美貌バいろいろ   作:SunGenuin(佐藤)

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格付けチェック

「決まりましたわ! 決まりましたわ──っ! 第25回ウマ娘格付けチェックへの参加が決まりましたわよォ! ヒャッホイ!」

「なんて?」

 

 それはある秋の昼下がり。

 茶封筒片手にトレーニングルームへ突っ込んできたヴァーミリアンは、奇声をあげながらクルクルとその場を回っていた。

 縦ロール風に巻かれた赤毛とスカートがふわりと揺れる様は、さながら中世ヨーロッパのお貴族様である。

 ……なに? お貴族様は奇声をあげない?

 細けぇこたぁいいんだよ!

 

「ウマ娘格付けチェックって、年末にやるヤツっスか?」

「それ以外の格付けチェックなんてただのレースでしてよ」

「いやそりゃそうなんスけどね。……去年は確か、シーザリオちゃんが出てたっスよね?」

 

 呆れ交じりのラインクラフトちゃんがそう言うと、のほほんとお茶を飲んでいたシーザリオちゃんがこくりと頷いた。

 そう、去年のウマ娘格付けチェックに出ていたのはシーザリオちゃんだ。

 より正確に言うと、格付けチェックの常連であるディープインパクトの相方として参加したのが、去年はシーザリオちゃんだったのだ。

 ちなみに一昨年はカネヒキリくんである。

 

「いつも食べているお料理を選んでいたら、一流のまま終わっていたんですよねえ」

 

 それはつまりいつも高級なものを食べてるってことでは? オレは訝しんだ。

 

「で? 今年はヴァーミリアンちゃんなんスか?」

「よくぞ聞いてくれましたわ!」

「よくぞ聞いたっていうか聞いてくれって言わんばかりの入り方だったっスよね」

「んうぉっほん! ……では、発表しますわ!」

 

 ラインクラフトちゃんのツッコミをスルーしたヴァーミリアンは、茶封筒から一枚の紙を取り出すと、胸を張って揚々と口を開いた。

 

「今年のいけに── ディープの相方は……」

「おいお前いまイケニエって言ったか?」

 

 出演以来ずっと一流ウマ娘をキープしているディープインパクトの相方、とんでもないプレッシャーがかかるからひとによってはイケニエ感あるけども。

 ……そういえばヴァーミリアン、三年前のディープインパクトの相方だったな。

 さては相当なストレスだったなコイツ。

 一昨年の相方であるカネヒキリくんも、一問も間違えられないプレッシャーが凄かった、って言ってたしなあ。

 1回トップを取ると、取った本人も周りのやつも引き下がれなくなるもんな、わかる。

 今回の格付けチェックのやつだけじゃなくて、レースでもそんなもんだ。

 ま、レースで負けたとして、自陣営に言われるならまだしも、第三者にゴチャゴチャ言われても気にならないんだけど。

 格付けチェックはテレビ番組だから、視聴率とかそういうのがあるわけで。

 去年のCMとか、「出演以来ずっと一流ウマ娘・ディープインパクト、今年も防衛なるか」ってガッツリと目玉要素として入ってたし。

 一流防衛が前提のヤツの相方やるの、大変だよなあ。

 視聴者もそうだけど、番組側だってディープインパクトの一流防衛を期待してるだろうし、相方は一流キープできる可能性あるウマ娘を選んでるだろうから、まあ、オレはないな!

 だってオレ、一流キープできる自信とかないし。

 んー、でもヴァーミリアンじゃないなら、ラインクラフトちゃんとか?

 オルフェーヴルもあるかも。いや、デビューして間もないから無いか?

 ハーツクライさん、はディープインパクトとなんか仲悪いから無いとして。

 誰が相方やるんだろうな、とオレがボーッとヴァーミリアンを見ていると、ヴァーミリアンはにやりと笑った。

 ……なんか嫌な予感がする。

 こういう笑い方をするときのヴァーミリアンはだいたいやばい。

 オレに「お嬢様プレイやりましょう」って言った時と同じ顔してるし。

 これはこの場から逃げた方が──……!

 

「今年のディープの相方は、サンジェニュイン、あなたですわ!」

「……は?」

 

 ヘイ、KANEHIKIRIくん、「ディープの相方はあなた」って、どういう意味?

