美貌バいろいろ   作:SunGenuin(佐藤)

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新年あけてすっかり5日が経過しました。
今更ですがあけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします!

こちらには1話あたり5000文字以下のものをまとめてます。
今回は2話分で合計6000文字以内の短いSSです。
今後、こう言った形でできるだけ毎日投稿して行きたいと思います。
まずは1週間。リハビリも兼ねてコツコツ続けたいです。
それとは別に、折を見て長編(1話あたり2万文字以上)を投稿するので読んで貰えると嬉しいです。


小ネタ・SS詰め①~②

 

①押し花を作るサンジェニュインとそれをそっと見てるチーム・メテオ

 

 トレセン学園のある一角に、複数人のウマ娘が集まっていた。

 

「……こうしてると、なんていうか、すっごい大人しく見えるっスよね」

 

 ぽつりと呟いたラインクラフトに、隣合って座っていたオルフェーヴルが首を激しく振った。

 その光景が始まって既に数分は経っていたが、後輩の立場として口に出せないだけで見た瞬間から思っていたのだろう。

 それが伝わるほど勢いのある相槌にラインクラフトが思わず笑うと、オルフェーヴルも頬を赤らめながらも口を開いた。

 

「し、しっかしあれですね、あの、お嬢様プレイしてるときの先輩、っぽい、というか」

「何を言ってるんですのオルフェーヴル。()()よりはだいぶ地味ですわよ。やってることも、佇まいもね」

 

 パタン、と扇を畳んだヴァーミリアンがそう言うと、くすくすと笑っていたラインクラフトも小さく同意を見せた。

 確かに彼女の、ヴァーミリアンの言う通り、お嬢様プレイ ── 対外向けにサンジェニュインが魅せている姿と似通う所もあるが、今、彼女たちに見せているそれは、あえて悪く言うのならば地味だった。

 だがカネヒキリに言わせてみれば、これがサンジェニュインの素に最も近い状態。

 特別優雅に振る舞うわけでもない、無理に表情筋を律しているわけでもない、あるがままの。

 

 元来、サンジェニュインは口うるさい性格でもない。

 好きなひとたちとにぎにぎしく過ごすのを殊更喜んでいるだけで、ひとりきりの時や、特にリラックスしている時なんかは一言も発さず、穏やかに微笑んでいるだけのこともある。

 趣味のひとつでもある押し花は、夢中になって作業に取りかかっていることもあり、集中のあまり口数が少なくなっているだけだ。

 つまり、今、カネヒキリたちの前でサンジェニュインが見せているこの姿は、何を取り繕うこともない自然体の姿、そのものと言えるのだ。

 そしてこの姿を見ることが出来るのは、それほどサンジェニュインがカネヒキリたちを信頼している、その証左でもある。

 胸をくすぐる優越感を抑え込みながらも、カネヒキリはサンジェニュインを見つめた。

 一生懸命に押し花を作るその横顔には、傾国の美女もかくやの美々しさがある。

 

 サンジェニュイン 今日もかわいい ああかわいい ──……カネヒキリ、心の一句。

 

「 ── それで、今回は誰宛にお作りしてらっしゃるのでしょうか?」

「……チャリティーオークションに出す分らしい。蹄鉄と一緒に出品すると」

「まあ、素敵。毎年URAが公式開催している、例のチャリティーのですね? デビューしてから毎年参加されているという……」

 

 こくん、とカネヒキリが頷くと、質問していたシーザリオも微笑んだ。

 今年で実に5回目の参加となる、URA主催のチャリティーオークションには様々な物が出品される。

 最もオーソドックスな物としてはウマ娘が使用していた蹄鉄や、衣装の一部、レースゼッケン等があるが、その付加価値を上げる付属品の選定はウマ娘個人に委ねられている。

 これまたオーソドックスな物を挙げるなら、ウマ娘本人のサイン色紙などだが、サンジェニュインは少し変わり種で、いつも押し花を添えていた。

 それもただの押し花ではなく、サンジェニュイン自らが選定し、乾燥させた花で持って手作りする、この世にふたつとない作品である。

 デビューして間もない頃ならいざ知らず、今となっては我が国の太陽とまで称されるサンジェニュイン。

 その無二の作品は信じられないほどの高値で取引されていた。

 凱旋門賞を初めて制した翌年明けのチャリティーでは、凱旋門賞出走時に着用していた蹄鉄と共に、押し花自体にも3桁万円に近い価値が付けられたほどだ。

 これまでに出品されたすべての商品の中でぶっちぎりの最高額が付けられたそれは、今や遠い外つ国の美術館に飾られていると聞く。

 次の遠征で見に行こう、とメテオメンバーで話し合ったのもいまや懐かしい。

 

