雄斗がゼロと共に時空の彼方へ消え、過去の世界を彷徨うことになって10日後のことである。
嵯峨内閣で官房長官を務める雅希子参院議員が詐欺の容疑で突然逮捕された。
その後、事件に関係した与野党の政治家や官界や財界の要人が相次いで逮捕された。
そして、次に警察が目をつけたのは、JAPAN EDA総監の四竈光一であった。
警視庁捜査1課は光一をマークし、周辺を徹底的に洗い出すことにした。
そんなこととは裏腹に今日も暇なのが警察庁長官官房付特命係警視庁預かりが正式名称で警視庁特命係が通称のとある部署であるが、所謂、窓際部署すなわち閑職であることには間違いない。
そこに所属している警察職員は係長で警部の杉下右京と部下で巡査部長の亀山薫だ。
隣の部署は警視庁組織犯罪対策部薬物銃器対策課で、その課長である警視の角田六郎は今日も特命係の部屋に入り浸っていた。
角田「よ、暇か?」
お決まりのセリフで特命係の部屋に姿を現した角田は彼らにそう問いかける。
杉下「暇ですねえ。」
サスペンダー姿で紅茶を飲みながら杉下は、そう答えた。
亀山「何って言ったって俺たち、特命係なもんで。」
そして、隣にいるいかにも体育会系の男も答えた。
角田「いいねえ、暇な部署の人たちは。」
角田はいかにも皮肉たっぷりの言葉で返し、こう続けた。
角田「捜一の奴ら、なんでも大変らしいよ。例の事件で。」
杉下「そうですか。」
亀山「例の事件ってもしかして。」
角田「前官房長官雅希子公爵を中心とした政財官界の要人たちが巻き起こした怪獣災害特別支援金詐欺だ。なんでも捜一の奴ら、JAPAN EDA総監の四竈も絡んでいると睨んでいるわけだ。」
亀山「四竈ってあの?」
杉下「ええ、憲政史上最長の政権を率いた前首相宇部慎一公爵の私設秘書だ。」
角田「そう。そういえば、隊員の中にも政治家の秘書がいたな。」
杉下「山梨県知事綿部雄樹伯爵の次男である綿部雄斗子爵。首相である嵯峨由三公爵の私設秘書です。怪獣災害の時に現れたウルトラマンゼロと一体化したものの、10日前のデザストロ戦において、時空の彼方に消え、未だ行方不明。」
亀山「そ、そうなんですか?」
角田「なんだよ、ニュース観てないのかよ。あとで奥さんにでも聞いておけ。」
亀山「は、はい。」
角田「まあとりあえず、お前さんたちに話したからな。あとのことは俺は知らん。」
杉下「どうもありがとう。」
角田は部屋から出ていき、部屋を覗き見ていた部下である大木長十郎と小松真琴と何やら話し込み始めた。
杉下はハンガーにかけたあった背広を着ると部屋を出ようとした。
亀山「右京さん、どちらへ?」
杉下「亀山君、行きますよ。」
亀山「え?はい?どちらへ?」
杉下「四竈総監のところです。」
亀山「えー。」
杉下たちはJAPAN EDA本部に着くと、何のためらいもなしに建物の中に入っていった。
その様子を美郷が見て、彼らに近寄っていった。
美郷「あの!すみません!」
杉下「何でしょうか?」
美郷「ここは関係者以外立ち入り禁止ですよ。」
杉下「失礼。」
と言って警察手帳を見せた。
杉下「警視庁特命係の杉下です。」
亀山「同じく亀山です。」
美郷「特命係?警察の方が何の用件ですか?」
杉下「四竈総監に用事があってきたのですが、あいにく迷ってしまって。総監執務室はどこに?」
美郷「ここは隊員たちの作戦室などがある棟です。一般職員や幹部の部屋があるのは、目の前にある建物。総監執務室は、その最上階です。」
杉下「どうもありがとう。ところであなたの名前を聞いてもよろしいでしょうか?」
美郷「瀬内美郷です。」
杉下「どうも。」
そのまま杉下と亀山は総監執務室に直行した。
亀山「あの女性ってEDAの隊員ですかね。」
