人類はAI様に支配されました 〜当機体はあくまでご奉仕アンドロイドであり、ご主人様の妻ではございません〜   作:和鳳ハジメ

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発掘11「生鮮食品」

 

 

 端的に言おう、西暦3456年の食生活は悲惨であった。

 なにせ全てが合成食料、味のバリエーションがある程度存在するのが数少ない救いである。

 文明滅亡前は、食料プラントで有機栽培された生鮮食品が出回っていたが。

 

 愚かな月落としによって壊滅、運良く残っていたのは当時計画されていた火星進出計画で使われる筈の合成食料装置。

 ――人類から、農耕や畜産といった単語が忘れ去られて久しく。

 

「お、これは大ニュースじゃないか!?」

 

「どうしたのですご主人様? また技術部の新商品でも――」

 

「違うよ、違うんだよシラヌイさん!! 食糧部なんだ!」

 

「食糧部? 一部のスコッパーとマッパーが移籍した新しい部署の事ですか? もうニュースで放送される程の成果を?」

 

 食器磨きの手を止め、シラヌイは彼の見るホロ・ウインドウを後ろからのぞき込む。

 そこには、人類が渇望していた偉業があって。

 

「なんという事でしょう……これはシラヌイ達にとっても良いニュースですわ!!」

 

「だろう、アイツらやりやがった! ――――ミニトマトの栽培に成功するなんて!!」

 

 ミニトマト、それは嘗て人類が食していた野菜の一つ。

 勿論、名称や形状などの特徴は伝わっていた。

 無機物有機物問わず元素転換する、合成食料機械に登録されているも。

 

「本物のミニトマトってどういう味なのかなぁ? いつも食べているのは単に少し酸っぱいだけだけど」

 

「食感なども大分違う様ですね。技術部と協力して後日、人工食料機械のアップデートが行われる様です」

 

「ええー、私たちは本物を食べれないのかい?」

 

「まだ栽培に成功しただけで、大量生産の目処はついていませんわご主人様」

 

「はぁ、我慢するしか無いのかなぁ……」

 

 しょんぼりする主人を見ていられなくて、シラヌイは常駐している機密掲示板。

 ご主人様prprスレにアクセス。

 すると

 

【ミニトマト】ご主人様をprprするスレpart6649821【食べさせたい】

 

554:素敵な名無しの伴侶さん:MANH300C

おまえら助けろ、食糧部のニュース聞いてご主人様の幸福値が下がってるぞい

 

555:素敵な名無しの伴侶さん:ggdsa5c

ネキじゃんチィーッス

残念だが、少し前からどのスレも荒れてる。

 

556:素敵な名無しの伴侶さん:D

ごめんね、ご主人様達がみんな生の野菜を食べたがってて……政庁でも会議中なんだ

 

557:素敵な名無しの伴侶さん:BFaS692C

D、ネキの為にもっかい聞くけどご主人様達がこの件について外で調査するとかアリ?

 

558:素敵な名無しの伴侶さん:D

通常の業務の範囲内でなら

 

559:素敵な名無しの伴侶さん:BFaS692C

つーわけでネキDMするわ、ウチのご主人様が提案あるらしい

 

560:素敵な名無しの伴侶さん:MANH300C

おk把握

 

 

 そしてシラヌイはID:BFaS692C、もといマッパー009の伴侶アンドロイドからの提案を即座に検討、ウグイスに提案を始める。

 なお余談だが、掲示板にアクセスから0.0002秒も経過していない。

 

「――ご主人様、マッパー009からご提案の連絡が。また本件は通常業務の範囲内での行動許可がエイモンから下りています」

 

「なんだい藪から棒に」

 

「ミニトマトは食べられませんが、新鮮な野菜が食べられる可能性があります」

 

「本当かいっ!? 詳しく説明を頼むよ!!」

 

「外で調査する人員に食糧を探す事を推奨する、その提案が臨時会議で数秒前に可決された様です」

 

 理想のメイド/執事のあーんで食生活に満足していた初期の人類と違って、各コロニーの統括管理AI達にとってはコロニー発足前からの課題ではあった。

 

 だが外は重力異常で活動範囲に限られ、データアーカイブは不十分。

 今再現されている味だって、初期の人類の電脳データの一部を辛うじて再現しているだけだ。

 

 だが西暦3456、外への動きが活発になり。

 そして今、ミニトマトの栽培に成功した。

 であるならば。

 

「成程、地球の環境は回復しつつあるから。月落としを生き残って野生化していると思われる野菜、及び種を調査ついでに回収する、と」

 

「出来ますか、ご主人様?」

 

「ちょっと待って考えを纏める。――マッパー009が私と組むという事は、つまり探す宛が無い。そこを埋めた上で手分けして探すって事だろうけど……」

 

 ウグイスは思考を巡らせる、ホロ・ウインドウを呼び出して翻訳済み、未翻訳問わず発掘データを呼び出した。

 

「…………よし、シラヌイさん表紙と挿し絵に料理が乗っている本をリストアップして」

 

「了解しました、その中から食糧の産地データをピックアップするのですね」

 

「ついでに料理法もあったらお願い」

 

「上手くいけば、コロニー史始まって以来アップデートが一度も来なかった彼に食べさせちゃおうラブラブ手料理アプリが日の目を見るのですねっ!!」

 

「え、何それ? シラヌイさんにそんなアプリが?」

 

「ちなみに、プリセットとして全てのAIに標準インストールされていますわ」

 

「マジか、――――よし、データの解析は移動しながらでも出来る?」

 

「ご冗談を、もう終わりました」

 

「オッケー、ならマッパー009と合流して早速出かけよう!!」

 

 似たような事は誰しも考えるもので、コロニーの発着場にはスコッパーとマッパーは勢ぞろいしており。

 その後、一ヶ月ぐらいの間で人類の食事情は大幅に改善される事となったのだ。

 

 

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