楽しんでいってね!
更新が遅れてすまない……。拙は受験生なので、模試とかに追われてしまうのです……。今後も更新が遅れることが確実なのです……。本当にすまない……。
少女はとある小国で、何の変哲も無い、ごくごく普通の家庭で幸せに暮らしていた。
父がいて、母がいて、自分がいて───ただ、当たり前の『幸せ』を享受して生きていた。
───このまま、ずっと続くと思っていた。
だが、その『幸せ』は脆くも崩れ去る。
戦争だ。
少女の母国は隣国との関係が数年前から悪化していた。その時から既に燻っていた幾つもの『火種』は、ふとした出来事で燃え上がり、瞬く間に街を炎で包み込んでしまった。
───隣人が死ぬ。
───友人が死ぬ。
───父が死ぬ。
───母が死ぬ。
戦火により、何もかもが壊されていく。
少女は瓦礫の中でただ、死を待っていた。
『自分も死ぬ』───少女が光を宿さないその瞳を暗闇の中、閉ざそうとしたその時、急に視界が光で埋め尽くされた。
男だ。
一人の男が、少女を閉じ込めていた瓦礫を持ち上げたのだ。
自分を見つけてくれたその男の瞳に、安堵が宿っているのを少女は感じ取っていた。その男の表情は、今にも泣き出してしまいそうだった。
───その涙を、拭いたかった。
傷だらけの少女は、男へと手を伸ばす。そして、男の瞳から、今まさに零れ落ちようとする涙を───拭った。そのまま、力無く落ちる手を、男は取った。そして、『良かった……救えた』と小さく呟いた。
少女は男によって救い出された。男は少女の小さな身体を抱き締め、何度も『生きていてくれて、ありがとう』と呟いていた。少女にとって、それはとても鮮烈な記憶であった。
何もかもを失った少女は、『光』を見つけることができた。
少女に『光』を与えた男の名は───
───衛宮切嗣。
そして、その少女の名は───
───衛宮琴葉。
剣戟は続く。空は赤く焼け、無数の剣が突き立った砂漠の中、二人の女は戦い続ける。もう、どれだけ経ったのかも判らない。既に時間の感覚は麻痺していた。何百、何千、何万と互いの剣がぶつかり合い、火花を散らす。一方は満身創痍で、もう一方は無傷で。対照的な二人だが、一方に膝を付かせるだけの有効打を未だ与えることは出来ず、微妙な均衡状態を保っていた。
「しつ、こい……!!」
「こんの……!!」
琴葉はエミヤに必死で喰らいつく。そのあまりのしつこさにエミヤは表情を歪ませ、琴葉を引き剥がすべく横薙ぎに一閃する。裂傷で痛む身体を無理矢理にでも動かして琴葉はその一撃を躱し、体勢を立て直した後、エミヤの頭部へ向けて上段蹴りを放つ。エミヤは上体を反らせて回避、後方に転移し、一度距離を取る。
「───
すると、エミヤはその手に持った干将・莫耶に加え、更にもう一対の干将・莫耶を投影した。
「───山を抜き、水を割り」
二対の夫婦剣を琴葉へと向け、投擲。
その時、琴葉の本能が最大級の警報を鳴らす。眼前にヴィジョンが映し出される。それは、転移による回避を示していた。だが、
「───なお、墜ちることなきその両翼」
琴葉のすぐ後方に、その手に一対の夫婦剣を握るエミヤが現れる。
(……避けられ、ない!?)
三方向同時攻撃。引き合う性質を持つ夫婦剣、干将・莫耶によって繰り出される絶技。どれかを撃ち落としても残りの陰陽剣が自身を斬り裂く、避けようのない必殺の御業である。
技能″転移″は『現座標の定義』・『移動先の座標指定』・『自身の装備品の正確な把握』・『指定座標への座標移動』という四つのプロセスを踏む必要がある。現在のこの状況、琴葉はそのプロセスを踏む余裕すら失い、″転移″を発動させることが出来なかった。そう、出来なかったのだ。
「───鶴翼三連!!」
三対の夫婦剣が琴葉へと襲い掛かる。三方向から同時に放たれた斬撃は彼女の命を容易く刈り取る───ハズだった。
「っ!? いない……!?」
(まさか……)
エミヤは振り返る。
その先には、呆然とした表情で突っ立っている琴葉の姿があった。どういう訳か、琴葉は転移に成功していたのだ。
(″過程省略″……!! その領域にまで達したというの!?)
エミヤは忌々しげに琴葉を睨み付ける。
″過程省略″───それはその名の通り、過程を省略して結果のみを導き出す、というものだ。つまり、この場合は『現座標の定義』・『移動先の座標指定』・『自身の装備品の正確な把握』の三つを『既にあるもの』として定義することで省略し、『指定座標への座標移動』という琴葉の望む結果のみを導き出し、転移に成功したのである。
元より、エミヤには違和感があった。投影魔術によって、琴葉が干将・莫耶を初めて投影した時から燻っていたそれは、この瞬間を以て確信へと変わった。『最初の打ち合いの時から、彼女はエミヤへと同化を始めている』ことに。
(よく判んないケド……助かった?)
