機動戦士ガンダムSEED~偽り~   作:量産型すき焼き

1 / 21
言い訳
原作とは違う点が多々あります。
今回のお話ではアニメでは大西洋連邦という国が太平洋連邦という名前になってます。
そんな違う部分があっても楽しめる人で、機動戦士ガンダムSEEDシリーズが好きな人にオススメかもです。

注意書き
この作品はオリジナルモビルスーツ、オリジナルキャラクター、オリジナル設定など多数含みます。


偽りの始まり

「戦争を回避できないものか」

 

 言葉を発したのは、体格の良い欧米系の金髪碧眼の男性。年齢は五十代に差し掛かろうとしている。

 目の前の大きなモニターには金髪の壮年期の男性が映し出されていた。

 名はシーゲル・クライン。プラントの代表となったと記者会見をしている。

 

「彼が穏健派だとは知っている。だが、ブルーコスモスはこれを利用するだろうな」

 

 男はテレビを見ながら無意識に口にしていた。

 自分に言い聞かせているようで、すぐ側で聞いている人に話しかけるようでもある。

 彼は手を仰ぐ。

 

 今の地球圏は戦争一歩手前の状況であった。

 

 始まりはジョージ・グレンという男の告白からである。彼は人為的に遺伝子を操作されて生み出された人間――コーディネイターだった。

 コーディネイターとは、来たるべき宇宙開拓時代のため、必要と思われる知能、身体能力を獲得しやすくした人間だ。

 彼は善意でそれを全世界に発信。来たるべき外宇宙進出のため、人々に呼びかけたのである。

 

 しかし、それが現在に至る争いの火種となっていた。

 ジョージ・グレンの善意とは裏腹に、世界は一部の悪意のある者たちが戦争へと駆り立てていく。

 それは大きく燃え盛り、地球圏を飲み込むほどの勢いとなりつつあった。

 

「彼らの存在を否定しても、それで自分たちが変わるわけではないというのに」

 

 コーディネイターと呼ばれる人種がいるように、遺伝子をいじらなかった人種もいた。我々は彼らをナチュラルと呼ぶ。

 一部の者達はコーディネイターを妬んだ。

 ナチュラルはコーディネイターのようにはなれない。身体能力も、病気に対する耐性もない。

 

 当時ジョージ・グレンは太平洋連邦ではスターだった。自分たちの子供も、彼のように優秀になれるのでは? 宇宙開拓時代に備えてコーディネイターとするべきでは? 多くの資産家や裕福な家庭では、生まれくる命。自分たちの子供をコーディネイターとした。

 それは純粋な願いからくるものだ。健やかであってほしい。人より優れていてほしい。

 ゆくゆくは我々ナチュラルと同化していき、遺伝子を一歩先へと進化を推し進める存在となる。

 

 だが、そう受け取らなかった人々もいたのだ。

 彼らはコーディネイターに嫉妬し、コーディネイターもまたナチュラルを見下した者がいたのだ。

 持たざる者と持つ者の溝は深い。

 

 憎しみ、嫉妬、差別。それらが火種を育て、とうとう開戦間近まで来てしまった。

 

「そんなのは駄目だ」

 

 男は平和的に解決させたかった。

 今の世界は世界再編大戦の時を繰り返そうとしている。それもひとつの組織によって引き起こされようとしていたのだ。

 それが男には、たまらなく我慢ならない。

 

「ロケットランチャー持って、ブルーコスモスのアジトに突撃したいな」

 

 彼は身ひとつで動ける立場にないので我慢している。が、本心ではブルーコスモスの施設に殴り込みをかけたかった。

 

「おやめください大統領」

 

 女性の心地良い声音に、表情を柔らかくする大統領と呼ばれた男。

 彼の側には女性がひとり。欧米系の目鼻立ちの整った女性だ。年齢も三十代前半といったくらいだ。

 

「なんとか見せかけでも平和にしないとなって」

「言葉を返すようですが、それは問題の先送りです」

「わかっている。わかっているとも。だがね、私は太平洋連邦の大統領だ。認められないよ。戦争で血を流すのは国民なんだ」

 