 

 

 

 

 

「絶対無理なんだが」

「ここまで来てなに言ってるんですの! この場所にたどり着くまでの道のりを思い出しなさい!」

「拉致られてんだよこっちはよォ!」

 

 ヴァーミリアンから「ディープインパクトの相方はお前だ!」されてから一ヶ月。

 ヘイ尻、じゃなくてカネヒキリポリスに助けを求めようと思ったけど残念! カネヒキリくんは年末ダートレースの大一番、東京大賞典に出走するため、地方遠征に出ていた。

 ラインクラフトちゃんとシーザリオちゃんには「出てみたら?」なんて気軽に言われるし、ディープインパクトはニッコニッコニー! だし。オルフェーヴルはハッピーミークと遊びに出かけてる。

 オレにゲロ甘な芝里くんもトレーナーたちの集まりだとかで不在!

 つまりオレを助けてくれるヤツが誰一人としていないため、オレは格付けチェックの撮影スタジオまであっさりと拉致られていた。

 

「だいたいさあ、無理っつったじゃん。聞いてた?」

「あら、諦めないことが名バの条件だって言ってたあなたらくしないですわね、サンジェニュイン」

「それレースのことね! どうみてもこの場面じゃないんだよな使いどころ!」

 

 レースならそりゃちょっとのことじゃ諦める気はしないけども。

 ガチガチのダートで走れって言われても勝つ方法を模索するけども。

 それとこれとは別じゃねえか?

 ハッキリ言って無理だわ。小学生でも分るレベルで無理だぞ。

 オレがそう捲し立てると、ヴァーミリアンは「仕方ない子」でも見るように息を吐いた。

 その目をして息を吐きたいのはオレだわ。

 

「何度も言ったじゃありませんの。今まであなたが出なかったことの方がおかしいのだ、と。お忘れになったの? あなたは『至上のウマ娘』『沈まぬ真白の太陽』ですわよ。ウマ娘格付けチェックにおいてその出演を最も望まれたウマ娘、サンジェニュイン?」

 

 オレの顔を覗き込むようにそう言ったヴァーミリアンに、オレはしばらく黙った。

 経歴だけ見りゃヴァーミリアンが言った通り、いつ出演依頼が入ってもおかしくはなかった。

 それは自覚してる。オレは今日も最高です。

 オレがヒトだった頃の記憶に照らし合わせれば、オレの存在はいわば「某格付け番組のYOS○IKI」的なポジション。

 金ぴかの部屋でお菓子を食う方のグラサンかけた一流芸能人。某金色ボンバーの方ではない方の相方。

 自慢ではなくただの事実として、オレはそういう見られ方をされてもおかしくない戦績とキャラクターである。

 ただし、キャラクターの方は「そう見えるように取り繕っている」だけなのだ。

 

「なるべく人前に出ないことでお嬢様プレイを熟してんだぞ、オレは。他にもたくさんウマ娘がいる中であのキャラが貫けるとでも思ってんのかお前は」

 

 無理よりの完全無理だろ、と気持ちを込めたオレの言葉を、ヴァーミリアンは鼻で笑った。

 

「ええ、思ってましてよ」

「ン!?」

 

 ヴァーミリアンの目はまっすぐとオレを見ている。

 嘘偽り無く、真実であると告げている。

 

「あなた、やれないことなんてほとんどないでしょう? お嬢様プレイだって、あれだけできないできないって言って、もう何年目? わたくし、あなたの何がなんでも実現させるところ、信じてますわ」

「ヴァ、ヴァーミリアン……!」

 

 深い信頼が滲む声に思わず彼女の名前を呼んだ。

 微笑みをたたえた顔の半分を、黒い扇が覆う。

 赤毛に沿うその黒色は、ヴァーミリアンの小生意気にも見える力強い美しさを際立たせていた。

 

「サンジェニュイン、あなたに不可能なんて言葉は似合わなくってよ。いつだってどこだって照らしてきた、その美しさを画面いっぱいに見せつけてきなさいな。あわよくばハイスペックカメラによってきめ細やかに撮影された美貌を納めたDVDも出しなさいな。それを買わせなさいいいえ買わせてくださいお願いしますなんでもするから……!」

「本性だしたなテメェ!」

 

 あやうく雰囲気に流されそうになった危ねえ。

 コイツはそう言うやつだったわかってた。

 自分の好きなシチュエーションをテレビ番組利用して作り上げようとしてやがった!

