僕と兄貴と銀河天使と   作:HIGU.V

9 / 98
第八話 ラッキースターの性能はミッションによる差が激しすぎる

どうもどうも、なんだかんだで原作イベントに介入しているラクレットです。現在ボクの紋章機『エタニティーソード』についてがんがん聞かれてます。まあ、エンジェル隊の物以外の紋章機なんて、技術屋にしてみれば物凄い興味の対象なんだろーね。ふふん、アレでリミッターかけてるって知ったらどう思うのかね。

後、年齢のことを言ったらやっぱり驚かれた。うーん、そんなに老けてるかな? さて、もうすぐ雨か。

 

 

「もし、少々よろしいでしょうか?」

 

 

僕がクレータ班長との会話を終え、一通り回った後、人が増え盛り上がってきた展望公園から、こっそりと出ようと歩いてたら、いきなりミントが話しかけてきた。そうそう、エンジェル隊の所へは少し顔を出してミルフィーの弁当を食べさせてもらった。その後、挨拶回りをするからと抜けてきて、とりあえず片っ端から話しかけていたのである。これで既に、名前が出ていたエルシオールスタッフは、食堂のおばちゃんである梅さん以外あっているのだ。

 

 

「はい、何でしょうか?ブラマンシュ少尉?」

 

 

「あら、もう覚えてくださったんですの?」

 

 

「はい、上官ですから」

 

 

 

とりあえず僕は、対外的には敬語で、苗字+階級で行こうと思う。確かちとせが最初そうやって読んでいて直されたから、僕も向こうが許可するまで苗字で呼ぶつもりである。そうすればなんかこう、呼び名変更イベントが起きるじゃないか!! 僕は好きなんだよ呼び名交換イベント! あ、でもH少尉ってあれだな……アッシュ少尉にしよう。

 

 

「それで、僕に何か御用ですか?」

 

「ええ……少々お聞ききしたいことがありまして。貴方はなにかしらのESP能力をお持ちですか?」

 

 

「ESPですか?……確か、極々弱いレベルのプレコグニッションがあると、検査では出ました。」

 

 

そう、なんか僕自身が、予知能力持ちという結果がでたのだ。と言っても強度は物凄く集中している時に1,2秒先が見える……といいな。というくらいで、『H.A.L.Oシステム』の補助があって何とか1割くらいで発動するようなもの。物凄く弱い能力で実質無いのと同じである。実は皇国の人口の1割程がこういったESP能力者ではあるが、ほとんどは僕みたいなものらしい。

マッチに火を2,3時間集中して灯せるパイロキネシス、スプーンを毎日念じ続けて1月で視認できるくらい曲げれるサイコキネシス。というか、検査を受けない場合一生気付かない人だっているのだ。ちょっと変わった特技というレベルでそれこそ指の第一関節だけ曲げられるとか、そういった物と同じ程度の扱いだ。

 

そんな中、ブラマンシュ家のリアルタイムに周囲の人間の思考が読めるテレパシストって言うのは、それこそ最強クラスの中でも上位の能力になるのだ。能力の種類としても、規模としても恐らく銀河で最も高いのではないだろうか? 一族としては。

後で知ったことだけど、ブラマンシュ星の人が持ってる能力は厳密にはテレパシーではなく、テレパシー能力を持っている植物に寄生される能力なのだそうだ。それが彼女の兎耳のように見えるものらしい。

 

僕のプレコグニッションは、数秒の予言の他、フラッシュバック(フォワード?)みたいに何かが見えるかもって言われた。こっちのほうは原作知識の言い訳に使えそうだから保険としてうれしい能力だ。

 

 

「でしたら、やはりESPジャミングをお持ちで?」

 

「いえ…そう言った物は携帯してませんが」

 

 

ESPジャミング装置(通称ジャマー)はさっきも言った、微弱な能力程度しか持たない人でも、たまに本人の意思とは関係なく、能力が発動してしまう事がある。パイロキネシスといった能力の場合、思わぬ事故を招いてしまう。そんな人たちが自分の意思と関係なく能力を発動しないように、安全のために持つものだ。そんなジャマーだけど、どんなに強力なものでも、ミントのような、強力なテレパスを妨害できるほどじゃない。それでも心当たりとしては十分だね。

なるほど、どうやらミントは僕の思考が読めないことに興味を持ったみたいだね。それで怪しい奴とか思ってるのかね? これってもしかしたら、魔法先生のテンプレ展開で剣術使いの少女が切りかかってくるみたいなイベントみたいなものなのかしら?

