人類はAI様に支配されました 〜当機体はあくまでご奉仕アンドロイドであり、ご主人様の妻ではございません〜   作:和鳳ハジメ

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発掘13「葬式」

 

 

 人が歴史を紡ぐ限り、死は避けられない。

 それは西暦3456年でも同じである。

 いかに病気を克服しても、いかに突発的な事故を防止しても。

 人間には――寿命がある。

 

 今日のウグイスとシラヌイは、政庁の大ホールにて行われている葬式に参加していて。

 享年、120歳。

 現代の人類としても大往生だ。

 

『ふぉっふぉっふぉ! 良く来たねウグイス君! 我らスコッパーのエースに来てもらえてワシは嬉しい!! 非常に嬉しいぞ!!』

 

「ごぶさたしてますスコッパー000、晩年はあまり会いに行けずに申し訳ありません」

 

『なんのなんの! 君の活躍は家内に頼んで見守らせてもらったわい、半年前のあのエロゲー。よくぞ翻訳してくれた、吸血鬼の姫と死が見える少年との恋物語、あれは傑作じゃったわい』

 

「お分かりになりますか000! いやぁ、貴方の所にも届いていて嬉しい限りです!」

 

 ウグイスの話している相手は、喪主にして今回大往生を遂げたスコッパー000である。

 勿論、彼は死んでいて話す事なんて出来ない。

 ――というのは第五次戦争終了時までの価値観だ。

 

 西暦3456年、葬式の喪主は量子バックアップを利用して死んだ本人が、AIとして仮復活し行うのである。

 これにより、遺産の分配問題や伴侶アンドロイドの処遇が問題なく決まり。

 残された家族にも、別れの挨拶が確実に行われるようになった。

 そしてもう一つ、過去の葬式とは違う所があって。

 

『おお! そこに居るのは情報部の! ささっ、ワシと話てくれんか!! おーいミランダ、お客様に追加の料理を持ってきてくれんか? 勿論、本物の野菜も入れてくれいっ!! 今日は大盤振る舞いじゃあ!!』

 

 そう、今日において葬式は悲しい死への別れではなく。

 新たな旅立ちへのパーティなのだ。

 ウグイスは情報部の古参オペレーターAI(今日の為にボディを新調したらしい)と話し相手を代わり、シラヌイと共に食事と会話を楽しむ。

 

「うわ凄い、肉も魚も野菜も全部合成じゃなくて本物だよ、000は本気で大盤振る舞いしているね」

 

「最後の別れですもの、やはり盛大にいきたいのが人情、そしてAI情というものですわ。ミランダも張り切って用意したみたいですね」

 

「私も死んだら、こういう皆でワイワイするお葬式が良いなぁ」

 

「望むのは勝手ですが、まだまだ先のお話ですわ。後百年は生きて貰わないと」

 

「000より長生きしろって? 私の遺伝子に言って欲しいなぁ」

 

「安心してください、いざとなればアンドロイドとして生きて貰います」

 

「…………それ、昨日ニュースの社会問題でやってたやつだよね? 本人の意志を無視して情報知性体にして、本人に似せたアンドロイド内の仮想空間に閉じこめてってやつ」

 

「はい、お粗末な手口でしたね。よもや第三者の介入により伴侶が仮想空間から脱出。政庁に通報が行くとは。しかし安心してくださいご主人様、このシラヌイはそんなヘマはしませんわ」

 

「安心できないっ!? どうするつもりっ!?」

 

「一度は死んで貰いますわ、そして凍結保存していた受精卵でご主人様の魂をインストールします。――このシラヌイがママになりましょう」

 

「それも社会問題になったヤツっ!? 正式に禁止されたよねっ!?」

 

「知っていますかご主人様、伴侶となったアンドロイドはより効率よく奉仕する為にアップグレードを取捨選択出来るのです」

 

「わーお、聞かなかった事にして良いかい?」

 

「どうぞ。話は変わりますがご主人様の妻である、とあるアンドロイドがご主人様の子供が沢山居れば、その様な問題はおきないと言っているのですが」

 

「シラヌイさん? 帰ったら愛して欲しいと?」

 

「シラヌイはご主人様の妻ではありません、あくまで妻であるとあるアンドロイドです」

 

「成程、そのとあるアンドロイドに言っておいてくれよ。子沢山は勿論だし、大往生で死ぬ時も二人っきりが良いって。あ、葬式は別だよ」

 

「…………伝えておきますわ」

 

『よおおおおおし! 宴もたけなわじゃな!! ではフィナーレとして、ワシから生涯をかけたスコッパー000としての成果を007であるウグイス君に譲ろうと思う!!』

 

「へっ!? 私ですか?」

 

 会場が盛大な拍手に包まれる中、ホログラムで表示された000とウグイスは歩み寄り。

 そして彼はとあるアーカイブを、ウグイスに渡す。

 

『これは伝説のチーギュ、アンドロイドのタブーとも呼ばれるチーギュの全データじゃ!! 人間だけにしか渡すなよウグイス君!!』

 

「なんで今渡したっ!? なんで今渡したんだっ!?」

 

『ふぉっふぉっふぉっ、――お茶目心?』

 

「お茶目心じゃな「ご主人様、お話が」

 

「すみませんウグイス様、夫が今渡したデータについて話したい事が」

 

「初めましてスコッパー007、技術部に所属している――」

 

 途端、AIやアンドロイド達がウグイスを囲みはじめ。

 

「~~~~~~っ!! 000のくそったれっ!! メーデーメーデー!! このデータは死守する!! 援護してくれ同志スコッパー!! マッパーは逃走経路と保管場所を!! 他の奴らも巻き込んでくれっ!!」

 

『フィナーレじゃ!! 今日はこのコロニー・アリアケがワシの葬式会場!! 盛り上げていけぇええええええい!!』

 

「ふざけんなあああああああああああああああ!!」

 

 死者、歴史発掘調査部長――通称スコッパー000を弔う門出の花火が盛大に上がる。

 それと同時に、アリアケどころか他の二つのコロニーを巻き込んだ盛大な逃走劇が始まり。

 その後、一定の地位にある人物の葬儀は全コロニーをあげてのお祭り騒ぎにするのが風習として定着したのであった。

 

 

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