杉下「そうですよ。甲府市長瀬内義隆子爵の令嬢瀬内美郷女爵。綿部雄斗の第一夫人です。自国党筆頭副幹事長で法務大臣政務官の七山米行衆院議員は従叔父にあたります。」
亀山「へえー。右京さんってなんでも知ってるんですね。」
杉下「細かいことが気になるのが僕の悪い癖。」
亀山「そ、そうですね。ハハ。」
杉下「君だってサルウィンから帰国して警視庁なんかに戻らずに実家に帰っていたら、子爵の地位を継いでいたかもしれませんよ。」
亀山「いきなり何ですか。右京さんと仕事をするのが俺の生きがいなんですよ。」
杉下「そうですか。君、着きましたよ。」
そんなことを言っている間に総監執務室の前に到着した。
杉下はドアをノックし、中から声が聞こえた。
光一「どうぞ。」
2人は部屋に入るとお辞儀をした。
光一「何者だ?」
杉下は警察手帳を見せるとお決まりのセリフを言った。
杉下「警視庁特命係の杉下です。」
亀山「同じく亀山です。」
途端に光一は怪訝な顔をした。
光一「特命係?警察の方が何の用ですか?」
杉下「先日、雅希子前官房長官が逮捕されたのはご存知ですよね?」
光一「知ってますけど、何か?私がこの件に関わっているとでも?」
亀山「いやーそうなんですよ。捜査線上にあなたの名前が浮かび上がってきたので、そうなんじゃないかと思いましてね。」
杉下「お心当たりはありませんか?」
光一は怒り出した。
光一「ふざけるな!私が首謀者とでも言いたいのか!出ていってくれ!不愉快だ!」
杉下「わかりました。」
そして、帰ろうとするが、何かを思い出したかのように戻ってきた。
杉下「ひとつ、よろしいですか?」
光一「まだ何か用ですか?こっちは忙しいんだ。」
亀山「お手間は煩わせません。」
杉下「この件にあなたが仕えている前首相宇部慎一侯爵は関わっているのでしょうか?」
光一「あの人は清廉潔白です。関わっていないです。」
杉下「そうですか。どうもありがとう。」
亀山「失礼しました。」
そのまま部屋から出ていった。
彼らが部屋から出ていった後、光一は誰かに電話した。
光一「もしもし、私だ。今、警視庁特命係の奴らが来た。うん?彼らに目をつけられると後々までしつこい?わかった。あとはそちらで対処してほしい。では失礼。」
部屋の外で杉下は亀山に話しかけた。
杉下「匂いますねえ。」
亀山「そうですね。って何がですか?」
杉下「まるで自分は関わっているかのような四竈総監の話し方。」
亀山「確かに。次はどちらへ?」
杉下「対怪獣兵器開発研究所ですよ。」
亀山「はい。」
杉下たちは同じ敷地内で基地から徒歩5分ほどの対怪獣兵器開発研究所に来た。
なお、この部署は、ほんの1ヶ月くらい前まで対怪獣兵器開発局の名称であったり、怪獣兵器開発研究所であったりした。
受付に入ると杉下は受付嬢に尋ねた。
杉下「すいません。警視庁特命係の杉下です。」
亀山「同じく亀山です。」
受付嬢「ご要件は何でしょうか?」
杉下「所長の芹沢和也さんに用があってきたのですが。」
受付嬢「すみません。所長は只今出張で明日まで帰ってきません。」
杉下「そうですか。では、副所長の眞仲健吾さんはいますか?」
受付嬢「ええ、いますよ。」
受付嬢は副所長室に電話し、程なくしてケンゴがやってきた。
杉下「初めまして、警視庁特命係の杉下です。」
亀山「同じく亀山です。」
ケンゴは持ち前の笑顔で答えた。
ケンゴ「こちらこそ、初めまして!対怪獣兵器開発研究所副所長のマナカケンゴです!さあ、こちらへ。」
応接室に案内した。
応接室に入り、杉下たちは椅子に腰を下ろした。
杉下「いきなりですが、眞仲副所長はこの世界の地球人ではないのですね。それにあの植物もこの世界の植物ではない。」
ケンゴ「そうです。所長もそうですが、この研究所の所員の半数は別次元から来たウルトラマンと一体化している人又はウルトラマン本人及び、光の勢力に身を置く宇宙人です。あと、あの植物の名前はルルイエです。僕がいた世界の火星にある土壌で育てた植物です。」