 

 

「はあ、そうでしたか。実は私テレパシストでして。アナタの思考が読めなくて少々驚いてしまいました」

 

「ああ、そういうことですか。前にテレパシストの人が同じ事を言ってましたよ」

 

 

あっさりとテレパシストであることは明かしてくれた。ふむ、コレは思ったより好感度が高いのかな? いや、そんなわけないな。疑われてるとかより疑問に思った感じだったのだろう。ミントは結構計算高い策略家みたいなタイプだからねー。

 

その後ミントはいくつか僕に質問したら、「それでは私はこれで」と言ってどこかへ行ってしまった。質問の内容は、きちんとクルーの名前を覚えているのか? とか主要施設の場所と名前は? 見たいなもので。モブキャラ以外はわかる僕は、医務室やクジラルーム、格納庫やブリッジスタッフなどの主要な人物の名前は覚えてます。と答えて、実際に名前も言ってみたが、それがどうしたと言うのだろうか?うーむ、結局警戒されてるのか?

 

とりあえず考えてもわからないので、僕はスプリンクラーが作動する前に展望公園から出て、機体の調整に向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

「あ、タクトさん。僕の機体の特徴について説明しましょうか?」

 

現在、クロノドライブアウト先で敵と遭遇し、一本道のために迎撃に出ようとしているところだ。まあ、この戦闘ではミルフィーはシステムトラブルで参加できない代わりに敵の後続を足止め(と言う名の殲滅)するんだよね。あの強さには最初驚いたなー、で次のステージでの戦闘でもそうだと思って一人別方向に突っ込ませて沈んだんだよね。懐かしいな。

 

 

「うーん、そうだな……うん、よろしく頼むよ」

 

 

選択肢があったみたいな間だけど、頼まれたからにはやらないと。

 

 

「僕の機体『エタニティーソード』の特徴はなんと言っても変形機構でしょう」

 

「変形機構?」

 

「はい、高速移動に優れた移動形態と、戦闘用の攻撃形態の二つへ状況により機体の形態を変形させることが出来ます」

 

「へー、まあその辺の細かい判断は、何かない限り君に任せるよ」

 

 

うむ、やっぱりそうなるよね。まあ僕も普通に使い分けてるから問題ないか。

 

 

「了解です。次に機体の性能を説明しますね。両形態の良い所取りの説明ですが、『速度 加速 旋回 燃費 射程 攻撃 装甲 回避』 のうち速度、加速、旋回はかなり自信がありますね。(S-)」

 

 

「ふむふむ」

 

「それに加えて、燃費、装甲、回避もそれなりに高いので、長時間の戦闘が望める機体です。(A前後)」

 

「へー、なんだ、万能じゃないか」

 

 

やっぱそう聞こえるよね。僕も最初は驚いたからね。

 

 

「いえ、それでですね、攻撃はそこそこってとこですね(C+)」

 

「そうなのか……武装は何だい?」

 

「搭載武装は、エネルギー伝導式の双剣一組 以上です。よって射程は物凄く短い……実質0です。(F-)」

 

「……え?」

 

 

そういう反応になるよねやっぱ。この時代の人からして、剣は飾りだもんね。あ、短いって言っても、先っぽにエネルギーで出来たビームサーベル的なものが出てくるからそこまでじゃない。マップ単位(キロメートル)で1無いけどね! ちなみに近距離戦闘機の紋章機カンフーファイターは3000程の距離から攻撃可能だ。

 

 

「燃費がいいのも実は武装がないからというだけですね」

 

「えーとそれはつまり………攻撃は出来ないということかい?」

 

「いえ、先の戦闘でも僕がやっていたように、接近して斬りつけます。その習得のために五歳の頃から乗ってきましたから」

 

「へー、となると機体運用は、囮や切り込み用ってところかな?」

 

 

おう、さすが主人公良くわかってるじゃないか。

 

 

「はい、それに加えて時間稼ぎなどは得意ですが、対戦闘機戦は効率が悪いかと思われます。またレーダーの能力はそこまで高くないので、斥候としてはトリックマスターには劣るかと」

