「───So as I pray……UNLIMITED BLADE WORKS.」
琴葉から噴き出す膨大な魔力の奔流。最後の詠唱を終えたその瞬間、世界は光に呑み込まれた。
彼女が使った魔術は″固有結界″。それは、個と世界、空想と現実、内と外を入れ替え、現実世界を心の在り方で塗りつぶす魔術の最奥である。可能性未来の自分の記憶を引き継ぎ、そして、固有結界の引き継ぎもとい理論の継承を行った際に行き着いた心象風景。それが、衛宮琴葉の固有結界、『
琴葉はその瞼をゆっくりと開く。辺りに拡がるのは───
(そっか…………あの時から、私の″時間″は止まったままなんだ)
───暗雲、瓦礫、そして倒壊した建物であった。
これが、彼女の心の風景。戦火によって故郷を燃やされたあの日から、心の時間は止まっていた。
可能性未来の自分の心の風景は砂漠──全てが風化した世界なのだ。と、なればここは風化する前の世界。琴葉の止まった時間が表出するのも頷けるだろう。
コンクリートで舗装されてはいるが、砲撃によって亀裂が入り、建物は倒壊し辺りに瓦礫を散らしている。突き立つ無数の剣は墓標のようで、所々から炎が立ち上がっている。それらは全て、彼女に対し「何故お前が生きている」と無情にも責め立てるようにも感じる。
琴葉は歩く。数メートル先に存在する敵へと向けて。突如周りの風景が変わったことに混乱しているのか、ヒュドラは辺りを忙しなく見回していた。しかし、眼前の敵を視界に収めると、その巨体から殺気を立ち上らせる。
「ようこそ、私の世界へ。ここならどれだけ壊しても外の世界に影響はないわ」
琴葉はそう言い捨てると、手に剣を投影する。
「さあ……来なさい。ここをアンタの墓場にしてあげる」
投影された剣を握り直し、琴葉はヒュドラへと疾駆する。
ヒュドラは吼えると、極光を放った。威力を抑えつつも連射性を高め、マシンガンのように光弾を飛ばしてくる。琴葉は不規則に左右に動く乱数軌道によって回避していく。この場合、退避するのは愚策。相手のいいようにされてしまう。よって、前に出る。
″空力″を用い、空中を駆け上がる。狙うはヒュドラの頭だ。その度に光弾が彼女を襲うが、空中で回避し、避けきれないものは転移することで対処していく。
「いけ……!」
琴葉が号令をかけると、無数の剣がヒュドラへと投射された。この固有結界には数多の剣が内包された世界である。そして、そこに存在する剣は全て、琴葉の意思で操作することが可能だ。
数を揃える為に無銘となったシンプルな造形の剣がヒュドラへと飛来し、突き刺さっていく。一本で大したダメージは与えられないならば、沢山の剣を突き立てれば良いだけの話。無銘の剣の魔力消費の少なさを活かした″弾幕″ならぬ″剣幕″。それらは確実にヒュドラへとダメージを与えていった。
ヒュドラは次々と突き刺さる剣を嫌がってか、迫る剣の雨霰に向けて極光を放つ。投射された第一波の大部分がこれで消滅してしまったが、すぐに第二波が襲う。
琴葉は、身を捩り彼女を振り落とさんとするヒュドラの胴体から振り落とされないよう気を付けながら、体表に剣を振り下ろす。だが、硬い。中々刃が通らない。幾度も突き立てるが、内蔵まで届かない。よって、作戦を変える事にした。
「……
ヒュドラの体表に何本もの剣を突き立てていく。その数が二桁に達したとき、その手に投影した二振りの剣を突き刺し、叫んだ。
「爆ぜろ…………!!」
魔力が剣を通して流れ込み、体表に突き立つ剣と連結する。実は、突き刺したこの二本は導火線としての役割も持っていた。
琴葉は巻き込まれないように離脱。その数秒後、爆発。
ヒュドラは悲鳴にも似た叫び声を挙げる。体表を吹き飛ばしたのだ。そこからは、露出する筋肉が。
「───
琴葉はその手に捻れた剣を投影し、同じく投影した洋弓に番え、限界まで弓を引き絞る。
「───
放たれた剣は性格に撃ち抜く───かと思われた。その瞬間、
「クルゥアァン!!」
ヒュドラは超人的な反射神経で振り返り、極光を放った。その暴力的なまでの光の奔流は、琴葉が放った捻れた剣を一瞬で消滅させてしまった。
「クソッ…………!!」
悪態を吐きながら琴葉は転移する。空中にいる状態では的になりかねないからだ。
ヒュドラは怒り狂っていた。先程までこちらに向けられていた殺気が生温い程に、強大な″死″の奔流を琴葉へとぶつける。瞳は憤怒と憎悪に燃え、今にも琴葉を喰い殺さんとしている。
(仕留め損ねた……! 維持限界も近いっていうのに……!)