杉下「おや、火星の土ですごいですねえ。」
亀山「しかし、よくもまあ受け入れられましたね。ベリアル襲来を機に宇宙人とのコンタクトが増えましたが、一部の人間は宇宙人に反感を持っている。まあ俺は違いますけどね。」
ケンゴ「そうなんですね。最近、反宇宙人の考えを持った人たちが集まって『ウルトラ一族地球追放推進平和同盟機構』と『地球外生命抹殺同盟』っていう別々の組織を結成して、活動しているって聞いたことがあります。」
杉下「前者はあちこちでテロを起こしているテロリストの集団ですが、後者は反政府勢力です。公安課や公安調査庁、内調(内閣情報調査室)が彼らの監視に乗り出しています。」
亀山「右京さんの相棒だった人も公安調査庁の職員として監視していますね。あと土師っちの部署にいた人も内調で。」
ケンゴ「警察の方ってすごいですね。」
杉下「ええ。さて無駄話はこれくらいにして、本題に入ります。」
ケンゴ「はい、なんでしょぅ。」
杉下「この研究所で使われる研究費や開発費は、どこから回ってくるのでしょうか?」
ケンゴ「そりゃ議会が予算として回したり、EDA総本部から予算を頂いたりしています。あと民間有志からの寄付です。民間有志と言っても、ほとんどが資産家や財政界要人それに華族の方々からです。」
杉下「それとは別に悪い噂とかは聞いたことはないでしょうか?」
亀山「例えば、四竈総監が詐欺を働いてぶん取ったお金とか。」
ケンゴ「それはないかも。でも聞いたことがあるような気がします。よくわからない団体から寄付されたりとか。」
杉下「そうですか。どうもありがとう。」
ケンゴ「あの!僕が言ったこと誰かに言わないでくださいね。」
亀山「もちろんだ。君の身に何かあったら俺らが全力で守る。」
杉下「亀山君、彼はウルトラマンの1人です。自分の身は自分で守ります。」
亀山「アハハ。そうでしたね。」
2人は出ていったが、何かを思い出したのか杉下が戻ってきた。
杉下「もう1つだけ。」
ケンゴ「はい。」
杉下「所長はどこに行ったのでしょうか?先程受付で聞いたら出張で明日まで帰らないと言われたものですから。」
ケンゴ「あんまり言えないですけど。所長は光の国出身ですから、月に1回のペースで光の国に戻ります。光の国の科学技術局長官の仕事もありますから。」
杉下「そうですか。」
2人は帰り、ケンゴは誰にも聞こえない声で呟いた。
ケンゴ「アキトにユナ、それにみんな元気かな。」
その時、ケンゴがこの地球に来てからの通信機として使っていなかったGUTS-SELECTのiPadから一件のビデオチャット申請が来た。
そこには、
『GUTS-SELECT火星開発事業本部技術開発局 ヒジリ・アキト局長』
と表示されていた。
ケンゴ「アキト!」
ビデオチャットの申請を許可したケンゴは応答した。
アキト「久しぶりだな、ケンゴ。」
ユナ「ケンゴ!久しぶり!」
ケンゴ「そうだね、久しぶり!みんなもいるんだ。」
その時、やたらと熱苦しい男サクマ・テッシンが出た。
テッシン「おう、ケンゴ!やっぱりアキトはスゲえよな。別宇宙に通信できる装置まで開発したんだからよ。」
ケンゴ「そうなんですね。ところで、みんなどこにいるんですか?ユナもいるから。」
タツミ・セイヤが代わりに答えた。
タツミ「今、ミツクニ会長が火星を訪問中で秘書のシズマ隊員も同行しているんだ。」
「俺様もいるぜえ!」
そう答えたのは、メトロン星人マルゥルだった。
ケンゴ「マルゥル!地球にいるんじゃなかったの?」
マルゥル「ホッタのおっさんに少しくらい休めって言われて、そんで休暇もらって火星に旅行しに来たってわけだ。」
ホッタのおっさんとはTPU技術部特務3課の課長ホッタ・マサミチのことだ。