 余談だが、落札金は親の居ないウマ娘が暮らす孤児院への寄付金や、トレーナー育成学校の設備費用などに回されているそうだ。

 以前、孤児院のこども達から届いた手紙を嬉しそうに読むサンジェニュインの姿を、カネヒキリも見たことがある。

 聖女も裸足で逃げ出すほどの清廉な微笑みだった。

 

「そういや芝木サブトレが『なんで俺は参加できないんだ』って嘆いてたっスね~」

「仕方がありませんわ、学園関係者は購入できない決まりですもの。許されていたらわたくしだって滅茶苦茶買いたかったに決まってますわ!」

「とんでもない高額だったっスけどね~」

「あれマジで誰が買ってるんですか? 並大抵じゃないっていうか……」

 

 不思議そうな顔でそう言ったオルフェーヴルに、カネヒキリたちがふっと顔を合わせる。

 一瞬の間を置いてヴァーミリアンが笑うと、ヒッ、という短い悲鳴が後輩から響いた、気がした。

 

「世の中には知らなくても良いことがあってよ、オルフェーヴル?」

 

 この数年後、凱旋門賞に出走する為フランス・シャンティイレース場へと向ったオルフェーヴルは、そこで驚愕のモノを目にする。

 同レース場内に設けられていた殿堂入りコーナー。

 そこに堂々と飾られていたのは、標準より少し大きめの蹄鉄と、ある押し花のしおり。

 東洋のウマ娘として初めて凱旋門賞を制した、その偉大なる一歩に敬意を表す ── 少し厳めしい祝いの文章まで添えられたそれは、間違いようも無い、サンジェニュインへの賛歌。

 すこしだけ季節外れの、向日葵の花が使用されたと思しきその黄色いしおりの真横には、小さなプレートが掛けられていた。

 

 そこにはこう記されている。

 

『Rien que toi』

 

  ── あなただけ。

 

「く、国全体で焼かれてる……!!」

 

 そう言ってオルフェーヴルが失神したかどうかは、神と、帯同したハッピーミークだけが知る。

 

 

 ◇ おまけ ◇

 

 この時ディープインパクトさんは生徒会の仕事で席を外してました。

 後でヴァーミリアンから隠し撮り写真を供給してもらうのでモーマンタイ。

 あとメイクデビューの時の蹄鉄は何故かディープインパクトさん家に飾られているらしいよ。

 メテオ七不思議のひとつ。

 

 ◇ おまけ ◇

 

 カネヒキリくんの実家にはドデカいサンジェ写真が飾られてるともっぱらの噂だけど誰も実物を見たことがないよ。

 サンジェニュインも「カネヒキリくんの部屋にんなのあるわけねえだろ」と言ってるよ。

 真実は闇の中!

 

 

 

 

 

②遅刻も授業欠席もしないサンジェニュインについて ~会長副会長を添えて~

 

 ある日の生徒会室にて。

 口いっぱいにまんじゅうを詰め込むサンジェニュインを見て、エアグルーヴはふと呟いた。

 

「そう言えば、お前が遅刻したところはまだ見たことがないな」

「ひほふ、れふか?」

「口に物を入れたまま話すな! ぁああっほら、端に粉までつけて……まったく……」

「むぐぐ……ひ、じ、じぶんで、自分で拭けますってぇ……子供じゃないんだから……」

「そう言うなら饅頭くらい綺麗に食べてほしいものだな」

 