琴葉は冷たい汗が伝うのを感じていた。
その強大さ、獰猛さは元より、ヒュドラをこの固有結界内に繋ぎ止める時間が圧倒的に足りないのだ。正攻法では絶対に倒せない。薄々わかってはいた事だが、それを改めて実感させられたのだ。焦燥と共に、絶望が彼女を支配していく。本当ならすぐにでも逃げ出したい。しかし、ここで逃げれば可能性未来の自分との、何より切嗣との誓いが全て無になってしまう。退路は無い。やらなければならない。倒さねばならない。今、ここで。
琴葉は剣の弾幕を維持しながら弓に再び捻れた剣を番える。一度で駄目なら、何度でも放つ。一撃でも当たれば致命傷に成り得るのだから。しかし、それはヒュドラも理解していたようで、放たれた剣が自身に着弾する前に極光で消滅させていく。命中しているのは無銘の剣のみ。少しずつ削れてはいるが、やはりヒュドラは倒れない。どちらかというと、ヒュドラは無銘の剣を甘んじて許容し、自身にとって致命傷になりかねない一射を対処する事に方針転換している様にも思えた。
このままでは負ける───紛れもない事実が琴葉を襲う。固有結界を維持できる限界はもう二分も無い。今の彼女の魔力量ではそれが限界なのだ。更に、悪いことに回復する為の時間すらも無い。口腔から放たれる弾幕がその時間を奪っているのだ。絶え間なく放たれる光弾で琴葉に回復する暇を与えない───敵ながら天晴れとしか言いようが無かった。
(アイツを殺す為には一撃の威力に優れたものが必要……だけど、弓で放つと極光で撃ち落とされてしまう……)
琴葉は光弾を躱しながら思案を巡らせる。一撃で吹き飛ばせるだけの火力が今この瞬間は必要なのだ。記憶を引っ張り出しながら、この状況に最適な宝具を探していく。
(神造宝具は無理……。やれば身体が消し飛ぶから却下)
かの騎士王が駆ったとされる神造宝具はすぐに除外した。そもそも、魔力が足りなさすぎる。仮に出来たとしても、己の命を犠牲にでもしなければ不可能であろう。
散々思案をし、一つの宝具を思い浮かべた。
(あれなら……〈選定の剣〉なら……)
無茶をすれば投影できる───そう踏んだ。
神造宝具は投影できずとも、それ以外ならば投影は可能だ。しかし、如何せんそれも膨大な魔力を必要とする。普通に投影するだけでは不可能だ。
(失敗すれば命を落とす……だけど、今の所勝率が一番高いのはそれしかない)
疾駆しながらそう考えていると、眼前に光弾が着弾、爆発した。衝撃波で琴葉は数メートル吹き飛ばされる。地面を跳ねる中、意識を失いかけるが、なんとかそれを保ちポーチの中から小瓶を取り出し、中の神水を呷る。どの道全ての魔力を動員するのだから、摂取しておいた方が良いだろうと結論づけたのだ。何はともあれ、回復は出来た。
琴葉は体勢を立て直し、自身の周りに障壁代わりとして幾本かの太い大剣を突き刺す。
(覚悟を決めろ…………ここでアイツを殺す…………!!)
「───
全身の魔術回路が沸騰し、魔力の奔流が身体を駆け抜ける。イメージするのは一振りの剣。
「ぐっ…………!」
(駄目だ……足りない……! もっと魔力が必要だ!)
その間にも、光弾は殺到する。限りなく真に近付ける為には、通常の魔術回路だけでは供給できない。
(やるしかない……!)
魔力が足りないなら、他から作ればいい───琴葉は″禁じ手″を使う。魔力が、魔術回路が足りないのならば、身体の器官の生命力を魔力として、魔術回路として扱えばいい話だ。それはつまり、自身の命を削ることを意味する。しかし、やらなければ勝機は無い。
(筋系……血管系……リンパ系……神経系……全てを擬似魔術回路として利用……)
全身を激痛が走る。生命力を魔力へと変換していく際に、擬似的な魔術回路へと変換していく際に生じる痛みだ。規模が拡がれば拡がる程にその激痛は増していき、立つことすら精一杯な状態に陥っていく。
「ぐ……う………」
激痛は既に全身へと拡がっており、その瞳からは痛々しく血液が流れ落ちていく。視界も赤く染まっていた。
手元に閃光が迸り、集積された魔力は一本の剣を形成していく。全身を魔力タンクとして扱うことで、漸く、一つの宝具を投影することが出来た。
銘を『カリバーン』。『選定の剣』とも呼ばれる、かの騎士王アーサーを騎士王たらしめる黄金の剣だ。
琴葉はカリバーンを腰撓めに構え、走る。全身に激痛が走るが、それでも足を止めない。止まれば、待ち受けるのは『死』───故に、琴葉は走り続ける。前方からはヒュドラが放つ光弾の雨霰。それらは琴葉を狙って放たれたものだが、狙いをつけた場所に琴葉はもういない。痛みを堪え、歯を食いしばり、流血しながらも必死で疾走する。出来るだけ近くで、真名解放しなければ意味が無いのだ。
「が、あ、あああ…………!!」
呻き声を挙げながらも琴葉は前進する。ヒュドラまで、あと数メートル。琴葉はより一層の魔力をカリバーンへと込める。
「───選定の剣よ…………力を」
立ち止まった琴葉は下段で剣を構える。
「───邪悪を断て…………!!」
大地を踏みしめ、剣を握るその手に力を込める。
刀身には眩いばかりの黄金の光が。例え、贋作であっても、己の存在を示さんと、輝き続ける。
「───
剣をヒュドラへ向けて、振った。圧縮された魔力は奔流となり、黄金の光がヒュドラへと迫る。
対するヒュドラは口腔から極光を放った。これまでに無い程に強力で、極太の光。
両者が衝突し、空間が揺れた。
「う、おおおおおおお……………!!」
拮抗……いや、琴葉が押されていた。必死で踏ん張り、魔力を込め続ける。
少しずつ、少しずつ、押し返し始めた。辺りには衝撃波が暴風のように吹き荒れる。
琴葉は最後の魔力を絞り出し、雄叫びを挙げた。この時、この場所で、ヒュドラを排除する為に。そして……己の意志を貫く為に。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
空が爆ぜた。
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さて、ここまで書いたけど、琴葉の扱いどうする?
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百合にしてヒロインを作ろう
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ハジメハーレムに加えよう
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そのままヒロインムーブ無しでいこう