琴葉は瞳をぱちくりと瞬かせる。
「ふぅ……。とんだ厄日だわ。まあ、いいケド」
エミヤは干将・莫耶を消滅させ、洋弓を投影。そして、捻れた剣を投影し、更にそれを細長く作り替える。
「その方が、仕留め甲斐があるってね」
次の瞬間、エミヤは上空二十メートル程の位置に転移した。投影した剣を弓に番え、構える。
「───
限界まで弓を引き絞り、エミヤは祈るように詠唱を始める。
「───
それは、ケルト神話の勇士、フェルグス・マック・ロイが振るったとされる剣。地形の破壊さえ可能とし、高威力と広範囲を誇る対軍宝具を模した
弓から放たれた、音速で迫る剣は琴葉のすぐ目の前に突き刺さり、地表を爆散させる。
「ぐ……う……!!」
干将・莫耶を突き立て、どうにか踏ん張ろうとするが、爆風に巻き込まれ、身体が宙に浮いてしまう。
「───
ドガァァァン!!
静かにエミヤが呟いたその瞬間、クレーターの中で突き刺さっていた剣が爆ぜた。
元より防ぐことが出来なかった琴葉は、爆風に巻き込まれて吹き飛ばされる。数十回地面をバウンドし、更に数メートル程、ゴロゴロと転がった後、ようやく止まった。
全身の痛みに呻き、表情を歪ませる琴葉。エミヤは琴葉の元へと歩み寄る。そして、
「ガハッ……!!」
琴葉を踏み付けた。彼女の首筋に、エミヤは投影した陰陽剣を宛がう。
「無様なものね。これで、貴方の『理想』は潰える。今後、味わうこととなる『大を救い、小を切り捨てる』という、果ての無い責め苦からも解放される。良かったじゃない」
「ぐ……う……」
「……これが″正しい″って信じていた」
琴葉を見下ろすエミヤ。エミヤは何かを省みるように、ぽつりぽつりと話し始めた。
「……″全部″を救いたかった。『正義の味方』になれば、救えると思った。
それは、己の所業への後悔と自責の念なのだろう。
救う為に、少数を切り捨て続ける───『正義の味方』とは乖離したその現実に、エミヤは絶望したのだろう。
「救う為に、間違った。そして、それを正す為に、正しくあろうとする為に、また間違った。何度も間違い続けた。私は……私は、『正義の味方』なんかじゃない」
「それ、でも……」
琴葉はエミヤの脚を掴む。
「それ、でも……アンタのその行動で……救われた人達だって、いたはずだ……!!」
「アンタに……アンタに私の何が判るって言うのよ!! 記憶を覗き見た、ただそれだけで判った風に……!!」
「アンタは……!! 『誰かを救いたかった』ハズだ!! アンタの目指したものは……何も間違ってない……!!」
「うるさい……」
「誰かを助けたい、救いたい、なんて気持ちは……!! 何も間違っていないはずだから……!!」
「それがこのザマよ!!」
「なら……私は……!! アンタのようになんかならない!! 後悔だってしない!! 私は……アンタなんかじゃない!!」
「なら……証明してみせろ……!! 『私』という存在に、アンタのその『決意』を!!」
「言われ、なくても……!!」
琴葉は転移によりエミヤの足から逃れる。そして、
「これは、私の『決意』……!! 私自身の、『心のカタチ』……!! ───
琴葉の両手に迸る閃光。眩く輝くそれは、干将・莫耶を形成する。それらを握り、琴葉はエミヤへと飛び掛かる。
「せやぁぁぁ!!」
今までよりも重い一撃。
今、琴葉の身体を動かすものは『決意』だ。『正義の味方』になる、という決意。そして───これから襲い来る、理不尽への叛逆という決意。
身体が動く。鋭敏に、豪快に、なおかつ緻密に。
″心眼″は次の相手の行動への対応をリアルタイムで示してくれる。ならば、その通りに動き、相手の攻撃を捌きながら自身の攻撃を加えるのみ。
断続的に、激しく鳴り響く金属音。それは、お互いの意地のぶつかり合いにも似たものであった。
琴葉は夫婦剣を突き入れる。エミヤは自身の夫婦剣で以て軌道を逸らすが、琴葉はその手に持った夫婦剣を手放す。そして、自身のすぐ近くに投影した夫婦剣を握り、それらを振り下ろす。防御が間に合わないことを判断したエミヤは素早く転移するが、転移先を″心眼″により予測し、琴葉はもう一対の夫婦剣をその手に投影。そのまま投げ付けた。
「チッ!!」
自身へと迫る夫婦剣に舌打ちを零すエミヤ。転移により、再び回避する。空振りに終わり、砕け散る二対の夫婦剣。だが、
既に琴葉は洋弓と矢となる
「───
琴葉は剣を矢に番え、引き絞る。
「さっきのお返しよ。喰らいなさい!! ───
エミヤの転移先を予測し、放たれる贋作の剣。
それを視界に入れたエミヤは瞬時に思考する。
今、この場で投影できる最強の盾を。
「───
掌へと集まる魔力。エミヤはそれを突き出した。
「───
魔力が爆ぜたその瞬間、七枚の花弁を形作る、光の盾が顕現した。
剣が光の盾に激突する。
「ぐ……」
エミヤは魔力を注ぎ続ける。
盾の一枚にヒビが入る。
(これだと突破できない……なら)
「───
琴葉は小さくそう呟き、指を鳴らす。
直後、爆ぜる剣。だが……
「ふぅ……」
