貴方の病んだ幻想入り   作:回忌

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お ま た せ

後回しにしてたら死ぬ程期間が空いた


「危険を冒すものが勝利する」

「前々から思っていたんですよ」

 

椛は呟く

 

「私は貴様の事が物凄く嫌いだったと」

 

「今更ですか?」

 

それに嘲笑するのは文

その顔が嫌いだ、その飄々としたその顔が

 

「サシでやり合おうといつも思っていたんですがね」

 

「上はそんな事ゆるさないですからねぇ」

 

決闘というのは許されていた

だが、戦力差が圧倒的だと許されなかった

強者が弱者を殺してしまう可能性があったからだ

今この場では、そんなこと関係無いのだけれど

 

「いざ」

 

「先手は譲ってあげましょう」

 

それに答えるのは椛の背負っていた大剣

抜いてから切りかかるまで見えなかった斬撃が文を襲う

その予想外に対抗出来る訳も無く、彼女はモロに斬撃をくらう

 

「ひぐぅぇ!?」

 

「舐めているからそうなるんですよ」

 

ぺっと悪態をつきながら椛はそういう

 

「…そのようですね」

 

「何時でも何処でも真剣に向き合えばよろしいのに」

 

「…ちょーと本気を出しますよ」

 

文は紅葉型の扇子を持ち直す

どうやら真剣にやるようだ

 

「旋符・紅葉扇風!」

 

文が扇子を振る

瞬間緑色の旋風が巻き起こり、土煙を上げていく

その全てが弾幕用の優しい風では無い

 

それは全てを切り裂く切れ味を持つ風の刃だった

 

「ふっ」

 

流石にそれは避けるしかない

時たま飛んでくる石の塊を盾で弾き飛ばしながら移動する

此処は少し私に有利だ

地底なので上下左右の制限がある

椛は速度を重きを置いてないのでそこまで問題は無い

だが文は違う、彼女はスピードに全てを置いている

それを制限されるのは少しキツいだろう

 

「牙狼・レイビーズネイド」

 

「くっ」

 

赤い大きな刃が周りから生成、文を取り囲む

それだけでなく大きな赤い玉がところどころ生成され弾ける

そこから手に持てる位の剣が全方向に飛び散る

 

「はぁ!」

 

扇子を仰ぎ、強風を発生させる

だが、それらは実態ではなくエネルギーなので煽られることはない

 

「がっ…」

 

風をすり抜けそれらは文に突き刺さる

刺さった瞬間それらは淡い光になって散った

 

「こりゃ不味いですねぇ…」

 

「まだまだありますよ」

 

「その前に殺る!」

 

文は扇子を構え直し、スペルカードを唱える

 

「岐符・サルタクロス!」

 

文を中心として、白の弾幕が生成される

円が7つ重なった弾幕の上に更にポツポツ配置された弾幕

それらが絡み合い、回避を困難にする

 

「邪魔っ!」

 

「嘘っ!?」

 

それらを赤い妖気を纏わせた大剣で切り裂く

目の前の闖入者は排除しなければならない

そのためには全力で行かないと

 

「くっ…寒符・天上天下の照國」

 

今度は黄色の弾幕が文の周りに円形に生成される

先程と違うのは円形の弾幕が等間隔に発車されること

それと追加の弾幕として拡散する弾幕が追加されている

速度も先程と違って早い

 

「近づきすぎたっ…」

 

あまりにも近づきすぎた、弾幕が椛を襲う

それを盾で防ぐが、下級が持つ物など破壊し易い

ヒビの入る音が嫌でも聞こえてくる

 

「こうなったら…!」

 

盾を文に向けて投げる

そしてその後ろにきっちりとついて行く

盾は弾幕の圧力に耐えきれず、粉々になった

 

「やぁっ!」

 

大剣を右上から左下へ斬る

 

「そんなっ!?」

 

そこの弾幕だけ、全て切り裂く

文が慌てて弾幕を追加生成するが、間に合わない

 

「ぐわっ」

 

目の前に飛び散る鮮血

それは切りつけた椛の清楚な顔を赤に染める

大剣で胸を切りつけられれば妖怪と言えど、耐えられない

文はきりモミ回転をしながら地面へ落ちていく

 

「…以外と、早く終わりましたね」

 

落ちていく文を見ながら椛は呟いた

 

「さてせんに終わった事を報告しますか…」

 

「誰に、ですって?」

 

「!?」

 

後ろからする声

振り向く時には遅かった

 

「がはぅ!?」

 

胸に何かが刺さった感覚

見てみれば文の腕が突き刺さっている

 

「いやー所詮白狼と油断していました、以外と強いんですね、貴方」

 

「ぐっ…が…」

 

口からは嗚咽と血しか出ない

刺された部位から血が滲み出す

 

「哨戒の隊長どころか小隊隊長にまで特進出来るわ」

 

文はニヤっと笑った

 

「私を楽しませた礼に特進させてあげる、感謝しなさい」

 

「うぐ…」

 

どさり、と地面に落ちる

文は地霊殿に視線を向ける

 

「さて、邪魔者も居なくなりましたし、行きますか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間、文の意識は闇に落ちる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

椛は息が絶え絶えの状態で大剣を地に刺し、縋る

峰打ちだ、死にはしない

 

「これで…いい…筈」

 

椛は視線は別の方向に向けた

そこには何も無い、ただ荒れた平地があるだけだ

 

だが、椛は知っていた

 

最初からこの戦いも見ていた1人の友人の名前を呼ぶ

 

その名前は──

 

 

 

 

 

 

 

「にとり…文を、姫海棠様に」

 

「分かったよ、君は少し休みな」

 

肩をトンと叩かれる

椛は力無く笑った

 

「そうですね…少し眠っていきます…よ」

 

「あれま、寝ちまった」

 

にとりはお疲れの友人に笑顔を向けた後、文を担ぐ

 

「全く、盟友は罪深い奴だよ」

 

そう言うにとりの顔は笑顔で満ちていた

 

「そこが魅力的でもあるんだけど…ね」

 

そしてまた姿を消す

そこに残るのは大剣に身を預けて寝る白狼の姿ただ1つだった

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