貴方の病んだ幻想入り   作:回忌

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フラワーマスター―風見幽香―

光を裂いて進む

刀はビームに溶かされる事無く斬れている

それを確認して貴方はさらに進む

 

「あら、消し飛ばなかったのね」

 

 この程度じゃ死なないさ

 

「承知の上だった」

 

最もだった

再生速度は人間の中ではかなり早い方だ

骨が折れても七日でほぼ動かせる

切り傷なんて1日で塞がる

異常に治りが早いが、多分紫辺りに弄られている

 

…と、いうかより男である貴方が博麗の力を使いこなせる時点でおかしいが

 

博麗の力は女性に謙虚に出る

初代博麗巫女が人里に居た女の子だったように、だ

 

確か妖怪と協力して内なる博麗の力を出した…らしい

 

試行錯誤して、女に宿りやすい事が判明した

 

それから何代か変わった後、双子が生まれた

その双子は兄妹だった

驚くべき事に2人とも博麗の力を持っていた

 

人々の親しみ易いように妹を博麗の巫女に

 

規律を守らない妖怪を殺す為に兄を博麗の刺客に

 

一人っ子の場合はどうしようも無かった、攫うしか無い

だが、双子の可能性が高かったので安心出来た

貴方のお母さんだって、博麗巫女だった

人里で、平和に暮らしていて…それから

 

それから…どうした?

 

貴方はズキンと頭に痛みを覚えた

 

何かに阻まれていてそれ以上を思い出せない

 

「ほらほら!考えている暇があるかしらっ!?」

 

 っ!

 

そうこうしている間にビームは飛んでくる

アホみたいなビームの数だ

「僕が考えた最強の弾幕」、という感じだ

だが、それが幻想郷の基本だ

そこにオリジナリティーを追加して、美しくする

 

簡単なことだ

 

貴方はそう思い、刀を握り直す

ビームの1つを横から切って威力を無くす

 

横、下、突き、切り上げ…

 

何回も刀を振る

ビームを大量に撃ったクセに彼女は涼しそうな顔だった

それが貴方の癪に障るように感じた

 

 イライラするな…

 

「短気ね」

 

 仕方ない

 

貴方はそう呟く

ビームに阻まれながらであるが、着実に幽香に近づいていた

刀の射程圏内に入ればこちらの物だ

 

「甘い」

 

 はぁっ!?

 

息が吐き出されるような声が出る

足に違和感を覚え、つんのめる

見てみれば足にツタが絡まっていた

 

 …そうだった、お前はそんな能力だった

 

「思い出したかしら?」

 

 そうだな

 

彼女能力があまりに地味過ぎて覚えていなかった

「花を操る程度の能力」も伊達では無いということ

飾りでは無いと言うことを貴方は思い知っていた

 

…あの時の戦いから、何も学んでいない気がする

 

貴方は毒づきながらそう思った

だが、ここで悩んでいても仕方がない

ツタを切り落とし、進む、進む

 

地面から突き出すように生えた岩を足場にして飛ぶ

そして、上からの切り下げ

幽香はツタでガードしようとしたが、霊力には無意味だ

 

「んぐっ…油断したわ」

 

 まだまだ

 

貴方は呟く

まだまだこれからだ

彼女にラストスペルを吐き出させるまで、終わらない

 

貴方が限界を迎えるまで、終われない

 

…その前に終わらせればいいのだけれど

 

そもそもラストスペルとは"あくまで"弾幕ごっこでの切り札であって

戦闘で使う必殺技では無いのだ

 

威力は強いか弱いかで聞くと弱い

 

…そこは妖怪によるけど

 

それを幽香は分かっているのか、笑みを作る

 

「大丈夫、ラストスペルなんて使わないから」

 

 舐めてるね

 

貴方は一旦横に走る

貴方がいた場所をビームが削る

そこに生きた生物などいなかった

 

 …

 

貴方は冷静に幽香の動きを見極める

肉体というのは口程に物を言う

 

筋肉が緩み、引っ張られの動きで何をしてくるか分かる

だが、妖怪には時たま骨格が違う奴が居るから、厄介だ

 

…大抵は人型だから良しとして

 

「ほらほら、見てる場合かしら」

 

 っ!?

 

呑気に見ていたら消し飛ばされる

その後は…生け花にでもされるのでは無いだろうか

貴方はそう思いながら刀を握り直す

額から垂れた汗が持ち手に落ちて、散る

 

 はぁっ

 

「ふん」

 

上から切り掛る斬撃を傘で受け止める

 

 その傘は何製だ

 

「さぁ?もう何処で貰ったかも忘れたわ」

 

妖力が貼られたそれは簡単には壊れないであろう

遠い昔、大事な誰かから貰った物なのだろうか

 

気にせず斬撃を続ける

1、2、3…とリズムよく、水の様に斬撃を加える

それを避けたり傘で防いだりする幽香

 

 やるな

 

「んっんー…どうかしら」

 

否定するような声を出して幽香は答える

妖怪とはどいつもこいつも回りくどいな

特にスキマ妖怪

 

貴方はそう思いながら霊力の出力を上げる

このまま傘を叩き切る為だ

それを察したのか幽香は避けに徹するようになった

貴方は刀を振り上げ、思い切り振り下ろす

 

「そこ」

 

 …!

 

それが地面に突き刺さった瞬間ビームが放たれる

貴方が痺れを切らすのを待っていたのだろう

刀を思い切り振り下ろすその瞬間の為にわざとらしく避けていた

 

 巫山戯た真似を…!

 

「貴方も案外、短気なのね」

 

実際そうらしい

感情の制御が出来る分、爆発したさいの反動も大きい

周りから情緒不安定と言われた事も珍しくない

得物を握り直す

 

 

…貴方はふと、あることを思いついた

 

己の出生を考えると、それを使える可能性は高い

だが、失敗した時にどうなるか分からないが

そもそもアレンジ技となってしまう可能性も高い

 

…やるしかない

 

弾幕とビームを潜り抜ける

まるで宇宙戦争に参戦した気分だ

それらが途切れたところで刀を掲げる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

         斬符・夢想斬波

 

 

「っ!?」

 

貴方は刀を数回振る

それから虹色の斬撃波が幽香に飛んで行った

 

「あっ」

 

幽香がその場で避けようとするが、それの元は夢想封印

追尾機能も、ちゃんとあるのだ

演技でも無い本当に不覚を取られた声を幽香は出した

 

戦いは終わった

 

黄金の花畑に倒れていたのは幽香だった

 

「やっぱり、届かなかった」

 

幽香は笑みを浮かべながら言う

 

 通じないさ、こんなの

 

貴方は宥める訳でもなく、事実を言う

それを聞いて更に幽香は笑みを深めた

 

 何か、面白い事でもあったか

 

「いえ…本当に、貴方は変わっていないんだって」

 

幽香はちらりと博麗神社のある方向に目を向ける

森だったそれが、枯れて貴方を導く道となった

 

 礼は言っておく

 

「私は…少し眠るわ」

 

幽香は目を瞑る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「せいぜい"奴ら"を楽しませてやりなさい

 私も貴方も、ただの駒なのだから」

 

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