機動戦士ガンダムSEED~偽り~   作:量産型すき焼き

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注意書き
この作品はオリジナルモビルスーツ、オリジナルキャラクター、オリジナル設定など多数含みます。


アルテミスへ~前編~

「キラ・ヤマト、ストライク行きます」

 

 ランチャーストライカーを装備したストライクは、カタパルトから発進するとすぐにフェイズシフト装甲を展開し、アークエンジェルの船尾甲板に着艦。機体を固定して、ランチャーストライクの最大火力武器、アグニを構えた。

 そこまで自分のことで精一杯だったキラは、アークエンジェルの後方――ヘリオポリス方面――で起こっている戦闘に、息が早くなる。

 武器を構えたものの、全くと言っていいほど撃てる気がしなかった。

 

(あそこで戦っている人たちもオーブの人たち……)

 

 そしてアークエンジェルの中にいるレクリエーションルームにいるトールたちも、オーブの人間だ。

 

(どうすればいいんだ……どうすれば)

 

 周囲にはヘリオポリスイレブン崩壊のデブリが漂っており、視界はよくない。

 威嚇射撃だけでいいと言われている。しかし、どこを狙えばいいのかすら、わからなかった。

 キラはどこを狙えばいいのかわからず、砲身を彷徨わせる。

 

 そんな中、アークエンジェルが巨大なデブリに擦り付けるように、ぶつかった。

 スコープを覗き込んでいたキラは、咄嗟に反応が遅れる。誰かの怒声が飛び込み、慌てて艦尾甲板にしがみつく。

 アークエンジェルから離れれば、ストライクもデブリの海に呑まれてバラバラになる。

 

 フェイズシフト装甲とはいえ、ストライクの破損は免れない。

 キラは肩で息をしながらモニターに映る流星に気づく。

 二つの光の軌跡が、踊るように走る。

 

「すごい」と感嘆の声をあげるキラ。

 

 デブリの間を縫うように、ネイサンとジェイクのメビウスが飛翔していく。

 大小様々なデブリだが、彼らは正確に飛行している。その後方を追いすがるオーブのメビウスは、距離感が掴めていないのか、デブリに激突して爆散していた機体もあった。

 そんな光景に、キラは息を呑む。

 

『ネイサン! ケツにつかれてるぞ』

『振り切れそうにない』

 

 ネイサンのメビウス後方に、オーブのメビウスが張り付く。

 攻撃を回避しながら、デブリの中を飛んでいく。今の地球軍の宇宙軍でこれほどの腕を持つパイロットは少ない。

 ネイサンのメビウスは攻撃を回避しながら、デブリを抜けていく。

 

『これは……いよいよお陀仏かもな』

『馬鹿なこと言ってんじゃねぇーよ!』

 

 直後、ネイサンの背後をとっていたメビウスが爆散。ジェイクが撃ち落としたのだ。

 

『ひとつ借りだ。メアリーに口説くのは俺が先な』

『後ろだジェイク!』

 

 だが、今度は彼の背後にミストラル多数。機銃の雨がメビウスの機体を叩く。

 ジェイクのコックピット内では警告で満たされ、モニターはあちこちが赤く点滅していた。

 ネイサンは操縦桿を暴れさせ、ペダルを踏み込む。

 

『ちぃ! ジョンの次は俺か』

『諦めんな』

 

 ネイサンはメビウスを反転させる。反転したメビウスはバックに慣性航行したまま射撃。ミストラルが多数爆発する。

 

『借りはチャラだな』

『お互い長くは持ちそうにない。最悪俺を見捨てろ。推力が三割落ちてる』

『了解だ。だが、諦めるな』

 

 ネイサンとジェイクの戦闘で、多くの爆発が起きる。

 

 人の命が散る光。ましてやそれがキラにとっては同じ国の人のものだ。簡単に割り切れるものではなかった。

 そんなキラをあざ笑うように、アラートが鳴り響く。

 オーブのメビウスたちがアークエンジェルに追いつく。彼らはミサイルを発射していく。その数、二十。

 

