機動戦士ガンダムSEED~偽り~   作:量産型すき焼き

11 / 21
注意書き
この作品はオリジナルモビルスーツ、オリジナルキャラクター、オリジナル設定など多数含みます。


アルテミスへ~後編~

「どうしたんだ?」

 

 ネイサンとジェイクが目にしたのは、ストライクのコックピット周辺の人集りだ。

 それが町中であるなら彼らも気にはしなかった。

 しかし、ここがアークエンジェルでモビルスーツやモビルアーマーを格納する倉庫なので、彼らは気にするのである。

 

「いや、坊主が――」

 

 ストライクはハンガーに収められているが、いつまで経ってもコックピットが開かないのである。

 パイロットは無事なのか、マードックたちは不安を募らせていた。

 そんな中ジェイクは呑気に手を叩く。

 

「なんだ?」

「よくよく考えてみろよ。こんなの当たり前じゃん」

「何がだ。主語を言え主語を」

「ガキに戦争させたんだぜ? 他国の戦争を知らないガキにだ。ガチの戦闘させたんだから、いつものやつのひどい版」

 

 その場の全員が納得した。

 キラ・ヤマトは戦争の知らない子供だ。コーディネイターで、プラントでは成人の年齢かもしれないが、オーブや地球連合軍に参加している国の大半の法律では子供である。

 そして、彼は戦場を経験したことがない。おまけに相手は自国の人間だ。

 

 彼はコックピットの中で動けなくなっている。生き残ったことすら信じられないと。

 新兵ではよくある話だった。ネイサンもジェイクも何度となく見てきた光景だ。

 

「たぶん、認識してなくとも自分の国の人間も――」

「おいよせジェイク」

 

 ネイサンはジェイクの肩を掴んでやめさせる。

 

「とりあえず引っ張り出すぞ。荒療治だがな。コックピットを開けろ」

 

 開かれたコックピットの中では、強張った表情のまま俯いて座ったままのキラ。

 それを確認して、ネイサンとジェイク、そして後ろで控えていたマードック軍曹は胸をなでおろす。

 ネイサンはなんと声をかけていいのかわからず、新兵にやるように怒鳴りつけた。

 

「馬鹿野郎! お前のせいでこっちは死にかけたんだぞ!」

 

 彼は何の知らせもなく燃料タンクを吹き飛ばしたことを、怒ることにしたのだ。

 

「とか言ってるが、めちゃくちゃ感謝してるから」

「え?」

 

 ジェイクの言葉にキラは驚き、ネイサンに視線を向けると、彼はバツが悪そうに視線を逸らす。

 

「まあ、でも助かった。いい手だった」

「ありがとうございます。だろ」

 

 ジェイクはネイサンに手でキラへと感謝の言葉を促すようにした。

 

「ありがとう。お前にならストライクを任せられる」

「おう。たっぷり感謝しろよ」

「なんでお前が偉そうに言ってるんじゃい! 俺はお前にお礼を言ったつもりじゃないからな!」

「俺がいることに感謝しろよ」

「お前こそ、俺に助けられただろ!」

「二人は放っておいて、そろそろ出てくれ坊主」

「あ、はい」

 

 キラがコックピットから顔を出すと、警報が鳴った。

 巨大な戦闘機が機密ハッチから姿を見せる。その数は二つ。ひとつはムウ・ラ・フラガのメビウス・ゼロ。もうひとつはメアリー・セーラーの乗るメビウス・ストライカーだ。

 両機は格納庫の定位置に運ばれると、程なくして二人共コックピットから姿を見せる。

 

「よくやったメアリー。それにキラ」

 

 ムウはネイサンにウインクして、会話に加わる。

 

「さすがだね。訓練無し。おまけにぶっつけ本番でやるなんて、君は優秀だよ。おかげで俺も、みんなも生きてる」

「いえ、それでは僕は――」

 

 ムウはその場を後にしようとしたキラを、肩を組むようにして止める。

 

「おっと、待った。キラにお願いしたいことがあるんだ」

「はい?」

 

 悪戯を思いついたような顔に、全員の頭に疑問符が浮かぶ。

 

「君のストライクとメアリーのメビウス・ストライカー。どっちも起動プログラムをロックしておいてほしいんだ」

「はい? 待ってください。ストライクは僕のじゃ――」

 

