楽しんでいってね!
戦争参加の決意をしたのならば、戦う為の準備をしなければならない。規格外の力を潜在的に持っているとはいえど、それらとは無縁な生活をしていたので、尚更である。
そのあたりの事情は予想していたらしい。イシュタル曰く、この聖教教会本山がある【神山】の麓の【ハイリヒ王国】にて受け入れ態勢が整っているという。
クラスメイト達はイシュタルに連れられ、国王エリヒド・S・B・ハイリヒへの謁見を済ませ、その後晩餐会となった。
異世界の料理が如何様なものか、戦々恐々としていた琴葉であったが、どうやら普通に美味しかったらしい。テーブルマナーに気を付けながら、食事を進めていく。
王宮では、衣食住が保障されている旨と訓練における教官達の紹介もなされた。教官達は現役の騎士団や宮廷魔法師から選ばれたようだ。いずれ来る戦争に備え親睦を深めておけということだろう。
晩餐が終わり解散になると、各自に一室ずつ与えられた部屋に案内された。天蓋付きベッドに琴葉は愕然としていた。豪奢な部屋に、琴葉はどきまぎしながらも、怒涛の一日に張り詰めていたものが一気に解き放たれると同時に、疲労が襲ってきた。そして、そのままベッドにダイブすると共に、その意識を落とした。
翌日から訓練と座学が始まった。
まず、集まった生徒達に十二センチ×七センチ程の銀色のプレートが配られた。不思議そうに配られたプレートを見る生徒達に、騎士団長メルド・ロギンスが直々に説明を始めた。
「よし、全員に配り終わったな? このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」
非常に気楽な喋り方をするメルド。彼は豪放磊落な性格で、「これから戦友になろうってのにいつまでも他人行儀に話せるか!」と、他の騎士団員達にも普通に接するように忠告するくらいだ。
琴葉達もその方が気楽だった。遥か年上の人達から慇懃な態度を取られると居心地が悪いのだ。
「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所持者が登録される。″ステータスオープン″と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ? そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ」
「アーティファクト?」
アーティファクトという聞き慣れない単語に光輝が質問をする。
「アーティファクトって言うのはな、現代じゃ再現できない強力な力を持った魔法の道具のことだ。まだ神やその眷属達が地上にいた神代に創られたと言われている。そのステータスプレートもその一つでな、複製するアーティファクトと一緒に、昔からこの世界に普及しているものとしては唯一のアーティファクトだ。普通は、アーティファクトと言えば国宝になるもんなんだが、これは一般市民にも流通している。身分証に便利だからな」
琴葉は周りの生徒達に合わせるように、指先に針をチョンと刺し、プクリと浮き上がった血を魔法陣に擦りつける。すると、魔法陣が一瞬淡く輝いた。
その直後、ステータスプレートには以下の内容が表示された。
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衛宮琴葉 17歳 女 レベル:1
天職:弓兵
筋力:50
体力:40
耐性:40
敏捷:120
魔力:70
魔耐:40
技能:魔術・弓術・軽業・破壊工作・気配遮断・鷹の瞳・言語理解
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(魔術……か。まあ、半人前以下だけど、一応、私も魔術師だしね)
琴葉は内心でそう零した。ステータスプレートの技能欄に表示された技能、『魔術』は地球で彼女が養父である切嗣に頼み込んで教えて貰ったものだ。とは言っても、初歩的なモノしか教えて貰っていないが。
また、この世界の様子を見るに、『魔法』と『魔術』は似て非なるモノらしい。
メルド団長からステータスの説明がなされた。
「全員見れたか? 説明するぞ? まず、最初に″レベル″があるだろう? それは各ステータスの上昇と共に上がる。上限は100でそれがその人間の限界を示す。つまりレベルは、その人間が到達できる領域の現在値を示していると思ってくれ。レベル100ということは、人間としての潜在能力を全て発揮した極地ということだからな。そんな奴はそうそういない」
RPGゲームのようにステータスやレベルが上がるかと思ったら、実はそうでもないようだ。
「ステータスは日々の鍛錬で当然上昇するし、魔法や魔法具で上昇させることもできる。また、魔力の高い者は自然と他のステータスも高くなる。詳しいことはわかっていないが、魔力が身体のスペックを無意識に補助しているのではないかと考えられている。それと、後でお前等用に装備を選んでもらうから楽しみにしておけ。なにせ救国の勇者御一行だからな。国の宝物庫大開放だぞ!」
メルド団長の言葉から推測すると、魔物を倒しただけでステータスが一気に上昇するということはないらしい。地道に腕を磨かなければならないようだ。
「次に″天職″ってのがあるだろう? それは言うなれば″才能″だ。末尾にある″技能″と連動していて、その天職の領分においては無類の才能を発揮する。天職持ちは少ない。戦闘系天職と非戦系天職に分類されるんだが、戦闘系は千人に一人、ものによっちゃあ万人に一人の割合だ。非戦系も少ないと言えば少ないが……百人に一人はいるな。十人に一人という珍しくないものも結構ある。生産職は持っている奴が多いな」