 右耳リボンウマ娘避けにお嬢様プレイを始めた時も、八割くらいはコイツの性癖ベースでお嬢様の設定が練られたからな。

 隙ができれば自分の性癖をねじ込んでくる。

 油断できない。

 

「……だいたいさあ、百歩譲って出るとして」

「出るのね? 言質ィ!」

「百歩譲ってって言ってんだろ最後まで話聞けや」

 

 小躍りしだしたヴァーミリアンの肩を掴み、視線を合わせる。

 口に出して言った通り、百歩譲って出るとしても、お嬢様プレイを貫き通すにしても、問題がある。

 

「オレ、カネヒキリキッチン提供料理以外は口にできないんだけど?」

 

 そう、オレはカネヒキリくんお手製の料理で生きてきたどこにでもいるウマ娘。

 外食はほとんどしないし、するにしてもディープインパクトが貸し切りで押さえてくれるところだけ。

 それ以外だと、小さい頃に父ちゃんたちに連れて行ってもらった某メニューの写真よりもボリュームアップして提供してくるコーヒー店だけ。

 

「テレビ番組だしいろいろ安全チェックされた料理が出てくるとは思うよ? 思うけど、カネヒキリくんのチェックが入った料理以外は受け付けない身体になっちゃってんだよね、オレ」

 

 ヒトの細胞は数ヶ月ちょっとで入れ替わるらしい。

 トレセンに入ってから数年、カネヒキリくんが生み出す食事で生きてきたオレはつまり、メインドインカネヒキリ。

 凱旋門賞ウマ娘・サンジェニュインのボディはカネヒキリくんの提供でお送りされていたも同然なのだ。

 

「いやそれはちょっと違うと思いますわ。というかあなたはカネヒキリにいろいろ任せすぎでは?」

「カネヒキリくんと筋肉は裏切らないって古事記に書いて」

「ませんわ」

 

 ともかく、カネヒキリキッチンによって安全が保証された食事を食ってきたオレにとって、テレビ番組で提供された食事だろうがなんだろうが、カネヒキリチェックが通っていない限りは不安なものでしかないのだ。

 自分でも「オレ、食事面でカネヒキリくんに頼りすぎィ!?」とは思っているのだが、包丁を持てばそれが天井に突き刺さってしまうタイプだと自覚しているので、仕方が無いと言えば仕方がない。

 

「格付けチェックとか絶対ゴハン系あるだろ。それが熟せないとなると、出演は無理じゃね?」

「……そうですわね。あなたは食べられない」

「だろ? ということでこの話は──」

「では、ディープが食べればいいだけの話でしてよ」

「ほ?」

 

 思わず間抜けな声が出た。

 いやそうはならんやろ。

 

「なるやろがい!」

「うわびっくりした!」

「んうぉっほん! 失礼、ついダートウマ娘らしい一面が」

 

 全世界のダートウマ娘が声を荒げているかのような発言はやめろや。

 カネヒキリくんとかウララちゃんとかファル子ちゃんとか物腰柔らかいウマ娘もいるやろがい!

 

「カネヒキリが物腰柔らかいのはあなただけ……っと、この話はいいですわ。あなたが食べられないのであれば、ディープが食べればいいだけの話。元より、ディープもそのつもりでしてよ。……そうでしょう?」

 

 前半何やら聞き捨てならないことを言っていたが、微笑みながら振り向いたヴァーミリアンに釣られるように同じ方向を向くと、いつからスタンバっていたのかディープインパクトがコクリと頷いた。

 お前まじでいつからいたんだ。もっと主張してもろてっていうか喋って。

 オレ、ディープインパクトの声とか年に数回しか聞かないんだが?

 いや、それより。

 

「えぇ……これマジでのマジでオレ、出るやつ?」

「出るやつですわ」

「で、でもでもだって、オレのこのツラ……狭いスタジオ、右耳ウマ娘、ナニも起きないはずがなく!」

「それも対策済みですわ!」

「ファッ!?」

 

 なん……だと……!?

 対策済みってなんだ。

 オレがケツ追われなくて済む方法があるならお嬢様プレイ今すぐ止めるから教えてくれださい。

 そうオレが希望を持ってヴァーミリアンを見つめていると、彼女は「ヴッ眩しッ!」と小さく呟いた後、ディープインパクトの肩を引き寄せて得意気に笑った。

 

「あなたが他のウマ娘に会うことはほぼないですわ! なぜなら……」

「なぜなら?」

「── なぜならディープは、今回から専用の部屋を与えられたから!」

「せん……なんて?」

「専用の部屋ですわ!」

 

 そんなんアリか?

 専用の部屋?

