楽しんでいってね!
この迷宮を脱出するまでに、幾つかやることがある。
一つ目に、生活圏の確保だ。拠点の他に、食料が必要となる。では、ここでの食料とは何か? 答えは"魔物"だ。食料となるものは魔物以外には存在しない。だが、魔物を食せばたちまち身体が崩壊して命を落としてしまう。だが、それを起こさなかった前例が、琴葉の知る限りでは一人いる。アーロン・デグチェフ───王国にいたころの琴葉の師範となった弓兵だ。彼は"神結晶"から溢れ出る"神水"を飲むことで身体の崩壊を防ぎ、生存することができた。だが、その身体は魔物のそれへと近付くらしい。だが、死ぬよりはマシであろう。二つ目のハジメを探すという目的を果たす為には、自分自身が死んでは意味が無いのだ。故に、それらを捕まえるべく、琴葉は気配を消しながら魔物を探していた。
(見つけた)
琴葉の数十メートル先に白い毛並みを持ち、狼のような見た目の魔物、二尾狼の群れがいた。数は四。琴葉は素早く物陰に身を隠す。
二尾狼は四~六頭くらいの群れで移動する習性がある。というのも、単体ではこの階層の魔物の中で最弱であるため群れの連携でそれを補っているのだ。二尾狼は周囲を警戒しながら岩壁に隠れつつ移動し絶好の狩場を探す。二尾狼の基本的な狩りの仕方は待ち伏せであるからだ。
琴葉は漆黒の洋弓を投影する。そして、投影した矢を番え、構える。
生物は心臓を射抜いたとしても、しばらくの間は存命する。その間に暴れたりでもすれば、筋肉に乳酸が分泌され、風味を損なってしまう。故に、一撃で命を刈り取る為には───
バシュッ!!
───ヘッドショットだ。
放たれた矢は寸分違わず、一頭の二尾狼の脳天に命中し、その命を刈り取る。
この異常事態に、残り三頭の二尾狼は臨戦態勢へと入る。二つの尻尾から赤黒い電流をバチバチと迸らせ、周囲を警戒する。だが、既に琴葉は矢を追加で放っていた。
音速で迫る矢に次々と脳天を射抜かれていく二尾狼。
そもそも、弓兵相手に接近戦の構えを取ること自体が間違っているのだ。その為、一方的な虐殺となった。
その場に横たわる、四頭の二尾狼の亡骸。琴葉は洋弓を霧散させ、縄を投影する。それを二尾狼に巻き付け、拠点へと運ぶのであった。
拠点へと戻った琴葉。岩で出口を軽く塞いだ後、奥の部屋へと入る。まあ、部屋と言うにはあまりにも粗末ではあるが。
早速、投影したナイフで解体を始める。思いの外、魔物の体表は硬かったので、ナイフを霧散させてノコギリを投影し、それを用いて解体を再開した。
それと同時に、火を起こしておく。
肉からは酷い匂いがしていた。恐らく、味も悪いのだろう。
解体を終えた後、肉を小分けにしていく。
小分けにした肉を、魔物の骨で作った串に突き刺して火で焼く。流石に、生肉は食中毒になる危険性があるので食べるわけにはいかないのだ。
こんがりと焼けた後、肉を火から出す。
(さて、と。食べるか)
いざ食べるとなるとやはり不安なので、瓶の中の神水を一口呷ってく。
きゅるる、と腹の虫が鳴った。琴葉は固有結界に閉じ込められている間、空腹を感じなかったが、そこから解放された後、『世界の修正力』が働いたのか、激しい空腹を感じていたのだ。
意を決して、魔物肉に齧り付いた。
(……硬っ)
硬い筋ばかりの肉を、噛み千切り必死に飲み込んでいく。久々の食事だ。急いで食べると胃腸にも悪いので、少しずつ、ゆっくりと咀嚼し飲み下していく、
焼いても酷い匂いと味はどうにもならなかったようで、涙目になりながらも、喰らい続ける。
神水をこまめに飲みながら、二尾狼の肉を喰らい続ける。しばらく経つと、琴葉の身体に異変が起こり始めた。
「――ッ!? ぐああ!!!」
全身を激しい痛みが襲う。身体の内側から何かに侵食されているようなおぞましい感覚。その痛みは、時間が経てば経つほど激しくなる。
「がああああ!! な、何がっ……ぐううう!」
耐え難い痛み。己の身を侵食していく何か。琴葉は地面をのたうち回る。この世のものとは思えない程の激痛だ。固有結界の戦闘での怪我とは比べ物にならない程に痛い。
琴葉は傍らに置いていた瓶を掴み、神水を呷る。直ちに神水が効果を発揮し痛みが引いていくが、しばらくすると再び激痛が襲う。
「う、あああああ!! な、んで……!!」
琴葉の身体が痛みに合わせて脈動を始めた。ドクン、ドクンと身体全体が脈打つ。身体の至る所から骨が軋むような音も聞こえてきた。
