赤き弓兵、錬鉄の記憶   作:ハウンド・ドッグ

15 / 26
ドーモ、ハウンド・ドッグです。

楽しんでいってね!


Ep.14 暗がりの階層

「畜生……なんで無いんだ……」

 

「……どうしよう」

 

 爪熊を倒してから三日。

 上階へと続く道を探していたハジメと琴葉の二人は項垂れていた。どういうわけか、上階へと続く道が見当たらないのだ。

 既に二人はこの階層の八割の探索を終えている。爪熊を喰らってステータスがまた跳ね上がり、今やこの階層で彼等にとって脅威となる存在はおらず、広大ではあるものの探索は急ピッチで進められていた。にもかかわらず、いくら探しても何も見つからない。

 

 ───否。何も見つからないというのは語弊がある。

 

 探しているのは正確には″上階″への道であり、″階下″へと続く道ならば二日前に発見している。ここが迷宮で階層状になっているのなら上階への道も必ずあるはずなのだが、どうしても見つからない。

 直接上階へと進む為に錬成で道を作ろうとしたが。これもダメだった。どうやら、上だろうと下だろうと、ある一定の範囲を進むと何故か壁が錬成に反応しなくなるということが判った。その階層内ならいくらでも錬成できるのだが、上下に関してはなんらかのプロテクトでも掛かっているのかもしれない。この【オルクス大迷宮】自体、神代に作られた謎の多い迷宮なのだ。何があっても不思議ではない。

 尚、琴葉の解析魔術を用いて階層の探索をしようとしたのだが、それも徒労に終わった。どうやら迷宮の構造そのものに解析をかける(ハッキングする)と、迷宮の防衛機構が働き弾かれてしまうことが判った。判ったというよりも、彼女は薄々それを理解していた。この方法を試すのは既に百回を超えている。故に、もう理解するしかなかったのだ。

 そういうわけで、地道に上階への道を探しているのだが、見つからなければ決断する必要がありそうだ。

 

 ───この大迷宮の更に深部へ潜ることを。

 

「……行き止まりか。これで分岐点は全て調べたぞ。一体どうなってんだか」

 

 はぁ~、と深い溜息を吐きながら結局見つからなかった上階への道を諦めるハジメ。

 

「……腹を括るしかないでしょう。それに、あまり時間は無駄に出来ないわ」

 

 ふぅ、と息を吐いた琴葉。停滞して時間を無駄に使うよりも下の階層へと降りて外に出る手掛かりを探した方が速い、と踏んだのだ。

 二人は二日前に発見した階下への階段がある部屋へと赴く。

 なんとも雑な作りな階段───いや、階段というより凸凹した坂道と言った方が正しいのだろう。その先は、緑光石がないのか真っ暗な闇に閉ざされ、不気味な雰囲気を醸し出していた。まるで、巨大な怪物の口内のようだ。一度入れば二度と出てこられない、そんな気持ちが自然と浮かび上がる。

 

「ハッ! 上等だ、なんだろうと邪魔するってんなら、殺して喰ってやんよ」

 

 ハジメは、自分のそんな考えを鼻で笑うと、ニィと口元を歪め不敵に笑った。

 

「……程々に、ね。本当に危なっかしいんだから」

 

 ハジメの様子に呆れたように肩を竦めながら琴葉は微笑をたたえた。

 そして───

 

 

 ───二人は躊躇う事なく暗闇へと踏み込んだ。

 

 

 

 

 

 漆黒の闇───その階層を表現するにはこれが正しいだろう。

 地下迷宮である以上それが当たり前なのだが、今まで潜ったことのある階層は全て緑光石が存在しており、薄暗くとも先を視認できないほどではなかった。

 だが、どうやらこの階層には緑光石が存在しないらしい。しばらくその場に止まり、目が慣れて多少見えるようにならないかと期待した二人だったが、何時まで経ってもさほど違いはなかった。

 仕方なく、ハジメは爪熊の毛皮と錬成した針金で作成した即席のリュックから緑光石を取り出し灯りとする。また、ハジメはそれをもう一つ取り出し琴葉に渡した。

 よく考えると、暗闇で光源を持つなど魔物がいるとすれば自殺行為に等しいが、こうでもしなければ進むことができないとハジメは割り切った。ただし、右手を塞ぐわけにはいかないので、肘から先のない左腕に括りつける。