琴葉は自分のステータスを見る。確かに天職欄に″弓兵″とある。地球で弓道やっていた彼女にとって、最も適性の高い天職であるだろう。
「後は……各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10くらいだな。まぁ、お前達ならその数倍から数十倍は高いだろうがな! 全く羨ましい限りだ! あ、ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」
メルド団長の呼び掛けに、早速、光輝がステータスの報告をしに前へ出た。そのステータスは……
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天之河光輝 17歳 男 レベル:1
天職:勇者
筋力:100
体力:100
耐性:100
敏捷:100
魔力:100
魔耐:100
技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解
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───チートの権化であった。
「ほお~、流石勇者様だな。レベル1で既に三桁か……技能も普通は二つ三つなんだがな……規格外な奴め! 頼もしい限りだ!」
「いや~、あはは……」
団長の称賛に照れたように頭を掻く光輝。ちなみにだが、団長のレベルは62。ステータス平均は300前後でこの世界でもトップレベルの強さだ。しかし、光輝はレベル1で既にその三分の一に迫っている。成長率次第では、あっさりと追い抜くだろう。
ちなみに、技能=才能である為、先天的なものなので増えたりはしないらしい。
しかし、唯一の例外が″派生技能″だ。
これは一つの技能を長年磨き続けた末に、いわゆる″壁を越える″に至った者が取得する後天的技能である。簡単に言えば今まで出来なかったことが、ある日突然、コツを掴んで猛烈な勢いで熟練度を増すということだ。
何人かの生徒がステータスプレートを見せに行った後、琴葉の順番が回ってきた。前に出て、ステータスプレートをメルド団長に見せる。
「ふむふむ……。天職は弓兵か。後方援護系の戦闘職だな! 敏捷は勇者を上回っているな。技能は……六つだな。″軽業″と″弓術″を合わせれば、前線でも活躍できるな。″破壊工作″は罠系の魔法の効力を強化できて、″鷹の瞳″は遙か遠方でもはっきりと視認できる技能だ。後は……″魔術″? ″魔法″ではないのか……?」
メルド団長はコツコツのとステータスプレートを叩いてみたり、振ってみたりする。それでも、表記は変わらない。
「えーと……″魔術″というのは、地球で一部の人間達の間で使われているモノです。″魔法″とは、理論や体系が違うものだと思います」
琴葉は小声でメルド団長に説明をした。
「そうなのか……? 地球でもこういったものがあるんだな。と、なると、お前もその、″魔術″が使えるのか?」
興味深げにメルド団長は琴葉に問う。だが、それに琴葉はかぶりを振った。意外そうな顔をするメルド団長。
「使えはしますけど……私はまだ半人前以下です。成功率も高くないので……正直、役に立てません」
「そう、か……。なんかすまんな」
「いえ、大丈夫ですよ」
メルド団長に「戻っていいぞ」と促され、ステータスプレートを返された琴葉は自身の席に戻る。
規格外のステータスばかり確認してきたメルド団長の表情は心なしかホクホクしていた。多くの強力無比な戦友の誕生に喜んでいるのだろう。
何人目かはわからないが、順番が回り、男子生徒、
その時、団長の表情が「うん?」と笑顔のまま固まり、ついで「見間違いか?」というようにプレートをコツコツ叩いたり、光にかざしたりする。そして、ジッと凝視した後、もの凄く微妙そうな表情でプレートをハジメに返した。
「ああ、その、なんだ。錬成師というのは、まぁ、言ってみれば鍛治職のことだ。鍛冶するときに便利だとか……」
歯切れ悪くハジメの天職を説明するメルド団長。
その様子にオタクであり、二大女神の一人、
小悪党四人組筆頭、
「おいおい、南雲。もしかしてお前、非戦系か? 鍛治職でどうやって戦うんだよ? メルドさん、その錬成師って珍しいんっすか?」
「……いや、鍛治職の十人に一人は持っている。国お抱えの職人は全員持っているな」
「おいおい、南雲~。お前、そんなんで戦えるわけ?」
檜山が、実にウザい感じでハジメと肩を組む。見渡せば、周りの生徒達――特に男子はニヤニヤと嗤っている。
「さぁ、やってみないと分からないかな」
「じゃあさ、ちょっとステータス見せてみろよ。天職がショボイ分ステータスは高いんだよなぁ~?」
メルド団長の表情から内容を察しているだろうに、わざわざ執拗に聞く檜山。本当に嫌な性格をしている。取り巻きの三人もはやし立てる。強い者には媚び、弱い者には強く出る典型的な小物の行動だ。事実、香織や雫、琴葉などの良識的な人達は不快げに眉をひそめている。
ハジメは投げやり気味にプレートを渡す。
渡されたプレートの内容を見て、檜山は爆笑した。そして、取り巻き達に投げ渡し内容を見た他の連中も爆笑なり失笑なりをしていく。
「ぶっはははっ~、なんだこれ! 完全に一般人じゃねぇか!」
「ぎゃははは~、むしろ平均が10なんだから、場合によっちゃその辺の子供より弱いかもな~」
「ヒァハハハ~、無理無理! 直ぐ死ぬってコイツ! 肉壁にもならねぇよ!」
次々と笑い出す生徒に香織が憤然と動き出す。
その時、
ビシュッ!!
