貴方の病んだ幻想入り 作:回忌
なんとか魔法の森に入ることが出来た
これなら身を隠しながら移動できる
「ふぅ、さて妖怪の山に行きましょうか」
辺りには瘴気が溢れ、人が入ることを拒んでいる
外の世界にあった樹海とは違いこちらは不気味だ
霧が溢れて規格外の大きさのキノコや派手なキノコもある
というかキノコ以外には草、木、水しか無い。
生物がいるとすれば妖怪かアリスor魔理沙なのだけど
今のところ彼女たちに会うという目的は無い
出来るだけ目撃情報は少なくしていたいのだ
草も生い茂っているし姿勢を低くする必要も無い
途中、妖怪に襲われそうになったがなんとかやり過ごした
夢の中で死闘の体験をしたとしても強くなれない
何かが邪魔をしているように感じた
「…せんさんが…いや…誰かに奪われるくらいなら…」
何か椛がブツブツと呟いているような気がするが、気の所為だ
妖怪の山が目前と言うところだった
…!?
いきなり倒された
倒した張本人…椛は大剣を抜いていた
…何故
「こうしたら…良いと思ったんです」
椛は赤黒い目で言った
そして大剣を撫でた
「貴方は人間…早く死んでしまう…だったら」
その顔はなにか苦渋の決断をしたような顔だった
「貴方は殺して、その肉を食べたら、一生一緒じゃ無いですか…!」
そして大剣を構えた
「だから、抵抗…しないでください…ね?」
貴方は振り下ろされた大剣を避けた
だが、完全には避けきれなかった
左手に走る凄まじい痛み
苦痛の声が口から漏れる
しかし、最も泣きそうだったのは椛だった
「え…?私…え?あれ…あ…あ…あああ」
椛が壊れかけていた、そんな椛に貴方は右手に作ったあるものを向けた
シングル・アクション・アーミー
西部劇でよく見るリボルバーだ
その照準を椛の右目に定めた
…お返しだ。ごめん
そして、その引き金が引かれた
引かれ、た
引かれ…?
…なんで
貴方は思わず呟く
その人差し指は決して動かなかった
動けっ…動け…!
そう叫んでも、動かない
完全に人差し指はストライキをしていた
「…ねぇ、せんさん」
っ…
ゆらりと椛が近づいてくる
「私、私は…あ、あうあ」
彼女の目線は貴方の顔をと左手を行き来している
その姿はなんとも情けなくて、可哀想で
「今、くっつけますから…!」
己の指を切り、血を貴方の左手にある断面に注ぐ
そして左手をくっつけようとしていた
体の何かが変化していた
あ?あぐ…あ、ああああああああぁぁぁああ!?
「せんさん!?」
最初は熱を感じただけだった
それが今は体が燃えるように熱い
頭が、腰が、体が…
貴方は叫ぶことしか出来なかった
シングル・アクション・アーミーは地面に落ちていた
その熱さが無くなった時、貴方は違和感を覚えた
腰と頭に異物があるような気がするのだ
…!?
触れてみれば、ふさふさとしたものがある
それは…尻尾と獣耳
あ…あ…あぁ
「…せんさん」
もう、博麗の者として、生きていけない
その事実が頭をよぎる
絶望
それを安心させるかのように椛がよりそう
「安心して下さい」
彼女の豊かな乳房が貴方の腕に当たって柔らかく変形する
その柔らかさに貴方は蕩けそうだった
椛は顔を近づける
その桃色の唇が妖艶に光る
「貴方は、私が何があってでも守りますから」
その唇が貴方の唇を塞いで…
〇
あれから貴方と椛は人里で暮らしていた
妖怪の山で追放処分を受けたからだ
これはマシな方である
3人の戦闘中にこの姿で出てきたらビームを幽香から放たれた
霊夢から御札、文から竜巻と
落ち着いた時に会話をして、なんとか平和にやっている
時たまでいいので家に来いと言われた
素直に従っていけば美味しく頂かれたのは最悪な思い出だ
しかも最近は夜に這入ると美味しく頂こうとしてくる
無理に抵抗すると後々面倒なので抵抗していない
「旦那様?」
うん?
貴方は目を開ける
そこには愛しの妻の顔
どうやら膝枕で長いこと寝ていたらしい
「仕事ですよ、慧音さんが呼んでいました」
自警団か、分かった
貴方は立ち上がるといつもの武器を持つ
博麗として生きていた頃に使っていた刀
いまやそれは名残として残っている
…妹
ポツリと貴方が呟いた
「旦那様?」
すぐ行く
彼女の唇を少し奪う
数秒抱き合いながらキスしあった後、離れる
「ふふ、行ってらっしゃいませ」
行ってくるよ
貴方達は世にも珍しい人里に住む白狼天狗
その珍しさは人里に住む者ならよく知っている
誰もが知っていて慧音のように信頼している
人脈も広くて、安心出来る夫婦
…今日も今日とて、異常無し