 ネイサンとジェイクの表情が一変する。それに驚きキラも言葉が続かない。

 

「それは……」とネイサンは言葉に詰まった。

 

 ムウはこれから逃げ込む先、ユーラシア連邦を言外に信頼していないと言っている。

 

「用心だよ用心。何もなかったら後で笑い話になるだろ?」

「やれやれ。大変なことになりそうだ」とネイサンはジェイクと肩をすくめ合う。

「熱烈歓迎してくれるなら、ユーラシア連邦美女たちにお願いしたいぜ」

「お前はすぐにそれだ」

「本能に忠実と行ってくれ」

「かっこつけてるつもりか」

「今気づいた? 俺っていかした男なんだよ。ってところで今夜どう? メアリー」

 

 メアリーは手だけのジェスチャーで断る。それを見てネイサンは笑い、ジェイクは肩を落とす。

 

「とにかく、最新鋭機である二機の情報をロックしたい。できるか?」

 

 キラは頷く。

 それを確認してから、ムウは周囲にいる整備兵たちに声をかけた。

 そんな背中に少年は疑問を抱く。

 

「あの、こんなことってよく、あるんですか?」

「いや、だがユーラシア連邦と太平洋連邦は仲が良くない」

 

 キラの疑問にネイサンが応じる。

 

「再構築戦争でも結構やり合ったって話だしな」

 

 ジェイクは更に「そういう風に歴史を学んでるから、ユーラシア連邦には好意的になれない」と付け加えた。

 

「戦闘の後で疲れているでしょうけど、キラ。手伝ってくれるかしら?」

「は、はい」

 

 メアリーはまずはストライクからと言うと、自身の機体へと向かう。

 ネイサンとジェイクも、自分たちの機体へと戻る。いつでも出撃できるように、準備しておくためだ。

 彼らの姿を尻目に、キラは胸中複雑な気持ちだ。

 

(ストライクが……僕の、機体?)

 

 見上げた機体は何も言わず、ただそこに鎮座していた。

 キラにはそんな機体に試されているような眼差しを感じる。

 彼は大きく息を吐くと、足元を蹴ってストライクのコックピットに滑り込む。

 

 コックピット付近にマードック軍曹が控えていたが、補助無しで入った。そのことに彼は口笛を吹いて見せる。

 

「じゃあ機体のロック頼むぞ坊主」

「あ、はい」

「後、一応いつでも出せるように整備しておきたい」

 

 彼は補給に必要な項目を列挙してくれと、口早に言う。

 まくしたてるような勢いに、キラは目を白黒しつつも、機体のステータスをモニターに表示。

 言われたことをすべて列挙していく。

 

「ああ、そうだ坊主。悪かったな補給が間に合ってなくて。ピンチにさせちまった」

 

 キラは何かを言おうと口を開くが、言葉はすぐに出てこない。そうこうしている間にマードック軍曹は続きを言う。

 

「助かったぜ坊主。お前のおかげだ」

「いえ、僕はただ……」

「わかってる。俺たちはついでだ。それでも命があるのは、お前のおかげなんだ」

 

 人の良さそうな笑みを浮かべるマードック軍曹に、キラはどういう表情を浮かべていいのかわからない。

 彼はなんとか笑みを作って、言葉にならない声で応じた。

 そんな彼の様子にマードック軍曹は、豪快に笑いながらストライクの頭部へと移動。

 

「ロック頼んだぞ」

「はい!」

 

 キラはコックピットにあるキーボードを引き出すと、瞬く間に機体の情報をロックする。

 

「あ、マードック軍曹いますか?」

 

 キラは何かを思いつき呼んだ。

 

「なんだい坊主?」

 

 彼はまだストライクの近くにいたのか、呼び声にすぐに反応する。

 

「機体のロックについてなんですが――」

 

 キラはロックに万全を期すために、マードック軍曹の指紋認証と、パスワード入力を求めた。

 彼はそこまでする必要があるかとも、疑問を口にしながらも近くにいた整備兵ひとり捕まえて、ロックを複雑にする。

 

「俺とこいつの指紋。そしてパスワードがないと駄目だな」

「はい」

 

 立ち会った整備兵も頷き、そして口を開く。

 

「軍曹、どうするんです?」

「何がだ?」

「緊急発進する場合や、ロック解除される時とか」

 

