この作品はオリジナルモビルスーツ、オリジナルキャラクター、オリジナル設定など多数含みます。
アークエンジェルのブリッジは騒然となる。
アルテミス宇宙要塞の内部に入ったマリュー・ラミアスたちを待ち受けていたのは、銃口を向けてくる友軍たちだった。
白い船体の周りにはモビルアーマーや、武装した兵士たちがたくさん伏せていたのだ。
「これはどういうことですか少佐殿」
ユーラシア連邦軍の少佐は、彼女らに落ち着くように言う。
「貴艦は所属不明艦である。したがって、この処置は仕方がないものだ」
彼らの言い分としては、識別コードもないアークエンジェルは怪しいという。
ザフトによる、トロイの木馬である可能性があると言うのだ。
地球軍の正式の友軍とわかるまで、この処置は止む得ないものだと言う。
そうこうしている間にアルテミス宇宙要塞に所属している陸戦部隊がアークエンジェルに取り付き、瞬く間に制圧していく。
その銃口はレクリエーションルームまでおよんだ。
しかし、暴行などはなく、キラたち避難民の扱いには慎重になり、彼らは入り口に警備員を置くだけにとどめるだけとなった。
「士官の方にはご同行願おう」
「そんな……」
少佐は乗員名簿を提出するようにと命じると、連れ立ってきた士官と共にマリュー・ラミアスらを連れて行こうとする。
「艦長」
「わかっているわ。でも、今は従いましょう」
ナタルの抗議はもっともだ。マリューも彼女と同じ気持ちである。
同じ地球軍なのに識別番号がないというだけで、この扱いは不当だ。
彼女らの後ろには銃口を突きつけてくる兵士。そのまま従いブリッジを後にする。
「押すなよ。歩いてるだろ」
道中、両手を上げたムウ・ラ・フラガとカオル・ウラベ、メアリー・セーラーが合流する。
「いやはや、まいったなこりゃあ」
「無駄口を喋るな」
ユーラシア連邦の兵士は銃口をムウの背に押し当てる。
「はいはい」
「刺激しないでください大尉」
マリューはムウを嗜める。
苛立つ気持ちもわかるが、ここは大人しく従うしかない。
そんな気丈な彼女の様子に、ムウは小さく笑みを浮かべる。
「了解、艦長」
五人が連れて行かれてからは、艦内食堂や格納庫など、人が集めやすい場所に人員は固められた。そこを武装した兵士たちに抑えられてしまう。
食堂には主要メンバーが集められ、入り口を四人で固められる。
格納庫はそれ以外の面々が集められて、十数人で円形を描くように、アークエンジェルの乗員を見張っていた。
そして最後にキラたち避難民だ。
もともとレクリエーションルームに集まっていた避難民は、そのままとなる。
アルテミスで降りられるなり、オーブからの迎えが来ると聞いていた避難民一同は、多少混乱したが、予めキラから可能性として聞かされていたため、そう長くは続かなかった。
(アスランは無事だろうか……)
ナスカ級ヴェサリウスはヘリオポリスワンの港に入港する。
ブリッジには異様な緊張感が走っており、誰も彼もが顔色に緊張の色が強く現れていた。
そんな中、ラウ・ル・クルーゼは不敵な笑みを浮かべる。
自分たちが攻撃した国のコロニー群のひとつに、寄港を許されている。それがどれだけ異常なことか誰もがわかっているのだ。
いつどこで撃沈されてもおかしくない。もちろんそうなってもいいようにミゲルだけは外のデブリ群の中に隠れてもらっていた。
とはいえ、ヘリオポリスイレブンのデブリと、ヘリオポリスワンの距離はそれなりにある。
だから、緊急事態に陥った場合は、ヴェサリウスは撃沈される可能性が高かった。
いかにエースパイロットであるミゲル・アイマンとはいえ、距離を一瞬で埋めることは不可能だ。
それもあるので、よりブリッジの要員は緊張していた。
「博打を打つべきだと、私の勘が告げているのだよ」
ラウはこの状況に、自分にとっていい結果をもたらすと確信していた。
だが、アデスを含めて他の者達は、彼のこういうところについていけてないところがある。
とはいえ、それで何度も窮地を脱しているので、誰も文句は言わない。
「救命艇を出すだけでよろしかったのでは?」
「虎穴に入らずんば虎子を得ず。という言葉がある」
「随分昔の、再構築戦争より以前の、昔の武将の言葉、でしたな?」
「博識だなアデス」
褒められた男は軍帽を脱いで、被り直した。
「古代の戦史とはいえ、今も通用するだけです」
「ヘリオポリスの中枢に呼び出しているのだ。その意味がわかるかアデス」
黒服の男は考える素振りとなる。
「我々と何か交渉ごとでも?」
「あるいは、何か情報がほしいのかもしれないな」
