EDAの本部ではディレクションルームにメンバーが集まっていた。
雄斗「戦艦大和を海底から引き上げる?」
美郷「これまた大層な計画ですね。」
どうやら総監である四竈がプレゼンを行なっているようだ。
四竈「そうだ。太平洋戦争の時に九州坊ノ岬沖で沈没した戦艦を引き上げる。」
海子「それを宇宙での実戦を想定して改造するんですよね。」
四竈「そうだ。乗組員の上限は1000人、兵装で艦首はディファレータ砲、主砲と副砲は対怪獣弾道弾及びメテオールを発射できる。」
晴子「でも、この基地は変形できて、宇宙での航海もできるんですよね?」
隆信「もちろんできる。」
俊三「できるが、作戦が外惑星を含めた場所だったら、この戦艦を使うしかない。」
そして、その場にいた研究者らしき1人が声を上げた。
研究者「地球の重力をふりきるエネルギーが必要なため、改造には時間がかかります。」
正順「どのくらいかかる?」
研究者「1ヶ月ほどです。」
正順「そうか。」
九州坊ノ岬沖。
計画の発表からすぐに戦艦大和が引き上げられた。
憲三郎「これが戦艦大和か。」
李莉子「これを全長333メートル、艦体幅43.6メートル、最大幅61.77メートル、艦体高94.54メートル、最大高99.47メートルの超弩級宇宙戦艦に改造するわけか。」
ガイ「人類史上初めての試みだ。」
ジャグラー「ああ。」
大和はその後、長崎の改造ドックに運ばれ、改造を開始した。
勝子「本当に1ヶ月で改造できるの?」
加奈「するらしいわよ。」
その様子を見ていた雄斗を突如、頭痛が襲い、あるイメージが浮かび上がった。
雄斗「これは...?」
美郷「どうしたの?」
雄斗「なんでもない。ちょっと休憩してくるよ。」
美郷「そっか、気をつけてね。」
雄斗「ああ。」
みんなから少し離れたところで自分の中にいるゼロに話しかける雄斗。
雄斗「ゼロ、お前も見たよな。」
ゼロ「ああ、見たぞ。」
雄斗が見たイメージとは、
それは、遥か遠い未来、自分に似た容姿の人間が、同じく自分の仲間たちとよく似た人間たちと共に、この戦艦に乗って、遥か遠い宇宙に船出するという夢であった。
雄斗(遠い未来、人類は今よりももっと遠い宇宙へ旅立つのか。)
その解釈は間違っていない。
間違ってはいないのだが、その航海が宇宙人による攻撃で滅びに瀕した地球を救う目的があること、乗組員の1人が自分の子孫であること、そして、一生のほとんどをゼロと一体化することで過ごし、その航海に自分も同行することを今の雄斗が知るよしもない。
それを謎の空間で見ていたのは、ベリアル軍団とアブソリューティアンの面々であった。
ベリアル「地球人め、何を作り出すのだ。」
スライ「彼らは未開人です。大したものを作れるはずがございません。」
ジャタール「そうです。」
タルタロス「奴らの兵器が完成次第、これを叩きます。」
ケイ「いいだろう。それがベリアル様のご意志だ。」
ヴィラニアス「しかし、あんな鉄屑を改造して地球人は何がしたいのでしょうか?」
デスローグ「グーガーゴー」
グロッケン「無力で小さな下等生物です。どうせベリアル様に壊されるだけですよ。」
タルタロス「破壊するのはベリアルではない。我らアブソリューティアンだ!」
タルタロスとは別のアブソリューティアンであるディアボロとティターンも反応する。
ディアボロ「貴様らベリアル軍団は黙っていてもらおう。」
ティターン「まずは我々に任せろ。」
しかし、食い下がらないのが東園である。
東園「貴様ら、抜け駆けは許さんぞ!私こそがベリアル様にウルトラマンゼロの首を献上するのだ!」
ディアボロ「何を!ベリアルから与えられた力がないと何もできない無力の地球人である貴様に言われたくない!」
ティターン「貴様は裏切り者とはいえ地球人、いつ表返るが信用できん!」
一触即発となってしまった。
タルタロス「三人とも無用な争いだぞ。口を慎め!」
ベリアル「そうだぞ。ここはアブソリューティアンに任せる。それでいいな。」
東園「はい...」