 しばらく進んでいると、通路の奥で何かがキラリと光った気がして、二人は警戒を最大限に引き上げた。

 なるべく、物陰に隠れながら進んでいると、不意に左側に嫌な気配を感じた。咄嗟に飛び退きながら緑光石を向けると、そこには体長二メートル程の灰色のトカゲが壁に張り付いており、金色の瞳で二人を睨んでいた。

 体感時間が引き延ばされるような感覚と共に、琴葉の脳裏にとある映像が過る。心眼の発動である。映像の中、琴葉はトカゲに向けてマントを投げていた。長々としたようにも見えるが、実際その映像の時間は一秒にも満たない。映像が終わり、現実世界へと戻る。

 

(……っ!)

 

 刹那、急いで琴葉は爪熊の毛皮で作ったマントをトカゲに向けて放り投げる。

 その数コンマ秒後、トカゲ金眼が一瞬光を帯びた。

 次の瞬間、トカゲの視界を塞ぐように投げ飛ばされたマントがビキビキと音を立てながら石化を始めた。

 

「ッ!?」

 

「下がって!」

 

 琴葉は走ってハジメと場所を入れ替わる。そして、手を払った。

 

「───工程完了(ロールアウト)。行って!」

 

 全投影連続層写(ソードバレル・フルオープン)。すかさず放たれた大小二十本をゆうに超える、投影された剣の雨あられ。石化能力を持つトカゲ───この場合はバシリスクと呼ぶことにする。それらはバシリスクへと殺到し、抵抗する暇も与えず刺し殺した。

 ふう、と琴葉は安堵したように溜息を吐く。ついで振り返り、「大丈夫?」とハジメに問い掛けた。

 

「問題ねぇよ。助かった」

 

「そ。なら、良かった」

 

 二人は周囲を警戒しつつバジリスクに近づくと、素早くその肉を切り取りその場を離脱した。

 先のことがある以上灯りをつけるわけにもいかず、二人は緑光石をしまった。灯りを失い、殆ど何も見えない状況では流石にのんびり食事するわけにもいかない。二人は一先ず探索を進めることにした。

 

 

 

 

 二人は闇の中を歩き続ける。

 既に、体感では何十時間と探索を続けていたが、階下への階段は未だ見つかっていない。道中、倒した魔物や採取した鉱石も多く、そろそろ持ち運びに不便なので、二人は拠点を作ることにした。

 ハジメは適当な場所で壁に手を当て錬成を開始する。特に問題なく壁に穴が空き、奥へと通路ができた。ハジメは連続で錬成し、八畳程の空間を作った。そして、忘れずにリュックからバスケットボール大の大きさの青白い鉱石を取り出し壁の窪みに設置する。持ち出してきた神結晶だ。その下にはしっかり滴る水を受ける容器もセッティングしてある。

 ちなみに、ハジメは神結晶を″ポーション石″、神水を″ポーション″と呼んでいる。確かに、ゲームの代表的な回復薬だが、効果が段違いであるのにただのポーション呼ばわりしているあたりに適当感が滲みでている。琴葉の場合はそのまんま呼んでいた。

 

「さて、じゃあ、早速メシにしますか」

 

「どれも人が食べるモノではないのだけどね」

 

 ハジメはリュックから錬成で作成した容器の中に入れた肉を取り出す。それらを二人は″纏雷″でこんがり焼き始めた。

 本日のメニューは、バジリスクの丸焼きに羽を散弾銃のように飛ばしてくるフクロウの丸焼き、そして六本足の猫の丸焼きだ。当然の如く、調味料はない。この階層に来るまでに琴葉がどうにかして作ろうとしたが、こればかりはどうにもならなかったらしい。

 

「「いただきます」」

 

 むぐむぐと喰っていると次第に身体に痛みが走り始めた。つまり、身体が強化されているということだ。だとすると、ここの魔物は爪熊と同等以上の強さを持っているのだろう。確かに、暗闇という環境と固有魔法のコンビネーションは厄介だった。

 ハジメは神水を飲みながら痛みを無視して喰い続ける。幻肢痛から始まり苦痛続きだったハジメはすっかり痛みに強くなっていた。

 

