僕と兄貴と銀河天使と   作:HIGU.V

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第18話 決戦 彼の答え

 

 

 

 

 

 

ラクレットは翌日、今まで迷惑をかけていた人々に謝罪に回り、すでに何度目になるかわからないね、といった旨をそれぞれからもらい、そのまま部屋に戻っていた。昨日言われたことをもっと考えたかったのだ。

 

仲間を頼っていない、その節はある気もする。

 

今までの自分は誰かのためにある と言った 他人を中心として滅私の考えで行動してきた。考えて見れば、いままでエンジェル隊の頼みごとを断った回数は、片手で数えられるが、何か自分の為だけに頼みごとをしたことがあるかを思い出せない。昔読んだ心理学の本では、自分がしてあげた行動としてもらった行動の2つの内、してあげた行動を35倍記憶しているという学説があったとか。それにしたってこれはひどい。

自分を捨てて他人のために行動しているのに、見返りを求めない人間は異常者だと、頭の中で考察されるが、全く持ってその通りだ。前の決戦の最中でも、自分一人で全部やろうとして、意識を失いかけ、戦闘の合間休憩するような事態になったのに、全く成長していないのだ。

自分は仲間を信じていないわけじゃないしかし、依存したり頼ったりなどそういったことが極端に苦手なのだろう。というより変なことをして嫌われるのを恐れている? そんな風に結論付ける。これはもう前世からある自分の癖だから直しようがないこのままだと。

 

そんな風にまた頭で分析され、自分でもその通りだと思うラクレット。しかしながら、カトフェルにも言われたのだ、このままではだめだと。ならばどうするべきであろう? 結局の所、いきなり自分が誰かを頼るなんてことで切るはずがないのだ、ならばそう、言われた通りのアドバイスから着実に始めていけばいいのではないか?

 

 

「自分に自信を持て……か……」

 

「難しいな、そうやって自分を変えていくのは」

 

 

ラクレットの独り言である呟きに対して、いきなり反応があり、彼は驚いて入口を見る。

そこには、空いたドアの背に背中を預けながら、カマンベールが立っていた。

 

 

「ドアの鍵かけないで考え事は、お勧めできないぜ」

 

「いや、開けないでよ、せめてノック頼むよ」

 

 

どうやら、鍵がかかっていないことをいいことに、勝手にドアを開けたらしい。ボタン一つでほぼ無音で開くドアと言うのも考え物だ。一応ロックは可能なものの、状況に即応するためにあまり鍵をかけていないのだ。ナチュラルにそのまま部屋に靴を脱いで、上がってくるカマンベール。ラクレットはとりあえず、自分の目の前のソファーに座らせる。

 

 

「へー、少しはマシな対応ができるようになったな」

 

「そっちこそ、忙しいんじゃなかったの? 」

 

「いや、もうオレにできるとはない……全部やることはやったさ」

 

 

なんだかんだ言って、二人は最低限の会話しか今日までしてこなかった。口裏を合わせるために必要な内容を交換しただけだったのだから。ラクレットが時間を作らなかったのと、白き月に着くまでの『エルシオール』の中では、ノアの隣でずっと今後の策を考えたり、雑談したりとしていて、あまり接点がなかったのだ。というより、カマンベールが少し自重していた節がある。そもそも軽い監視は常についていたのだ、自ら怪しまれる行為をしていらぬ疑心を誘発するなどあの状況では愚の骨頂だったであろう。

 

 

『それにしてもまさか、お前も兄さんも前世があったなんてな……通信が入った時は驚いたよ』

 

『なんで、日本語? 正直発音にあんまり自信ないんだけど? 』

 

『機密保持のためだ、前世の話がなんかの拍子で漏れてみろ、面倒くさいだろ』

 

 

カマンベールは、饒舌な日本語で、それに答えるラクレットは、少々詰まったような日本語で返す。まあ判断としては正しいであろう。誰かに聞かれるリスクはあるが、いくらでも取り繕うことはできるのであろうから。

 

 

『俺は、黒き月のコアの内部でコールドスリープしていた。そしたら黒き月が破壊されて起きたわけだ。なんでそこで眠ることにしたかと言うのは……まあ、省こう。其の後コアの周辺に、超高周波による日本語の通信が入ってだな、それでおおよその事情を把握したわけだ』

 