 

「わかった、大体は把握したから戦闘では指示の通りに頼むよ」

 

「了解です」

 

 

まあ、この辺の戦闘じゃ苦戦すらしないだろうけどね。僕の実力にタクトの指揮があればさ。

 

 

 

 

 

「いくぜ!!コネクティッドゥ……ウィル!」

 

 

僕は今、エルシオールから遠めに配置されていた敵の巡洋艦を切りつけた。やっぱりこの辺はまだ敵が弱いと思う。まあ、無印はそこまで難しくなかったし。さらにMLでもちょっとこっちの戦力が強くなりすぎてる感があった。だからELの発戦闘で敵の船の硬さにマジで驚いた。全員で殴っても半分までしか減らないとか……

 

まあとにかく何がいいたいのかというと、

 

 

「弱えーな、弱すぎるぜ! まとめてかかってきやがれ!」

 

 

この宙域内において僕が警戒すべきことは何もない、敵の相性、補給、エルシオールに回す護衛戦力、すべてが考える必要ない程度のものだ。タクトからの指示は『先行してに切り込んで、小惑星のせいで狭くなっている場所に誘導してそこで時間を稼いでおいてくれ』

との事で僕にはうってつけの任務だ。だって特に意識しないでもかわせる程度の攻撃しかしてこないのだ。砲門もすでにほぼ無力化してあるから、適当にテンションをあげてきりつけてれば沈む程度の敵だ。

 

 

 

「タクトさん────時間を稼ぐのはいいが 別に、アレを倒してしまっても構わないのでしょう?」

 

「あ、ああもちろん。無茶はするなよ」

 

「了解、いくぞボロ船────武器の貯蔵は十分か?」

 

 

お約束のセリフで格好良く決めた後に僕は、機体を一回転させて敵に突っこんだ。敵から散発的な砲撃が来るものの、レーザー兵器でもない限り絣もしないし、シールドがある限りダメージも受けない。敵の機関部に回り込んでそこに左の剣から延びる光を突き刺す。そのまま勢いを殺さずに離脱して次の船に向かう。

 

 

 

「『エタニティーソード』、敵機撃墜! 次の目標に向かいます!」

 

 

その作業を繰り返してるうちに、他のメンバーがエルシオールの近くの敵を一掃したのか、加勢に入り、あっという間に戦闘は終わるのであった。もっともこの後に起こるであろう、レゾムの奇襲を知っている僕は、その場で待機だけどね……

 

 

「よーし、みんなご苦労様。あっという間だったね」

 

「当然よ、こんな敵に私達が苦戦するわけないじゃない」

 

「なめてもらっては困るよ司令官殿」

 

「じゃあ、今からそっちに向か」

 

その言葉と同時にアラームが鳴り響いた。お? キタかな?

 

「司令!! エルシオールの背後にドライブアウトした艦5隻! 同様に前方にも敵艦が!!」

 

「うーん、どうやら挟み撃ちみたいだな」

 

「とぼけてる場合か!」

 

 

はは、ゲーム通りの二人のコントだよ。なんか感激っと、どうやら敵さんが来たらしい。うーむ、記憶があやふやだから断言は出来ないけどおそらく、数は増えてない。さっきのが多かっただけっぽいな。にしてもいつも思うのだが、どうしてこの作戦でタクトはエルシオールを前に進めとかなかったんだろう? 護衛である紋章機からこれだけ離してしまうなんて、誘ってるとしか思えない。

ゲームで戦闘行動中いくら前に行っても、なんか初期位置に戻ってるし。そこは微妙に謎だ。10回以上やってるから特にそう思う。

 

 

「あ、1番機ラッキースター出れまーす」

 

「なにー! ぬぬぬ、一機残していただと! 生意気なー!!」

 

「そこは、小癪なーじゃないの? レモンさん」

 

「レゾムだ!」

 

 

いやーすごいねーミルフィー。このくだらない会話の3秒間で一隻沈めてるよ。あれ作るのにかかった時間の何分の一だろうね……あ、ハイパーキャノンでレゾム沈めた。何で生きてるのか本当に疑問だよね。

 

 

「よし、後ろは何とかなるから、皆は前の敵を一掃してくれ!」

 

 