「ふぅ……。ごちそうさま。相変わらずマズいことで」

 

 琴葉は魔物の肉の味の酷さに悪態を吐く。

 

「むぐ、ふぅー、ごちそうさま。さて、ステータスは……」

 

 ハジメはそう言ってステータスプレートを取り出すハジメ。

 ハジメの現状は

 

===============================

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:23

天職:錬成師

筋力:450

体力:550

耐性:350

敏捷:550

魔力:500

魔耐:500

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合]・魔力操作・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地]・風爪・夜目・気配感知・石化耐性・言語理解

===============================

 

 琴葉も同じように自身のステータスプレートを見る。

 琴葉の現状は

 

===============================

衛宮琴葉 17歳 女 レベル:48

天職:弓兵

筋力:650

体力:630

耐性:620

敏捷:780

魔力:700

魔耐:650

技能:魔術・投影魔術[+解析][+複製][+強化][+改造][+憑依経験][+壊れた幻想][+無限の剣製]・弓術・軽業・破壊工作・気配遮断・鷹の瞳・転移・心眼・過程省略・魔力操作・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地]・風爪・夜目・気配感知・石化耐性・言語理解

===============================

 

 二人のステータスは予想通り大幅に上昇していた。技能欄も三つ増えたようだ。よくよく辺りを見ると、確かに先程より遥かに見える。これが″夜目″の効果らしい。

 奈落の魔物にしてはショボイ気もするが、この階層においてはとんでもないアドバンテージだ。後は、文字通りの技能だろう。

 ステータスプレートを見終えたハジメは消耗品を補充するため錬成を始めた。

 弾丸は一発作るのにも途轍もなく集中力を使うのだ。何せ、超精密品である。ドンナーに刻まれたライフリングが無意味にならないようにサイズを完璧に合わせる必要がある。炸薬の圧縮量もミスは許されない。一発作るのに三十分近く掛かるのだ。自分でもよく作れたものだと思う。人間、生死がかかると凄まじい力を発揮するものだと自分ながらに感心したものだ。

 もっとも、手間がかかる分威力は文句なしであるし、錬成の熟練度がメキメキと上昇していくのでなんの不満もない。

 御蔭で、鉱物から不純物を取り除いたり成分ごとに分けたりする技能が簡単にできるようになったし、逆に融合させるのも容易になった。実際、今のハジメの錬成技術は王国直属の鍛治職人と比べても筆頭レベルにある。

 ハジメは黙々と錬成を続ける。

 その間、琴葉は投影魔術の訓練をしていた。

 自身の周りに、投影した様々な形状の剣を置いていく。曲がりくねった剣、捻れに捻れた剣、針のように細長い剣、細かな装飾が施された剣……etc。思い浮かべた、多岐に渡る数多もの剣を投影するべく、魔術回路を起動させ魔力を注ぎ込む。この訓練は投影品の精度を上昇させる為のものだ。複雑な物であればあるほど良い。黙々と、琴葉は己の周りに投影した剣を置いていく。

 まだ、一階層しか降りていない。

 この奈落がどこまで続いているのか見当もつかない。

 二人はそれぞれのやるべきことを終えたら直ぐにでも探索に乗り出すつもりだ。少しでも早く故郷に帰るために、グズグズしてはいられない。二人は奈落の底で神結晶の青白い光に照らされながら始まったばかりの迷宮攻略に決然とした表情をするのだった。

 

 




感想、評価を頂けると嬉しいどす。

完結後、カルデア召喚編やる? やるとしたら琴葉はどのクラスで召喚する?

  • やれ。クラスはセイバークラスで。
  • やれ。クラスはランサークラスで。
  • やれ。クラスはアーチャークラスで。
  • やれ。クラスはライダークラスで。
  • やれ。クラスはアサシンクラスで。
  • やれ。クラスはキャスタークラスで。
  • やれ。クラスはバーサーカークラスで。
  • やれ。クラスはルーラーで。
  • やれ。クラスはアヴェンジャーで。
  • やれ。クラスはムーンキャンサーで。
  • やれ。クラスはアルターエゴで。
  • やれ。クラスはフォーリナーで。
  • やらなくていいんじゃない?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。