 ストライクは身構えたものの、何もできない。

 

『ミサイル接近』

 

 ロメロの報告にアークエンジェルに緊張が走る。

 

『迎撃! 回避デブリの影に』

 

 マリューの指示にアーノルド・ノイマンは叫んだ。

 

『やってます!』

『くっそ。こっちの迎撃パターン見切られている!』

『さらに奥よりジン接近』

 

 チャンドラとジャッキーの報告が次々に入る。

 

『さすが中立国。なんでもありって言ったところね』

『ミサイル対空砲を抜けます。数八!』

『ストライク。迎撃をしろ!』

 

 ナタルの指示にキラは「無茶だ」と叫んだ。

 

『アグニ以外を使え』

 

 キラは文句を叫びながら、バルカンガンとランチャーストライカーの武器、右肩の武装を使ってミサイルを迎撃していく。

 白黒のメビウス・ストライカーがアークエンジェルの垂直方向上よりビームで援護。

 その後ろにはジンが六機。真っ直ぐに飛ばないようにしているものの、焦っている彼女は無意識に直線的な動きとなっていた。

 

 そんなメビウス・ストライカーを弾丸が襲い、機体が大きく揺さぶられる。

 攻撃の殆どが外れ、ミサイルは一発しか撃ち落とせない。

 ストライクとメビウス・ストライカーの攻撃をかいくぐったミサイルが、アークエンジェルに命中。衝撃と被害をもたらす。

 

 ストライクの足元にも被弾して、機体が浮き上がる。

 キラは咄嗟に機体を操作して、アークエンジェルの艦尾甲板にしがみつく。

 そんなストライクの様子に、オーブ軍は攻撃の手を強めていく。

 

 この時、彼らはストライクが満足に動かせないと認識していた。

 もちろんそれは古い情報で、すでにキラが満足に動かせるようにしているのだが、そんなことを彼らは知らない。

 故に彼らは、無様なストライクの姿に、威嚇目的でしかない。と理解していた。

 

 ミサイルや機銃が、アークエンジェルごとストライクをも襲う。

 

「くそ! トールたちが!」

 

 キラは「何か、何かないのか」と周囲を見渡す。

 ネイサンとジェイクのメビウスは多数のメビウスとミストラルの迎撃で手一杯。

 メアリーのメビウス・ストライカーはジンに追われており、余裕のある機体がアークエンジェルへの攻撃に移り始めていた。

 

 ストライクはアグニを構えるが、その火砲は使われない。

 

『よく持たせた。ムウ・ラ・フラガ、出るぞ』

 

 アークエンジェルの左カタパルトより、メビウス・ゼロが発進。すぐに反転するとアークエンジェルに接近しようとしていたジンを、戦闘機動で防ぐ。

 ガンバレルが四期展開し、一機のジンの右腕、右足を吹き飛ばす。

 

(すごい関節を狙って……)

 

 バランスを崩したところをリニアガンで撃ち、ジン一機を撃退。デブリの海の中に消えていく。

 爆発が起こってないことに、キラは胸をなでおろす。

 

『ぼさっとするなストライク。一機そっちに行ったぞ!』

「え?」

 

 次いでアラート。コックピットの左モニターにジンが目一杯に映り込む。

 重突撃銃を乱射しながらの突進。ストライクは咄嗟に頭部バルカンで応戦。

 コックピット内のキラは、言葉にならない叫び声をあげていた。

 

 幸いにしてバルカンが重突撃銃に命中。爆散。ジンは重斬刀を抜き放つと、そのままストライクに斬り込む。前腕で重斬刀を受け止める。

 キラは衝撃に叫ぶ。

 フェイズシフト装甲が重斬刀を受け止め、火花を散らしながら相転移し、斬撃を無効化する。

 

『よくもコロニーを!』

 

 その声にキラは目を見開く。

 

