遅れてしまい、本当に申し訳無い。
それでは、楽しんでいってね!
「そんな……ことが……」
琴葉はハジメの口から聞かされた話に愕然としていた。
迷宮に落ちた後、魔物に標的にされたこと。魔物───爪熊に襲われ、左腕を食い千切られたこと。数十日にも及ぶ空腹と孤独の中、人格が豹変したこと。魔物の肉を喰らったこと。身体が魔物のそれに近い体質に変質したこと。〈
琴葉は自身の不甲斐なさに再びその視線を落とす。
「……ゴメン。何も出来なくて」
「いいって。どうしようもなかったことだから」
次いで、ハジメは再会するまでの琴葉の身に起こった出来事を聞いた。
ぽつりぽつり、と琴葉は口を開き、話していく。
憔悴仕切った身体を引き摺り、拠点を造ったこと。その最中に気を失ったこと。そして、〈可能性未来の自分〉に固有結界内部に囚われたこと。彼女に殺されかけたこと。死闘の末、それを討ったこと。彼女から学び、力を引き継いだこと。
ハジメはそれを聞き終えると、眉間を揉んだ。
「お前も……大変だったんだな」
「南雲に比べれば大したことないわよ」
「いや、あるだろ。未来の自分に殺されかけるとか……」
「彼女がいなかったら遅かれ速かれ私は死んでたわ」
「……そうか」
何とも言えぬ空気が流れる。気まずさで黙り込む二人。
「一応……粗末だけど拠点はあるから、そっちに移動しましょう。ここだとまた魔物に襲われかねないわ」
「……あ、ああ。そうだな」
ハジメは琴葉に促され、立ち上がる。すると、
「あ、そうだ」
何かを思い出したようにハジメは口を開き、琴葉を見遣る。
「何よ?」
琴葉はその様子に怪訝そうに問う。
「この際だから、俺のことは名前で呼んでくれ。名字で呼ばれると他人行儀で嫌だ」
「はぁぁ? ……まあ、別に構わないケドも」
「よし、決まりだな」
「はいはい。さっさと拠点に行くわよ、
「ああ、
二人は迷宮内部を進む。
暫く歩くと、岩で塞がれた出入り口と思しき穴が見えた。
「……ここか?」
「ええ。今、どかすからそこで待ってなさい」
琴葉は積み重ねられた岩を持ち上げ、穴の傍に置いていく。幾つかどかすと、穴は人が通れる程の大きさになった。琴葉は入り口に置いてある、魔物の毛をより合わせて作った松明モドキに火を点け、洞窟内部を明るくすると、手招きをしてハジメに入るよう促した。
「お邪魔しますっと」
ハジメは促されるままに洞窟の中───琴葉の生活拠点の中に入っていく。
琴葉はハジメが入ったことを確認すると、出入り口の前に置いてあった岩を持ち上げ、穴を塞いでいく。魔物が入ってこないようにする為だ。
(ほぉー……)
一方のハジメは琴葉の生活拠点の中を興味深そうに見渡していた。
壁には出っ張った台のような物があり、それがイスの代わりだということがわかった。また、地面には丸められた毛皮と、壁には掛けられ乾燥させているのであろう毛皮の存在も見留められた。あとは、毛皮で作られた服、だろうか。衣服と思しき物が畳まれて置かれていた。また、魔物の肉の燻製が天井から吊されていた。
「面白い物はこれと言って無いわよ。期待するだけムダ」
琴葉は吐き捨てるように言うと、部屋の中央にある、魔物の脂を燃料にした物に火を点ける。天井には穴が空いており、それが外へと繋がっているようで、そこから有害なガスを排出しているようだ。
───粗末なようにも見えるがよく出来ている。
これがハジメが抱いた感想であった。
「はい」
琴葉は丸められた毛皮を差し出す。ハジメはそれを怖ず怖ずと受け取った。丸められたそれを拡げてみると───それは、寝袋であった。
「眠るときに使いなさい。二尾狼の毛皮だけど、意外と寝心地が良いのよ、それ」
カラカラと笑いながら琴葉はそう告げた。
「───
おもむろに詠唱を行う琴葉。すると、琴葉の手元にはノコギリが投影された。一瞬身構えるハジメ。
「……何もしないわよ。
琴葉は少し前に仕留めた蹴りウサギをハジメに見せる。ハジメはそれを視界に収めると、すぐに警戒を解いた。
琴葉はハジメが見ている前で、蹴りウサギの解体を始めた。ノコギリをギコギコと動かしながら、手際良く解体していく。肉を削ぎ落として切り身にした後、魔物の毛をより合わせて作った紐を取り、それを切り身に括り付けて天井から吊るした。燻製を作っているのだ。
余った物───食用、並びに実用にも使えない器官は全て焚き火に焼べ、燃料とした。
一連の作業を終えると、ハジメとは向かいに琴葉は腰を下ろした。
