貴方の病んだ幻想入り 作:回忌
森の中を歩く
森が一直線に枯れていくのはかなり見ものだ
後ろは木が直ぐに生えて引き返す事をさせない
貴方の脳裏に今までの道筋が現れる
キャンプをしに山に来て、幻想入りして
妖怪に襲われて、文に助けられて、閉じ込められて、滝に飛び込んで
川を流れて、霧の湖にたどり着いて、咲夜に拾われて
紅魔館で思い出して…
この森は過去を思い出させる不思議な森に思えた
今までの事が鮮明に思い出せるのだ
彼女達の会話一言一句、正確に思い出せる
それが、嬉しいような
それが、悲しいような
貴方にはそれが分からなかった
何度も戦いに身を投じている内に感情が磨り減っていたようだ
…ただ単に貴方が鈍感なだけかもしれないのだけれど
森は長い
何歩歩いたかもう覚えていなかった
〇
気がつくと、霧が出ていた
魔力を含んだ、湿気の多い霧
ここは魔法の森だ
木の根元にキノコが無数に生え、大きなキノコも生えている
生ける者を拒む瘴気が辺りに漂っていた
貴方はそれを気にせずに進む
相変わらず森は進む事に枯れていた
妖怪の山が遠くに見えた
幻想郷は、意外と狭いものだった
ここであんな出来事があっただなんて信じられなかった
誰かに言っても、きっと夢だと笑われる
幻想郷の女がお前1人に固執することは無いと、笑いながら
そういう妄想こそが真実になりやすいのだ
正論より通りにくいものは無いように、だ
気がつけば日が暮れていた
月は既に真上に浮かび、妖々しく光っている
満月の光には人を狂わす魔力が込められているらしい
それは人を問答無用に魅了する光に違いない、と貴方は思う
「よお」
突然声が掛けられる
瞬間七色の光が目の前を包む
おっと
貴方は後ろに下がる
目の前に魔女が降りてきた
白黒のエプロンの様な服と、魔法使いがよく被る帽子
箒に腰掛け、こちらを見ていた
「久しぶりだな、せん」
熱烈な歓迎だな、待ち伏せとは
貴方は面白そうに言う
因みに今の行為は「スゴイ・シツレイ」にあたる
アイサツは如何なる場面においても必須とされている
そう古事記にも書いてある
やる気か?
貴方は正気じゃ無いような者に問いかける様に言う
魔理沙は至って正常だと言わんばかりに胸を軽く叩く
「わたしゃ正常さ、お前はどうだか」
さぁ?
どっちも正気じゃない
幻想郷に居るものなんて価値観が五ぐらいズレている
いつの間にか森が広く枯れていた
まるで闘技場の様だった
…成程、幽香も随分粋な事をする
「2人きりだ、邪魔するものは何も無い」
魔理沙は自分に酔ったように言う
そこを退け
「私を倒したら考えてやる」
貴方は刀を構える
十分に警戒しよう、彼女は異変解決組だ
一筋縄では行かないだろう
「行くぞ!」
いざ
〇
私、博麗霊夢は神社の縁側であの人を待っていた
彼…博麗せんは今日ここに来る、絶対に
私の勘がそう騒いでいる
彼が来ると思うと嬉しい
会って抱きつきたい
いっぱいキスをしたい
…でも無理そうな気がする
私はお茶を喉に流し込む
今回のは三番煎じではなく、高級な緑茶だ
戦いの前なら、これくらいの贅沢は許されるだろう
「ふぅ…」
熱い息が出てくる
苦味が口の中を渡り歩く
「…よいしょ」
重い腰を上げ、立ち上がる
机の上にある大幣を握り、外に出る
外はいい天気だった
雲ひとつ無い、綺麗な晴天
生える桜の木は緑色の葉を生えはやしている
「…」
無意識に大幣を握り直す
懐にある札の状態を確認する
特に異常が無いのを確認して、姿勢を自然体にする
ひゅう、と風が舞い込んできた
それに混じる、彼の雰囲気
…私の大好きな、兄の匂い
どうやら魔理沙が立ちはだかったらしい
微かに魔力が確認出来た
ちょっと許せない
でも、これくらいは許容範囲だ
彼…の気配が近づいてくる
私の心は歓喜で満たされる
〇
「はぁ…はぁ…」
場面は戻りて、魔理沙との戦い
血に伏していたのは魔理沙だった
お気に入りの箒は真っ二つに斬れ、八卦炉は落ちている
貴方は軽く刀を振り、鞘に戻す
先に行かせてもらう
「ぐ…あ…!」
魔理沙は行かせたくないようだった
目がそう訴えていた
貴方は冷静に言う
もっと強くなるんだな
「っ…!」
異変解決組の実力は凄まじい
だが、それは弾幕ごっこだけだ
本当の殺し合いには向いていない、当たり前だ
あくまで、ごっこ遊び
貴方は歩を止めず進む
「待て…!」
手を貴方に向けるが、森が生えてそれを阻む
魔理沙の体力が解決する頃には既に貴方は射程圏外だった
〇
それは石造りの階段まで続いていた
コツリ、と靴が音を立てる
階段を登る
一段一段登っていく事に体が軽くなっている気がした
今から、霊夢を倒すらからだろうか?
それは分からなかった
ただ分かるのは…霊夢が待っている事だけだ
静かなる気がここまで伝わってくる
そうしているうちに階段の登りきり、鳥居をくぐった
〇
「こんにちは、」
久しぶりだな
貴方達は対峙していた
上記の挨拶とは裏腹に、目は鋭い
「待っていた、この瞬間、貴方に認められるこの時を」
待っていた、この瞬間、全員を正常に戻すこの時を
同時に言う
これだけで彼女に伝わる
行くぞ、妹
「来なさい、兄さん」
刀を鞘から抜く
大幣を構える
戦いが始まった
魔理沙の戦闘?
…各自の想像にお任せします