 そうはならんやろ、という件か立て続けに「なっとるやろがい!」と返されてしまっている現状、オレは無言で頷くしかなかった。

 

「ディープが無双しすぎて、同じ部屋に入っただけでほぼ勝ち確なので隔離が決定したのですわ。ディープインパクト専用の黄金の間ができたので、サンジェニュインもそこに入るのよ」

「なんかちょっとだけテレビ局のヒトが可哀想になっちゃった……ディープインパクト、マジで外さないもんな」

 

 ディープインパクトはゴリゴリの良家の子女である。

 ブラックカード片手にアッサリお店まるごと貸し切るレベルの。

 幼少期からあらゆる英才教育を詰め込まれ、それに応え続けてきたディープインパクトがミスることなどそうそうないワケだし。

 オレのセリフに何故か照れ笑いを見せるディープインパクトを横目に、それでもオレは粘っていた。

 

「ゴネてないでとっとと一流ウマ娘の座をぶんどってきなさい! ……それとも、できない理由をならべ立てて勝負事から逃げているだけ、ですの?」

 

 ……むむ。

 今のはさすがにムッと来たわ。

 

「やってやろうじゃねえかオォン? オレが逃げる相手はな、オレのケツを追う右耳リボンウマ娘だけですぅ! 見せてやらあよ! 一流の姿ってやつを見せてやらあよ! オラッ! ディープインパクト! 行くぞ!」

 

 こちとら凱旋門賞も連覇してブイブイ言わしてるからな!

 ゴハン系は無理だけどそれ以外だったら頑張れるとこ証明してやらあ!

 一流ウマ娘に、オレはなる……!

 

「……ときどきチョロくなるから助かりますわ~」

 

 ディープインパクトを連れて鼻息荒くスタジオ入りしたオレには、面白そうなヴァーミリアンの声はもう聞こえていなかった。

 

 

 

 

 もしもし、数時間前のオレ。聞こえてますか。

 ヴァーミリアンに煽られて元気良くスタジオ入りしましたが、ダメです。もうダメです。

 

「── さあ、AとBのどちらが最高級楽器なのでしょうか。チームメジロからはメジロドーベルさん、チーム歌劇王からはテイエムオペラオーちゃんがAを選びました。チームガッツからはタマモクロスのそっくりさん、チームパッションからはビコーペガサスのそっくりさん、チーム大嵐からはハリケーンランさんがBの部屋に入りました。なんかハリケーンランさんが頭を抱えてますね。A部屋は和気藹々としています。そして最後はこちら。黄金の間、チームパーフェクトからはサンジェニュイン様。超一流ウマ娘はどちらの部屋を選んだのでしょうか」

 

 無心でお菓子── 持ち込んだカネヒキリくんお手製焼き菓子を食べながら、オレは虚空を見つめていた。

 撮影が始まってからすでに三時間。これが最終問題だが、正直に言おう。

 わかりません……っ!

 

「黄金の間で並ぶディープインパクト様、サンジェニュイン様ともに涼しい横顔です。これは余裕の表れでしょうか」

 

 いいえ、諦めの表れです。

 っていうかわかってたじゃん、無理だってわかってたじゃん!

 ゴハン系もそうだけど、オレ別に良家の子女ってワケじゃないからね、アロマもダンスもフツーにわかんなかったよ!

 チャッカマンもびっくりの素早さで煽りに反応しちゃったがために、こんな地獄のような場所に閉じ込められてしまった。

 マジで後悔通り越してぴえん超えてヒィンだわもう。もう何言ってるか自分でもわかんねえ。

 

「ここまで全勝していますディープインパクト様、サンジェニュイン様ペア。いやあ、すごいですね」

「ですね。さすが一流ウマ娘です。レースだけで無く教養も一流なんですねえ」

 

 ではないですねえ!

 内心叫びながら、オレはそれでも口からリアルに漏れないように唇をやわく噛みしめた。

 この撮影分が放送される時、きっと画面のオレの瞳にハイライトは入っていないだろう。

 虚無虚無プリンになりつつ、オレは金ぴかに輝く部屋を見渡した。

 いま出されている問題が最後のものであり、オレもディープインパクトも一流から落ちていない。

 つまり……おかわりいただけるだろうか、じゃなくておわかりいただけただろうか。

 そう、オレ、ここまでの全問題を突破している。

 なんだできるじゃねえか、と思ったそこのヴァーミリアン。

 落ち着いて聞いて欲しい。

 ここまで正解してきたすべて── 勘です。

 AかBかの二択。

 脳内コロコロエンピツを転がし、お嬢様フェイスを保ったまま淡々と答えてきた。

 

 正解だった。

 

 ナニが起きているかわからねえと思うが、オレが一番わかってねえんだ。

 なんかディープインパクトも「やはり……」みたいな顔してるけど違うから。

 お前知ってるだろオレがバンバンジーだのパンジーだののニュースみて「美味しそうな名前」って言ったの。

 画家の話題だって言われて顔真っ赤にしたの。

 とんでもねえ奇跡の連続で生きながらえちゃった……お嬢様プレイ保てちゃった……!