 男は太平洋連邦の大統領。世界再編大戦の後に生まれた連合国家の大統領である。

 大戦がもたらす悲惨な結果を、彼は歴史から学んでいた。彼以外も知っているはずだった。勝ったとしても経済的な復興は難しい。例え、コーディネイターを奴隷のようにしたとしても現実的ではない。

 戦争は一時的な利益しか生み出さない。それ以上に尊い人命が損なわれていくのだ。何より地球とプラントの戦争が、新たな世界大戦の引き金になることを危惧していた。

 

「世界再編大戦は一世紀以上も前だ。人々はその記憶を忘れているのかもしれない」

「生きた証人もいませんからね」

「全人口の多数を失った戦争だ。記録映像だってたくさんあるんだ。戦争は悲劇しか産まない。それが知ることが出来るはずなんだ」

 

 だが地球圏は、宇宙と地球を股にかけて戦争をしようとしていた。

 

「少なくとも副大統領はそうは考えてらっしゃらないようです」

「彼の批判はやめたまえ。彼だって、好きでああなったわけではない」

「ですが、大統領の立場を、一番脅かしているのは彼です」

「彼の息子は死んだんだぞ? 私も十四になる息子がいる。同じ境遇だったなら、私が彼になっていたかもしれないんだ」

 

 だから、男は副大統領を責めることができなかった。

 大統領としては対話を重ねて彼の意識を変えたかったのだ。

 秘書の女性は一言謝罪すると、話を変えた。

 

「国内の情勢も徐々に戦争すべきと流れています。遅かれ早かれ戦争になってしまいます」

「それでも。それでもだ。時間は必要だ。なんとしても、どんな手段を使ってもだ」

「はい」

 

 時間稼ぎだろうことは男にもわかっていた。それでも、その間に和平と話が流れるかもしれない。その可能性に男は賭ける。

 

 

 

 コズミック・イラ六十八年。シーゲル・クラインがプラントの代表となった同年。太平洋連邦大統領は戦争を回避すべく、各国首脳と会議の場を持った。

 一部を除いて、戦争に反対で意見が統一される。

 しかし、どの国も口を揃えて「そう長くは続かない」というものだった。

 

 太平洋連邦もだが、プラントの物資の輸出が大きく影響していた。

 それを止められた場合、国内感情の悪化は免れないのだ。

 数十年前までは食料などでバランスをとっていたが、それも時間の問題だった。

 

 彼らの技術力ならば、コロニーのひとつやふたつを食料生産プラントに改造するのは朝飯前だ。

 だがそうされては戦争しか道はなくなってしまう。彼らもギリギリまでそのカードは切らないだろう。

 彼らとて戦争がしたいわけではないはずだ。とはいえ、地球にも体面がある。

 

 この時の決議案は「積極的に戦争をしたいわけではない。ただし、プラントの動向によりそれは変わる」というものだ。

 これによりコズミック・イラ六十八年は武力衝突を回避する。

 だが、そう遠くない未来。各国首脳たちは、この一文に後悔することになる。

 

 

 

 かくして世界は偽りの平和を手に入れたのだった。

 

 

 

 同年。オーブの所有するコロニー群のひとつ、コロニー・ヘリオポリスイレブンにとある一家が移住する。

 夫婦と見られる男女が柔和な笑みを浮かべて、はるか上空にある大地を見上げる。

 

「なんだかあの頃を思い出すわね」

「そうだな」

 

 二人はかつて筒型のコロニーで生活をしたことがあった。瞑目すると思い出される景色は炎と立ち昇る黒煙。

 女性は自身の両肩を抱きしめる。夫はそっと背中に手を伸ばす。

 夫は「大丈夫だから」と優しく撫でる。

 

「ここは中立国だ。戦争には巻き込まれないさ」

「そうね。そうだわキラは?」

 

 二人が周囲を見渡すと、元気いっぱいに走る少年。否、全力疾走で何かを追いかけていた。

 少年の視線の先には緑色の鳥。否、鳥型のロボット。電源を入れたところ、自由を得たと我が物顔で飛翔する。

 

『トリィ』

「こらー! 待てってばートリィー!」

 

 

 

偽りだった平和に続く




機動戦士ガンダムSEEDが2022年に20周年になるのだから祝いたいと思ったんだ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定