ウルトラマンデッカーとウルトラマンディナスの活躍によってトリガー世界に再び、平和が訪れた後、TPUは母体組織のシズマ財団の援助で宇宙に本格的に進出した。地球に怪獣が現れなくなったことで特務3課は暇となり、そこでホッタはマルゥルにかつての仲間に会えるよう色々と便宜を図った結果、マルゥルは休暇を取れたというわけだ。
そこに比較的大人しめのメガネをかけた女性隊員であるナナセ・ヒマリが加わる。
ヒマリ「そっちはどう?」
ケンゴ「はい!元気でやってます!ただ...」
ユナ「ただ?」
ケンゴ「こっちの世界色々と大変なんだ。主にこの日本で戦っているウルトラマンが一体化している人間と共に時空の彼方に消えて過去の世界を彷徨っているみたい。それにこの世界は僕がかつていた地球とそっくりだけど全然違う。」
アキト「なるほど。俺らのいる宇宙とケンゴが今いる宇宙の周波数を調べてみたんだが、40%の確率で周波数が重なっている。」
ケンゴ「やっぱりか。」
タツミ「マナカ隊員、何がやっぱりなんだ?」
ケンゴ「この宇宙にもトリガーがいる。3000万年前に超古代文明があり、ユザレや闇の巨人もいた。こっちの防衛隊の中にはユザレの子孫もいるし、アキトにそっくりな人もいた。イグニスも言っていたけど、この世界は様々な次元宇宙が誕生の過程で一部だけ混ざり合ったことで誕生した超特異的次元宇宙の可能性が高いみたい。」
アキト「超特異的次元宇宙か。前、トキオカさんに聞いたことがある。」
アキトはライラー事件や闇の3巨人が復活する前の出来事を思い出した。
トキオカ「アキト君、超特異的次元宇宙って言葉を知っているかい?」
アキト「超特異的次元宇宙ですか?聞いたことないです。」
トキオカ「とある次元宇宙があるとしてだ。その次元では様々な出来事が起こる。これらの出来事は不可解だ。しかし、この不可解な現象を起こす原因は周辺の様々な次元宇宙が誕生の過程でお互いに影響しあうことで、一部のみが混ざり合い誕生するというわけだ。」
アキト「そうなんですね。」
トキオカ「そうなんだよ。だからこの3000万年前の超古代文明、闇の3巨人、トリガーという存在もどこかの別宇宙で我々の次元と似たような出来事もあったのだろう。私は、そう考えている、」
アキト「もしかして、ミツクニさんがいた宇宙がそうなんですか?」
トキオカ「そうかもしれない。しかし、これは僕たち上層部しかわからん。」
この出来事をアキトはケンゴに伝えた。
ケンゴ「そうか、トキオカさんもそんなことを。」
アキト「過ぎたことだ。今更思い出しても仕方ないか。」
テッシン「っつうことで新しい筋トレメニュー考えて待ってるから、お前はそっちの地球で頑張ってくれ。その間に俺たちで火星を今よりもっと発展させてやる!ド根性!」
ヒマリ「また、そればっかり。でも待ってる。」
マルゥル「待ってるぜ!」
タツミ「マナカ隊員、君は我々の、いや、我々がいる次元宇宙の誇りだ。あとお土産もよろしく。」
思いがけないタツミのお茶目な姿にみんな笑い出した。
ケンゴ「みんな、ありがとう!スマイル、スマイル!」
アキト「うざ。」
ユナ「あ、うざいって言った!アキトね、ケンゴに連絡取れるまでうざいって言わないって願掛けしてたんだよねー。」
アキト「ちょっと、ユナ、それは言わない約束だろ。」
ユナ「えー、いいじゃん。」
ケンゴ「ハハハ、じゃあね。」
アキト「ああ、元気でな。あとイグニスにもよろしく。」
こうして通信が終了した。
一方、指令室。
隊員たちが話をしていた。
美郷「さっきね、警視庁特命係って部署の人が四竈総監はどこ?って聞いてきたんだよね。」
憲三郎「警視庁特命係か。俺は叔父が警察庁長官官房付の甲斐峯秋だからよく知っている。」
李莉子「それって実質的な警察庁ナンバー2よね。」