「ま、待ってください! アークエンジェルには逃げ遅れた人たちが」

『嘘をつくな!』

「僕は、キラ・ヤマト! カトウ教授のカレッジにいた生徒です!」

『知ったふうな口をきくな!』

「何も知らないくせにぃ!」

 

 キラは怒りに任せて蹴飛ばす。

 声にならない叫び。それはアークエンジェルのブリッジにも伝わっていた。

 

「いるんですよ! オーブの人たちが!」

 

 キラは腰部にある装備。アサルトナイフのアーマーシュナイダーを展開。

 ストライクは体当りするように肉薄。切っ先をジンの両肩に突き刺す。衝撃と共に火花が吹き出し、ジンの両腕がだらりと力なく垂れた。

 そのままストライクはジンを掴んで、アークエンジェルの艦尾甲板から引き剥がし、蹴飛ばした。

 

「僕は! 僕はオーブの! キラ・ヤマトだ!」

 

 ジンはそのままヘリオポリス方面と吹き飛ぶが、そこに運悪くアークエンジェルの攻撃が命中。爆発四散した。

 

「そ、そんな……そんなつもりじゃ……」

『次が来るぞストライク』

 

 ジンにメビウス、そしてミストラル。それらがストライクの眼前に迫っていた。

 

「どうして来るんだ!」

 

 キラはランチャーストライク最大火力の武装。アグニを使用。狙いも何もなく、発射した。

 極大な光がデブリを貫通して、何かに着弾。直後に巨大な爆発が起こる。爆発に煽られて、相手の追撃が緩む。

 全員が突然の爆発に、驚き思考が停止した。

 

「何が……」

 

 その時、ストライクのモニターに球体の物体が映り込む。太陽の光が届かないのか、それは不気味なまでに暗い。モニターがコンピュータグラフィックで補正。

 燃料タンクだ。それがアークエンジェルの後方に浮かんでいる。

 それもひとつや二つではない。キラが確認出来ただけで十個はあった。

 

「燃料……タンク……?」

 

 キラは慌てて周囲のデブリを見回す。幸いにもアークエンジェルの進行方向には球体の物体は見当たらない。

 彼らは知らず知らずのうちに、地雷原の中を駆け抜けていたのだ。

 彼は追いかけてくるオーブ軍を確認。

 

「これなら!」

 

 アグニが発射される。ビーム兵器は寸分違わず燃料タンクを射抜き爆発。周囲のデブリがビリヤードの玉のように、あちこちに激突して無秩序に飛び回る。

 さらにストライクはアグニを連射。燃料タンクを破戒して、大爆発を起こしていく。

 あっという間に、デブリが四方八方へと動く。

 

 なんの前触れもなく、そんなことをされたので巻き込まれそうになったネイサンとジェイクは悲鳴をあげながら、アークエンジェルの艦底に潜り込む。

 だが、オーブ軍は彼らのような練度はない。爆発が起こったことで、戦線を維持できず止む無く後退。オーブ軍のメビウスとミストラルはあっという間に退散した。

 

『やるじゃんキラ』

『死にかけたがな』

『結果オーライってことで』

『お前は楽観すぎる』

『でもあのままだと俺たち死んでたぜ』

『確かにな。ミルクでも奢るか』

 

 ジェイクとネイサンは笑う。

 それはアークエンジェルのブリッジでも同じだ。歓喜の声があがる。

 多数の熱源が離れていきます。という報告に彼らは胸を撫で下ろす。

 

 だから、彼らは失念していた。

 オーブ軍のジンがまだいることを。

 爆炎の中から突き抜けるジン。手にはバズーカ砲。ストライクのデータバンクにないことから、オーブ製の武装だ。

 

 その砲口がアークエンジェルのブリッジ後方に狙いを定めた。

 

「させるかぁ!」

 

