赤き弓兵、錬鉄の記憶   作:ハウンド・ドッグ

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一ヶ月も遅れてしまった……本当に済まない。


Ep.23 迷宮の守護者(ガーディアン)───Ⅲ

 極光に吞まれるハジメとユエ。琴葉はただ、見ていることしか出来なかった。自身のミス──要因はこれに尽きる。光が爆ぜ、煙が晴れたその先には……倒れ込むハジメの姿が。ユエを庇ったのだろう。

 

───ああ、まただ。

 

「ハジメ……!」

 

 ユエはハジメに慌てて駆け寄る。しかし、魔力が枯渇している為か、力が上手く入らずすぐに転倒してしまった。琴葉は我に返り、二人の元へと走る。うつ伏せに倒れ込むハジメの下には血溜まりが拡がっていた。ハジメはユエを庇った際に″金剛″を発動していたが、それすらも突き抜けてダメージを与えたのだろう。そして、傍らにはシュラーゲンが転がっていた。サソリモドキの外殻で作られた頑強なシュラーゲンでさえも、極光によって融解していた。おそらくシュラーゲンを盾にしたのであろう。一命こそ取り留めてはいるものの、もし、シュラーゲンを盾にしていなかったならば即死だった。

 ユエと琴葉はハジメの容態を看る。それは、酷いものだった。指、肩、脇腹が焼け爛れ、一部骨の露出に加えて、顔の右半分が焼け、右眼からも流血していた。

 

───また、何も出来なかった。

 

 琴葉はあの時、ミスを犯した自身を恨んだ。銀色の頭に気付いていたら。躓き転倒していなかったら。極光から二人を守れたはずだった。それが出来るだけの″武器″もあった。しかし、出来なかった。心に暗雲が差し、可能性未来の自分への誓いすらもすでに揺らいでいた。どれだけ強くなっても、所詮彼女は″人間″だった。ハジメのように狂うこともなく、性格が反転することもなく、彼女はひたすらに″人間″だった。そして、脆かった。……弱かった。

 不甲斐ない己に歯噛みし、自責と後悔により表情を歪ませるが、そんなこと知るかとでも言うように″心眼″による近未来予知は無慈悲にもヒュドラの次の攻撃パターンをヴィジョンとして脳裏に流した。

 銀色の頭のヒュドラの口腔に再び光が。また、極光を放とうとしているのだろう。

 

「……I am the bone of my sword」

 

 琴葉は自身の掌に魔力を集中させる。

 

「───熾天覆う(ロー)……七つの円環(アイアス)

 

 自身の前方に突き出した掌から魔力が爆ぜ、七枚の花弁を形作る光の盾を顕現させた。その展開とほぼ同時に、ヒュドラの口腔から極光が放たれた。

 

「ぐう……う……」

 

 迫る極光を光りの盾が受け止める。しかし、一枚目、二枚目の盾は呆気なく砕け散った。それだけ、強力な攻撃なのだ。三枚目の盾にもヒビが入り、あっと言う間に破壊されてしまう。残る光の盾は四枚。精度が荒い状態での展開が祟り、強度に不安があった。

 

(魔力を込めろ……! もっと……もっと……!)

 

 魔術回路を総動員し、残る四枚の盾へと魔力を注ぎ込む。しかし、四枚目が砕け散る。続いて、五枚目の盾を極光が襲う。出来るだけ長く保たせるべく、琴葉は魔力を注ぎ続ける。

 退路は無い。後ろにはハジメとユエがいる。ここで盾が砕かれては、自身が倒れては二人が死んでしまう。……それは駄目だ。今にも折れそうな己の心を必死に奮い立たせる。

 程無くして、五枚目の盾にも亀裂が。徐々にそれは拡がっていき、五枚目の盾が破られる。だが、五枚の盾を砕いたことにより、極光の勢いはかなり減衰していた。

 六枚目にも亀裂が。全霊を込め、琴葉は己の魔力を絞り出す。亀裂は尚も拡がっていき、やがて…………止まった。防ぎきったのだ。

 ぜえぜえと肩で息をしながら琴葉は膝をつく。ポーチから神結晶の入った小瓶を取り出し、中の神水を一機に呷る。体力と魔力の両方が満たされていくのを感じ取れた。しかし、猶予は無い。