 少し強引に拭かれたからか、口周りを押さえたままサンジェニュインが眉を下げる。

 当人としては綺麗に食べているつもりなのだが、如何せん、まんじゅうの大きさに対してサンジェニュインの口は小さかった。

 よく話し、よく笑い、よく表情筋の変わるウマ娘ではある。

 口元もそれなりの可動域を有しているはずが、産まれ持った小ささはどうにもならないらしい。

 以前、一口のサイズは標準的なウマ娘よりもひと回り小さいとカネヒキリが言っていたのを、エアグルーヴはふと思い出した。

 なのに当人には小さい自覚があまりないせいで、到底一口では済まない量を口の中に詰め込んでしまう悪癖があるのだ、と語っていたことも。

 

「毎回いけそうな気がするんすよねえ」

「お前は……ただでさえ噛む回数が多いのだから、そろそろ学習しろ」

「精進します……」

「その台詞も何度聞いたことか」

「ふふっ、まあまあエアグルーヴ。サンジェニュインも努力しようとはしている。それより、話が脱線していないかな?」

 

 お前は毎回口だけは立派なんだから、と続けようとしたエアグルーヴに、それまで静かに見守っていたシンボリルドルフが声を掛けた。

 楽しげにふたりを見やっているところから、シンボリルドルフ自身にはその言葉以上の意味はないのだろう。

 しかし尊敬し、また敬愛もしている彼女からの指摘に、エアグルーヴは小さく咳払いをして頭を下げた。

 ああそうだった、話したいのはまんじゅうの食べ方などではないのだった。

 

「遅刻の話だな。お前は何かと素行不良なところもあるが」

「えっあります!? オレ、ケツ追われてるのと勉強できないこと以外は結構真面目で通ってるんですけど……!」

「前者に関しては仕方ないところもあるが後者はお前、お前頼むからもっと勉強をしろ。毎度補習に付き合わなければならない私の身にもならんかたわけ……ッ!」

「ヒィン!! これでも一応前期よりも成績上がっててェ!!」

 

 まんじゅう片手にそう主張するサンジェニュインには、さすがのエアグルーヴも気が抜けた。

 やめんか、まんじゅうを片手に震えるのは。

 しかしサンジェニュインが言うことも間違いではない。

 確かに、前期と比べれば成績も比較的向上している。

 特に苦手だった理数系の伸びがよい。

 抜き打ちの小テストでは相変わらず100点満点中30点を取ってきたりもするが、定期考査等の範囲が指定されている考査においては、復習時間を十分に獲得できているのか平均点以上を取ることも増えてきた。

 それ自体は喜ばしいことだし、何よりエアグルーヴがやらせなくても自主的に対策しようとするようになった分だけ成長が見える。

 

 ただし、サンジェニュインの調子にはムラがある。

 基本興味のある科目か、それがレースに役立つと確信できた科目でのみ集中力が発揮される。

 ので、興味を持てなかった科目で結果を出すのは相変わらず苦手なままだ。

 それでも以前よりは改善しているので、エアグルーヴは続けようとした説教をぐっと飲み込んだ。

 変化したのはサンジェニュインだけではない。

 昔なら自分自身の『正しさ』にのみ基づいて話を続けていただろうエアグルーヴも、サンジェニュインを始め、様々な人々とのふれあいで新たな視点を得ていた。

 物事に絶対の正しさはない。

 誰も彼もエアグルーヴのように正しく、真っ直ぐ、意識を高く保って走り続けることは出来ない。

 けれど彼女が間違っているわけでは決して無いのだ。

 エアグルーヴもまた正しい。

 最上を求め続けたことで今の彼女がいる。

 女帝・エアグルーヴという強者が成り立っている。

 その姿勢を好む者も大勢いて、彼女の高潔さに救われた者もいる。

 けれど、それがすべてではないと知った今のエアグルーヴは、サンジェニュインの努力を正しく評価し、飲み込める強さまで手に入れた。

 

 高みを経験してなお成長できる者こそが真の強者である。

 そう強く信じるシンボリルドルフにとって、エアグルーヴの変化はとても嬉しいもので。

 自然と緩む頬を、コーヒーを飲むことでそっと誤魔化していた。

 