『兄さんは最初からコアの中で生きていると知っていたわけか……あ、でも見当はついているって言っていただけだし、どういう事なんだろうね? 』

 

『さぁな? なんか仕掛けはあるんだろうが、今考えても分からんだろう』

 

 

二人は、自分たちと一応は血のつながっている、謎の多い兄について話し合う。結局の所、すべての出来事がエメンタールの掌の上で動いているような気がしているのだ。まあ、今はそんなことに構っているよりも重要なことがあるので、あまり考えている余裕はないのだが。

 

 

『にしてもお前は、成長はしているのかしてないのか……おりしゅ とか言わなくなったが、うじうじ悩んでばかりだな』

 

『否定はしないけど、そっちこそ肉体的成長が一切ないじゃないか、160あるの?』

 

『『……』』

 

 

互いが、互いの事をなんだかんだ言って把握していないため、一番傷をつける部分をえぐりあっている。まあ、人間はこのように相互理解を深めていくのであるが。さて、そんな無駄な会話をして、互いが今まで何をやっていたかを話していると、来訪者を告げる呼び出しの音が鳴った。

 

 

「はーい、空いているよ、どうぞー」

 

────お邪魔します

 

 

そう言って入ってきたのは、レスター、ココ、アルモのブリッジスタッフであった。意外なメンバーに慌てて席を立って、玄関まで行くラクレット。てっきりクロミエだと思ったのだ。まあ、普段はクロミエしか来ないからなのだが。

 

 

「ふむ……かなり綺麗にしているな。軍人たる者身の回りの整理整頓は基本だ」

 

「そうですねー、あ、ベッドの下とかは見ないから安心していいよ? 」

 

「ちょっとココ、いきなり何を言っているのよ」

 

「レスターさん、ココさん、アルモさん……どうしてこちらに? 」

 

「レスター・クールダラス副指令に、ブリッジの少尉さん方。弟に何か用ですか?」

 

 

 

とりあえず、お茶を入れるためキッチンに向かうラクレットは、そこから問いかけた。その間、来訪者の3人はキョロキョロと部屋を見渡しながら、カマンベールがどいたばかりのソファーに女性二人を座らせレスターとカマンベールが床に座る。

とりあえず、面倒くさいときに使うインスタントのコーヒーを5人分入れ、砂糖とミルクの入った容器と共にお盆に乗せて、テーブルまで持っていく。

 

 

「それで? 結局どんな用件なんですか?」

 

「明日は決戦だからな、仕事も終わって少し時間ができたから、顔を見に来た」

 

「レスターさん……」

 

「…………」

 

 

ナチュラルにラクレットに好意的な発言をするレスター。ラクレットはそれを受けて若干感無量であった。まあ、自分が果たしてきちんと周りと信頼関係を作ってこられたかと言われれば、YESと断言できない現状だからだ。

それを少々疑念の目で見つめるカマンベール、ラクレットがこれだけ男女比が偏った船にいて、なおかつ研究員とは名ばかりのような外見にも気を使う、きれいな女性ばかりの艦に三ヶ月+今回の一ヶ月半搭乗していて、彼女ができていないどころか、女友達さえ怪しいという状況なのに、イケメンの副指令や、謎の中性的美少年とばかり仲がいいと聞いていたからである。

カマンベールからすれば、職場にかわいい女の子が、しかも頭がいいのがいるだけで恵まれているであろう環境と断定できるのにだ。

 

 

「ああ、親友には秘密の後輩との禁断の関係……良いわ!! 」

 

「ちょっと、ココ!!」

 

 

そして、それを眺める少尉二人のリアクションもいい具合に彼の誤解を加速させていくのだが、ラクレットは全く気付いていなかった。ただでさえ、フラグブレイカーなのに、ホモ疑惑までついたら救いようがないであろうに、今の彼はそのことに関して無頓着であった。

 

 

「まあ、どうやら、カトフェル少佐と兄にうまく言われたみたいだな」

 

「はい、一応なんとなくつかむことはできました」

 

「そうか……俺は、誰かを励ましたりするのは不向きだからな……それでも悩みくらいは聞いてやる」

 

 

優しくそう言い聞かせるレスター。なぜ彼がここまでするのかというならば、レスターはまるで自分の昔の姿を見ているような気がするほど、彼の行動と自分の過去を重ね合わせてしまったのだ。