アブソリューティアンは去っていった。
そして別宇宙に転移して、本拠地ザ・キングダムに一時帰国するとベリアルとトレギアの並行同位体、更にはエンペラ星人、レイブラット星人、グア軍団などなどウルトラ戦士を幾度となく苦しめた強敵の並行同位体を呼び出した。もちろんトレギアは闇落ち前と闇落ち後の両方である。
一方、地球。
戦艦大和の大改造が相変わらず行われていた。
その現場を視察に訪れているのは、嵯峨総理、吉岡副総理兼財務大臣、雅官房長官、的場防衛大臣だった。
雄斗はEDAの隊員服のまま嵯峨の側にいた。
嵯峨「これが宇宙戦艦ヤマトか。吉岡くん、総工費だけでどのくらいかかった?」
吉岡「引き上げ費用で10億円、改造費は1000億円です。」
嵯峨「今は全世界が戦時体制に置かれている。地球防衛の要となるEDAのみが人類最後の希望なのだ。」
雄斗「はい。」
吉岡「雄斗くん、この戦いが終わったら私は政界を引退しようと思う。どうだね?私の地盤を継がんかね?」
雄斗「考えておきましょう。」
実は吉岡も綿部家傍流の血筋なのだ。まあ雅は関係ないが。
雅「それにしてもその隊員服、よく似合ってるわね。」
雄斗「ありがとうございます。」
しかし、怪獣が現れるのも当たり前。
美郷「長崎の改造ドック上空より高エネルギー反応!」
正順「何!現場近くにいるのは誰だ?」
晴子「雄斗先輩だけです。」
正順「わかった。後続隊に李莉子と憲三郎それに加奈、出動!」
3人「了解!」
雄斗のところにもすぐさま通信が入る。
正順「雄斗、周辺にいる人たちの避難誘導を指揮しろ!そっちに高エネルギー反応が近づいてるぞ!」
雄斗「わかりました。さあ嵯峨先生、避難を!」
嵯峨「わ、わかった!」
避難サイレンが鳴り響き、急いで避難して行く人たち。
ゼロ「まさか!」
雄斗「どうした?」
ゼロ「雄斗、伏せろ!」
雄斗「え?わかった!」
急いで伏せる雄斗、その頭上5メートルを黄金の光線がかすっていき、建物を破壊した。
その建物は、
雄斗「吉岡先生!雅先生!」
嵯峨とは別ルートで避難していた吉岡副総理兼財務大臣と雅官房長官らが避難していた建物だった。
多くの悲鳴が聞こえてきた。
そして黄金の空間から現れたのは、アブソリューティアンの戦士アブソリュートディアボロであった。
ディアボロ「ウルトラマンゼロ、どこだ。出てこい!ベリアルに首を献上してやる。うん?うおー。」
雄斗が反対方向に走りながらEDAガンで攻撃していたのだ。
ディアボロ「見つけたぞ!ウルトラマンゼロ!逃げるな我と戦え!」
雄斗「あんなこと言ってるけどどうする?」
ゼロ「人気の少ない場所に誘導する。」
雄斗「わかった。」
雄斗はそのまま通信していた。
雄斗「ポイント732地点にてアブソリューティアンが出現、負傷者多数。吉岡副総理と雅長官も巻き込まれた模様!至急救援に向かわれたし!」
李莉子「負傷者は私と加奈に任せて!」
憲三郎「おうよ!俺は避難誘導する。お前はあのバケモンを倒すことに集中しろ。」
雄斗「わかった!ゼロ!」
ゼロ「ああ!」
ウルティメイトブレスレットから出てきたウルトラゼロアイでゼロに変身する雄斗。
雄斗「ジュア!」
そしてゼロがディアボロの前に姿を現した。
ディアボロ「その首と戦艦大和を頂戴する。」
ゼロ「俺の首を取るなんざ、2万年早いぜ!」
雄斗「貴様だけは絶対に許さない!関係ない人を巻き込むな。そして戦艦大和も渡さない!」
睨み合う2体の巨人。
先に動いたのはディアボロだった。
ディアボロ「いざ参らん!」
ものすごい勢いでパンチとキックを浴びせてくる。
それを受け流すゼロ。
ディアボロ「どうした?貴様の力はそんなもんか?」
ゼロ「俺を、いや俺たちを甘く見るなよ。」
雄斗「ああ、そうだ。ウルトラゼロキック!」
それが当たり、思わず後退するディアボロ。
ディアボロ「ぬぬぬ。これでも食らえ!コスモ幻獣拳奥義・剛力破牛拳!」
そしてゼロに直撃、爆発音が鳴り響き、煙が充満した。
美郷「まさか!」
モニター越しに戦いを見ていた美郷たちに激震が走った。
