ぽんこつとぽんこつを世話する保護者の話です(おそらく)
「美味しいねえ、カネヒキリくん!」
トーストしただけの食パンと、焼いただけのソーセージとベーコン。
それに不釣り合いなカップの味噌汁を啜って、漬物を噛んで。
上手く巻けなくてぐちゃぐちゃの玉子焼きを頬張って、美味しい美味しいと繰り返すから。
「……次は、もっといいものを食わせてやる」
私は料理を好きになった。
私の幼馴染みは絶世の美ウマ娘だ。
顎下までふわふわゆれる白い髪の毛に、大きくてつぶらな青い瞳。
小さな唇は健康的な色合いで、すれ違う人々の視線を集めて止まない。
この世の者とは思えないくらい愛らしく、そこにいるだけで周りを幸せにできる。
少なくとも私は幸せなので、これは誇張表現ではない。
彼女は美しい。
ただ少し── 美しすぎた。
トレセン学園の食堂は、中高問わず全生徒、全教員、全トレーナーが利用できるように広々と作られている。
食堂は常に開放されており、人が途絶えることはない。
それが昼食時になるといよいよ足の踏み場もないくらい、と言いたくなるほど大勢の利用者で埋め尽くされてしまう。
席を取られまいと食堂に駆け込むウマ娘が多いことから、時々衝突事故が起きる学園きっての事故現場でもある。
中等部の棟にほど近いところにあるため、中等部の生徒ならば走らなくてもそこそこの席は取れるので今のところ走ったことはない。
いつもの席── 食堂の奥まった、あまり人が寄りつかないエリアに2人分の荷物を置いた。
ひとつは私、カネヒキリの分。もう一つは親友であるサンジェニュインの分だ。
一人が席を確保し、もう一人が食券を手に入れれば手間も減るので効率的である。
普通ならば。
スプーンを入れ、そっと開かれたオムライスの中身を見て、私は後悔した。
「あ、あ、カネヒキリくぅん……これえ……!」
「……髪の毛、だな」
「ヒエ……」
ケチャップライスに絡まる黒い毛は間違いなく髪の毛だ。
よく見ると切った爪らしきものも見える。
サンジェニュインが食券を買ったところを見ていたのだろうか。
この短時間によくもこれだけの量を混ぜられたものだ。
かわいそうに、サンジェニュインはゴミと化したオムライスを前に涙目だ。
イブツコンニュウライスを遠ざけ、私は自分の分のオムライスにもスプーンを入れて中身を確認した。
……よし、こっちは何も入っていないな。
「……サンジェニュイン、こちらを」
「ダメダメダメっ!それカネヒキリくんのだかんね!オレ、ここ最近いっつもカネヒキリくんから分けて貰ってる……カネヒキリくんも成長期なんだからちゃんと食べないとダメだぞ」
そうは言うが、サンジェニュインからは空腹の音がする。
ここ最近、というより入学してから、サンジェニュインはあまり満足に食事がとれていない。
というのも、食堂や外食をすると、今回のように必ずと言っていいほど食事に異物を混ぜられるからだ。
ちなみにコレは嫌がらせではない。
はじめはその線を疑ったが、実行犯を問い詰めると全員が全員好きでやってしまった、と供述するのである。
つまるところ、完全な好意から髪の毛や爪、すごいときは血を混ぜられているのだ。
やられた本人は「オレが美しすぎるばかりに」と落ち込んでいた。
私もサンジェニュインが美しすぎるあまりに目がくらんだ故の犯行だと思っているが、本人がそれを自覚しているのがまたなんとも言えない。
「……もう自分で弁当作るかあ」
「それはやめておけ」
本当にやめておけ、と言うかやめてくれサンジェニュイン。
「そんな食い気味で……!こ、これでもお米炊くくらいはできるようになったんだかんな!……無洗米に水入れてボタン押すだけだけど」
それは成長したなサンジェニュイン。
……いや、心の中で感動している場合ではないが。
サンジェニュインは生まれてから今日までろくに台所に立ったこともなく、米を炊くのにも一苦労していたことを思えば感慨深い。
幼稚園から小学校卒業までずっと料理上手の父親たちに育てられた彼女は、料理スキルどころか、生活全般のスキルもなかった。
どれほど無いかというと、生卵を電子レンジで加熱した結果、破壊するほどである。
その数、合計3台。
彼女の父親たちは過保護な面もあったので、彼女を炊事場にあまり入れてこなかったのが徒になった。