「へ、あ?」
檜山の顔すれすれを何かが飛んでいった。
「……うるさい。他人を貶して何が楽しいの?」
琴葉だ。彼女はメモのために持ってきていた鉛筆を投げ飛ばしたのだ。檜山を睨みつける瞳はただただ冷たく、そして静かな怒りを孕んでいた。その気迫に、檜山ら小悪党四人組は後退る。
「目障り。早く消えて」
琴葉はハジメを庇った。そもそも、地球にいた頃から、彼女はイジメを行う小悪党四人組を疎んでいた。当初より、ハジメに関わらないように言っていたが、小悪党四人組は懲りずに絡んでいた。異世界召喚といった、ふざけていい雰囲気でないのに関わらず、緊張感に欠けた彼らの行動にただでさえ苛立っていたというのに、イジメと来た。キレないはずがない。
「それと、他の皆も。……緊張感無さ過ぎ。一歩間違えば即、死に至るこの状況。ちゃんと理解できてる……? しかも、″肉壁″……? ふざけてるの? アンタは今、人一人の命を軽く見たのよ……?」
琴葉は憤怒に燃え、彼らを睨み付ける。
戦災孤児である彼女にとって、戦争は忌むべき対象だ。
あの日、地獄を見た。命の価値は紙切れのように軽かった。銃声が、砲声が、爆炎が、怒号が、悲鳴が響き渡っていた。父と母を戦火で失い、自身もそこで死ぬはずだった。そして───生き残ってしまった。
「あの戦火で、唯一生き残ってしまった自分は、人の為に人生や生命を捧げて、生きねばならない」───あの日からそのような強迫観念、サバイバーズ・ギルトに縛られ、義務感と罪悪感に捕らわれ続けた。それが『正義の味方』になる、という理想に繋がった。人としては既に破綻していた。それでも、人として生きようとしたのだ。
そこから来る、憤怒であった。
他に、義憤に駆られ立ち上がった者が一人。愛子先生だ。
「こらー! 何を笑っているんですか! 仲間を笑うなんて先生許しませんよ! それに、命を軽視した発言も私は許しませんよ!! ええ、先生は絶対許しません!! 早くプレートを南雲君に返しなさい!!」
小さな身体で精一杯怒りを表現する愛子先生。その姿に毒気を抜かれたのかプレートがハジメに返される。
それを見て、琴葉も引き下がり、座った。ただ、小悪党四人組を睨みながらではあるが。
愛子先生はハジメに向き直ると励ますように肩を叩いた。
「南雲君、気にすることはありませんよ! 先生だって非戦系? とかいう天職ですし、ステータスだってほとんど平均です。南雲君は一人じゃありませんからね!」
そう言って「ほらっ」と愛子先生はハジメに自分のステータスを見せた。
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畑山愛子 25歳 女 レベル:1
天職:作農師
筋力:5
体力:10
耐性:10
敏捷:5
魔力:100
魔耐:10
技能:土壌管理・土壌回復・範囲耕作・成長促進・品種改良・植物系鑑定・肥料生成・混在育成・自動収穫・発酵操作・範囲温度調整・農場結界・豊穣天雨・言語理解
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ハジメは死んだ魚のような目をして遠くを見だした。
「あれっ、どうしたんですか! 南雲君!」とハジメをガクガク揺さぶる愛子先生。
確かに全体のステータスは低いし、非戦系天職だろうことは一目でわかるのだが、魔力だけなら勇者に匹敵しており、技能数なら超えている。糧食問題は戦争には付きものだ。ハジメのようにいくらでも優秀な代わりのいる職業ではないのだ。つまり、愛子先生も十二分にチートだった。
ちょっと、一人じゃないかもと期待したハジメのダメージは深い。
(止めを刺しちゃったヤツか……)
「な、南雲くん! 大丈夫!?」
反応がなくなったハジメを見て、琴葉は溜息を吐き、雫が苦笑いし、香織が心配そうに駆け寄る。愛子先生は「あれぇ~?」と首を傾げている。相変わらず一生懸命だが空回る愛子先生にほっこりするクラスメイト達。
(さて、どうなることやら……)
内心で感じる不安に、琴葉は天井を仰ぎ見るのであった。
感想、評価を頂けると嬉しいどす。
完結後、カルデア召喚編やる? やるとしたら琴葉はどのクラスで召喚する?
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やれ。クラスはセイバークラスで。
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やれ。クラスはランサークラスで。
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やれ。クラスはアーチャークラスで。
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やれ。クラスはライダークラスで。
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やれ。クラスはアサシンクラスで。
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やれ。クラスはキャスタークラスで。
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やれ。クラスはバーサーカークラスで。
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やれ。クラスはルーラーで。
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やれ。クラスはアヴェンジャーで。
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やれ。クラスはムーンキャンサーで。
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やれ。クラスはアルターエゴで。
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やれ。クラスはフォーリナーで。
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やらなくていいんじゃない?