彼も昔、まだ士官学校の学生であった頃、自分に課されたことはすべて自分ですべきだと考え、それを頭の悪い努力才能能力ですべてさばいていたのだが、タクトと会うことにより、周囲との効率的な関わり方や適度な肩の力の抜き方……といっても彼の場合は皮肉を言う程度だが、それを身をもって学んだのだ。

 

 

「悩み……ですか………ないわけじゃないですけど、これは僕が解決しなくちゃいけないものだと思いますから」

 

 

ラクレットは、さっそく他人に頼らないで、自分で解決しようとしているのだが、彼の頭の中で、これは誰かに頼るために必要なことなのだと客観的に結論付けられ理論武装が完了する。

 

 

「そうか……なら、俺からは何も言わん……いや、明日の決戦での活躍に期待している」

 

「はい、ありがとうございます」

 

 

そんな感じで二人がゆっくり話している間、カマンベールは、ココとアルモの質問責めにあっていた。

 

 

「ラクレット君の双子のお兄さんなんですか?」

 

「いや、前にも言ったが、オレは21でここの司令と同い年だ」

 

「え~!! そんな風に見えないですよ!! 」

 

「いや、これでも皇国の大学出ているからな、飛び級だが」

 

「兄弟そろって飛び級なんですか!? 」

 

「あ、ああ、俺は6歳で大学に入ったぞ? 」

 

「すごーい!! あ、だからこんな任務を」

 

 

といってもココが矢次ぎ質問を投げかけているだけで、アルモはレスターの優しげな横顔をみてキュンキュンなっていたわけだが。

 

 

 

全員が帰った後。既に時間は深夜、ラクレットは壁を眺めながら、今日何度も自問自答した答えの片鱗をつかんだ。

 

 

「そうだよ、簡単なことだったね」

 

 

ラクレットはそのまま立ち上がり、一歩前に出て、手を伸ばす。

 

 

「今は、まだ自分だけじゃ無理だ。だから明日だけは……最後になるかな……?……いや、終わりにしよう……」

 

 

同時刻エンジェル隊のミルフィーを除く5人はティーラウンジにいた。

まあ、ミルフィーも先ほどまでいたのだが、通信装置が呼び出し音を告げた途端に、顔を綻ばせ、この場を後にしたのだから、全員見当はついている。男(タクト)か。というわけだ。そういった経緯で、現在決戦前夜エンジェル隊は5人でお茶を続行しているわけだ。

 

 

「ちとせ、緊張してないかい?」

 

「いえ……していないと言ったら嘘になりますが、先輩方もいますし、作戦だってこれ以上のものはないと思います。ですから適度な緊張の範囲だと」

 

「ほう……それじゃあ、アタシたちはちとせの期待にも応えなくちゃいけないわけだね」

 

「まあ、そのぐらい、先輩としては当然の責務よね?」

 

「私とヴァニラさんは人生としては後輩ですわ」

 

「それでも、精一杯がんばります」

 

 

まあ、彼女たちは、ちとせのケアを主な目的としているわけで、そういった意味ではこの集まりは意義あるものであったろう。本当だったら、ラクレットを招くつもりだったのだが、先ほどまで少し離れたテーブルにいたココとアルモに、レスターとカマンベールと話して結構元気になった。入れ替わるようにクロミエ君が来て、話していたから、たぶん大丈夫。とのことを聞いたのだ。故に彼女達はラクレットは問題ないであろうと判断したのであった。全く持ってラクレットの運はない

そもそも、エンジェル隊の各員はラクレットが必要以上に体をいじめ始めたときになんとなくその気配を感じていたが、ラクレットの思惑通り、自分たちも無茶をしていたので注意することができなかった。加えて、彼女たちは彼を信頼しているので、自分で立ち直るのが無理そうならこちらに頼るであろう、またはそのようにこちらも誘導しようとしている。

 

我慢と自分が大丈夫だという嘘だけは得意なラクレットを見抜ききれてない。実は、ミントだけはある程度その辺を把握していて、一人で彼の部屋に尋ねてみたこともあるのだが、その時のラクレットはカマンベールと話していたため不在だった(カマンベールとノアの部屋に行っていた)ということがあるのだが、それは割愛しよう。