 キラは咄嗟に飛び上がると、そのバズーカを受け止めて攻撃を防ぐ。

 しかし、それがよくなかった。

 コックピット内に、先程までとは違ったアラート。キラは血の気が引き、モニターのとある部分を凝視。

 

 バッテリーの残量が残り少ないことを示していた。フェイズシフト装甲の展開が維持できず、機体の色は白からモノトーンへと変じる。

 キラはマードック軍曹が言っていたことを思い出す。

 ストライクの補給は満足ではなかったのだ。

 

 ジンのバズーカがストライクに狙う。

 キラの視界はやけにゆっくりだった。スローモーションのように一連の流れがゆっくりと流れていく。

 彼は咄嗟にバルカンガンで抵抗するものの、効果はない。

 

『させない!』

 

 バズーカの発射と同時に白い機体が割り込む。直撃を受けてそのままストライクに激突する。

 次いでメビウス・ゼロが入り込み、ガンバレル四期を巧みに操り、ジンを絡め取る。

 そのまま推力に任せてジンを引き剥がす。

 

『ジンさらに接近!』とジャッキーの報告。

「メアリーさん!」

『ランチャーストライカーをパージ。メビウス・ストライカーを装着して』

「へ?」

『合体するのよ』

「何を……」

『男の子なら、言われたことを早くしなさい!』

 

 キラは言われたとおりランチャーストライカーをパージ。

 コックピット内に『それはまだ未調整だから無理だ』という声が飛び込むが、メアリーはお構いなしだった。

 当然ながらキラも、声を聞き入れる余裕はない。

 

『こんなデブリの中で! しかもシステムが未調整なんですよ!』とマードック軍曹は悲鳴にも似た叫び声をあげる。

『マニュアルで行くわよ』

 

 キラは咄嗟に機体を調べるが、それらしいシステムなどはない。つまり、ぶっつけ本番でやらなければならない。

 

「マニュアルで? 合体を?」

『キラならできる。私を信じて』

「おだてないでください」

『慣性飛行して、私が合わせる!』

「どうなっても知りませんよ!」

『私はみんなを救った貴方を信じてる』

 

 キラは「くそっ!」と叫んで艦尾甲板から飛び上がった。

 スラスターを数度噴射し、慣性飛行状態となる。その背中にめがけて、メビウス・ストライカーが飛び込む。

 メアリーは震える手を抑えるようにして、ストライクとの相対速度を合わせる。

 

 それに気づいたオーブのジンは、標的をストライクとメビウス・ストライカーに変更。彼らの武器が、二機に狙いを定める。

 ストライクとメビウス・ストライカーの距離は数メートルに迫った。メビウス・ストライカーの機首が折れ、他ストライカーパックと同じジョイントが現れる。両機をつなぐようにレーザーが伸び、お互いの距離を縮めていく。

 二人のコックピットに警報。敵にロックオンされたのだ。

 

「狙われてます! メアリーさんだけでも!」

『諦めない!』

「僕はコーディネイターです」

『見捨てないって言ってるの!』

『させるかぁ!』とジェイクの声が飛び込む。

『仲間をやらせるかよ!』

 

 メビウス二機が艦底から姿を見せて、ジンを奇襲。攻撃の狙いが乱れ二機をかすめていく。

 それでも一発が抜ける。それもバズーカの弾だ。それは寸分違わず直撃。爆発が起こった。

 爆炎が二機を包む。

 

 

 

 

 

 艦内のモニターで見ていたトールたちは絶叫した。

 自分たちを守るために出撃した友人。それが同じ国の軍隊の攻撃を受けたのだ。

 その衝撃は、計り知れない。

 

「一緒に戦ってやれば……」

 

 トールは崩れ落ち、涙をこぼす。

 彼のようにオーブの他の面々も顔を俯かせて、表情を暗くしていく。

 次は自分たちの番である。

 

「待って。何かおかしい」

 

 サイの声で全員がモニターを再び見た。

 爆発の中から、四条の光が伸びる。それはジンの四肢を穿っていく。

 爆炎の中から白い機体が、その姿を見せる。

 

