貴方の病んだ幻想入り 作:回忌
反魂蝶と斬撃が飛び交う
青い刃が紫色の反魂蝶を斬り消す
「貴方の魂は死に瀕する時が一番輝いているの」
それは何故だか嬉しい…ねぇ!
弾幕を避けたり切り飛ばしたりしながら接近する
その密度はかなり濃い
だが即死するのは蝶本体のみだ、散らす粒子に即死性は無い
それならば戦うことは可能だ、不可能では無い
「ふふ、早く死んでしまうと面白くないもの」
なるほど、妖夢のはお前のセリフか?
しかし幽々子はそれに少し首を振る
「それは半分正解、というところよ」
…どういうことだ
「あの子も貴方に思う所があるという事よ」
そう…か
心当たりは一応ある
貴方との会話でいきなり顔を赤らめたりとか、背けたりとか
変に何度もあう事があるとか、だ
そんな事より、集中しろ
「貴方、がね?」
くはっ…
会話をしていると通常弾幕が腹にめり込んでくる
しかし、貴方は何処か余裕そうに言う
へっ、通常弾幕とは…舐めてるのか?
「貴方はまだ本気を出していない…早く出しなさい」
「亡舞・生者必滅の理」
…ぐおおおおお!
幽々子から回転するように弾幕を発射
時折大きな泡のような弾幕を織り交ぜ、避けにくくする
貴方はかなり幽々子に接近していた為にほぼ全弾命中する
…ぐ、あが…
「哀れな事ね」
貴方は重力に従って西行妖の根元へ落ちていく
ドスッ
貴方はうつ伏せに倒れる
二振りの1つは地面に横倒しになり、片方は地面に突き刺さる
貴方はピクリとも動かない
「あぁ…もう貴方は…ここで終わるのね」
幽々子は少し歓喜した様子でそう言った
彼女の目には人魂がより一層光るのが見えたのだろう
…まだだ
「…あら」
貴方は膝を立て、手を刀に持っていく
地に伏した刀を拾い上げ、突き刺さった刀を抜く
ここで倒れるわ訳にはいかない
お前如きで止まってたら霊夢には勝てないっ…!
「無駄な抵抗をするものねぇ、まぁその方が楽しみがいがあるけど」
「桜符・西行桜吹雪」
幽々子より桜の花弁の見た目をした弾幕がヒラヒラと飛ばされる
それは桜から花が散るような光景に見えた
いきなり難易度を下げるな
「貴方にはちょうどいいくらいでしょう?」
ニヤリと笑う幽々子に貴方は不貞腐れた顔をする
接近しながら貴方は呟く
舐めやがって
「私達なんて、そんなものでしょう?」
貴方は何故だか、それが納得出来るような気がした
長く生きた者は寿命の短い者を下に見がちだ
天狗がそれだ、人間を見下し、狡猾で、ウゼェ!
お前達はいつも変わらないなっ!
斬撃を飛ばし、花弁を切り裂く
さも当たり前かのように幽々子は言う
「変わらないわ、これからも、今からも」
変わる素振りは見せてくれ
貴方は弾幕の間をすり抜けて行く
弾幕の間隔が一瞬大きく開いたのを確認する
そこに向けて刃型の斬撃をとばした
「く…やるわね」
隙があれば誰であろうとする筈さ
「確かに…じゃあ、これは?」
「反魂蝶ー参分咲ー」
…反魂蝶っ
思わず体を右に逸らす
幽々子から全方向に飛んで行くのは反魂蝶の群れ
彼女からビームが六本出ている
当たれば即幽々子の抱き枕と化すだろう
魂は…恐らく彼女と同化する
早く落ちろっ!
「そう言われても、落ちたくありませんわ」
反魂蝶を縦だったり横だったり切っていきながら貴方は進む
今の貴方は最高に興奮している様な気がする
こんなに死に瀕した事は無いだろう
へへへ…
自然と笑いが出てきてしまう
死に対する興奮など不謹慎すぎる
だが、この世界の、この時の貴方だから許される事
まずは一発!
「きゃ…野蛮ねぇ」
幽々子の腹横一文字に切り傷が生まれる
だが、幽霊がこの程度でダウンするのは有り得ない
まだまだやれるだろう?
「この程度では倒れませんわ」
「リポジトリ・オブ・ヒロカワ―偽霊―」
この程度で倒れろ!
バツの形に反魂蝶を並べ、飛ばす
それを円形に配置して、蝶たちの進行方向に飛ばす
やる事は変わらない
ただ―――斬るのみ
心を無に還し、何も考えず、目の前の脅威を斬り続ける
「貴方って本当に単純ね」
…
貴方は答えない
目からは既にハイライトが消えている
その姿はまるで幽鬼の様に恐ろしいものであった
「貴方の場合…こうして」
…っ!
「ほらかかった」
斬る、という思考に取り憑かれていると正常な判断が出来なくなる
そう幽々子は判断したのだろう
その判断は間違っていなかった
現に貴方は囮として出された反魂蝶を斬り、それは斬られれば大量に増える反魂蝶だった
ただし、彼女が誤解している事が1つある
…この程度、斬れなければ博麗の巫女は守れない
「嘘…」
…シィッ!
それを全て切り裂き、幽々子の元へ飛び込む
幽々子は観念した声で言った
「…確かに、貴方は強い」
「それじゃあ…これを受けてなお、私に斬撃を加えるなら…」
「私は、貴方を諦めてあげる」
「でも、友達には…なってもらうわよ」
貴方はそれを構えで返答する
どんな攻撃であろうと、絶対に受けれる構えで
幽々子は唱えた、最後のスペル…ラストスペルを
―西行寺無余涅槃―
幽々子の背景に幽々子の愛用している扇子に描かれた模様が浮かび上がる
瞬間体温が下がる感覚を感じた
いや、下がった様に感じたのだ
突き刺ささる殺気によって
最後に相応しい、死を呼ぶ亡霊ならではの、殺気
これで終わりだ
「これで終わり、ね」
幽々子から小さな反魂蝶が大量に放出される
それらは3匹1組に全方向に散らばる
そして3秒間隔程に大きな反魂蝶が出現する
回避不可能といっても差し支えないこの弾幕
しかも耐久スペルに分類される為長いこと、長いこと
…しかし、そんなことは関係ない
っ!邪魔だぁぁぁぁー!
「ひゃっ」
霊力を刀に込め、幽々子が居る場所に放つ
それは反魂蝶を消し飛ばし、桜の花びらを舞い散らせて…
「私の…負け…ね」
お前の負けだ、だが…
これからは、"ただの"友人だ
「…それは、少し、無理かも…ね」