チームハダルとそれにまつわる短編集   作:FlankerのFnキー

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投稿がだいぶ遅くなったのは別にロンダルキアでヒャッハーしてからというわけじゃないです。日曜は忙しかったんです。土曜で書けよというツッコミは受け付けておりません。


これまでに起きた3つの出来事
1つ、
宝塚記念でライスシャワーが故障してしまった!
2つ、
チームハダルにアグネスデジタルが加入した!
3つ、
ライスシャワーとの出会いから5年が経過した!


彼と2つの出会いと1つの別れ その6

 

菊花賞

 


 

《ライスシャワーっ!ミホノブルボンを交わして今ゴールッ!》

 

「追いついた…ブルボンさんに追いつけたよ、お兄さま!」

 

「お疲れ様、それと4戦ぶりの1着おめでとう。」

 

「あ……たくさん、待たせちゃったんだね」

 

「でも、待った甲斐のある面白いレースだった。夢への大きな一歩、だな。」

 

「うんっ!」

 


 

天皇賞(春)

 


 

《先頭はライスシャワー!ライスシャワー今ゴール!》

 

「ライスさん、見事な走りでしたわ」

 

「マックイーンさん…その、ごめんなさい…痛くないですか…?お兄さまがもしかしたらって言ってて…」

 

「…?あぁアレですか、大丈夫ですわ。確かに紅茶を飲もうとして、いきなり後ろから…でしたから驚きはしましたけど、次は簡単にはいきませんよ?」

 

「次…?」

 

「はい、次は宝塚記念か天皇賞(秋)。また、会いましょうライスシャワー」

 

「宝塚記念…ライス選ばれるかな…」

 

「あら、それこそ問題ないでしょう?あなたはこのメジロマックイーンに勝ったウマ娘なんですから」

 

『秋天じゃハッピーミークも待ってるし、あんまり休息もしてられなさそうだな…ところでそろそろウィナーズサークルに行ったらどうだ?観客が待ちくたびれている。』

 

『えぇ!?…ふふ、一番前でライスを一番待ってるのはお兄さまだよね?』

 

「……俺は“お兄さま”らしいからな。」

 


 

宝塚記念

 


 

《ライスシャワー!淀の坂を乗り越えてみごと夢の宝塚記念を制しました!》

 

「やった…?やったぁ!やったよ、お兄さま!」

 

「ライスっ!…おめでとう。それと帰ってきてくれてありがとう…!」

 

「えへへ、ただいまっお兄さま!」

 

「あぁ、おかえり。ははは、すごいな。」

 

「…?」

 

「聞こえるだろ?この歓声、全部ライスの今日のレースに向けての歓声なんだぜ?聞こえないとは言わせない。」

 

「もちろん、聞こえてるよ…!ねぇ、お兄さま」

 

「どうした?」

「今日の私、咲けていた…かな?」

 

「あぁ、最高に


咲けていたはずなんだ。

 

 

どうして?

 

どうしてだ?何でなんだ?これからだったんだ。もっと、多くの人を幸せに、笑顔に出来たはずなんだ。ライスは、ライスはもっとっ!咲き誇れたはずなんだっ!淀の坂を越えて、それでたくさんの人に祝福される…それで良かっただろ……なのに…

 

 

──もっと?

 

 

俺は何を言っているんだ?

 

ライスシャワーがこれまで勝って、ちゃんと祝福されたことがあったか?

 

『ミホノブルボンの三冠が見たかった』

 

『メジロマックイーンの三連覇を邪魔したな』

 

『またアイツか』

 

さっきのは全部、全て俺の理想で妄想でしかないんだ。ああ、そうだよ。いわゆる、夢と知りせば覚めざらましをっていう奴。URAF?2回目の天皇賞(春)?あれは全部、シンボリルドルフとトウカイテイオーのおかげだろ。

 

俺は?俺は何が出来た?俺はライスシャワーに何が出来た?

