人類はAI様に支配されました 〜当機体はあくまでご奉仕アンドロイドであり、ご主人様の妻ではございません〜   作:和鳳ハジメ

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発掘6「プリティでキュアキュア」

 

 

「ふむ、これはどう書いたものか……」

 

「お悩みですかご主人様」

 

「ちょっとね、この映像作品をどう捉えたら良いのかなって」

 

 今日もウグイスは勤労に励む。

 二人の部屋の隣の作業室のデスクの上には、十代の少女達が戦っているアニメーションが投影されていて。

 それを、お茶を持ってきたシラヌイもしげしげと眺める。

 

「これは?」

 

「情報部が古いハードディスクから掘り起こしたデータなんだけどね、どうやら20世紀のものらしくて私に回ってきたんだ」

 

「成程、合点がいきました。確かにこれは解釈に困りますね……」

 

 アニメの内容は、不思議な力を与えられた少女が外敵と戦うという内容。

 当時と西暦3456年では、同じ日本語でも発音も文法ルールも違う。

 タイトルはプリティ・キュアだと判明したものの。

 

「当時の政治や風習などの歴史的データが完全だったら簡単だったんだが」

 

「無い物ねだりしても仕方ありませんわ。それでご主人様の考えは?」

 

「そうだね……これは」

 

 これが未成年の視聴禁止の作品であったら、娯楽と簡単に解釈できていただろう。

 かつてはどのアニメも娯楽だったと聞く、だが第四次世界大戦の時には全てがプロパガンダとして利用されていた過去があるのだ。

 

「アニメは確か18世紀後期か19世紀初頭の発明である筈だ」

 

「問題は、何時の時代からアニメはプロパガンダであったか。ですね?」

 

「そうだ、それによって解釈が変わる」

 

 アニメに目を戻すと、敵の幹部と一騎打ちしているシーンであった。

 

「まず重要な事は、戦っている少女達は未成年という事だ」

 

「未成年ですかっ!? 彼らのメイドは何をしているのですっ!?」

 

「落ち着いてシラヌイさん、現実と過去のフィクションを混同しちゃ駄目だ。ちょうどこの頃はメイド・カフェが流行っていた年代。……人類の側にはメイドが居ないんだ」

 

「メイド・カフェ!! 作品にも影響を与えているのっ!? ああ、ご先祖様達はさぞ無念だった事でしょう…………!!」

 

「いやシラヌイさん? その頃はまだメイドは一人につき一人居ないし、そもそもAI技術が未熟で人格すら無かったらしいよ?」

 

「そ、そんなっ!? メイドロボが存在すらしないなんて……なんて暗黒の時代でしょう!」

 

「私も考えられないなぁ、シラヌイさん達が居ない暮らしなんて。人類の指導者だって人間だったんだろ? よく同じ人間に任せようと思ったよね当時の人類は」

 

 母も祖父もAIに囲まれ、AIに導かれて生まれ育った世代としては、どうにも人類に機械知性という友情的支配者が居ないのは考えにくい事だ。

 ともあれ、今はアニメの解釈である。

 

「…………よし、思い切ってプロパガンダの方向は考えない」

 

「よろしいのですか?」

 

「私達から見れば、元素転換による戦闘アーマーを用いた戦意高揚を目的としている。と多くの人が解釈するだろう」

 

「成程。今の成人年齢と違って、このアニメの主役達は未成年であると解釈するのですね?」

 

「そうだ、今は成年基準は貢献ポイントを指定された数値まで貯める事と親と側付きアンドロイドの推薦、エイモン様の許可が必要だけど。20世紀にそんな制度があったとは思えない」

 

「一説には、30歳で魔法が使えるようになるまで成人と見なされない。とありますものね」

 

「これを踏まえて考えると、……このアニメは『警鐘』だったんじゃないかって私は思うんだ」

 

 するとウグイスは他の話も複数呼び出して、特定画面でストップ。

 お茶を啜りながら、シラヌイに問いかけた。

 

「ご覧、このアニメシリーズには一つの共通点があるんだ」

 

「共通点……?」

 

「分からないかい? 答えは男女比だ」

 

「確かに女性が多く描写されてますね、――22世紀後期に訪れた男女の人数比逆転現象、それを予測していたと!?」

 

「そうだ、恐らく当時はまだ推測の段階だった筈だが……見事なものだね、22世紀担当のスコッパー002が見つけた町の風景とそっくりだよ」

 

「来るべき時に備えて、人間の暮らし方を示していたのですね。……しかし、それだと未成年が戦うストーリーになるのでしょうか?」

 

「その辺りは、エイモン様か教育AIに聞いた方が早いかもしれないね。アニメの主人公の年齢は、そのまま対象視聴者に重なるケースが多いんだ」

 

「了解しました。ではこのアニメの扱いは?」

 

「なにぶん古い作品だからね、私達の翻訳ソフトでも完全に変換出来た訳じゃない」

 

「情報部に引き渡し、吹き替えた後にエイモン様に提出。つまりはそういう事ですねご主人様」

 

「うん、手配を頼むよ」

 

 かくして、歴史を知る資料がまた一つ人類にもたらされたのだった。

 

 

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