憲三郎「ああ。彼らは警視庁の身分だが警察庁に管轄権がある。叔父は彼らの実質的な上司なんだ。」
晴子「数年前、ダークナイト事件を起こした甲斐享は先輩の従兄弟なんですか?」
憲三郎「そうだ。俺はまだ高校生だった。ショックだったよ。母の兄の次男があんな事件を起こすなんて。」
加奈「そりゃそうよ。ねえ。」
勝子「でも総監はどうして彼らに目をつけられてるのかしら。」
その時、ドアが開いて正順が入ってきた。
正順「それは、怪獣災害特別支援金詐欺の疑いだね。」
ガイ「あー雅希子前官房長官を中心とし、与野党の政治家や財界や官僚を巻き込んだあの汚職事件か。」
ジャグラー「しかし、なんで総監が関与を疑われるんだ?」
正順「事件の首謀者だからではないのか?最近の総監は妙に金銭面の使い方が荒かった。それで俺はどうしてか問い詰めた。」
事件発覚5日前
正順は総監執務室を訪れていた。
光一「座野隊長、何の用だ?」
正順「最近の総監のご様子はおかしすぎます。妙に羽振りが良くなっている。」
光一「それがどうしたというのだね。」
正順「何かいけないこと、例えば、詐欺事件で巻き上げたお金で何かしているとか。」
光一「ハハハハハ、さすが勘が鋭いね、君は。そうだよ。私は怪獣災害で支援すると偽ってたくさんの人からお金を巻き上げたのさ。」
正順「なんてことを。他に共犯はいるのですか?」
光一「いるさ。表向きは雅官房長官が首謀者さ。私は裏にいるバレても捕まるのは、末端の政財界の要人だけだ。」
正順「人々の信頼をあなたは裏切った。この組織の一員としてあなたを許さない。警察に通報します。」
光一「そんなことをしたら、私は君をよくて2階級降格、悪くて懲戒免職及び軍籍剥奪だよ。」
正順「そんなことをしてもあなたがしたことは公表される。それに今はいなくてもいずれ帰ってくる雄斗がこのことを知ったら悲しむ。そうなる前に総監、お願いします!自首して下さい!そして世間に謝罪してください。自分が怪獣災害を口実に詐欺を働いたと。」
しかし、光一は怒り出した。
光一「黙れ!俺を誰だと思っている。俺は、前首相宇部慎一公爵の秘書だぞ!」
正順「前首相の側近がなんだ!あなたのしたことは前首相の顔に泥を塗ったも同然だ!」
光一「もう、いい!出ていけ!」
正順「わかりました。出ていきます。」
正順は総監執務室から退出したあと、その足で副総監執務室や補佐官執務室そして秘書官執務室に行き、海子たちに事のあらましを詳細に話した。
海子たちは全てを理解した。
隆信「座野隊長、君の話は理解した。私が責任を持って警察に通報する。私の叔父は警視庁刑事部参事官の中園照生だ。叔父は刑事部長の側近だから大体のことは通じるだろう。」
正順「ありがとうございます。」
俊三「座野隊長は、これ以上は動かないように。あとは我々だけで進めておきます。下がってよいぞ。」
正順「は!」
隆信の告発によって事件が発覚し、表向きの首謀者とされた雅希子官房長官が逮捕され、関係した政財界の要人も次々と逮捕された。
そして、これはつい先程の話
廊下で正順は光一に会った。
光一「やってくれたな。これで貴様の処分は警務部による聴取で決まる。近いうちにあるだろう。覚悟しておけ。」
正順「告発をしたのは私ではありません。あなたにもっと近い人物です。」
光一「今更、言い訳か。無駄なことだ。」
そのまま去っていった。
話を聞いて全員が驚いた。
美郷「でも、処分って。」
正順「大丈夫だ。いざとなったら、これがある。」
そう言って取り出したのは、録音機だった。
その頃、警視庁本部の副総監室
衣笠藤治副総監が内村完爾刑事部長を呼び出した。
衣笠「内村君、四竈総監だけは無罪にしてくれ。」
内村「ほう。それはなぜですか?」