タクトから指示が来たので、とりあえず僕は突っこむ。いいよねー切り込み隊長って。殿も好きだけど、一番前で戦うのはとても憧れるよ。

 

 

「了解だよ、司令官殿!」

 

「ヴァニラさん、一応修理をお願いしてもよろしいですか?」

 

「了解しました。進路変更します」

 

「任せときなさい! あっという間に沈めちゃうから」

 

「二つも三つも攻撃手段を持つ必要は無い ただ一つを、鍛え上げてこそ必殺となる!! これが、かわせるか……!」

 

 

何時ものように、砲門をつぶしてから、機関部に一刺し。このパターンでコレから行くか。ぶるぁの声で一番印象に残ってるのはとっつあんだけど、タキオスと聖賢も声とキャラの相性が半端無かったよな。まあ、一番記憶に残っているのは星獣戦隊のナレーターだけどさ。

おっと。僕が一隻落とす間に、他のは全部落とされたらしい。うーむ、エンジェル隊が微妙に原作より強いな。経験値の差かな?

 

 

「敵旗艦、後退して行きます!」

 

「よーし、皆ご苦労様。帰還してくれ」

 

 

よしコレで僕の初陣は終わりか。この前のは正当防衛だからね、戦闘じゃないんだよ。エンジェル隊の面々と一緒に戦ったはじめての戦闘だったわけだけど…なんか思ったより感慨がわかなかったな。

なんでだろう?

 

 

 

 

 

────────

 

 

 

 

時刻は深夜、艦内の通路も一部を除き非常灯のみが薄く照らしている時間帯。先ほどの戦闘が終わって1時間ほどたった時間帯である。タクトがミルフィーの運をコインの裏表みたいだと評して、彼女の好感度を上げた後、ラクレットは地味に疲れたので早めに寝てしまった。彼の場合はクリスマスなどの行事で無駄にテンションが上がってしまい疲れて寝る子供のようなものだ。どんな理由でも結果として寝てしまったために、彼はまたしてもエンジェル隊とかかわる機会が減ってしまったのだ。

そして、エンジェル隊の彼女達とタクトは、寝る前のひと時をティーラウンジで過ごしていたのだ。最も、タクトとは違って(本人曰く若干)ヘタレなラクレットは女性5人でお茶を飲んでいるところに参加できたかは甚だ疑問であるが。

 

 

「みんな、改めてお疲れ様。皆ががんばってくれたおかげで突破できたよ、特にミルフィーは大活躍だったね」

 

「そんな、タクトさんの指揮がよかったから私は動けたんですよ」

 

 

タクトはそう言ってミルフィーユを見たあとに、自分のティーカップに口をつけた。ミルフィーのほうは、照れくさそうにしているが、褒められて悪い気はしていないようだ。彼女はエンジェル隊の中では謙虚なほうなのでこういうときには、ついつい否定をするのだ。

 

 

「あら、ミルフィーさんがいなければエルシオールは、5隻もの敵艦に追われていたのですから、そんなご謙遜なさらなくても」

 

「そうよ、あんたにしては頑張ったんだから、お礼くらい素直に受け取っておきなさいよ」

 

「ちょっと位、図々しい方が得するものだよ」

 

 

そんな彼女に対して、このように言うのもエンジェル隊ではいつものことであって、それはタクトがこの場にいても変わらないことなのだ。

 

 

「敵艦は……」

 

「ん?」

 

「いえ、敵艦はどうしてあそこまでの数を配備できたのでしょうか?私達は一応ルフト准将に囮になっていただいたうえで逃走しているわけです」

 

「確かにそうですわね。あの男は単純に追いかけてみただけみたいですが、かなりの数で警戒線を引かれているのは間違いないですわね」

 

 

ヴァニラが、ポツリと言葉を漏らした後に、彼女にしては珍しくそれなりに長く彼女の意見を述べた。後半部分はミントが補足したが。

 

 

「うん、正直今回の戦いも、アレだけの数を捌けたのはみんなの頑張りのおかげだと思うんだ。実際戦艦2隻ぶんの戦力以上だったじゃないか」

 

「やけに褒めるね、司令官殿」

 

「褒めるさ、事実だもの」

 

 

タクトが、エンジェル隊に対してここまで褒めるのは決しておかしくないが、何か含むものを感じ取ったフォルテは、タクトに問いかける。タクトの表情は、いつものへらへら表情とは違い、コレを言っていいのかどうか若干悩んでいるような顔だった。