 キラはロックすることまでしか考えていなかった。

 コジロー・マードックは確かにと顎に手をやる。

 軍人であるため、色々な状況を想定しておくべきだろう。三人はうんうんと唸る。

 

「そうだ。こういうのはどうだ? 緊急的に発進した場合のみロック解除するんだ。たった一回だけの例外だ。できるか坊主?」

「モビルスーツ用のハンガー。ストライカーパックと連動させるというのは、どうでしょう?」

 

 緊急時のロック解除手段はハンガーからの離脱と、その後数分以内にストライカーパックの装着で、一時的にロックが解除できるようにと考えた。

 

「少し手間だな。だが、その方が安全そうだ。坊主、整備手伝えるか?」

 

 キラは逡巡したが、脳裏にトールたちが過ぎった。

 

「はい。工業系の……モルゲンレーテのカレッジに行ってました」

「そいつは朗報だ。手を貸してくれ」

 

 キラは頷くと、マードック軍曹は更衣室に行けと言う。

 整備兵が自身の作業用の制服を引っ張って見せる。

 それに着替えろということかと理解する少年。

 

「これに着替えるんだ」

「案内してやれ」

「了解です」

「こっちはその間。用意しておく」

 

 二人は急いでコックピットを後にする。

 マードック軍曹は「やれやれ」と言いながら頭をかき、ストライクを見上げた。

 物言わぬ兵器。コジローは親がやっていたことをふと思い出す。物に神様が宿るという話だ。

 

「いいパイロットに巡り会えたな。俺もお前に相応しい整備兵になるからよ。坊主のこと頼むわ」

 

 

 

 

 

 アークエンジェルのブリッジでは、安堵の空気に包まれていた。

 ロメロはアルテミスとコンタクトが取れたことを告げると、それはより一層強くなった。

 マリュー・ラミアスはもちろんのこと、ナタル・バジルールも表情を柔らかくする。

 

 程なくしてアルテミスより臨検のための艦が、アークエンジェルにやってくる段取りだ。

 

「ユーラシア連邦の人でもいいから、補充要員ほしいぜ」

「交代要員すらいないしな」

 

 チャンドラとジャッキーは、疲れた様子を隠さない。

 アークエンジェルは、人員が不足していた。どうにかして補充しなければならない状況だった。

 マリューとしても、チャンドラの提案には同意したいところだ。

 

 しかしそうもいかない。アークエンジェルやGに関しては、太平洋連邦が主導となって、開発などを行っている。

 そしてその人選も、地球軍のハルバートン提督が大きく噛んでおり、太平洋連邦の人員だけで構成していた。

 彼女はその人選でも、何かしら政治闘争があったことは想像している。それでも太平洋連邦の人間だけで人選が固められているのは、理由があるからだろう。

 

 なので、ユーラシア連邦の人員を補充要員として入れるのは難しい話だ。

 第八艦隊に合流しなければ難しいだろう。それまでは自分も含めて全員が寝る間も惜しんで艦を運用するしかなかった。

 とはいえ、アルテミスで少し休めるはずだ。第八艦隊の援軍をここで待つ。すべてはそこからだ。

 

「アルテミスでは、少し休めるようにシフトを組みましょう」

「そうですね。ザフトもアルテミスの中にまで入れないでしょう。私個人としてはあまり好きではありませんが、ブリッジの人員を削って運用しましょう」

「そうね」

 

 マリューとしても、ブリッジの人間を減らして運用することは反対だ。

 とはいえ、そうでもしなければ休む時間がとれない。それはマリューやナタルも同じだ。

 ここまで休みなく働いているため、彼女たちの顔にも疲労の色が出ている。

 

「後は、フラガ大尉らにも協力していただきましょう」

「そうね。しばらくパイロット業は休んでもらうしかないわね」

「それと、オーブの……」

 

 マリューはひと呼吸置いてから、静かに頷く。

 

「そうね。アルテミスから連絡してもらい、救命艇を出すなりしましょう」

「戦力の大幅ダウンは痛いですが、このままコーディネイターを乗せるのは」

「違うでしょ。他国の子供を乗せるのは、でしょ」

「そうではありますが、現実に彼はコーディネイターです。その部分もちゃんと認識しておいた方がよろしいかと」

 

 マリューは「そうね」と言いながらも、ナタルの言葉には納得していなかった。

 太平洋連邦の技術研究所には、コーディネイターがそれなりにいた。

 彼女の友人の中にもコーディネイターはいるため、彼らの存在をすべて敵と認識できない。

 