 後ろを見ると、ユエは狼狽していた。先程からハジメに神水を飲ませているのに一向に肉体の再生が行われないのだ。実は、ヒュドラが放った極光には毒性がある。それは肉体を溶かしていくもので、普通は為す術もなく溶かされて終わりである。神水の回復力が凄まじさを以てしても、その毒性によって本来の回復力が阻害されてしまっているのだ。再生こそしているものの、速度は遅い。更に、右目に関しては極光の光で蒸発してしまい、神水で欠損は再生できない以上治らない。

 ユエは今にも泣き出しそうな表情をしている。無理も無いだろう。ユエはハジメに心を開き、好意を寄せている。今、目の前で生死の境を彷徨っているハジメを見て、酷く動揺するのも仕方の無いことであろう。

 琴葉はその様子を見て、腹を括る。

 

「……ユエお姉ちゃん。ハジメを連れて、出来るだけ安全な場所に隠れて」

 

「……っ!? 琴葉……一体何を……!」

 

 ユエは目を見開き、琴葉の袖を掴む。行かないで、とその瞳は訴えていた。ユエのその双眸に見詰められた琴葉は胸がズキリと痛む。

 

「アイツは私が仕留める。この事態の半分は私のミスによるもの……なら、その償いはしなきゃいけない。……大丈夫。ちゃんと、生きて戻るから」

 

 ……嘘だ。琴葉はユエを安心させる為に嘘を吐いた。その微笑みも、ユエを安心させる為に作った貼り付けのものだ。生きて帰れる保証はどこにも無い。命を落とす確率の方が断然高い。それ程までに危険な賭に出るのだから。それでも、やるしかなかった。それ以外に、方法が無かった。

 

「待って……!」

 

 ユエは琴葉を引き留めようとする。しかし、琴葉はその手を振り払った。もし、掴んでしまったらもう二度と立ち上がることが出来ないような気がしたから。

 

「……ごめんね」

 

 琴葉は二人を転移させる。出来るだけ、安全な柱の後ろに。

 

「さて、やるか」

 

 琴葉はヒュドラを睨み付ける。そして、その手を前に翳した。

 

「───I am the bone of my sword.」

 

───身体は剣で出来ている

 

 それは、彼女が至ったかもしれない可能性未来の自分。

 

「───Steel is my body, and fire is my blood.」

 

───血潮は鉄で、心は硝子

 

 絶望で揺らぐ誓いを今、もう一度立てよう。

 

「───I have created over a thousand blades.」

 

───幾たびの戦場を越えて不敗

 

 ここからが起点(スタート)なのだ。その起点に立つ為に、

 

「───Unaware of begining.」

 

───たった一度の敗北もなく、

 

「───Nor aware of the end.」

 

───たった一度の勝利もなし

 

 今、彼女は死地へと赴く。

 

「───Withstood pain to create weapons.」

 

───継ぎ人はここに

 

 馬鹿げた理想の終着。そして、過酷な運命の序章。

 

「───My hands will never hold anything.」

 

───その手で抱き締める者は何も無く、

 

 その結末が悲劇的なものでも

 

「───Even so,」

 

───それでも、

 

 それでも

 

「───My flame never ends.」

 

───生き続けることしか出来ない

 

 彼女は抗い続ける。

 

「───So as I pray……UNLIMITED BLADE WORKS.」

 

───その身体はきっと……剣で出来ていた

 

 それが、彼女の戦いなのだから。

 

 

 

 

 

 

 世界が光に呑み込まれた。

 

 

Ⅳへと続く……




固有結界発動シーンです。キリがいいのでここで次回へ。
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さて、ここまで書いたけど、琴葉の扱いどうする?

  • 百合にしてヒロインを作ろう
  • ハジメハーレムに加えよう
  • そのままヒロインムーブ無しでいこう
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