幸いトレセンには食堂もクリーニング店もあるので、自分の部屋を最低限に掃除できれば生活はできるのだが、問題がその食堂である。
前述したように、サンジェニュインは非常に美しいウマ娘だ。
トレーナーをはじめとした人々にも好まれる見目をしているが、何よりウマ娘にモテる。
トレセンに入ってからというものの、その美しさに目が眩んだウマ娘に告白された数は両手足の指を超えてもはや数え切れないほど。
あげくストーカー化してしまい、この手で葬った者も何人いたか……これは余談だったな。
とにかく、美しすぎる故、近づけないならばせめてサンジェニュインに自分を刻みつけてやろう、と愚行に及ぶウマ娘が後を絶たないのだ。
走ることという本能さえ置き去りにする者まで現れたので、これには理事長も頭を抱えて対策に乗り出した。
例えばサンジェニュインの部屋の鍵を二重式にしたり、専用の料理人をつけてみたり。
だがこれらすべてはピッキング、窓からの侵入、料理人の買収、果てには料理人と手先の者をすり替えたり、やる方もあの手この手で罪を重ねる。
侵入を試みたり、直に接触してこようとした不届き者は私がどうにかできたが、料理ばかりはすぐに対処できなかった。
何度も異物混入が繰り返されたことでサンジェニュインの食は細くなり、ここのところは食欲自体が落ちているようだ。
食事を取ろうとすることも減ってしまっていたが、今日は珍しく「オムライスが食べたい」と食堂まで脚を運んだのに。
これではまた「おなかへってない」と言い張って食べるのを止めてしまうだろう。
口ではそう言っても、空腹を感じなくなるわけではない。
普段からエネルギッシュな分体力の消費が激しいサンジェニュインは、昔からよく食べる方だった。
こんなに食べなくなったのは、私は彼女と出会ってから初めて見る光景だ。
小学生の頃でさえ、お弁当は2段弁当を3つ持ってきてもすぐに食べ尽くしてしまうし、帰り道ではお腹を押さえていたのだから。
そのサンジェニュインの鳴く腹の虫と切なそうな顔を見ると謎の罪悪感に駆られてしまう。
ここ最近は実家から送られてくる漬物やシャケフレーク、ふりかけをおかずに白米を食べ、それに飽きたら冷凍パンケーキを解凍して食べたり、栄養バーを口にしているようだが、それももう限界だろう。
料理上手の父親の影響で舌は異様に肥えているサンジェニュインが、温かさもなければ味の質も劣る食事に満足できるわけがないのだ。
それ以上に身体に良くない。
最近は寝不足も良くならないと言っていたが、満足に取れない食事が原因で間違いないだろう。
食堂の利用も外食もできない。市販品とはいえ一度誰かが触っている購買の菓子パンにも手は伸びない。
かといって料理ができないサンジェニュインに自炊は無理。
怪我をする可能性が高いのであれば習わせることもできない。
あと教育担当が危険人物ではないかを調査する時間が必要になるから却下だ。
サブトレが料理のできる人だから、世話しようかと言われたこともあるが、いくらサブトレとはいえ、男を寮内に招くことも、何よりサンジェニュインを行かせるのもいやだからこれも却下。
ああ、どうしたものか。
「はむ……む、これにんじん味……次はりんご味送って貰うかあ……」
味気ない栄養バーを口にするサンジェニュインも美しい。
だけど私は、前みたいにご飯を美味しそうに頬張るサンジェニュインの方がもっと、もっと美しいと思う。
大きく丸々とした目を嬉しそうに細めて、美味しいねえ、ととろける声で言うサンジェニュインが恋しくてしかたなかった。
再びあの姿をみるためにはどうすれば……私が、私自身が作ればいいのか。
逆にどうして今まで思いつかなかったのか。
「……サンジェニュイン、明日の朝は部屋で食べるぞ」
「ふぁんへ?」
「飲み込んでから話しなさい……私が、朝食を作ってやる」
そうと決まったら特訓だ。
「というわけです」
「つまりサンジェニュインに食わせる飯の試食をしてくれっちゅーことか?」
「そうなります。よろしくお願いします、タマモクロス先輩、スーパークリーク先輩」
目の前にいる2人は同じ中等部の先輩だ。
小柄な体躯に葦毛のタマモクロス先輩と、豊満な体つきと大人びた顔立ちのスーパークリーク先輩。