 

 

「いや、その…………みんなは、ラクレットのことをどう思う?」

 

「どうってなによ」

 

「いや、確かに彼の紋章機はみんなの機体と比べても、同等かそれ以上の性能が出せるみたいなんだ」

 

 

タクトは先ほどの戦闘の後に、格納庫でもう一度詳しくラクレットを交えてクレータ班長に機体スペックを聞いていた。その際に、機動という点においてはかなりの性能を持つことを確認していたのである。

 

 

「でも、彼の動きは異常だ。正直あんな軌道、育成学校の首席が10年訓練しても出来るとは思わない。移動している戦艦のすれすれを飛びながら、火器をつぶす。言葉にしてみれば簡単だけど。パイロットじゃないオレでもあの難易度が解る。それに、戦闘であの人の変わりようも異常だと思う。第一印象とぜんぜん別人だよあれだと」

 

 

ここで、タクトは一回言葉を切ると、エンジェル隊の面々の顔を見渡した。

 

 

 

「コレを踏まえて、彼をどう思う?」

 

 

タクトのその言葉にエンジェル隊の一同は沈黙するしかなかった。

彼女達も少し思うことがあったのだ。確かに紋章機は、圧倒的性能ではあるが、『H.A.L.Oシステム』による補助もあるので、そこまでの訓練が必要ない、基本的に適正がものを言うのだ。しかしながら、それでも彼のあの機動は異常であった。まるで手足のように紋章機を扱っていたのである。そして、そのような彼が加わったタイミングはまさに、自分達がピンチに陥った時。戯曲の英雄かというタイミングで入ったのだ。

 

 

「……司令官殿、こういう時はたとえどんなにタイミングが良くても、上官のアンタがそれを怪しいだなんていってはだめさ。言いたいことは、そういうことだろ?」

 

「……うん、そうだね」

 

「でも、あんたが決めたんだからきちんと責任は持たなくちゃ、むしろアレだけ出来たのを見て「オレの目は正しかった」くらい言わないと」

 

「……そうかもしれないな。悪いね、みんな、変な空気にしちゃった、今日はもうオレ寝るよ」

 

 

そうい言い残すと、タクトは席を立ちティーラウンジを後にした。その姿を、少々呆然としていたフォルテ以外のメンバーが見送る。フォルテ自分のティーカップに口をつけて唇を湿らし、一息ついてカップをソーサーに置いたのち口を開いた。

 

 

「さて、今言った私が言うのなんだけど、正直ミントはどう思う?」

 

「彼には、ESPが効きませんでした。それがどういう理由なのかはわかりませんが。また、なぜかすでに重要なポジションについているクルーの名前を知っていました。特にタクトさんにいたっては、個人的な特徴でさえも把握していた可能性すらありえるかもしれません。単純に記憶力が良いだけでしたらいいのですが」

 

「まあ、怪しいのは否定できないよね。さっきはタクトに言ったけど。私の直感が、何か隠しているって言ってる。無条件で信用というのは出来なたもんじゃないね」

 

 

フォルテとしては、上官であるタクトのために気の利いたことを言ったが、彼女の歴戦の直感が何かおかしいと告げていたのである。個人的には疑わしいといったところか。対してミントは、言葉は丸いが、彼女なりに彼は怪しいといっているようなものである。

 

 

「まぁ、私は何か言えるほどじゃないけど、ただ、アイツの近接機動は、完全に才能がないとできないわ。私もやれといわれなきゃやりたくないわよ」

 

 

カンフーファイターが壊れちゃいそうだし、とランファは呟いた。

 

 

「でも、悪い人じゃないとは思います!」

 

「はい、私も何か確証がない限りは問題がない人だとは思います」

 

 

ミルフィーとヴァニラは元々誰かに対して疑念の感情を向けるが少ない、というか皆無に近いために今のところは問題がないという意見であった。

エンジェル隊全員としてみれば、隊長と参謀が疑ってそのほかが保留といったところか。

 

 

「まあなんにせよ、私達に害がない限りは、静観しますか」

 

「そうですわね。それが妥当かと」

 

 

 

 

 

ラクレットの知らないところで彼の扱いは決まっていく、彼が予想しない方向へ。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。