ウマ娘インフィニティートライング-83世代-   作:ケイカイフトワーク

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2話 煌きの新生活

-4月-

 並木通りには今年も桜が咲き誇る。この前のジャパンカップ、お年を召したトレーナーさんと出会ってからもう4ヶ月が過ぎた。今日はトレセンでの入寮式が行われいよいよ私のトレセン生活が始まるのだ。

 

 ごうごうと風を切り体が前に進む。冬の乾いた空気も良かったがやはり暖かい光を浴びながら花の香りを一杯に吸える春の季節は良い。

 

 そうしてしばらく走っていると視界の先にトレセンの大きな門が見える。「トレセン学園入寮式」という看板が飾られており門の周りには別れを惜しむウマ娘とその母親たちが数組見えた。

 

母親「ウッ…ううっ…あんたぁ、いいお友達とトレーナーさんを見つけていっぱい活躍するんだよぉ」

 

恥ずかしそうなウマ娘「お母さん、わかったから早く帰ってよ…みんな見てるってぇ」

 

 仲むつましいとは思ったが自分があれをやられると心が揺れてそのまま家について行ってしまいそうなので玄関先で我慢してくれたママには感謝しておこう。そうして門の近くまで来ると巨大な校舎が門の向こうから見えてきた。そこからは人込みもあるので息を整えつつ歩いていると、

 

???「おはようございます、カツラギエースさん…ですよね」

 

 緑を基調とした服装に落ち着きのある女性に声をかけられた。この人は学校のHP等でよく見かける。

 

エース「えと、たづなさんですよね。おはようございます。…もう名前覚えてるんですか!?」

 

駿川たづな「ええ、駿川たづなです。入学試験の時にお会いしたウマ娘たちの名前は覚えてますよ」

 

 流石は現理事長よりも前からトレセンを支えていると噂される人だ、名前を覚えるというのはウマ娘が数多く在籍するトレセンの管理職では重要なのだろう。ウマ娘の『エース』になることが目標の私も一日でも早くクラスの子の名前を覚えるようにしよう。

 

 そう新たな誓いを立てていると

 

 ブルルゥン キキィッッーーー!

 

 と、レーシングカーでも止まったかのような音が背後から聞こえる。門のそばにまだいる親子も、自分も唖然としていると、トレセンの門の前で止まった車の扉が開く。そして中から最初に赤い靴を履いたシルエットが出てくるとたづなさんを覗いた私たちはその姿に圧倒される

 

 彼女の名前はマルゼンスキー、トゥインクルシリーズでは無敗の記録を誇る、しかもただ勝つだけではなく毎度大きな着差をつけて圧勝するのだ。その圧勝ぶりにマルゼンスキーが出るだけで出走を断念するウマ娘が多発しレース成立の最低人数を下回りかけたこともあるとか。

 とにかく魔窟のトレセン学園でも一際怪物なのが彼女である。そんな彼女と入学初日でここまで近く会えるとは…

 

 そう感心していると助手席からもう一人ウマ娘が降りてきた。マルゼンスキーより一回り小さいのでもしかすると自分と同じ新入生かもしれない。

 

助手席のウマ娘「マルゼンスキーさん、どうでしたか? スーパーカーも良いですけど今の時代乗用車でもこんな走りが出来るんですよ!」

 

マルゼンスキー「良いわね、この車。バッチグーよ。これなら後輩もドライブに誘えるし…」

 

助手席「あ、父からマルゼンスキーさんがお気に召せばこの車を譲っても良いって言われてるんです。どうか貰ってください!」

 

マルゼン「ありがとう、ありがたく受け取るわ。…トミタの車なのね…じゃあタッちゃん何てどうかしら」

 

 …簡単に車をプレゼントするとは。自分には遠い世界だと思ったと同時にそろそろ入寮式も始まるのでスタスタと会場に向かった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

<新入生、退場>

 

 退場のアナウンスと共に終わった入寮式は歓迎の言葉とトレセンに関する施設の説明が殆どだった。本番の顔合わせはクラスに振り分けられた時なのだろう。

 

 今日はこれから寮の部屋に入ったら基本的に自由時間だ。今のうちに寮の相方と仲良くなってトレセンの空気に慣れろという心遣いだろう。

 