ディアボロ「ぬはははは!我、ウルトラマンゼロを討ち取ったり!ぬはははは!ん?」
ディアボロの視線の先には初代和泉守兼定を手に持ったゼロの姿だった。
ディアボロ「そんな馬鹿な!我の攻撃で貴様が無傷な訳なかろう!」
ゼロ「偽装爆発だ。」
雄斗「この刀はなあ、状況を変える力を持っているんだ!」
その頃、李莉子たち後続隊が吉岡たちがいる場所に到着した。
憲三郎「誰かいませんか?」
李莉子「いたら返事して下さい!」
大臣付のボディガードが反応した。
ボディーガード「ここです!」
3人がその場に行くと致命傷を負い今にも意識が途切れそうな吉岡とかすり傷だけで軽傷の雅が他のボディガードたちに応急手当てを受けている姿だった。
加奈「大丈夫ですか?」
雅「私は大丈夫。でもお義父さまが。」
吉岡「希子...さん...無事...だな...?」
あの攻撃で建物が崩れた瞬間、吉岡はその老体で雅を庇ったのであった。
吉岡「みんな...そんな...顔を...するな...この戦いが...長引けば...同じ...ような...人が...多く...出て...くる...雄斗と...総理に...伝えて..くれ...」
雅「はい。」
吉岡「雄斗...地球を...再び...平和に...総理...日本を...この政権を...頼み...ました...ぞ...」
憲三郎「はい。」
李莉子「必ず、必ずお伝えします。」
吉岡「みんな...今...まで...ありが...とう...」
吉岡は息を引き取った。享年96歳、70年に及ぶ政治生活であった。
一方、ディアボロとゼロの戦い。
ディアボロはゼロの持つ刀により劣勢に追い込まれていた。
ディアボロ「ぬおおお!」
雄斗「これでトドメだ!」
ゼロ「ワイドゼロショット!」
ディアボロ「ぬおおお!我は、我は不死身だあああ!戦艦大和をベリアルに献上するまでは絶対に死なん!」
爆散し、雄斗たちには見えない場所にアブソリュートハートが落ちた。
ゼロ「やったぜ!」
人間の姿に戻った雄斗が見たのは、吉岡に手を合わせる人々の姿だった。
雄斗「そんな...」
その姿を見かけた仲間たちが声をかける。
嵯峨「そんな顔をするな。」
雅「吉岡先生が最後に遺した言葉を伝えます。地球を再び平和に。以上。」
嵯峨「EDAの諸君、いいな!」
4人「はい!」
それでも悲しいことは悲しい雄斗、人がいないところで泣き、今までの思い出を振り返っていた。
大学に行くために東京に出て、自国党本部でバイトをしていた時に声をかけたのが当時、副総裁だった吉岡だった。
吉岡「君、新しく入ってきたバイトの子だね。どこの議員付き?」
雄斗「嵯峨長官付です。」
吉岡「君か。綿部伯爵家の次子が嵯峨長官付って聞いたからびっくりしたよ。」
大学を卒業し、嵯峨が総理になり、自身も嵯峨の秘書になった時も
吉岡「君も秘書になったか。よろしくな。」
雄斗「はい!」
などなど色々な思い出が駆け巡った。
ゼロ「色々なことがあったんだな。」
雄斗「ああ。しかし、ベリアルはなぜ戦艦大和を欲しがっているのだ。」
ゼロ「わからんな。」
それを遠くから見ていたのは、東園だった。
東園「貴様に絶望というものを味わせてやる。大切な人が亡くなるのは今日だけじゃないぞ。」
闇に消えていった。
そしてディアボロのアブソリュートハートはというと、密かにタルタロスによって回収された。
タルタロス「このアブソリュートハートがある限り、お前は不死身だ。」
ディアボロ「ぬおおお!覚えてやがれウルトラマンゼロ!この無念晴らしてやる!」
<次回予告>
ついに雄斗たちの前に姿を現した東園がベリアル融合獣へとフュージョンライズし、たちはだかる。
そして伏井出ケイも現れ、町中がパニック状態になる。
第8話「ベリアルの手下、参上!」
次回もお楽しみに!」
戦艦大和がベリアル戦を予期して改造され、ベリアル戦が終わったと共に再び九州坊ノ岬沖に沈み、150年の時を経て対ガミラス戦のために改造されるという算段になっています。