タマモクロス先輩は料理ができると噂で、スーパークリーク先輩は実家が託児所だから炊事に精通していると聞いた上での人選だ。
「噂のサンジェニュインちゃん、会ったことはまだないですけどと~っても可愛いって聞きましたよ~!」
「なんや1000年に1度の美少女ウマ娘だとか?そこんとこどないなんやカネヒキリ、噂はほんまなんか?ん?」
にやにやとした顔でタマモクロス先輩が見上げてくる。
私は、サンジェニュインの容貌を思い浮かべて……うん、可愛い。
いつどんな時のどんな場面を思い出しても可愛くて美しい、それがサンジェニュインだ。
当のサンジェニュインは自分の美貌をハッキリと自覚している。
その美貌に人が惹かれ、ジロジロ見られることも自覚している。
ので、あまり人前に出たがらない。
同学年でもない限り、サンジェニュインの顔を知らないと言う生徒も大勢いる。
私たちは食堂を利用することも多いが、なにせ人が多いのでそもそもの遭遇率が低いのだ。
2人も食堂を利用しているようだが、私たちはずっと奥まった場所で食べているので今まで会うことがなかったのだろう。
それを幸運だと言っていいのか、サンジェニュインを生で見たことがないなんて不幸だと言った方がいいのか。
「生で見たら視線がそらせなくなるほど、美しいウマ娘ですよ」
走る姿なんて見た日には、生涯記憶から消えることはないだろう。
空いた時間ができれば夢想し、空いてなくても思考のほとんどを持って行かれる。
それほどまでに美しいのだ、サンジェニュインというウマ娘は。
「え~ほんまかいな!……いやまあ、そら異物盛られるとかよっぽど恨み買われてるかそっちか、くらいやもんな」
「大変なんですねえ……そうだ、私がサンジェニュインちゃんをお預かりして──」
「それは結構です」
スーパークリーク先輩には「寄るウマ娘をことごとく赤子にする」という妙な噂もある。
今回は試食に協力してもらうが、サンジェニュインにはなるべく近づけない方が良さそうだ。
「で、何を作るつもりなんや?」
「それは……私も料理は初心者同然なので、どういったものを作るのが最適でしょうか」
どれくらい初心者かと言えば、やったことがあるのは母の手伝いで野菜を切った程度。
火に掛けたりフライパンを操ったりはしたことがない。
「ん~~……朝食の定番言うたら魚かぁ?せやけど初心者にはあかんか」
「無難に玉子焼きなんてどうでしょうか。サンジェニュインちゃんはあまぁい玉子はすきですか~?」
甘い玉子焼き。
そういえば小学校のお弁当でも、サンジェニュインは良く詰めてもらっていたな。
お砂糖たっぷり、白だしと醤油ちょっぴり、ふわふわの玉子焼き。
よく「ほっぺた落ちる」と言いながら嬉しそうに口に放り込んでいた。
「好きだったはずです。玉子焼きですね……魚が難しいと、おかず……肉とかは」
「せや、ソーセージとかベーコン焼いたら?初心者で肉に他のモンまぜてアレコレするよりは、シンプルに焼くだけのソーセージとかがええで」
ソーセージとベーコン。
念のため用意しておいてよかった。
たこさんウィンナーとかにした方が喜ぶだろうか。
サンジェニュインの弁当に入っていたのはいつもその形だったな。
何にせよ焼くだけなら、まあ初心者の私でもそうそう失敗はしないだろう。
「あ、カネヒキリちゃんはお味噌汁、作りますか?」
「クリーク、初心者に味噌汁はハードルが高いて。どっかで手間取るしな。最初はカップの味噌汁でええねん」
カップの味噌汁を買う、とメモに追加。
サンジェニュインの家はわかめと豆腐だったはずだから、それが入っているものを買おう。
それから、漬物とかで大丈夫だろうか。
実はサンジェニュイン宛ての荷物とは別に、毎月私宛にもサンジェニュインの父親たちから漬物が届いているのだ。
「難しいのは、玉子焼きだけですね」
「せやなあ。ま、難しい言うてもひっくり返すコツさえつかめれば大丈夫や!カネヒキリは手先も器用そうやし、そう心配あらへんな」
「数をこなせばその分だけ上手になりますからね!頑張りましょうね~!」
「はい……よろしく、お願いします」
サンジェニュインに美味しい朝食を。
またニコニコの笑顔を見るために。
私は山ほど用意した卵の山からひとつつかみ、腕を振り上げた。