エース「え~と、案内だと栗東寮のこのフロアで……この部屋だよね」

 

 扉を開けると相方はまだ来ておらず部屋はシンと静まり返っている。自分の方のベッドに荷物をおき、腰を掛け、そのままベッドに倒れ込む。

 視線の先にはベッドに面している壁があり、良く見ると画鋲のあとがぽつぽつとある。ここに多くのウマ娘達が自分の目標を、理想を、憧れのウマ娘のポスターを貼っていたのだろう。

 

 しばらく壁を眺めているとガチャリとドアが空いた。…というかあの姿は、

 

助手席「おや、もう来ていましたか。こんにちは!私(わたくし)はスズカコバン、今日からあなたの相方です!」

 

 やっぱり、あの時のマルゼンスキーと一緒にいたウマ娘だ!

 

 

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 私の名前はスズカコバン、このたび晴れてトレセン学園に入りこれからの日々に思いを馳せているところであります。

 さて、同室のカツラギエースさんに聞かれましたのでお答えしましょう。何故私があの伝説のマルゼンさんと一緒に登校という名誉な事が出来ていたのかと言いますと、

 

スズカコバン「私の家はクルマを売っているのですよ」

 

 そんな我が家に数ヵ月前、愛車の点検のためにマルゼンさんが立ち寄られました。

 いやーなんと言いますか、そのとき、こう、ビビッと。運命的な何かを感じたと言いますか。とにかくマルゼンさんとは不思議と気があってトレセンに入る前からちょこちょこ会っていたのです。

 

コバン「今日は車のお礼を受けてたのでこっちに来るのが少し遅くなってしまいました。まさかマルゼンさん呼びを許してもらえるとは、テヘヘ…」

 

コバン「しかし、お礼の時マルゼンさんにこうも言われました。これから寮で一緒になる人は私が学園で一番接することになる人、その人を大事に接して青春の1ページにするようにと。私はコバンと呼んでください。これからよろしくお願いします!」

 

エース「うん、こちらこそよろしく。私もエースで良いよ」

 

 ありがとうお父さん、あなたの接客姿を見て育った娘は高校デビューの第一歩を無事にクリアしました。

 

 その後今度はエースさんの身の上話になり、私はエースさんに走る理由を問いました。エースさんは少し遠くを見つめながら話し始めました。

 エースさんは生まれてすぐにお父さんがいなくなったそうです。ですのでエースさんの記憶の中にお父さんはいません。そして小さいころにお父さんがいない理由をお母さんに聞いたときに「お父さんは遠いところで強いウマ娘を探している」と言われ、それ以降自分が『エース』と呼ばれるくらい活躍すればお父さんも帰ってくるのではないか、と思ったそうです。

 

エース「分かってるんだよ、本当は母さんが幼い私に噓をついたんだってことくらい…でもね、ほんのわずかな可能性をかけて走り続けていたんだ。そしたらね、走ること自体が好きになっちゃった! アハハ…」

 

 お父さんのことはまだ諦めてない、それでも楽しいから、好きだから、エースさんは走るそうです。

 

 トレセン学園初めてのお風呂を堪能した私は全体の中でも最後の方に少しのぼせながら上がりました。部屋に帰るとエースさんは明日に備えて早めに就寝をしていました。そしてエースさんの方の壁には早くも一つ、無地の紙に書きなぐりのような不格好ながらも力強い字で「エースになる!」という張り紙が貼ってありました。

 

 カツラギエースさん、あなたとは何だか上手くやっていけそうなそんな気がします。




 こんにちは、ケイカイフトワークです。太枠とでも呼んでください。

 前回は野郎どもばかりでしたがここからウマ娘が増えていきます。

 今回は基本一人称視点で物語を進めてみましたがどちらが良かったでしょうか、何分まともに文を書くのが今回初めてで、試してみたいと思ってしまって…ぜひアンケートで答えてくださるとうれしいです。
 
 ps.人に見てもらうというのは予想以上に力が湧くものですね前回実感しました。

どっちが見やすい?

  • 一人称視点(2話)
  • 三人称視点(1話)
  • 二度と実験場にすんじゃねぇ!
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