貴方の病んだ幻想入り   作:回忌

65 / 97
幻想の文屋―射命丸文―

椛と別れた後、更に山を登る

体力は完全に回復し、傷も大方塞がった

昔から貴方の傷の治りは早かったものだ

途中で喉が乾いたが、運のいい事に川があったので水分補給をした

恐らく椛と会う前に見えた川の上流だろう

感覚的にあれは繋がっている気がするのだ

 

と、幻想郷が一望出来る崖に到達する

 

今まで見てきた建物が広がっている

 

そして、それは突然吹いてきた

 

…彼女の操る風が

 

「こんにちは、せんさん」

 

 よお

 

貴方は突然現れた文に驚くこと無く挨拶をする

今から殺し合う、というのにだ

 

「いやー、見せつけてくれますね、貴方は」

 

 仕方の無い事さ

 

「あそこで離れれば済むことでしょう」

 

 そんな体力は無かった

 

「そう、そういう事にしておきましょう」

 

文は溜息をついてそう言った

内心ではそんな呆れて無いくせに、だ

彼女は紅葉の扇子を構える

貴方も応呼して刀を抜き、構える

 

辺りを一瞬で殺気が支配する

 

先程から盗み見ていた哨戒天狗達も逃げ、ここには誰もいない

 

…血腥い戦いにはピッタリだった

 

足が動く

 

貴方は崖を蹴り、空を飛ぶ

 

そこには何の縛りも無かった

 

そう、まるで鳥のように…

 

 

 

 

 

 

先手は、貴方だった

 

空を飛んで文を切り付ける

彼女は右に避けて刀を躱す

そのかわりに反撃として扇子を煽る

それは風を巻き起こし、さらに巻き起こしていく

風速は人間を吹き飛ばす程となっていた

 

…人間である貴方が飛ばされるのは不思議では無い

 

飛ばされ、煽られながらも体勢を立て直す

空中で飛びながら貴方は考える

どうすれば倒せるのか

どうすれば文字数が増えるのか

考えながら弾幕を避ける

彼女から弾幕が牽制として飛ばされてきている

少し考える事の邪魔だ

 

 …らぁ!

 

「っ…」

 

斬撃を飛ばし、文の注意を逸らす

文はそれを避ける

その時弾幕の隙間が生まれた

あの隙間なら十分に考える時間を稼げる

 

見てわかる通り常に風を纏い、防御力を高めている

といっても刀の1太刀で切れる程の薄い風だ

だがしかし、近付くまでが容易ではない

ナンパくらいに難しい…どうだか

 

 …倒せない訳ではないな

 

貴方はポツリと呟くと弾幕の間を縫っていった

 

弾幕が激しい…ならば避ければいい

 

そんな理論を組み立て、貴方は文に接近する

接近すればする程弾幕は濃くなり、風も強くなる

 

ただ、風は踏ん張れば吹き飛ばされる事は無い

 

貴方は刀を二つ持っていると、一つは邪魔だと感じたのか鞘に仕舞う

右の刀の柄に両手を付け、しっかりと持つ

こうすると余程の事が無い限り離れる事はない

そして十分に近づき上から下へ刀を振り下ろす

それは文のシャツを赤く汚した

 

「ぎゃ…容赦ありませんねぇ…」

 

 慈悲は無い

 

貴方は何の抑揚も無くそういう

こうやって斬るのに何の躊躇いも無くなってきていた

人として、大丈夫だろうか…

 

いや、なんの問題もない

 

始めから貴方は狂っているから

 

「一旦…旋符・紅葉旋風」

 

風が巻き起こり、貴方を飛ばす

文を中心として竜巻が発生したようだ

竜巻と同じ方向に回り、弾幕を回避する

嵐の様に激しい弾幕だった

 

 …ふぅ

 

竜巻から抜けた貴方は思考する

まず一撃を最初に与えられたのはデカい

これからどうやって"ラストスペルを使わせずに"行動するかだ

あれは彼女達にとって最後の切り札に近い

それを使わせないのは一種の罪悪感を産んでしまうが…

 

そんな事はどうでもいい

 

貴方はそう思い、手にあるものを生成する

 

PSG-1

 

H&K PSG1は、ドイツのH&K社が対テロ特殊部隊向けに同社のG3をベースに開発した

セミオートマチックの狙撃銃である。

 

いつしかのテロに対抗する為に作られた狙撃銃

 

射程距離は700m、ただし霊力の為無限に飛ぶ

 

高精度の狙撃銃で黒い点であろうが当てることが出来る

 

といっても最終的に物を言うのは狙撃者の腕

なので貴方の腕前が試されることだろう

今は竜巻の壁が作られているので射撃不可だ

スリリングベルトを肩から掛けて、移動する

 

風がドンドンと強まっていく

精密狙撃などあまりした事がない

紫から頼まれて大天狗を狙撃した事はある…重要そうな会議だった

貴方はスナイパーでは無い

隙を見て、そこを撃つしかないのだ

 

風は弱まる事をしらない

 

竜巻は少し緩くなっていた

それは目では分からなく、感じる事でしか無理だった

全ての物事は目ではわかない事が多い

ようやく顔を現した、と思えば手遅れだったりする

そうならない為にしなければならない

 

風は少し、弱まった気がした

 

竜巻が更に緩む

これが無くなったら、彼女はラストスペルを発動する

貴方はPSG-1をのグリップをしっかり持つ

そして軽くコッキングをした

黄金色の弾丸が装填されたのを見る

 

その時、ポタリと何かが降った

 

雨だ、雨が降っているのだ

グリップを握る手のひらや、PSG-1本体にも落ちている

それは自分の弾丸が落ちているかの様に感じた

 

貴方は首を振る

 

これを命中させないと、後々不利になるだろう

 

風が収まっていく

 

文の声が聞こえる

 

「さぁ…これが私のラストスペル…」

 

風が完全に収まる

竜巻の壁は徐々に消えていく

文の姿がようやく視認出来た

貴方はスコープを覗き込む

ガラスに雨が当たり、少し視界を歪ませる

そるが、文が歪んだ笑顔をしているようだったから、怖かった

竜巻の壁が、消えた

 

「…シャッター・チャンスっ!?」

 

 Checkmate

 

ガァンと、狙撃の音が響いた

 

 

 

 

 

スコープ越しに見える、左胸から出血する文

 

貴方はようやく、ターニングポイントにたどり着いたのだった




次は休憩…かな?

地底組は…ないです
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。