ウマ娘インフィニティートライング-83世代-   作:ケイカイフトワーク

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3話 激動の入学初日

ー入学初日 昼 練習用トラックー

 

 皆さん、こんにちは。カツラギエースです。

 

 えー、学園デビュー初戦にあたる自己紹介の結果のご報告から。

 

「目標レースぅ? とーぜん! メジロの姓を持つからには天皇賞(春)ですのっ! レールにしかれた一本道を華麗に爆走して見せますのっ!」

 

「目標はティアラ路線の制覇ね。私がティアラ路線を引っ張っていくのよ。」

 

「ワタクシの名前はスズカコバンです!…目標のレースはまだ決めていませんが必ずや、八大競争ウマ娘になってみせます。お、お父さんの自慢のウマ娘になってみせます!」

 

 いやぁ、準備って大切ですね。周りはすっかり前のウマ娘のスケールに呑み込まれ、自分が「エースになる!」とだけ言ったところでさして注目は集まらず…そこまでならまだ良いとして…

 

「あれ? 思ったより反応が…えっとぉ、エースになって…」

 

 そのとき、突然ガラッと教室の前のドアが開く、ドアの前には跳ねた髪の毛のウマ娘が佇んでいた。

 

「あー、これは遅れちゃったかな…?」

 

「こらあなた、初日から遅刻するんじゃありません。早く席につきなさい。」

 

「いやいや申し訳ない、スイッチ入っちゃったもので…」

 

 そのウマ娘は先生からの注意に謝りながら、黒板にかかれている「自己紹介 目標レースも言うこと!」という文字を見ていた。

 

 それからそのウマ娘はふむ、と一瞬考えたそぶりをして教室のなかに足を進める。

 

「どうも皆さん、初めまして。将来の三冠ウマ娘です」

 

 …このウマ娘の乱入により教室のざわめきは最高潮に達し、みんなの目の前にいるエースの存在感は静かに消えていきましたとさ。チャンチャン

 

(そして今に至る)

 

 しかぁし! 宣伝タイムで負けようとも本番を勝てば良いのだ!

 トレセン学園は午前に座学、昼食を挟んで午後にトレーニングの時間が設けられている。本来トレーニングはトレーナーさんの指導の下行われるので入学初日の私たちはこの時間クラス同士で競いあい、己の実力を確かめる時間となっている。

 

「当然、新入生が一番最初に走るレースということもあってこの勝負を見に来るトレーナーさんも多く、良いトレーナーと巡り会えるチャンスでもある…ってコバンちゃんが言ってた。朝の分を取り返さないと…」

 

 エースはスタートラインに立つと遥か向こうのゴール板を見つめていた。

 

 ………

 

「1着、カツラギエース!」

 

 今日のレースは怪我のリスクを避け、なるべく全員が多く走るように三人一組で短距離走が行われていた。実践形式とはほど遠いがカツラギエースはそこで激戦の末1着を掴みとった。

 

「よ、よし。なんとか勝つことができた。これほどの接戦なら多少は注目も集まってるはず」

 

 エースがそう思ったのも束の間、後ろから歓声にも似た驚きの声が上がった。

 

「な…何だこのウマ娘は、他の子達を5バ身突き放しての圧勝だ…!」

 

「こっちはもう10バ身以上離れてるぞ! す、すごい!」

 

レースを見学していたトレーナーたちはそのウマ娘に釘付けになっていた…

 

………

 

 

 

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ー夜 寮部屋ー

 

「……」

 

「あ、あの、そろそろ晩御飯ですよ」

 

 完全に撃沈したカツラギエースは膝を床に付けたまま頭を布団に突っ伏していた。

 

「うん、そろそろ行かなきゃね…」

 

 頭は上げずに布団に向かって話している。

 

「確かに最初は大事かもしれませんが、ここからまだ3年以上もあるんです。次のチャンスをモノにするために今から頑張りましょう!」

 

 その言葉を聞くとエースはガバッと顔を上げて自分の壁に貼った紙を見る。

 …エースに……そうだ、目立ちたいからトレセン学園に入ったんじゃない。強い『エース』になるために私はトレセン学園に入ったんだ。

 ならば明日以降の模擬レースでも必ず勝ちまくっていこう。勝って、トレーナーさんを早くにつけて、最高のスタートダッシュを決めてやる。

 

「そのためには…よし、ありがとうコバンちゃん。ご飯行こう」

 

 カツラギエースに引っ張られながらスズカコバンは考える。

 

 やっぱり、落ち込んでいるよりこちらのエースさんが良いですね。

 それはそうと昼の模擬レースのときに一人のトレーナーさんが、私が見ている限りずっとエースさんの事を見ていたのは勘違いだったのでしょうか…? エースさん話しかけられた様子ではないですし。

 

 

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ー食堂ー

 

「お隣よろしいかしら」

 

 カツラギエースとスズカコバンが晩御飯を食べていると二人連れのウマ娘が声をかけてきた。特に断る理由もないのでそのまま向かい合わせに座ることになった。

 

「同じクラスだけれど向かい合っては始めましてね。私の名前はシャダイソフィア、こっちはダイナカールよ」

 

「ダイナカールだ、以後よろしく」

 

 シャダイソフィアさんはたぶん同学年なのだけど、何か年上と接しているような貫禄というか、オーラというか、ある種の頼もしさを感じた。

 対してダイナカールさんからはどこか威厳を感じるような佇まいだ。そう、ちょうど女帝という言葉が相応しい。

 

「うん、こちらこそ。私がカツラギエースで、隣にいる子はスズカコバン…」

 

 あれ、シャダイソフィアって…

 