しかし次の瞬間には、体内の神水の効力により、身体の異常を修復していく。修復が終わると再び激痛。そして修復。それの繰り返しが責め苦として琴葉に襲い掛かる。
神水の効力で気絶すらできない。絶大な治癒能力が仇となった形だ。
耐えることの出来ない激痛に、琴葉は絶叫を上げながら地面をのたうち回り、終わりの見えない地獄を味わい続けた。もう、ひたすら耐えるしかない。
次第に、琴葉の身体に変化が現れ始めた。
まず、赤銅色の頭髪から色が抜け落ちてゆく。許容量を超えた痛みか、それとも別の原因か、頭髪の色が抜け落ち、桃色掛かった銀髪へと変貌していく。
次いで、筋肉や骨格が徐々に太く、頑強になり、身体の内側に薄らと、幾本かの赤黒い線が浮き出始める。
『超回復』という現象がある。トレーニングなどにより断裂した筋肉が修復されるとき、僅かに肥大して治るという現象だ。骨なども同じく折れたりすると修復時に強度を増す。今、琴葉の身体に起こっている異常事態も同じだ。
魔物の肉は人間にとって猛毒だ。『魔石』という特殊な体内器官を持ち、魔物は魔力を直接体に巡らせ驚異的な身体能力を発揮する。体内を巡り変質した魔力は肉や骨にも浸透し、頑丈にする。
この変質した魔力が詠唱も魔法陣も必要としない固有魔法を生み出しているとも考えられているが詳しくは分かっていない。
この変質した魔力が人間にとって致命的なのだ。人間の体内を侵食し、内側から細胞を破壊していくのである。
過去で唯一、アーロンは神水を飲むことでそれを耐えきることが出来たが、それでも尚、激痛に苛まれたという。アーロンに言われた通り、神水を飲んでいたことが功を成したのか、琴葉は身体の崩壊を免れることが出来たのだ。
神水の効力で壊れた端からすぐに修復していく。その結果、肉体が凄まじい速度で強靭になっていく。
破壊と再生。
それを繰り返しながら、肉体はより強靭に変質していく。
やがて、脈動が収まり琴葉は力無く倒れ込んだ。
(生きてる……)
琴葉は、己の手を何度か握ったり開いたりしながら自分が生きていること、きちんと自分の意思で手が動くことを確かめる。そして、ゆっくりと起き上がった。
「とんだ災難だわ……。人が食べるものじゃないわね、本当に」
げんなりとしながら溜息を吐く琴葉。
何故か、妙に身体か軽く、力も漲っていることに気付いた。
腕や腹の筋肉が明らかに発達している。身長も幾分か伸びている。以前の琴葉の身長は百五十センチ程だったのだが、現在は更に十センチ以上高くなっている。胸のサイズは変わっていないが。骨や筋肉が発達した為に、脂肪まではつかなかったのだろう。胸はあるだけ邪魔だと思っている琴葉の気にすることでは無いが。
身体の変化だけでなく、体内にも違和感を覚えていた。温かいような冷たいような、どちらとも言える奇妙な感覚。意識を集中してみると、腕に薄らと赤黒い線が浮かび上がる。
「うわぁ……気持ち悪。なんか魔物にでもなった気分ね。……洒落にならないわ。あ、そうだ。ステータスプレートは……」
琴葉はステータスプレートをポーチの中から取り出す。身体の異常の原因が判るかもしれない、と考えたからだ。
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衛宮琴葉 17歳 女 レベル:30
天職:弓兵
筋力:530
体力:520
耐性:520
敏捷:600
魔力:550
魔耐:520
技能:魔術・投影魔術[+解析][+複製][+強化][+改造][+憑依経験][+壊れた幻想][+無限の剣製]・弓術・軽業・破壊工作・気配遮断・鷹の瞳・転移・心眼・過程省略・魔力操作・胃酸強化・纏雷・言語理解
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「……なんでさ」
つい、心の声が零れてしまう琴葉。
ステータスが上昇し、技能も三つ増えている。
「……魔力操作?」
文字通りなら魔力が操作できるということだろう。
琴葉は、先程から感じている奇妙な感覚は魔物の同質の魔力なのではないか、と推測し、集中することで″魔力操作″を試みる。
それと同時に、赤黒い線が薄らと浮かび上がった。そして身体全体に感じる感覚を右手に集束するイメージを思い描く。すると、魔力が移動を始めた。
次の瞬間、身体に電撃が走ったかのような衝撃が駆け巡る。
琴葉は慌てて身体に解析を掛ける。
「魔術回路が、増えてる……? いや、これは……融合した?」