暫しの休息。バチバチと炎が弾ける音だけが響いていた。
少し経ち、琴葉はおもむろに口を開く。
「それで、これから先、どうするの?」
琴葉はハジメに問い掛けた。
「地球に帰る。その為に、まずはこの迷宮を攻略する」
それに対してハジメは迷い無く、決然と答えた。
「……そう。それには、同意見ね」
琴葉はハジメの言葉に首肯した。彼女もまた、地球に帰りたいのだ。
「その為には、寝る間も惜しんで「ダーメーでーす」……はぁ?」
ハジメの言葉に琴葉は割り込んだ。ハジメは不服げに琴葉を見遣る。
「休める時に休んでおきなさい。いいこと? これから先、過酷な試練が待ち受けているの。万能便利な神水があるからって、精神的なダメージの蓄積までは治せないの。だから、今は休みなさいな」
琴葉は焚き火を眺め、暖を取りながらも、ハジメを諭すように言い聞かせた。
確かに、とハジメは呟く。休める内は休むべきだ、とも思い直した。
「見張りは二時間おきに交代ね。先に休んでなさい。私が見張っておくから」
「……なら、お言葉に甘えて」
ハジメはゴソゴソと二尾狼の毛皮で作られた寝袋の中に潜っていった。暖かい───正直な感想であった。そして、魔物の毛皮がこんなにも暖かいことが何故だか尺でもあった。
ハジメはゆっくりと瞼を落とす。規則正しい呼吸をしていく内に、眠気はやって来た。それに身を委ね、ハジメの意識はここで途切れた。
火の後始末を終えた琴葉は入り口の前の壁により掛かり、見張りをしていた。異常無し───現時点ではそうであった。
一時間程経ったとき、自身の意識が半分遠退いていることに気付いた。
(ああ……マズいな。ハジメを見つけた安堵感からか、これまでの疲れが一気に……)
抗えない睡魔。こくりこくり、と琴葉は船を漕いでしまう。
(ヤバ……もう、む、り……)
襲い来る疲労感と睡魔に琴葉は為す術も無く、その瞼を落としてしまった。
薄暗い洞窟の中、二人の寝息だけが静かに聞こえていた。
翌日、ハジメによって寝袋の中に突っ込まれ、朝まで見張りを代わられていたことに、琴葉は再び申し訳無く思ってしょぼくれていたのはまた、別の話。
感想、評価を頂けると嬉しいどす。
完結後、カルデア召喚編やる? やるとしたら琴葉はどのクラスで召喚する?
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やれ。クラスはセイバークラスで。
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やれ。クラスはランサークラスで。
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やれ。クラスはアーチャークラスで。
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やれ。クラスはライダークラスで。
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やれ。クラスはアサシンクラスで。
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やれ。クラスはキャスタークラスで。
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やれ。クラスはバーサーカークラスで。
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やれ。クラスはルーラーで。
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やれ。クラスはアヴェンジャーで。
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やれ。クラスはムーンキャンサーで。
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やれ。クラスはアルターエゴで。
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やれ。クラスはフォーリナーで。
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やらなくていいんじゃない?