衣笠「決まっているだろ。世界を怪獣災害から守る為にはEDAの力が必要なんだ。日本支部は四竈総監の力で成り立っている。今、彼を失えば、日本は滅びるぞ。それにEDAには我が警視庁の刑事が何人か出向している。出向先で彼らの居場所がなくなるのは君も辛いだろう?」
内村「喝っ!副総監自ら正義の心を忘れてはいけませんぞ。」
衣笠「君はもう少し物分かりがいいと思っていたが、どうやら思い違いだったようだ。残念だ。あと特命係の2人だが、四竈総監にしつこく付き纏っているようだ。君からも注意してやってくれ。」
内村「はい...」
特命係の部屋に杉下たちが戻ってきた時、部屋に3人の刑事が待っていた。
刑事部捜査第一課の伊丹憲一と芹沢慶二そして出雲麗音であった。
杉下「おや、来客ですか。」
伊丹「遅かったじゃねえか、この出戻り亀が!」
亀山「なんだと、この野郎!」
どうやらこの2人は犬猿の仲のようだ。
芹沢「それで、どこに行っていたんですか?」
杉下「JAPAN EDAの総監執務室です。」
伊丹「警部どの、それで四竈は事件に関わっていたのですか?」
杉下「ええ、自分が関わっているかいないかは言及しませんでしたが、あの感じでは間違いなくクロでしょう。」
出雲「その根拠は?」
亀山「右京さんが、『宇部前総理は関わっていますか?』って聞いた時、四竈総監は、はっきりと関わっていないと言ったんですよね。」
杉下「ええ。普通、自分が関わっていなかったら、誰がその事件に関わっているのかわからないはずですからねえ。もう自白したようなものでしょう。」
伊丹「なるほど。あの四竈っていう奴、相当ワルだぞ。前首相の秘書であることを肩書きに色々なことをしているって噂だ。」
亀山「そうか。」
その時、中園が入ってきたため、全員が直立不動の体勢になった。
中園「杉下と亀山。内村部長がお呼びだ。」
刑事部長室にて
内村「お前たち、四竈のことについて調べているようだな。どの辺までわかった?」
杉下「おおよそのことはなんとなく。もうほぼ自白したようなものでしょう。」
内村「そうか。わかった。」
亀山「あのーどこか不味かったでしょうか?」
中園「部長はこの事件をお前たち特命係の手で解決しろって言っている。あと私の可愛い甥っ子のために頼む!」
杉下「はい?」
内村「この事件を告発したのは、井伊隆信補佐官で中園の妹の息子なんだ。」
亀山「あーそれで俺たちに解決してほしいっておっしゃったのですね。」
中園「それだけではない。最初にこの事件を知ったのは、座野正順隊長だ。彼は告発すれば、軍籍剥奪も辞さないと脅されて、私の甥に相談したのだ。」
内村「お前たちに課せられら任務は伊丹や芹沢そして出雲たちと共に事件を解決するだけでなく、座野隊長の身の安全を確保することだ。」
杉下「わかりました。」
杉下たちが出ていった後、中園は内村にそっと伝えた。
中園「あれでよろしかったでしょうか?副総監のお怒りを買わなければいいのですが。」
内村「構わん。」
中園「はい。」
夜、家庭料理「こてまり」に杉下と亀山は亀山の妻である美和子と一緒に来ていた。
この店は赤坂で芸者をしていた小出茉梨が芸者を辞めたあと、開いたお店で杉下たちの行きつけのお店だった。
亀山「しかし、右京さん驚きましたねえ。参事官の甥っ子さんがJAPAN EDAの補佐官だったなんて。」
杉下「驚くのは、まだはやいですよ。甲斐さんの甥もそこに隊員としていますからねえ。」
亀山「そうなんですか。」
茉梨「あらあら2人とも、どんな話をしているのかしら。」
杉下「怪獣災害特別支援金詐欺事件の話です。」
そこに美和子が口を挟む。
美和子「あーあの事件ね。親しい記者の話だと四竈総監が首謀者で一部の華族も関わっているって聞いたことがあるのよ。」
亀山「そうなのか。」
杉下「副総監との関わりはありませんか?」