 

何も出来なかった…俺はライスの夢の手伝いなんて、嘘を言いながら自分の目的のためにライスを結局は利用していただけ。

 

その上、俺の欠陥のせいでライスをあんな目に遇わせた。止めないといけない。それを分かっていたのに、どうなるのかも分かっていたのに、止めなかった。見習い時代にほんの少しだけ考えた最悪の可能性を現実にしてしまった。そもそも、欠陥だらけの俺はトレーナーに向いていなかったんだ。ずっと、サブトレーナーでいた方が良かったんだ。いや、指導者としても人間としても俺の欠陥は致命的。サブどころか、トレセンにいたことが間違いだった。俺、どうしてトレーナーになっちゃったんだろ……

 

「雨すごいなぁ。」

 

俺にしては珍しい。雨の中、独りでいるのに気絶していないなんて。あのまま、夢を見続けてここで朽ちてしまえば良かったのに。

 

「“あきらめる”のか?」

 

いきなり、後ろから俺と曇天の間に赤い傘が挟まれた。俺の許可無しで背後に立てるヤツは限られる。

 

「もう…あきらめたいよ……」

 

時計でもっと前、本当に最初、あの日に戻ってしまおうか。

 

「あんたはやれることをやった。それにもう簡単にはあきらめられないぜ?それこそ、あきらめること方が難しいだろうしな」

 

「あきらめることほど、簡単なことはないでしょ。」

 

「ははは、オメェはバカだなぁ?」

 

そうだね。バカだった、本当に。

 

「何回やり直したって、アタシがお前を捕まえてやるし、それにアイツがお前のことを見つけてみせるからな」

 

記憶を放り捨てて逃げた先で俺は彼女に拾われて、また逃げてコイツに捕まった。

 

「…なんだよ、それ、詰んでるじゃん。」

 

「最初からお前は詰んでるんだよ。アタシに出会っちまった時点でな。それにもし、ここから逃げ出そうとしたって許さねぇ…お前はお米の帰る場所なんだからな?まぁどうせ、またお前をトレーナーにしたいって言ってくるヤツがすぐに現れる」

 

「トレーナーにしたいなんて、もう誰にも思わせない。」

 

もう間違えたくない。俺はこのまま桐生院のサポートとしてやっていく。

 

「残念だったなぁ?もう、遅い」

 

「…?どういうこと?」

 

後ろを振り返るとそこには誰も居ない公園がただただ広がっていた。オマケに傘も無くなったので俺の身には再び雨が降り注いできた。

 

「……たまには顔を見せ

 

今度はちゃんと気絶するらしい。視界が

 

「あの~トレセン学園の関係者ですか?」

 

途切れなかった。

 

「……えっ」

 

驚いた。ここは5年前にライスと出会った公園。つまり、学園からはそこそこ距離があるのだが、俺に声をかけたのは確かに学園の生徒だった。だけど、こんな雨の中なぜここに?とか以上に一番俺を驚かせたのは宝塚記念以降、不調というか機能していなかった『魅惑色の観察眼』が目の前の栗毛のウマ娘に機能した……そして、見抜いてしまった彼女が継承しているウマ娘の一人がライスシャワーだったことだった。

 


 

行きつけの茶道具のお店の帰り、道すがらににある公園。4月の冷たい雨を傘もささず、一身に受け立ちすくんだ姿。その背中があまりにも小さく見えて、その顔が学園の中で見覚えがある方だったので私は思わず声をかけていた。

 

「あの~トレセンの関係者ですか?」

 

「……えっ」

 

私が後ろから声をかけると、どこか惚けたような返事をして彼はこちらを見つめた。こうして、背の小さい私から見ると先程の小さい姿とは違い、彼は私よりもとっても背が高い人でした。あと、やはり彼は中央のトレーナーバッチをつけている事からやはりトレセン学園の関係者、それもトレーナーのようです。

 

「実技試験で見覚えがある。」

 

「あら、まあ。覚えていただいていたんですね。私も貴方を試験の時、いえ、学園内で時折見た顔でしたので。それで何かお困りですか?」

 

「ん。…少し何も考えずに歩いてたんだ。そしたら、どうやら道に迷ったらしい。しかも雨が降ってくるし。だから、ここで休憩していたんだ。はは、大の大人が恥ずかしいや。」

 

口調が不思議な人だ。

 

「公園の真ん中で休憩していたんですか?」

 

「あぁ。」

 

「あちらにベンチがありますよ?」

 

「ホントだ。気がつかなかった。」

 

彼はだいぶ抜けてるところがあるのでしょうか?それとも、周りが全く見えないくらいこまっていたのでしょうか?しかし、このままではこの人は風邪をひいてしまう。何とかしなくては。

 

「傘、入ってください。」

 

「…良いのか?学園関係者とはいえ、俺たちは実質初対面だろう?」

 

傘は一つしかないので状況的に相合傘は必至です。それを気にしているのでしょう。でも、この方が後で風邪をひいたと聞けば目覚めが悪いので。

 

「良いんです。私、今が学園への帰りなんです。旅は道連れ世は情け、です。一緒に帰りましょう?」

 

「そっか、じゃあご同伴にあずかろうかな。ありがとう。」

 