「あっー! ソフィアさんってもしかして今日の模擬線で10バ身以上つけてたあの…」

 

「あら、見ていたのね。でもあそこでどれだけ勝っても意味がないわ。本番はデビュー後よ」

 

 これが強者の余裕…お互い頑張りましょと言われ微笑みかけるソフィアにエースは気圧されていた。

 

 それから四人は食事をしながら話し合った。何でもソフィアとカールは幼なじみのような間柄だったらしく小さい頃から良く一緒に走り回っていたそうな。

 そんなある日テレビに映るティアラ路線のレースに感動したらしい。

 

「何て言うのかしらねぇ…あの感覚は…」

 

「煌めいていた。クラシック路線を走るウマ娘は目に炎を宿して輝いていたがそれとは違う、あれは周りからの期待を、夢を、羨望を、一身に集めそれを自分の走りで何倍も強い光として出している。」

 

「小さい頃の私たちはその光に充てられちゃってね。そしたらもう、気付いたらこのトレセンにいたわ」

 

「私たちは煌めきに導かれ、煌めきを纏いに来た。ティアラ路線の栄冠は必ず私たちが手に入れる!」

 

 

 ティアラ路線に行くのならエースたちとぶつかるのは相当先になるだろう。しかしいずれあいまみえる時が来るかもしれない。

 エースと若き女王たちの初対面は賑やかなものとなった。

 

 

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ー夜 練習用トラックー

 

「はっ…はっ…はっ…」

 

 今日から新入生にも夜の自主連が解放されたのでエースも走っていた。この時期と言えばクラシック級の桜花賞と皐月賞が近い、去年テレビで期待の新星と呼ばれていた子たちがちらほらと見える。

 

「よお、久しぶりだな。お嬢ちゃん」

 

「えっ?」

 

 しばらく走った後、枠の外で休憩しているとトレーナーバッチをつけたおじいさんから声をかけられた。

 

 見ればすぐに誰かわかった、去年のジャパンカップのときに一度話した事がある。

 

「土出さん…ですよね。お久しぶりです。こんばんわ」

 

「あー、土出はトレセンに二人いるんだ。俺のことは土出父とでも呼んでくれ」

 

 父ということは息子さんでもいるのだろうか、

 

「でも、私にとっては土出さんは土出さんなので」

 

「そうかい、まぁ好きに呼んでくれば良いさ」

 

 土出さんと呼ばれたのは久しぶりなのか、少し嬉しそうに口角をあげている。しかし、すぐにいつも通りの真剣な表情に戻り、

 

「本題だ。お嬢ちゃん、今日のレース見せて貰ったぞ」

 

 土出父が言うには今日のレース、エースは何か焦っていたのか少し掛かり気味だった。そのため他の子達よりスピードが出ていて1着をとれたのだそうだ。

 

「もちろん、こんな戦法は実践では使えねぇ」

 

 気持ちをうまく制御出来るようにトレーニングする必要があるがトゥインクルシリーズで走れるだけの力はあるとのことだった。

 

 その言葉をエースは噛み締めるように黙っていたので、ひとしきりしてから土出父は改めて口を開いた。

 

「お嬢ちゃん、はっきり言って俺はトレーナーとして一流じゃない。だがウマ娘とトレーナーの相性を見定めるのには自信があるし、一定の評価も得ている。」

 

 土出父は続ける。

 

「アンタは息子と相性が良い、一度アイツのところに顔を出してみないか」

 

 ウマ娘とトレーナーを仲介してパートナーを作る仲介業のようなことをしている人がいることはエースも知っていた。まさか土出父がしているとは思わなかったが、

 

「えっと、土出さんの息子さんの担当ウマ娘になれってことですか」

 

「そうだ」

 

 それから土出父は息子のことを話し始めた。高校生の頃からウマ娘に興味をもった彼を師匠として土出父が色々教えた結果新人トレーナーの中では優秀な方だろうと思っているが去年は特にパッとしない成績で終ったそうな。

 

 「相性の良いウマ娘との出会いがウマ娘もトレーナーも成長させる」長年の経験でこの事を知っていた土出父は息子と相性の良いウマ娘を探していた。

 

 そしてやっとエースを見つけた訳である。

 

「これだけは勘違いしないでほしい、俺はお嬢ちゃんなら息子とのコンビで。大いに活躍できると思っている。」

 

 結局嘘を並べて無理矢理チームに入れたところで相性が悪ければ活躍できる可能性は低く、意味がない。そう言いたいのだろう。

 

 正直この時点でエースは「それならば入ろうか」とも思っていた。しかしやはり、エース的にはどうしてもこれだけは聞いておかずにはいられなかった。

 

「どうしてそこまで息子さんのことを…」

 

「…そうだな、やっぱり父として息子には良い景色を見せてやりてぇんだ」

 

 父として…

 

「そうですか…息子さんは良いお父さんを持っていますね」

 

 ポツリとエースは呟いた、恐らく土出父には聞こえてないだろう。…父の願い、それならば断る理由はない。

 

「分かりました。会わせてください、息子さんと。あ、それとお嬢ちゃんはむず痒いので私のことはエースと読んでください」

 

 土出父は一度目を大きくして、それからニッと笑ってこう言う、

 

「わかった、エース。明日の朝この場所に来てくれ」

 

 こうして私のトレセン学園デビュー戦にあたる最初の一日は最高のものとなった。




 こんにちは、ケイカイフトワークです。太枠とでも呼んでください。

 祝!アカイトリノムスメ、史上初の親子秋華賞制覇!

 昔の競馬も良いけど今の競馬からも目が離せないよと言う話でした。

 次はいよいよカツラギエースのデビュー戦を予定しています。どうかご期待ください。
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