貴方の病んだ幻想入り 作:回忌
起きると外が騒がしかった
ベットから降りるといきなり声を掛けられた
「せんさん!奴が!」
椛がいた事になんの疑問も無い
奴と言う事は霊夢が来たのだろうか
「逃げますよ!さぁ!」
貴方は椛に手を引かれるままに走った
ともかく、この時は何も考えていなかったけれど
何故か夢心地だったのは覚えている
外に出るとそこは地獄の様だった
霊夢と幽香に文が本気の殺し合いをしている
ともかく今そこに行くのは不味い
貴方はいつも着ていた服を迷彩柄に変更し、生成した塗料で
顔や手に茶色や緑の模様を描いた
「成程、向日葵の間を縫って行くんですね」
貴方はそれに頷いた
幸運な事に獣道のような所があったのでそこを通ることにした
花と会話出来る幽香は兎も角、文と霊夢はやり過ごせるだろう
「こちらには誰もいません、行きましょう」
先導する椛について行く貴方。
一度だけ後ろを振り向くとそれきり貴方は振り返らなかった
これ以上、スピードを落とす必要も無いのだから
〇
「貴方の愛しのせんは言っちゃったわよ?」
「じゃあ早く退いてくれないかしら」
「それは無理な相談ね」
「霊夢さん」
「ええ分かっているわ」
やはり彼は全てを狂わしていくのね
初めて会った時でもこんなに殺気を感じた事は無いわ
でも何故かしら、全くゾクゾクしない…
「…そんな事はどうでもいいかしら」
『死ね』
「美しい花なのに…残念ね」
ビームと札に風が辺りを覆う
〇
なんとか魔法の森に入ることが出来た
これなら身を隠しながら移動できる
「ふぅ、さて妖怪の山に行きましょうか」
辺りには瘴気が溢れ、人が入ることを拒んでいる
外の世界にあった樹海とは違いこちらは不気味だ
霧が溢れて規格外の大きさのキノコや派手なキノコもある
というかキノコ以外には草、木、水しか無い。
生物がいるとすれば妖怪かアリスor魔理沙なのだけど
今のところ彼女たちに会うという目的は無い
出来るだけ目撃情報は少なくしていたいのだ
草も生い茂っているし姿勢を低くする必要も無い
途中、妖怪に襲われそうになったがなんとかやり過ごした
夢の中で死闘の体験をしたとしても強くなれない
何かが邪魔をしているように感じた
「…せんさんが…いや…誰かに奪われるくらいなら…」
何か椛がブツブツと呟いているような気がするが、気の所為だ
妖怪の山が目前と言うところだった
…!?
いきなり倒された
倒した張本人…椛は大剣を抜いていた
何故
「こうしたら…良いと思ったんです」
椛は赤黒い目で言った
そして大剣を撫でた
「貴方は人間…早く死んでしまう…だったら」
その顔はなにか苦渋の決断をしたような顔だった
「貴方は殺して、その肉を食べたら、一生一緒じゃ無いですか…!」
そして大剣を構えた
「だから、抵抗…しないでください…ね?」
貴方は振り下ろされた大剣を避けた
だが、完全には避けきれなかった
左手に走る凄まじい痛み
苦痛の声が口から漏れる
しかし、最も泣きそうだったのは椛だった
「え…?私…え?あれ…あ…あ…あああ」
椛が壊れかけていた、そんな椛に貴方は右手に作ったあるものを向けた
シングル・アクション・アーミー
西部劇でよく見るリボルバーだ
その照準を椛の右目に定めた
…お返しだ。ごめん
「あ、ああああああああぁぁぁ!?」
乾いた銃声がなった後椛の叫び声が上がった
貴方は椛に近寄ると膝をついて目を押さえている椛にあるものを作って渡した
漆黒の眼帯
それは視覚を半分失った椛へのせめてもの償いだった
貴方は丁寧にそれを付けてあげた
「せん…!」
椛は左目から透明な涙を、右目から赤い涙が流れる
貴方の後ろ姿にかかる声は無かった
左手首から流れる血を洗い流すように雨が降る
この日、椛によって貴方は左手を失った
ふと見つけた穴に貴方は入る
そこは洞穴のようだった
看板のようなものがあったが真っ二つに斬られていた
中には大きな穴があった
その中に飛び込もうとしたが、足が止まった
ここで落ちても意味はあるのか?
恐らく下は地底に繋がっている
落ちたら誰かに拾われる可能性がある
これ以上生きていて意味があるのか?
答えは否だ。
これ以上生きていても意味が無い
ならば。
貴方は洞窟の壁を背に座るとコルトのローディングゲートを開け、地面に置く
左手があればやりやすいのだけれども…貴方は苦笑した
あれは避けれたからな。
そして右手に弾丸を生成すると弾倉に入れ、ゲートを閉める
コルトを持つとハンマーを起こし、銃口をこめかみに当てた
引き金に人差し指をかける
頬に冷たい感覚があった
触らなくても分かった、それが涙だと
自分が何故泣いているのか分からない
もう疲れた。心が壊れそうだ
今までの出来事をフラッシュバックする
そして最後に見えたそれを見て呟いた
…霊夢
この日、幻想郷に1発の銃声が響き渡った
〇
「ふぅ」
「お疲れ様せん。調子は?」
「どうってこと無いぞ」
「嘘つけ!顔に書いてあるぞ!」
「せんっていつも強がりよね〜」
「時には休憩も必要ですよ!飲みましょう!」
「ちょっと!?早苗!飛ばしすぎよ!」
俺達は小人が起こした異変を解決したので宴会を開いている
強ければ強い程弱くなるので面倒だったが
逆に考えると弱い攻撃が強くなっているので弱攻撃で潰した
今も幻想郷は平和だ。疲れを知らない奴らが多いけど
「あ、俺少し席を外す。」
「何よー嫁さんがいるのにー」
「へっ可愛い嫁さんで嬉しいよ」
「な…」
「それじゃ席外すよ霊夢」
「わ、分かったわよ」
そして視点は神社の裏へと変わった
せんはタバコに火をつけて咥えた
「よう、俺」
「俺はお前、お前は俺だ」
「俺が誰かといえばお前になるわけだが少し違うな」
「顔も同じで名前も同じ。体系も、だ」
「違うところと言えば思考回路くらいか?」
「まぁいい」
「お前は負担に耐えられなくて死んじまったからな」
「あそこでそうならなくてもいつかはそうなる」
「鬼に殺されるか覚に発狂させられるか…」
「兎も角な」
「俺はようやくお前を追い出すことが出来た」
「元はと言えばこれは俺の体だ。」
「それにお前がねじ込んで来たんだよ」
「俺はこれから幸せに人生を謳歌する」
「まぁ、俺も鬼じゃ無い。時間を少し戻してやる」
「また、こうなるかはお前次第だ」
「じゃあな、せん」
ソイツから投げられたタバコの火が視界を覆い尽くした
さて一区切りです
終わった訳じゃないよ。