「ゴホン。……成績に関しては、まあいい。これ以上は脱線させないからな」

「脱線させたのエアグルーヴ先輩じゃあ……」

「私が、なんだ?」

「なんでもありません、マム!!」

「誰がマムだ、誰が」

 

 ぺしり、と頭を叩くとわざとらしい痛みを訴えるサンジェニュイン。

 まったくこいつは、と思いながら、エアグルーヴの思考は振り出しに戻る。

 そう、遅刻だ。

 サンジェニュインは成績にむらがあるのと、その類い希なる美貌で当人の望まぬところでいらぬ諍いを引き起こしている以外は、不思議なことに優等生の部類である。

 先に述べたように、遅刻はしたことがないし、無断欠席も、なんなら病欠もしたことがない。

 欠席したことがあるのは、海外レースに出走するために長期的に学園の授業を休まなければならない時のみ。

 それも公欠適応される範囲の期限内に収めているし、補講が必要になったときもそこから逃げることなくしっかり出席している。

 

 当人が『お嬢様プレイ』などと呼称している猫被り時ならいざ知らず、素の、ふにゃにゃっとした時から根っこの部分は真面目だ。

 その規律正しい姿を成績面にも反映してほしいところなのだが。

 

 そうエアグルーヴが小さく愚痴ると、サンジェニュインはキョトンとした顔でエアグルーヴを見ていた。

 

「遅刻はルール違反だけど、成績に関してはオレの頭の問題なので。そこら辺は一緒にはならないじゃないっすか」

「ん……? ならない、のか?」

「えっ、ならないですよね? だってレースと同じですもんね?」

 

 互いに微妙に意味が通じ合っていないのか、首を傾げ合うふたりにシンボリルドルフが苦笑して口を開いた。

 

「サンジェニュインにとって『遅刻をしない』とは、レースへと出るためには絶対に守らなければならない公式ルールを尊重しているだけなんだな。個人の力量に関係なく一律で守らねばならない物事と、そうでないものを明確に分けている。前者は『遅刻しない、無断欠席しない、授業にはちゃんと出てその進行を妨害しない』等で、後者は『学習成績』だ」

 

 そしてそれはレース姿勢にも反映される。

 

 URAは常に公正確保に努めている。

 レース開始前から厳格な出走者管理を徹底しており、レースに万一もの邪心 ── 特定のウマ娘が最初から勝つ仕組みにする、等が発生しないよう細心の注意を払っている。

 ウマ娘のレースはエンターテイメントであると同時に、走るために生まれた彼女たちが、おのれの脚を武器に、おのれの生き様を賭けて走っているのだから。

 それを応援するファンにとっても、推しているウマ娘たちが瑕疵のない環境下で精一杯駆けることができる、そのステージをURAが覚悟を持って提供していることが大事だ。

 多少の緩和をしても、それでも厳しいルール下のもとで運営するのは、ウマ娘の勝負を守りたいという確かな思いもあった。

 その思いにサンジェニュインも同調する。

 自分たちだけのレースじゃない。

 そこに携わるすべての人間、すべてのウマ娘、これまでの、そしてこれからのウマ娘へと続いていく魂を守り抜く、そのためにルールに従う。

 そうして走り抜いた先の結果は、サンジェニュイン個人の力量だから、ルールどうこうとは話が別、というわけだ。

 

「……貴様は、本当に……」

「な、なんすか……?」

「……はぁ……」

「なんなんすか!?!?」

 

 やはり理解しきれない生き物だ、とエアグルーヴは思う。

 ふにゃふにゃしているかと思えば、時々、こうやってエアグルーヴをハッとさせる。

 本当に時々のことだが。

 ここにはいない、どこか遠い場所にサンジェニュインが旅立つような、そういう不思議な表情を見せつけてくることがあるのだ。

 まるで深淵を覗き込むような、ゾッとしない気分になるので、できればずっとふにゃっとしていてほしい。

 深いため息にそんな思いを隠しながら、エアグルーヴはサンジェニュインの口にまんじゅうを詰め込んだ。

第◇回サンジェニュインのお嫁さんレース(敬称略)

  • エアグルーヴ
  • ハルウララ
  • ウオッカ
  • カレンチャン
  • 海外牝馬組
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