なんと、赤黒い線が琴葉の体内に存在する魔術回路と融合したのだ。
以前、琴葉は魔術回路の起動ではトータスの魔法を起動できなかったことを発見した。だが、魔力を通す赤黒い、血管のような器官と魔術回路が、融合したことで、琴葉の推測が正しければ魔術と魔法の両方が使えることとなる。
実際、この推測は正しかった。
琴葉は次に、″纏雷″を試そうとする。
「えっと……どうすればいいんだろ……。″纏雷″ってことは電気、だよね? と、なると二尾狼の尻尾の……」
琴葉はバチバチと、掌の上で弾ける電気をイメージする。すると、掌の上で小さいながらも赤黒い電気が弾けた。
「よし、成功。投影魔術と同じように、イメージが必要みたいね」
その後もバチバチと放電を繰り返す。しかし、二尾狼のように飛ばすことはできなかった。おそらく″纏雷″とあるように体の周囲に纏うか伝わらせる程度にしかできないのだろう。電流量や電圧量の調整は要練習だ。
(でも、便利なことこの上ないわね。電気ってことは、物理学の常識が通じるってこと。要するに、身体に電気を流すことで筋繊維の強化や磁界を発生させた上での浮遊、果ては武器に流すことで敵を感電させて無力化出来るものね)
琴葉は″纏雷″の用途について色々考えを巡らせた。
最後の″胃酸強化″は文字通りだろう。魔物の肉を喰らったことで、身体にその耐性がついたのだろう。迷宮に他に食物があるとは思えない以上、ありがたい技能であった。
小分けにされた、残りの二尾狼の肉を咀嚼し飲み下していく。特に身体に異常は起こっていない為、安堵しながら食を進める。
余程空腹だったのか、一匹丸ごと平らげてしまった。
まだ三匹残っている。琴葉は解体を始めた。肉は燻製にして保存食にするつもりだ。また、魔物を仕留める為の罠にも利用する。剥ぎ取った毛皮は、継ぎ合わせることで衣服や布団にした。装備品は投影魔術で投影することも可能だが、極力魔力の消費を抑えたいが為に、自前で用意した毛皮の服を纏うこととした。これが、以外と温かい。これならば、肌寒い迷宮の中で低体温症を防ぐことが出来る。
(南雲……頼むから生きてて)
火で二尾狼の肉を炙りながら、ハジメを案ずる琴葉であった。
感想、評価を頂けると嬉しいどす。
完結後、カルデア召喚編やる? やるとしたら琴葉はどのクラスで召喚する?
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やれ。クラスはセイバークラスで。
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やれ。クラスはランサークラスで。
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やれ。クラスはアーチャークラスで。
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やれ。クラスはライダークラスで。
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やれ。クラスはアサシンクラスで。
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やれ。クラスはキャスタークラスで。
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やれ。クラスはバーサーカークラスで。
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やれ。クラスはルーラーで。
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やれ。クラスはアヴェンジャーで。
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やれ。クラスはムーンキャンサーで。
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やれ。クラスはアルターエゴで。
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やれ。クラスはフォーリナーで。
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やらなくていいんじゃない?