さて、時計の針は1回転していよいよ決戦直前となる。エンジェル隊はすでに白き月から愛機に搭乗し、発進しており、エルシオールを守るように布陣している。ミルフィーは格納庫で最終調整中だ。

周りにはすでにカトフェル大佐(今回の任と司令になるため昨日付で中佐、今日付で大佐に昇進した)率いる第1方面軍の最新精鋭艦隊30隻が布陣完了している。周囲の宙域にも5分ほどでクロノドライブしてこられる距離に伏兵を隠しており、敵が出した戦艦を挟み撃ちにすることも、造園に回すことも可能だ。そう、準備が万端というのに

 

ラクレットはなぜかまだ自室にいた。

 

そこで、おもむろに自らの服に手をかけ、整えていた髪の毛を無造作に乱し始める。当然のごとく、姿を見せないラクレットにタクトから通信が入る、ラクレットはサウンドだけONにして通信をとる、こうすれば化粧室にいるように勝手に誤解してくれるだろうと、脳が判断したからである。

 

 

「ラクレット、どうした? もうすぐ敵が来るから早く来てくれ」

 

「30秒で支度して25秒で向かう」

 

「? ……わかった、たのむよ」

 

「了解」

 

 

そして、その間にも彼の準備は完了した。右手で久しく手にしていなかった、兄から送られたモノを掴み、大きく息を吸い込んでドアの前に立つ。

 

 

(今はまだ足りない、だからこれで代用する、これで最後、もう最後だから!!)

 

 

そしてドアを開け、格納庫へと全力で駆け出す

 

 

 

 

 

━━━白い陣羽織をたなびかせて━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え!?」

 

「なんで!?」

 

「また? 」

 

 

 

そんな声が耳に届くも、若干赤面しつつだが気にせず走る。気にしているという突っ込みは無しだ。ラクレットは前回エオニアと黒き月を倒し戦いの日以来、エルシオールでは陣羽織に袖を通していない。学生服だけだった。再び来たときはチーズ商会の作業着だったし、軍服が来るまではそれか、ワイシャツにスラックスだったのだ。なんせ、もう卒業しているから。

そして、そもそもエオニアの乱が終わって戻ってきても、陣羽織と学ランを学校で意地でも着ていたのは、今やめたら逆に注目を浴びそうだと思って意地で最後まで突っ張ったのである。

となりにサニーという摩改造のラスボスみたいのもいたので大変目立っていたのだ。ともかく、クルーからすれば、制服によくわからないけど最近TVとか漫画とか本とかでたまに見る民族衣装を着ているおかしい恰好をまた初めてように見えるわけだ。

 

 

「待たせたな!! 」

 

 

エタニティーソードの前で待機していたクレータ班長にそう言い放つラクレット。一瞬硬直するクレータ、再発したのかとふとそんな言葉が脳をよぎったのだが、再起動するより前にラクレットがタラップを駆け上がり神速の動きで搭乗席に滑り込んでハッチを閉じる。

この瞬間、完全にスイッチが入った。

 

そう、彼は今日中二病全開で行く

 

それは彼が今抱える問題に対する解決策に近づくための第一歩。自分に自信がないなら

「銀河最強になれば、きっと自分に自信が持てる!!」

そう、彼は昨日結論付けた。だが、いきなりは無理だ、次の戦いを乗り越えれば、半年ほどの猶予ができるわけだが、少なくとも明日には間に合わない。ならばどうするか、

「そうだ、あの自信にあふれた僕なら、ありえない大言を通信ではいて、それを僕が実行する羽目になるだろう」

要するに自分の退路を塞ぎつつ、明日の戦いにおいて全力以上の力を出すのである。そう、彼は久々にコスチュームプレイを公衆の面前でやろうと決意したのだ。実際、中二病全開の時エタニティーソードの出力は少しばかりあがるし、なにより自分に自信を持っている自分がほしいのだ。

 

 

「遅れたことは詫びよう、だがその分の活躍は期待していてくれ」

 

通信を開いていきなり叫びだすラクレット、当然ながらこの宙域の船すべてに届いている

 

 

「ラ……ラクレット?」

 