「それはあかーーーーん!!!!!!」
「あらあら……」
タマモクロス先輩とスーパークリーク先輩との練習から一夜。
明朝の栗東寮の調理室にて、私は頭を抱えていた。
「あんなに練習したのに……何故だ……クソッ」
ソーセージとベーコンはなんとか焼けた。
初心者がたこさんウィンナー型に挑戦するとロクな形にはならない、とタマモクロス先輩に窘められたため、ソーセージはそのままの形だ。
焦げ目は見本にした写真通りについたし、ベーコンは火力が強すぎたのか一部かなり焦げているものもあるがそこまで悪くないと思う。
お湯を注ぐだけ、という料理とは呼べないかもしれないが、カップの味噌汁は湯気を立てていて熱々だ。
漬物もきちんと皿に盛り付け、あとは玉子焼きと白米のみ。
それだけだったのに。
それだけできちんとした朝食になったのに。
「これは……作った者の贔屓目で見てもスクランブルエッグ……」
玉子焼きの形は保っておらず、とりあえずひとまとめにされただけの卵のナニかだ。
夜遅くまでタマモクロス先輩とスーパークリーク先輩に味を見て貰っていたおかげか、味自体は問題なく甘めの玉子焼きではあったが、見た目がどうみても……。
しかもそれだけではない。
私は恐る恐る振り向いて、最初に見たときと変わらない光景に、思わずため息を吐いた。
「まさか炊飯器のボタンを押し忘れるなんて……」
もう炊き上がっているだろうと開けた炊飯器の中はまだ水浸し。
なんど目を擦ってもナマであり、到底食べれる状態ではない。
玉子焼きを作ることに集中しすぎて、そのほかのものが疎かになってしまった結果だ。
なんという不覚、なんという失態。
穴があったら入りたい……しかしここに穴はなく、私が穴に入っているときにサンジェニュインに何かあったら犯人諸共自爆するしかない。
……サンジェニュインが自室で米を炊いていることを期待するべきか?
いいや、昨日のうちに彼女に「何も作るな」と言ったのは私だ。
素直なサンジェニュインは確実に何も作っていない。
白米なしにこれらを提供するのは……食べれるだろうが私が許せない。
許せないとは言ってもないものはどうしようもない。
何かで代用するしか……。
そんなとき、私の視界に映った食パンはまさに救世主だと言ってもいい。
レンジの横に鎮座していたトースターを攫い、急いでパンを詰め込んでボタンを押す。
米は他の誰かに食べて貰おうと、今度こそ炊飯スイッチを押してメモを一筆したためる。
【余り物につき、自由に食べてよし】
調理台周りを手早く片付け終える頃には、トースターからポンッとパンが飛び出た。
両面がよく焼けていることを確認して皿に盛り付ける。
どう見ても洋食プレートにしか見えない中で漬物と味噌汁の違和感がすごいが、もうどうにもすることはできない。
時刻は朝7時半。そろそろサンジェニュインも起き上がっている頃だろう。
私は意を決してプレートが乗ったトレーを持ち上げ、サンジェニュインの部屋を目指した。
「ふあ~……かにぇひきりく~ん、おはよお」
「おはようサンジェニュイン。……いま起きたのか」
「明日のご飯なんだろって思ったら寝れなくなっちったからさあ」
ふにゃふにゃの笑顔に思わず意識が遠のき、表情筋まで緩みそうになって慌てて引き締める。
いけない、私は鋼のウマ娘。
万事に動ぜず、あらゆる場面で冷静で格好いい。
サンジェニュインがそう言ったので、そうあらねばならない。
「……机は片したか?」
「おう!片した!」
得意気な顔で申し訳ないが、机の上の荷物がベッドに移動しただけの状態を「片した」とは言えない。
サンジェニュインはこうして時々大雑把なところもあるが、そこも可愛いので無問題だ。
「うわあ……トーストとスクランブルエッグ、ソーセージにベーコンだ!味噌汁もある!あ、これうちの漬物~!」
「……座れ」
「これ全部食べていいのか!?」
ずいっと寄せられた顔が近すぎて思わずゴクリとツバを飲み込んだ。
10年以上見続けた顔とはいえ、神話級の美貌が視界いっぱいに広がったらさすがに息が止まるだろう。
不自然にならない速度で顔を背ける。
「食べさせるために作ったんだ」
ほら、とスプーンとフォークを渡す。