(彼らの思考により過ぎている……と、考えるのは時期尚早か)

 

 そのことを軍人家系のナタルには、わからないのである。だから、敵を乗せていると割り切れるナタルとは相容れない考えであった。

 とはいえ、今の状況を軍の上層部がこの報告を聞けばどうなるか。彼女は容易に想像がつく。良くて降格。悪くて銃殺刑だ。

 この難局を乗り越えても、彼女の将来は暗い。

 

(今はとにかく、アークエンジェルとストライクを月面基地に送り届けなくちゃね)

 

「どうかしましたか?」

「いえ、なんでもないわ」

 

 それから二人はこれからのことを話し合う。具体的にはアルテミスにこもりつつ、友軍の増援を待つことだ。

 籠城する場合、増援を待つのがセオリーだ。恐らくザフト軍に追跡はされていると彼女らも予想していた。

 なので、増援部隊とザフト軍を撃退し、そのまま増援部隊と共に月面基地へと向かうというのが、彼女らの理想だ。

 

 

 

 

 

「――というのが、足つきの考えだろうな」

 

 ガモフのブリッジでゼルマンは口にする。

 ローラシア級の戦艦ガモフは、足つきのはるか後方から追跡をしていた。

 その姿ははっきりとキャッチしているが、追いつくことは叶わない。

 

 現在のガモフは特異な状況下にある。

 運用しているモビルスーツは全部地球軍の新鋭機だ。そしてパイロットも、赤服とはいえ最近補充されたばかりの者しかいない。

 機体の整備もジンと共用の部分は流用できるが、それ以外は何も出来ない。

 

 戦闘に不慣れなパイロット。実戦で多用できない兵器。これらで作戦に当たらねばならない。

 武器弾薬などはヴェサリウスが本国に戻れば、吸い出したデータを元に少量ではあるが見繕ってくれる予定だ。

 とはいえゼルマンとしてはオロールだけでも、ガモフに欲しかったが作戦の都合上、それは通らなかった。

 

「隊長の作戦通り俺たちは待ち伏せしつつ、地球軍の増援部隊を叩く。足つきにはそのまま餌となってもらう」

 

 彼は気怠そうに言い終えると、軍帽を被り直した。

 作戦は本格的な戦闘ではない。不意打ちして一撃離脱。幸いにもこちらには遠方から射撃ができるバスターとスティンガーがいる。

 本格的にモビルスーツを展開するというよりは、だましだまし戦闘をしつつデータをとるという形になるのだ。

 

「足つきはアルテミスにいるのだろう? なら、攻め込めばいいじゃないか」

 

 それを聞いていたイザーク・ジュールが異を唱える。

 

「クソ真面目かよ。そういうの勘弁してくれよな」

「今なら、イン隊もいないし、手柄は俺達のものじゃん」

「隊長の作戦なら、俺らは楽して足つきを落とせるんだぞ?」

 

 イザークとディアッカの提案を、ゼルマンは却下した。

 彼らの言う通り、アルテミスに攻撃しなければならない場合もあるだろう。

 しかし、それはハイリスクハイリターンである。クルーゼ隊の赤服であるため、作戦の確度は高いい

 

 が、ゼルマンはリスクの方を問題視して、アルテミスを攻略しにいこうとは考えない。

 

「いいか? 戦略的に価値のない要塞だがこっちの攻撃は届かないんだ」

 

 アルテミス宇宙要塞は難攻不落だった。戦争初期は攻撃を仕掛けたこともあったが、その防御力は折り紙付きだ。

 いかなる攻撃も防ぐアルテミスの傘は、光波防御シールドにより、実弾はおろかビームの攻撃すら防ぐ。

 そのため外から攻撃して攻略するのは難しかった。

 

 ただ、アルテミス宇宙要塞は、ザフト軍にとっても地球軍にとっても戦略的価値が低い要塞だった。

 主要戦場より遠いため、戦場に影響を及ぼさないのだ。

 そのため、こんにちまでザフト軍は積極的に攻撃をしないだけだったのである。

 

「そんなところに重要気密が運ばれても、どっちもすぐに動けんよ」

 

 だからこそ、ザフトはアルテミス宇宙要塞を包囲しておく必要があった。

 

「お前ら歴史の勉強しないのか?」

 