ラウとしては、救助した人とアークエンジェルがコロニーを破壊した映像を提供するだけのつもりだった。それ以上は求めていなかったのである。
それをオーブに渡すことが、今のザフトにとってはメリットがあると考えていた。
オーブが抗議してきたとしても、映像を見れば破壊したのは地球軍だと言うことができる。
「まあヘリオポリスには、地球軍に対する不信感を持ってくれるだけでいいのさ」
「味方を増やす、ためですか?」
「敵を増やさないためだ」
彼らが話していると、ヴェサリウスに振動が伝わる。
「艦の固定、確認」
「ヘリオポリスワンとのコンタクト良好」
「ヘリオポリスはなんと言っている?」
「それが救助した者たちと、部隊の代表に来てほしいと」
艦橋にいた全員の視線が仮面の男に集まる。
「だろうな」
「私が――」
「ヴェサリウスの艦長が離れてどうする?」
アデスはさらに何か言おうとするが、先にラウは手で制す。
「マシューを護衛に連れて行く。呼び出せ」
それからラウはオロールをジンに乗せ、陸戦隊をいつでも出せるようにフル装備でそれぞれ待機を命じる。
マシューに操作させ、小型船でヴェサリウスを出ると、ヘリオポリスの管制官の誘導に従って内部へと入った。
彼らを出迎えたのは武装した兵士と、恰幅の良いスーツを着た男性だ。
「ようこそヘリオポリスワンへ」
「着艦の許可をいただき、感謝します」
ラウは後ろに連れていたヘリオポリスイレブンの避難民を、手で招き男へと差し出す。
「こちらが我が部隊が救助した人たちです。IDの確認などをお願いします」
「これはこれは、では早速」
男が「おい」というと制服を着た者たちが足早に現れて、機器用意する。助かった人々はその前にいってIDカードを提示。一分もかからずに彼らはオーブ国民と認められた。
助けられたうちのひとりの女性が、マシューに手を振る。彼もそれに恥ずかしそうに応じて振り返した。
「おやおや。手が早いなマシュー」
「そ、そんなんじゃないです」
「いいことじゃないか。君も私もいつ死ぬかわからないんだ。やれることはやっておいた方がいいんじゃないか?」
マシューは逡巡したものの、女性元へと歩み寄ると、一言二言言葉を交わす。すぐにラウの元へと戻った。
「どうだった?」
「戦争が終わったら会えないかって……」
「死ねなくなったな」
「がんばります」
仮面の男はにこやかに「期待している」と告げた。
マシューは女性の前でカッコつけているのか、いつも以上に勇ましい声で応じる。
タイミングを見計らって、恰幅の良い男が前に出た。
「クルーゼ隊長殿。お話があるのですが」
「こちらとしても、まだ話したいことがありましてね」
ラウは記憶媒体を取り出すと、それを手渡す。
男は目を見開き驚いた様子になる。
その眼差しに大いなる期待の色が見えたことで、相手の思惑を理解する。
(なるほど、一応確認しておくか)
「これは?」
「こちらは、地球軍の新造艦がコロニーを破壊した様子を記録したものです」
「そう、ですか」
男の僅かな感情の変化。それを仮面の男は見逃さなかった。
彼から滲み出たのは落胆。
口の端を吊り上げる。
「どうか、しましたか?」
「いえ、そちらの心中もお察しします。本国の無茶な要求の結果、ヘリオポリスイレブンの崩壊というのは」
「お気持ちを汲んでいただき、ありがとうございます」
男は歩きだすと、秘書の男が歩み出てラウとマシューに案内すると言う。
二人は港のすぐ側にあるVIPルームへと案内された。
学校などにある体育館ほどの大きさの広い一室。ひとつひとつの席は離されて配置されており、空間を広く使っていた。
宇宙では珍しい観葉植物などが無機質な空間を彩り、訪れた者に安らぎすら感じさせる。
マシューは部屋の隅にあるグランドピアノを見て、新入りのニコルのことを思い出す。
ラウたちは、その部屋の中でひときわ装飾された席に案内された。
「こちらとしては、抗議もしなければならないのですが、まずは我が国民を助けていただき、ありがとうございます」
「文句がありますと、顔にはりついていらっしゃる」
「とんでもございません。隊長が提供くださいました情報と、デブリ作業員の話を照らし合わせるとコロニーを破壊したのは地球軍です」
彼はさらに「火種を持ち込んだのも我々だ」と言う。
「とはいえ、我々にも火種を持ち込むだけの理由はあるのですよ」
「モビルスーツの開発、といったところですかな?」
「守るための力がほしいだけです」
話していると白磁のカップを持ってきたウェイター。中身は紅茶らしく、三人に振る舞われる。
「いい香りですな」
