貴方の病んだ幻想入り   作:回忌

66 / 97
つかの間の平和

貴方は山を降り、人里に向かっていた

あれから文がどうなったか確認はしていない

ただ、こちらに向かう時にシャッター音が聞こえたので生きているだろう

気にする事は無い

 

人里で一息尽きたい

 

あれから一睡もせず、戦い続けた

 

疲れは溜まり、ストレスも溜まっているだろう

 

なら、少しくらいパッとやっても誰も怒るまい

 

そう思って人里に歩を進めていたのだ

やがて人里を囲う堀と壁が見えてきた

門の前に降りて、門を通過する

とくに止められる事も無かった

人里は変わることなく賑やかだ

 

「…せん

 

 …先生

 

慧音が声を掛けてきた

その表情は今まで見たことの無い程鬼気迫る表情だった

 

「お前と言う奴は…本当に」

 

 …これしか能がない男なので

 

事実だった

貴方には戦う事以外に能は無い

戦法を考える事は得意だが勉強は苦手だ

裁縫とか、そういうものも不器用で、あまり上手くない

 

それに…

 

それに、生きているのを感じるのは、戦っている時だけだ

 

そんな呟きを聞いて、慧音は目をキツく瞑った

そして、貴方の手を引く

 

「ちょっとこっちに来いっ!」

 

 っ!?

 

いきなり、しかも全力の引きが貴方を襲う

慧音は貴方を路地裏へ連れていった

 

響く快音

 

それは慧音が貴方をビンタした音以外他ならなかった

その痛みは不思議と感じる事は無かった

慧音は泣いていた

 

「お前はっ!そうやって…自己解決してっ!」

 

どがっ、がごっ、みぎっ。

 

殴る

 

全力で貴方の事を殴る

 

手加減なんて無かった

 

 …無駄

 

「っ!?」

 

貴方は腕を捻る

慧音は嗚咽をこぼした

その隙に貴方は足に足を掛け、こかす

くるりと慧音が一回転し、地面に叩きつけられる

 

「あがっ…」

 

 諦めて下さい、先生

 

「まだ、まだぁ!」

 

そうやって掴みかかる慧音をまた掴み、転がす

転がすといっても遅くなく、逆に早く叩きつけられている

 

「う、が…」

 

 …ごめんなさい、先生

 

貴方はポツリと呟く

 

せん…お前、お前ぇぇ…」

 

 また会ったら、酒で仲直りでも、しましょう

 

そう言って、貴方が振り返ることは無かった

慧音はその後ろ姿を悲しそうに、恨めしそうにみていた

 

 

腹が減った

()()()()()()()無駄に腹が減った

時間も食ってしまったし、早めに終わらせてしまわないと

その時視界にある店が入ってきた

 

「山の舞」

 

貴方は蛾のようにそれにふらふらと近づいて行く

そして、店内に入った

 

「いらっしゃいませー」

 

店内には椛によく似た白狼の女性が居た

椛の服に紅葉模様を色々な所に描いた服

とても特徴的な服だ

 

「お腹が減っていらっしゃるのでは?お腹抑えたままですよー」

 

 …あぁ、おにぎりを頼む…味は

 

貴方が一番好みの具を頼む

すると彼女はニッコリ笑い、店の奥に消えた

好きな具の香ばしい匂いがここまでくる

背伸びして見ると、店員の白狼がおにぎりを握っていた

数分店の中をウロウロしていると、出てきた

 

「どうぞ、召し上がれ」

 

 …ありがとう

 

貴方はそう言って、おにぎりを食べる

それは他人が握った筈なのに母親が握ったような味がした

多分久しぶりに食べたからそう感じているだけだ

極限状態で食べるココナッツが美味しい様に

 

 美味しかった、これ代金

 

「頂戴致します…またのご利用を」

 

ニッコリと笑ってそう言った

貴方は店から出る

行く場所は既に決まっている

 

幻想郷、ある黄金の向日葵畑

 

そこには幻想郷で最強と呼ばれる妖怪が居る

 

先程の文はターニングポイントでは無かった

 

本当のターニングポイント

 

…風見幽香が住まう、場所

 

貴方は歩く

向日葵畑がある方向には人里の出入口である門がある

そこから先は荒れているが、どんな遠くからでも見える黄金がある

それは触れる者をほぼ即死させる、恐ろしい黄金

 

貴方は近づいて行く

黄金が近づいて来るごとに死が近づいている気がした

 

 …ふぅ

 

貴方は息を吐く

もうすぐ目の前にそれはあった

向日葵達は風に揺れ、言葉を喋る事は無い

あの時のは、幻聴だったのだろうか

 

「いえ、違う…それは貴方が花と会話出来た証拠よ」

 

 …風見幽香

 

向日葵達が自然と避ける

その隙間から幽香が現れた

貴方は柄に手を置く

それを見て幽香は人差し指を振った

 

「ま、ず、は、会話から…でしょ?」

 

 …失礼

 

貴方は少し謝り、柄から手を離した

それに加え幽香は背中のPSG-1も指す

 

「それも、よ…物騒だから」

 

 本当は花達に当たりたく無いからだろう

 

「それもそうね…ふふっ」

 

貴方は言われた通りにスリリングベルトの留め具を外す

するとガタリと音を立ててPSG-1が地面に落ちた

ハッキリ言ってもう使う事は無いだろう

持ち主を失った物がどうなるか、知らない

 

多分、このまま錆び付いて使われなくなるだけ

 

 …さて、やろうか

 

「やりましょう?私はこの瞬間を待っていたのだから」

 

幽香の声に歓喜が混じる

ああ、そういう事か

 

己の愛する"物"と戦うのが、そんなに昂るか

 

彼女だって最初はただの花妖怪に過ぎなかったに違いない

向日葵を荒らされない為に力をつけて行って、追い返して

気付けば、恐れられて一人ぼっち

どんなにプライドが高かろうが、寂しさは生まれる

花と会話しても埋められない程の寂しさがあった

 

多分彼女は霊夢にも惹かれたのだろう

 

どんなに恐れられていてもびょうどうに接する彼女に

 

…でも、貴方が男だったのがいけなかったのかもしれない

 

 

 

 

 

 

 行くぞ

 

「来なさい」

 

それと同時にビームが視界を覆い尽くした…




本編完結まで、あと少し

なお終わればifEND祭りです

さぁ、ターニングポイントを乗り越えよう!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。