 イザークはその煽り文句に怒りを顕にして声を荒げるが、ディアッカがなだめる。

 ゼルマンはどこ服風で、宙域図を見つめる。

 様子を見守っていたニコルとラスティーがようやく会話に加わった。

 

「落ち着いてくださいイザーク」

「なんで歴史の話なん?」

「籠城する場合のメリットデメリットの話でしょうか?」

 

 ニコルの言葉に頷くゼルマン。

 

「籠城ってのは、味方の援軍があって成り立つ作戦だ」

「そんなのはわかっている。クルーゼ隊がそんな軟弱な作戦でいいのか」

「お前は隊長の作戦にケチをつけるのか?」

 

 いつも気怠そうに言うゼルマンだが、その時だけは冷淡に言う。

 その場にいた赤服は一瞬圧倒される。

 イザークが何かを言うより先に、ゼルマンは話を続けた。

 

「援軍が届かなければどうなるか? 要塞の中で内乱だろうな」

「そんな悠長な」

「そうでもない。アルテミスへの定期補給便は、大分前だ。そして足つきも奇襲を受けてろくな補充も出来ていない」

 

 つまりどちらも食糧などの備蓄は少ない。

 ゼルマンたちが援軍を叩いていく間に、相手は相手で内紛を起こしてくれる。という寸法だ。

 アルテミス宇宙要塞はユーラシア連邦所属。足つきは太平洋連邦所属。思った以上に早く、内部分裂を引き起こしてくれるだろう。とゼルマン。

 

「なら例外があった場合はどうする?」

「もちろん攻撃だ」

 

 ゼルマンの即答に、イザークは満足そうに笑い、ディアッカは口笛を吹いた。

 

「なら、その場合の作戦の立案を――」

「それも隊長が考えている」

「さすが隊長だな」とディアッカ。

 

 ゼルマンはそこでふと考える。

 

「よし。隊長の作戦を開示する。お前たちで意見を交わしてみろ」

 

 ゼルマンは現状の艦の状況。そしてモビルスーツへの武器弾薬の補充の状況を説明。

 後はイザークたちで話し合わせることとした。

 もちろんその話し合いで間違った方向に行こうとすれば、彼は口を出す。

 

「イン隊の戦力はどうする?」とラスティーが口火を切る。

「部隊間での連携は難しいだろう」

 

 イザークの指摘に全員頷く。この時点で彼らはイン隊はイン隊で動いてもらい、クルーゼ隊はクルーゼ隊で動く方針で考えていく。

 

「武器もなるべくジンのを使っていった方がいいですよね?」

 

 ニコルの提案に、ラスティーは確かにと頷く。

 

「バスターの実弾系の武器なんかは、連射すればあっという間に使えなくなるぞ」

「イザークもバルカンあんま使えないんじゃないか?」

 

 イザークとディアッカは互いに、使うとなくなる武器を指摘し合う。

 

「なら、基本的にビーム系で攻撃していく感じか」とディアッカは拳を作り自分の手のひらを殴りつける。

「光波防御シールドはビームも効かないよな?」

 

 ゼルマンは頷き、過去の戦闘データを閲覧する。ローラシア級の火力をもってしても、突破できなかった映像が確認された。

 

「クルーゼ隊長の作戦だと?」

 

 イザークの問いにゼルマンは、ヘリオポリスのデブリを使う作戦だと説明。

 傘は常に開いているわけではないデブリに紛れて、近づく。

 幸いヘリオポリスイレブンのデブリは、程なくしてアルテミスにも流れ着く。

 

「でも、デブリが近づくと傘は開きますよね?」

 

 ニコルの指摘に全員が頷く。

 

「アルテミスの近くを横切るようにやれって話だがな。博打な部分はある。傘が開かなかったとしても、そこからモビルスーツが動き出して中に入り込めるかも微妙だ」

「案外ナチュラル共、バカでグズだから気づかないんじゃないか?」

 

 ゼルマンの話に、イザークは楽観的な意見を口にする。ディアッカもそれに同意を口にする。

 

「なら、ブリッツとスティンガーを使うのはどうでしょう?」

「ああ、そうか。確かにあの二機なら」

 

 ニコルの提案にラスティーは首肯する。

 

「そういうことか。オーケーそれで行こう。あの二機ならカバーしあえるな」

「ただ、本当にあれって使えるのか?」

「どこかで試す必要はあるだろうな。ぶっつけ本番ってのは――」

 

