早く撤退するのが良しだ。
「その、ちなみに一番大変だった出来事は…?」
「それはやっぱり、『
「……それで助かってるってことは確かにある意味、運がいい?…のかもしれないね」
春雲 雪のヒミツ
実は、出来る限り背中を必ず壁に向けるようにしていて、背後を取ろうとしても取れない。
ライスシャワー深夜徘徊事件の話は自分が思った以上に話に食い込んできたので作るかもしれません。
菊花賞見たかったなぁ