「はい、では参りましょう。」

 


 

それから、しばらく二人歩幅を合わせながら歩いていると彼が呟く。

 

「傘、俺が持つよ。」

 

私と彼の背丈の差はそこそこあります。なので、二人で相合傘をすると私は腕を上げて傘を持たなければなりませんでした。

 

「あ、お願いします。」

 

「よいしょ。」

 

傘を彼に渡す。その時、少し彼と指が触れあいます。すると、彼はほんの少し目線を遠くに向けます。…照れてる?いえ、女性慣れしていない?いいえ、トレセン学園のトレーナーである以上それはないでしょう。普通に照れてるだけなようです。

 

(少しかわいい人ですね~)

 

「濡れてないか?」

 

「濡れてませんよ~トレーナーさんは大丈夫…じゃなさそうですね…」

 

私側に傘を向けているので彼の体は傘に収まっていません。

 

「俺はもはやどこが濡れているのか分からん。だから、大丈夫。」

 

「風邪、ひかないでくださいね?」

 

「結構、丈夫な方だ。簡単にはひかない…はずだ。

 

どうやら、あんまり自信が無いらしい。少し、足を早めた。

 

「……」

 

「……」

 

無言の時間。二人の足音。雨が傘を叩く音。ふふ、なんだか風流ですね~

 


 

「到着です。」

 

「あ、着いたのか。ありがとう、本当に助かった。この恩はいつか返すよ。」

 

トレセン学園の正門にたどり着いた私たち。しかし、やっぱりどこか彼の表情は優れない。最初は特に聞かないことにしたが本当に()()()()()だったのだろうか?

 

「いえいえ~その恩は他の誰かに返してください。いつか私に帰ってきますから。」

 

「そうか。出来るだけ早く君の元に帰ってくるように頑張るよ。」

 

その頑張るはどこか重いような…そんな気がした。

 

「はい、お願いしますね?」

 

「おう。それじゃあ、じゃあな。」

 

「はい、さよならです。」

 

ここに来るまで彼の表情は無、というか暗いというか…

 

何となく、本当に何となくで私は

 

「あの」

 

「?」

 

「私、グラスワンダーと申します。今度の選抜レースに出走するので、良かったら見に来てください。」

 

「もちろんだ。」

 

彼を引き留め、今度の選抜レースに彼を誘っていた。

 

なぜだか、私は彼の笑った顔が無性に見たくなってしまっていたのだ。

 


 

彼女、グラスワンダーと別れてからすぐに自分のトレーナー室に向かい、グラスワンダーというウマ娘をデータベースから調べた。一緒に歩いたおかげでかなり詳しく能力を視ることが出来たがそれだけじゃ足りない。彼女は何かしらライスに関わりのあるウマ娘なのか?

 

「生粋のアメリカ人……マル外なのか。」

 

となるとライスとはあんまり関係がない?ウマソウルの方での関係は……流石に理事長の力を借りないと判別できない。

 

「ライスの想いを継承したウマ娘が出てきた。出てきてしまった。」

 

それって、なぁ……?やめてくれよ。

 

野良の継承がどうやって決まるのかはよく解っていない。しかし、現役のウマ娘の想いを継承するということは本当に稀。大抵はもう走るのを辞めたウマ娘から継承する。

 

「もう、ずっと起きないなんてことやめてくれよ……?」

 

最悪だ。別れ際にグラスワンダーとしてしまった約束。

 

「次の選抜レース、行きたくないなぁ。」

 

でも、行くんだよなぁ…約束してしまったから。

 

俺はウマ娘に逆らえないから。

 


 

さぁさぁ、見てらっしゃい見てらっしゃい。

 

これより始まるは苦難と波乱に満ちたお語。

 

祝福と栄光、夢を追いかける輝きのお語。

 

最っっっ高に面白いレースを求めたお話。

 

チームハダルの刺激に満ちた日常のお話。

 

チームハダルがゴールするまでのお話。

 

チームハダルとそれにまつわる短編集

 

はじまり、はじまりー

 

《脚本》

謎の栗毛のコウマ娘

 

《プロデューサー》

彩雲 春

 

《協賛》

駿川 たづな

 

《監督》

ハルウララ

 

《原作》

???

 


カウント ザ メモリーズ

『青バラの祈り』

『硝子少女』

『孤独なスーパーカー』

『春の温もり、』

『充電中』

『貴顕の使命』

『不沈艦』




春雲 雪のヒミツ
実は、グラスワンダーに継承したもう1人のウマ娘のことを後々思い出して、歴史的大発見なのでは?といとをかし。
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