「キラ!」

「キラ……」

 

 トールとミリアリアは手を取り合い、涙をこぼしながら喜びの声を上げた。

 

「いけキラ!」

「頼む~頼むよキラぁ~」

 

 サイを届かないとわかっていても、声援を送らずにはいられない。カズィは両目をつぶって手を組み、祈りを捧げるようにした。

 

「キラァやったれ!」とソウマ。

「死なないでキラ先輩」

 

 ストライクは両脇から抱え込むように長大な砲を二門。メビウス・ストライカー機首についていた二門のビーム砲は前面へと展開し、それらが発射されていく。

 狙いをつけない出鱈目な攻撃。しかし、オーブ軍には効果覿面だった。ジンは、苛烈な攻撃に慄き、後退したのだ。

 オーブ軍が立て直させないように、メビウスストライクは、さらに攻撃を続けて残った燃料タンクも爆発させる。

 

 彼らは完全に安全圏に逃げ延びることに成功する。

 艦内の放送を聞いて、アークエンジェル内にいる全員が歓声をあげた。

 レクリエーションルームにいる面々は、お祭り騒ぎとなる。今にも飛び出して彼らの英雄を胴上げしたい気分だ。

 

 レクリエーションルーム前を警護している地球軍の兵士たちも喜びのハイタッチを交わす。

 しかし、彼らはすぐに表情を硬くする。

 

「さて、次はどうなるかな?」

「バジルール少尉は、ユーラシア連邦に対する危機感が薄いようだ」

「同じ地球軍だけどよぉ」

 

 それを聞いたソウマとジークフリートは、顔を見合わせる。

 

「やれやれ。またなんかありそうだな」

 

 これ以上は御免だと肩を竦めるソウマ。

 

「ひと悶着で済めばいいが」とジークフリートは唸った。

「どうかしたの?」

 

 近くにいたトールが首をかしげる。

 

「いやね。キラにばっか色々やらせるのもね」

 

 ソウマは誤魔化すように、先程思ったことを口に出す。

 

「あ、それ俺も思った」

「待て待て。お前たちは余計なことするな」

「なんでだよ。ってか、まだ何も言ってませんけど」

「言わなくてもわかる。それがかえってキラを縛り付けるんじゃないか?」

「でも、何もしないわけにはいかないじゃんか」

「だよなぁー」

 

 それを言われたら何も言い返せないと、ソウマは両手を上げる。

 

 

 

 

 

「データは取れたな?」

 

 ヴェサリウスの艦内にラウの声が響く。

 

「はい。オーブ軍のおかげで貴重な情報を得ることが出来ました」

 

 アデスの言葉に満足そうに頷くラウ。

 これにより、クルーゼ隊はアークエンジェルの対策をとって戦闘することが可能である。

 相手の戦闘能力をどれだけ把握できるか。それが戦闘において、自分たちを優位にするのだ。

 

 オーブ軍と地球軍の戦闘は、彼らにとって有意義なものであった。

 なにせ自分の部隊は損失することなく、相手の能力を知ることができたのだ。

 手柄を焦る部隊であれば、無理矢理にでも戦闘に介入しただろう。

 

 彼は命令をガモフに打電を命じると、ヴェサリウスには反転を指示させる。

 ガモフは後詰めのイン隊所属の艦との合同作戦だ。

 その間、ヴェサリウスはイン隊の本隊と合流し、本国へ戻る流れだ。

 

 戦闘が終了するのと同時に、評議会より招集の命令が飛んできた。すぐに戻らなければならない。

 だが、その前にやらねばならないことがある。

 

「ブリッジに救助した人々を」

 

 クルーゼ隊は数人だけだが、オーブの逃げ遅れた人々を救出していた。

 それをヘリオポリスに引き渡す必要があるのだ。戦闘終了を確認してから、彼らはレーザー通信でヘリオポリスとコンタクトを取った。

 救助した人の顔とID情報を提示し、必要であれば救助ポッドに入れて送ることを提案。

 