 イザークは意味ありげにゼルマンを見る。

 

「ああ、俺も反対だ」

 

 ゼルマンは同意して、どこかで試そうと提案。

 

「艦長。足つきがアルテミスに入港します」

「こちらは捕捉されているな?」

「はい。警告来ています」

「よし、敵にわかる位置で待機。ハイヤームを待つぞ」

 

 

 

 

 

 アークエンジェルの格納庫にアラートが鳴る。

 鳴り止むとロメロの声が艦内に響く、アルテミスより臨検艦が着艦するという話だ。

 キラたちはそれを聞いて、急いで作業の後片付けをしていく。

 

 数分後には機密ハッチが閉じられ、しばらくすると開き、そこには救命艇にも使える、十数人しか乗れないタイプの艦船がひとつ。

 彼らは整備班の案内に従って、格納庫に着艦すると、恰幅の良い地球軍の士官が降りてくる。

 ユーラシア連邦の軍人らは、ストライクとメビウス・ストライカーを興味深そうに眺めていた。

 

「ブリッジはこちらになります」

 

 案内に出たのはカオル・ウラベ。

 

「このモビルスーツのパイロットは?」

 

 カオルはキラを視界に入れないようにする。

 

「現在は休憩中でして、後でご挨拶させていただきたいと思います」

「そうか。ご苦労」

 

 士官と合わせて二人が、カオルの後についていく。残りは格納庫に残ってじっくりと見回していた。

 どこか物々しい雰囲気に、キラ・ヤマトは違和感を抱く。

 マードック軍曹はキラの後頭部を小突くと、耳元で囁いた。

 

「こっちはもういい。レクリエーションルームに戻れ。後、作業服は脱いでおけよ」

 

 キラは小さく頷く。

 

「交代時間だ。お前たちさっさと動かんかい!」

 

 マードック軍曹はひときわ大きな声を出し、ユーラシア連邦の面々の注意を引いた。

 彼は注目を集めるように、あれこれ指示を出す。

 キラは格納庫を後にし、更衣室で着替えをすますと、入り口にメアリーが待ち構えていた。

 

「あの……」なんでしょうかと聞こうとしたキラ。

「何があってもストライクのパイロットって言っちゃ駄目よ」

「みんなが傷つけられても?」

「そう。私や誰かが死んでも、駄目よ。貴方たちにとって私達は敵みたいなものだし、そういう風に思いなさい」

 

 キラが言葉を紡ぐより早く、メアリーはその場を後にする。

 敵という言葉だけが、少年の頭の中で反響。憎いと思う部分もあった。

 とりとめもない考えをした後、彼は言われたとおりレクリエーションルームに戻り、トールたちに歓迎される。

 

「遅かったじゃないか」とトール。

「さっきの衝撃、アルテミスについたの?」

 

 サイの質問に、キラは頷き肯定する。

 

「あのロボットはどうしたんです? キラ先輩」

 

 レクリエーションルームが騒がしくなると、入り口にいた兵士が慌てた様子で叫んだ。

 

「お前たち、そいつがストライクのパイロットだって言うなよ」

「ど、どうしたんだよ。地球軍のおっさん」

「おっさんじゃない! まだ二十代だ」

「え、四十代かと」

 

 ミリアリアの言葉にミコトが頷く。女子の反応に警備していた兵士は肩を落とした。

 

「い、今はそんな話はいい! いいな! お前たち俺たちはお前たちを戦争に巻き込んだワルモンだ。だから、キラだけは守ってやれよ!」

 

 全員が不安そうな顔になる。

 

「大尉の言ったとおりになったんだ」

「どういうことだよ?」

 

 キラのユーラシア連邦の説明に一同驚く。

 

「じゃあキラを奥にでも隠す?」

「それじゃあかえって怪しまれる」

 

 話を聞いていたジークフリートが口を挟む。

 

「避難民らしくしていようじゃないか。ただ、女子供は奥に、大人の男たちは入り口付近を固めよう」

 

 彼の提案にしたがって全員が動く。

 

『アークエンジェル艦内にいる全員に告ぐ、ユーラシア連邦の士官の指示通り動くこと――』

 

 

 

 

 

~続く~




登録はお任せしますので、次のお話も見ていただければ嬉しいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定