突然の行動に、微妙に疑問形になってしまうタクト。というか、そのタクトが唯一発言することができた人間だった。カマンベールは白き月で大爆笑しながら褒めているが、ほかの月にいる人物は呆然としている。エンジェル隊も久々に始まった彼の不審な行動に呆然、ちとせは目を白黒させている。カトフェルは喉を鳴らすように笑っただけだが、ほかの戦艦クルーはあいた口がふさがらない。レスターたちも久々に見て対応に困っている。

 

 

「僕は旗艦殺しのラクレット・ヴァルター 銀河最強の戦闘機乗りだ!! 」

 

「……そういうことか、頼んだぞラクレット !!」

 

「了解だ!」

 

「って、ちょっとそれでいいの!?」

 

すぐに把握したレスターと動転するタクトいつもと立場が逆である。

レスターはタクトに耳打ちすると、タクトも合点がいったのか、納得の表情を見せる。

 

すると、そのタイミングで無数の艦が、城のような巨大な艦を守るように、取り囲んで現れる。敵艦の襲来だ。しかしこちらの準備は既に万全、焦ることはない。

 

タクトはマイクの前に堂々と立つ。それがこの戦場において全権を任された彼の、戦いの火ぶたを切って落とすという最初の仕事だから。

 

 

「やあ、ずいぶん遅かったじゃないか? 」

 

「あら、この国が弱い割に広いから、いろいろと大変だっただけよ。そちらこそ、降伏の白旗の準備はしているのかしら? 」

 

「白き月と言っても、白い布でできているわけじゃないからね、白旗はない」

 

「そう、後悔するといいわ、このオ・ガウブを前にね」

 

 

もはや話すことはないと、自信満々で通信を切るネフューリア。ヴァル・ファスクらしい、合理的な判断であろう。

病的なまでに白い肌に赤い筋を幾重にも走らせた彼女を始めてみる軍人は、その姿に押せれと言うものを感じていた。タクトは、広域通信を入れて、全軍に通達する神妙な顔で彼は演説を始めた。

 

 

「皆、ここまで来たんだ、絶対に勝つぞ……と言いたいけど、今回も問題があるんだ」

 

「そういうと思って、すでに白き月の使用許可は取っているぞ、タクト」

 

 

十中八九、肩の力を抜かせようとするために、祝勝会の話をするであろうタクトの為に、レスターは既に場所の使用許可を取っていた。

 

 

「あれま、じゃあミルフィー!! 君は祝勝会用の特大ケーキを作ってくれ!! 」

 

「はい!! 」

 

「ランファは会場の設営を頼む、力仕事だ。君にしか頼めない」

 

「わかったわ!! 」

 

「ミントはとびっきりの紅茶の準備を頼む、君が一番適任だろう? 」

 

「承りましたわ」

 

「フォルテは飾り付けだ、ドーンと派手に頼むよ!! 」

 

「あいよ!! まかせときな」

 

「ヴァニラは、食べ過ぎの人のための胃薬の手配をお願いする」

 

「お任せください」

 

「そして、ちとせ、君にはこれを経費で落とすために会計を頼むよ」

 

「全力を持って当たらせていただきます」

 

 

エンジェル隊のメンバー全員にそう命令し、全員が楽しげに了承する。戦いの後のパーティーについて考えて戦うくらいが、彼女たちにはちょうどいいのだ。

 

 

「ラクレット!! 君は祝勝会を盛り上げる一発芸を頼むよ!! 」

 

「委細承知です!!」

 

 

そして、その流れに乗ることで、自分の首を思いっきり絞めているラクレットまさに自殺行為、だが今の彼はそんなことを判断できないし、できても断れない。

 

 

「そして、この通信を聞いている、誇り高きトランスバール皇国軍の英雄たちよ!! この戦闘が終わった暁には!! シヴァ女皇陛下、シャトヤーン様、エンジェル隊と一緒に宴だ!! そのためにも、オレは勝つ!! お前たちも勝利を望むか!!」

 

 

そして、その言葉に割れんばかりの野太い男どもの声が返ってくる。この真空状態の宇宙空間が振動するかのような、そんな錯覚すら感じてしまう。圧倒的なこの状況。

まあ、実際は30隻もいる戦艦のクルー全員など万に届くので、さすがに全員は無理であろうが、そんなことよりも今重要なのは、勝つという気概だ。

 

 

「それじゃあ、総員戦闘開始!!!! 」

 

────────了解!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

そうして、トランスバール皇国史に残る、怪物との戦いの火ぶたが切って落とされた

 


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