美和子「警視庁の?あーそれは聞いたことあるかもしれません。なんでも警視庁の刑事を何人か出向させて警務部に配属させているとか。」
杉下「繋がってきました。」
亀山「何がですか?」
美和子「座野隊長を規律違反かなんかで警務部で聴取して、最悪の場合軍籍剥奪させるってことよ。薫ちゃんはほんと鈍いんだから。」
亀山「美和子、そんなに言わなくても。」
茉梨「あらあら、もう一本入れますか?」
亀山「お願いします。」
その夜
JAPAN EDA総監執務室では、海子が光一に話していた。
海子「一連の事件、総監が関わっているのは明白です。自首して自らが犯した罪を認めてください。」
光一「あの件をリークしたのは、座野隊長だろう。私は彼を絶対に許さない。」
海子「いいえ、あの件をリークしたのは、隆信よ。」
光一「じゃあ、あいつを処分して済む話だ。」
海子「いいえ。あの人は、警視庁刑事部参事官の中園照生警視正をが叔父です。警視庁を敵に回すことになる。」
しかし、光一は否定した。
光一「それには心配はいらぬ。私は警視庁の衣笠藤治副総監と繋がりがあるからね。」
海子「それも無駄ね。」
光一「どうしてだ?」
海子「隊員たちはみんな、あなたのしたことを知っています。それに副隊長の富畑憲三郎少佐は警察庁長官官房付の甲斐峯秋警視監の甥です。いくら警視庁副総監とはいえ、警察庁ナンバー2の言うことには逆らえないでしょう。」
光一「くそ!」
海子「あ、そうそう。先程、この件を宇部前総理に話しましたら、先生は大層なお怒りでしたよ。『破門だ!』ってね。」
光一「私はどうすればいいんだ。」
海子「自首しなさい。自首して全ての責任を取る形でJAPAN EDA総監の職を辞しなさい。」
光一「しばらく1人にさせてくれ。」
海子「わかりました。」
海子は部屋から出てきて、光一は1人でしばらく考えた。
翌日
特命係の部屋にはサイバーセキュリティー課の土師太がいた。
杉下「おはようございます。」
土師「おはようございます。頼まれていた資料ご用意できました。」
杉下「どうもありがとう。」
土師「言っておきますがね。僕は青木の代わりじゃないですから。じゃあどうも。」
出ていこうとした時、ちょうど出勤してきた亀山とぶつかりそうになった。
亀山「右京さん、おはようございます。」
杉下「亀山君、おはようございます。」
そこへ、角田が急いでやってきた。
角田「おい、大変だぞ!」
亀山「どうしたんですか?課長。」
角田「四竈光一が自首したぞ。全ての責任を取る形でJAPAN EDA総監の職を辞するらしい。」
杉下「そうですか、やはり。」
これをもち、一連の怪獣災害特別支援金詐欺事件の捜査は終結した。
JAPAN EDA総監は光一が辞任したことで空白となり、海子が新総監に就任した。
副総監には隆信が、補佐官には俊三が就任した。
秘書官のポストには、防衛省大臣官房秘書課の野中進次郎課長補佐が出向といった形で就任した。
光一によって、警務部による事情聴取を脅されていた正順は何事もなく無事だった。
記者会見場での就任会見において、海子は声明を発表した。
海子「この度は、四竈光一前総監による不祥事により、国民の皆様に多大なるご迷惑をおかけしましたこと、心よりお詫び申し上げます。JAPAN EDAはこれを機に一層気を引き締め、極東地域を怪獣災害から守り抜く所存です。」
一方、宇部も釈明会見に追われていた。
自身の秘書が起こした事件を知らなかった責任を取り、彼は光一を自身の事務所から解雇した。更には、自身の給与2ヶ月分を返還した。
事件が社会に残した影響は計りし得なかった。
スペシャルゲストとして相棒のメンバーを出演させてみました。
それにしても、雄斗が帰ってくるのは、いつになるのやら。
この分だと7月もしくは8月にまでかかりそうです。