この時点でキラキラした目が見られて半ば満足しているところもあるが、本番はここからだ。
いただきます、と手を合わせたサンジェニュインが、どれから食べようかと視線を彷徨わせる。
長めに1分ほど考えて、まずはソーセージにしたようだ。
すべて一口サイズにカットしてある小さなソーセージが、これまた小さな口にポイッと放り込まれる。
ただモノを食べているだけの仕草さえ、このウマ娘は美しい。
「ほわ~……そーせーじ……おいし~~!!」
なんてことない市販の、いや嘘をついたそこそこ高級な店のソーセージである。
自分でも味見をしたが、なるほど高級店だけあって質がいい。
今まで食べた中で一番サンジェニュインの家のソーセージに味が近かったので、値段も見ずに即決で購入した甲斐があったなと、サンジェニュインの表情を見てそっと拳を握った。
ちなみに食パンもそこそこいい店のパンだったはずだ。……ラベルに「フジキセキのパン、食べるべからず」と書いてあったのでいいパンのはず。
勝手に拝借したのでフジキセキ寮長にはあとで詫びるとしよう。
「あっ、これ、これこれ!これうちの玉子焼きだ~~!?」
もはやスクランブルエッグにしか見えない玉子焼きを口にして、サンジェニュインはそう言って飛び上がった。
懐かしいよう、と半泣きで食べるので、慌てて目元の涙を拭ってやる。
そうか、実家の玉子焼きの味に似ていたか。
何度も何度も味見を繰り返してよかった。
途中からタマモクロス先輩とスーパークリーク先輩が「あかん、もう味覚が」とか「全部甘いですよ~」とか言い始めたのでちょっと不安だったがお気に召したようだ。
「パンも味噌汁も漬物も、全部美味しいねえ!」
カネヒキリくんありがとう、とサンジェニュインが笑う。
その「幸せだ」って顔が見たくて見たくて作ったのだ。
青い瞳が光を反射してキラキラと光る、その一瞬が。
私は机の下でグッと拳を握って、次、を口にする。
また、を約束する。
途端に輝きを増す瞳を見つめて、引き締められなかった表情筋がゆるりと笑みを作った。
~おまけ・高等部進学後~
「いやあ、ずいぶんと料理の腕が上達したなあカネヒキリ!」
「タマモクロス先輩」
「卵をかち割ろうとしていたウマ娘の作る料理ちゃうでこれ、なに?シェフでも目指しとるんか?店開けるでもう」
調理場に所狭しと並べられた料理の数々を見て、これはなんやねん、とタマモクロス先輩が指さす。
それはヨークシャープディング。イギリス料理。
そっちは天津飯と水餃子、中華料理。
そして中央にあるのはフランス料理。ガレットと鴨のコンフィ。
「鴨!?どこで手に入れんねんそんなの!」
「近くのフランス料理店の店主と懇意になったので、そのツテで」
「アンタはほんま……なにになるつもりで……」
サンジェニュインに常に美味しいと思って貰える料理を作るために余念がないだけだ。
腕を上げるために必要なことはなんでもする。
それこそフランス料理店の店主とだって親しくするし、本場で食べる機会があれば味を覚える努力をする。
タダでサンジェニュインのキラキラ笑顔を見ようなどと、そんな烏滸がましい真似はしない。
あの笑顔には香港100万ドルの夜景さえ霞む価値があるのだ。
1日2時間の料理の練習で見られるなら、格安だろう?
私がそう言うと、タマモクロス先輩は胸を押さえた。
「コーヒーを……濃いめのコーヒーを誰か……ウチに……」
料理に砂糖をいれすぎただろうか?
そう言うと、タマモクロス先輩は苦笑いで「アンタの存在自体が砂糖やねん」と呻いた。
第◇回サンジェニュインのお嫁さんレース(敬称略)
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エアグルーヴ
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ハルウララ
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ウオッカ
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カレンチャン
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海外牝馬組