「妙ですね」

「反応が鈍いな。嫌われてしまったかな?」

 

 ヘリオポリスからの応答が遅かった。

 彼らは二つの選択肢で迷う。ひとつは救助ポッドだけを射出して、撤退するべきか。もうひとつは応答を待つべきか。

 クルーゼは座席に深く座り込み、肘置きの上で人差し指から薬指まで、リズムよく叩く。

 

「どうしましょう?」

「こうも反応がないと、打つ手なしだな。救命艇を射出したとだけ伝えて行くか。イン隊を待たせてしまうしな」

 

 その時だった。

 

「オーブより電文」

「読み上げろ」

「ヘリオポリスワンにて出迎える。そちらに入港されたし」

「ヘリオポリスワンに? テンではなく?」

 

 ラウ・ル・クルーゼは不敵に笑う。

 

「なるほど、向こうにも色々と事情はありそうだ。イン隊に打電。我遅れる。アスランを送ると、それまで合流ポイントで待機されたし、と」

 

 ブリッジにいたアスランは驚く。

 

「私、だけ? 単独でありますか?」

「イン隊も戦闘能力はあるとはいえ、補給を受けてない状態だ。先行してイン隊の護衛に回ってほしい。何より君の機体、イージスは変形することで航続距離を延ばすこともできるしな」

 

 外付けのブースタなどで、イージスを射出するとラウは言う。

 

「念の為だアスラン。頼めるかな?」

「了解しました」

「助かるよ。アデス、作業を急がせろ」

 

 アスランは急いで更衣室に向かうと、パイロットスーツを着用。素早く格納庫に向かうと羽なしのジンが視界に入る。

 

(キラ……お前のプログラミング、相変わらずだな……)

 

 そんな彼の視界の前に整備兵がひとり。

 

「アスラン、説明する」

 

 艦内で変形が済んだイージスには、外付けのブースタがすでに装着されていた。

 外付けといっても、無理矢理接続したためイージスからは操作することは出来ない。

 機体が出撃後、タイムラグでブースタに火が点火されると、アスランは説明を受けた。

 

 イージスに乗り込み、アスランはモニターに映った羽なしのジンを見る。

 アスランは小さく息を吐くと、イージスのコックピット内の電源を入れた。

 モニターに各種パラメータが表示され、機体に異物が取り付いているとアラートが出る。

 

 アスランはそれをキーボードで操作して、警告を取り消す。

 

『カタパルトオールグリーン。星の加護があらんことを、イージス発進どうぞ』

「アスラン・ザラ。イージス、出る!」

 

 変形した状態でイージスは発進する。数十秒後、外付けのブースタが点火し、イージスは真っ直ぐと、イン隊が待つ場所へと飛行した。

 それを見送った仮面の男は不敵に笑う。

 彼はゆっくりと口を開く。

 

「よし。ヴェサリウス、ヘリオポリスワンへと進路をとれ」

「ミゲル機、発進急げ」

「先程から何度も悪いが、デブリの中で待機していてくれ」

『了解です隊長』

 

 ミゲルのジンはカタパルトではなく、機体の膂力による慣性航行で出撃。オーブに気取られないためだ。

 そして彼は、姿勢制御用のスラスターだけでデブリに取り付く。

 彼の任務は、ヴェサリウスが何か起きた際に対応するのが目的だ。

 

「まあ、無駄だろうがな」

「それはどういう?」

「恐らく向こうの目的は、何か別だろう」

「鬼が出るか蛇が出るか」

 

 仮面の男の勘は、ザフト軍にとって良いものだと告げていた。

 

 

 

 

 

~続く~




次のお話も見ていただければ嬉しいです。
次回の更新も来週の土曜日になります。

メタルビルドのプロヴィデンスガンダムがほしいいいいいいいいいいいい!!!!

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