 でもそれももうおしまい。

 今回のはマジでわからん。

 なに? どっちが高級バイオリンで弾いたやつとかわからん。

 いや音が違うのはなんとなくわかるんだけど、どっちが高級の方かわかんねえよ。

 だいたいバイオリンである時点で高級じゃないんか?

 なんだ安いバイオリンって。

 比較したら安く思えるだけで普通に高級なのでは?

 オレは訝しんだしたぶんラインクラフトちゃんも訝しむ。

 というかタマモクロス先輩がフツーにツッコミ入れてた。

 どっちも高級やないかい、って。

 完全同意です。

 っていうかさ~~!?

 今回のウマ娘格付けチェックのメンバーがこんなに豪華とか聞いてねえよ。

 

 メジロドーベル、メジロマックイーン、テイエムオペラオー、メイショウドトウ、ハリケーンラン、パンジャンマックス、オグリキャップ、タマモクロス、バンブーメモリー、ビコーペガサス。

 

 なんですかこのメンツは。

 レースでもそうそう無いよこんな豪華な面々。どうなってんだこのテレビ番組。

 なんかトレセン学園に金でも積んでるのか?

 ハリケーンランとパンジャンマックスの海外組も来てるし、これは相当な金を積んでるに一票。

 パンジャンマックスが「本当はウィジャボードさんが来る予定だった」って言ってるのを見ると金積んでる説はわりと当たっているのでは?

 エクリプス賞最優秀シニアウマ娘だぞウィジャボードさん。

 気軽に呼べるウマ娘じゃないんだが?

 

「さあいよいよ運命の瞬間。もしAが正解であれば、チームメジロが一流に返り咲き。チーム歌劇王は普通ウマ娘に昇格です。一方のBが正解であれば、チーム大嵐が一流に。チームガッツ、チームパッションはそっくりさんから三流ウマ娘に昇格となりますが、間違えた時点で画面から消えてしまいます」

「ドキドキしますねえ。さ、間もなくですが……まずは黄金の間、サンジェニュイン様の回答から行きたいと思います」

 

 オエッ!

 思わず吐きそうになってしまった。

 なんでオレからなんだ。

 いいだろ普通に部屋開けてくれや。

 黄金の間につけられたモニター越しからAとBのそれぞれの部屋にいるウマ娘が、祈るような顔でこちらを── おそらく黄金の間の様子が映されているだろうモニターを見つめている。

 

 ぷ、プレッシャ~~!

 

 勘弁して、こちとらお嬢様はカッコカリ付きのどこにでもいるウマ娘なんやぞ!

 たすけて!

 

 だが内心でそう訴えてももちろん通じない。

 どうやらオレも腹を括ってこの非情な現実を受け入れなければいけないらしい。

 ゲロりそうなのを耐えて、オレは顔を上げた。

 そうして入ってきた司会者に視線を合わせると、静かに口を開いた。

 

 

「── いやあ、お疲れ様っした、サンジェニュインちゃん、ディープインパクトちゃん」

「おふたりとも楽しそうでよかったです~」

「どこが? どこが楽しそうに見えたんだ?」

 

 撮影日からさらに一ヶ月後。

 年明けスペシャルと称して放送されたその番組は、最高視聴率が40パーセントを超えたらしい。

 なんだそのエグい数字は、とオレはビビりまくっていたが、ディープインパクトはどこか不満げだった。

 思ったより低いらしい。

 40パーセントで低いってどういうことなんだ?

 もう十分過ぎて怖いくらいだろうがよ……!

 

「いいじゃないっスか。お見事っスよ、サンジェニュインちゃん」

「そうですよう。おふたりとも全問正解。見事一流死守、じゃないですかあ」

 

 ニヤニヤと笑うラインクラフトちゃんと、のんびり楽しそうに言うシーザリオちゃん。

 ふたりとものんきなものだ。

 オレはこの撮影のあとハリケーンランに見つかって、第○○回ケツ絶対死守レースアスファルト4000メートルに巻き込まれたんだぞ……!

 アイツ、隙あらばオレのケツタッチ狙いやがって……!

 

「もう二度と出ないからな!」

 

 オレがそう言ってカネヒキリくんの背後に隠れると、勢いよくトレーニングルームの扉が開いた。

 

「決まりましたわ! 決まりましたわ──っ! 第26回ウマ娘格付けチェックへの参加が決まりましたわよォ! ヒャッホイ!」

 

 もう勘弁してくれ。

 

 ヒィン!!








ネットの某掲示板では実況スレがそれはそれは盛り上がった模様

第◇回サンジェニュインのお嫁さんレース(敬称略)

  • エアグルーヴ
  • ハルウララ
  • ウオッカ
  • カレンチャン
  • 海外牝馬組
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