七枚ある光の盾の内、砕くことが出来たのはたったの一枚だけであった。
「残念ながら、この盾には通らないわよ」
額から汗を流しながら、エミヤはそう告げる。
(遠距離はあの盾に阻まれる……近接しかないか)
琴葉はエミヤの記憶の中から最適解を探し出す。
「―――
イメージするのは、かのギリシャ神話の大英雄。
「―――
閃光が晴れたその手には、巨大な斧剣が。己の肉体に強化魔術を施し、斧剣を握る。
「
エミヤへと急速接近した後、斧剣を高速で振るう。
それは、斧剣を用いて、人体にある九つの急所を一息で狙い撃ち、炸裂させる九連撃の斬撃である。
原典はギリシャ神話の大英雄、ヘラクレスの成した十二の功業の内の一つ、九頭の水蛇ヒュドラ退治の際に、ヒュドラの無数の頭に矢を射かけた逸話から来ている。それと同時に、あらゆる武器や武術を極めた末に形成されたヘラクレス独自の流派が宝具として昇華されたものでもある。
「ぐ……!!」
エミヤは干将・莫耶を振るい、防ごうとするが、六連撃目で、
パリン!!
「……!?」
夫婦剣が砕けてしまった。残りの三連撃が彼女を襲う。
「ぐあああ!!」
モロにくらい、流血するエミヤ。
「うおおおおお!!」
咆哮しながら、琴葉は夫婦剣を振り上げエミヤへと襲い掛かる。
これは死なない為の戦いではない。生きる為の戦いでもない。ただ……己の意地を押し通す為の戦いだ。
他人に負けるのは仕方無いのかもしれない。だけど、自分自身には負けられない。負けたくない。負けるわけにはいかない。だって、負けてしまったら、ここで、折れてしまったのなら、自分自身の『理想』を、果ては切嗣が託してくれた『夢』を否定することになるのだから。
琴葉はただ、我武者羅に剣を振るう。
そこに流派なんて綺麗なものは無い。ただ、戦場で培われた、純粋な″殺し合い″に特化した剣術が存在するだけだ。
振るわれる剣は、エミヤが投影した剣をも砕く程に、強く、鋭く変成していく。
「誰もが幸せであって欲しい。その感情は、きっと……誰もが想う理想だ。だから……私は、引き返すなんてしない……!!」
琴葉の剣戟は更に加速。
「何故ならこの『夢』は、この『願い』は……決して……決して……間違いなんかじゃないから……!!」
少女は吼える。己の『決意』を。
「だから、私は……!! アンタに勝つ!!」
全ての力を、この一撃に込める。
(すごいな……。これが、貴方の『
エミヤは、ただ、静かに微笑む。
少女の全力を受け止めるように。
「おおおおおおおおお!!!!」
突き出された剣は、エミヤを貫いた。
「ハァ……ハァ……」
琴葉は肩で息をする。
「私の……勝ちだ」
エミヤは、自嘲するようにハハハ、と笑う。
「そう、ね。そして……私の負け、ね」
ここに、一つの決着がついた。
感想、評価を頂けると嬉しいどす。
完結後、カルデア召喚編やる? やるとしたら琴葉はどのクラスで召喚する?
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やれ。クラスはセイバークラスで。
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やれ。クラスはランサークラスで。
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やれ。クラスはアーチャークラスで。
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やれ。クラスはライダークラスで。
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やれ。クラスはアサシンクラスで。
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やれ。クラスはキャスタークラスで。
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やれ。クラスはバーサーカークラスで。
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やれ。クラスはルーラーで。
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やれ。クラスはアヴェンジャーで。
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やれ。クラスはムーンキャンサーで。
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やれ。クラスはアルターエゴで。
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やれ。クラスはフォーリナーで。
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やらなくていいんじゃない?