「ヘリオポリスツーで栽培したものになります」
マシューは感心した様子となる。
「単刀直入に言いましょう」
男は一息入れるとそう切り出した。
「Gの武装。いくつかいりませんか?」
「見返りは?」
「機体のデータです。それとそちらが鹵獲したモルゲンレーテ製のジンですが、そのままプラントへお持ち帰りください」
ラウは「ほう」と僅かに口元を緩める。
「随分とあのジンに自信があるようだ」
「そんなことはありません。ただ、プラントの今後の状況を考えますと、ね」
ラウ・ル・クルーゼは内心、男の言葉に同意した。
地球軍の新型はザフトのプライドをずたずたに破壊するだろう。
その結果、モビルスーツの開発計画を見直さなければならない。次期主力機の開発は見直されることとなる。
あのジンは確かにプラントでも、開発は可能だ。だが、それができる余裕はなくなったのだ。
ならばどこからか調達する必要がある。
例えば地球からもっとも遠いL3宙域などが、打倒だろう。
「私はヘリオポリスワンがどのような場所なのか存じておりません」とラウ。
ヘリオポリスワンは、その機能のほとんどが政治やら工場などだと言う男。
「そういうことですか。いち部隊の隊長でして、先の件は評議会の判断を仰ぐ必要があります」
「そうですか」と男は僅かに落胆を滲ませる。
「ですが、お互いに事故はあると思います」
「なるほど、事故ですか」
「ええ、事故です。それさえあれば、色々と事が容易に運ぶかと」
「ザラ議長とも親しいと、聞いております」
「そうですね。恐らく戻れば会うことになるでしょう」
ラウの仮面のバイザー部分が怪しく輝いたように、マシューには見えた。
話し合いが終わると、二人はヴェサリウスに戻る。
ラウはアデスに吸い出したデータのコピーを記憶媒体に入れて、投棄しろと命じる。
「なんですって? よろしいのですか?」
「事故だからな」
「それは……」
「それと、事故でコンテナが流れてくるはずだ」
程なくしてヘリオポリスワンからは、いくつかのコンテナが流出。それをオロールとマシューのジンが回収した。
コンテナの中身は地球軍の新型の予備武装などだ。また律儀にも、その他の補給物資も追加されていた。
お互いに不幸な事故があったが、ヴェサリウスはヘリオポリスワンを後にし、ヘリオポリスワンもそれを見送った。
「なるほど。確かに君たちの識別コードは地球軍のものだな」
アルテミス宇宙要塞の司令官、ジェラード・ガルシアは淡々と言う。
彼の背景にある巨大なディスプレイには、マリューらのIDと顔写真、経歴などが映し出されている。
取り調べのような重圧に、マリューは胸中穏やかではない。
「ご確認のほどありがとうございます」
ムウは常日頃と変わらない様子で言った。
「エンデュミオンの鷹――」
僅かにムウの目が鋭くなるが、それに気づいたのはマリューだけだった。
「――あの戦場には私もいてね」
「では、准将のところに?」
ガルシアは頷き、結果こそ負けたが、ムウの活躍で勇気づけられたと言う。
「しかし、君のような英雄がなぜここに?」
「特務ゆえ」
「そうか。それでは、我々も不明艦として対処するしかないな」
話を黙って聞いていたナタルが口を開く。
「しかし、それではザフトにここを攻撃されてしまいます」
彼女は月に通信して、援軍の要請を願い出た。
「ザフト? ああ、こいつらか?」
ガルシアは羽虫が飛んでいるとでも言いたげだ。
彼は端末を操作すると、巨大なディスプレイに映像が流れる。
そこには二隻のローラシア級の戦艦。アルテミスの周辺を周回していた。
アルテミス宇宙要塞の周辺にあるデブリなどにはカメラなどが設置されており、色々な角度から映像が確認できる。
数機のジンが周辺を警戒した様子も見られた。
ノコノコ出ていけば蜂の巣になるのは、戦術に疎いマリューでもわかることだ。
「今出ていっても、こいつらにやられるだけだ」
彼はさらに続ける。
援軍を呼ぶにも、一個艦隊をいきなり動かせるわけではない。数隻の諸規模編成を寄こすだろう。
彼我の戦力差を考えれば、一方的になると付け加えた。
「その点、ここは安全だ。難攻不落の要塞だ。過去にザフトともやりあったが、ご覧の通り健在だ」
不明艦であるため、状況は変わりないがいくらでもいてくれて構わないと言う。
「一緒に出てザフトを」
さらに言い募るナタル。
「それはできない。恥ずかしながら、我がアルテミス宇宙要塞に配属されている兵士の練度は低い。死にに行かすようなものだ」
そんな状況で戦っても損失だけがでかく、最悪負けるだろうと言うガルシア。
「それに不明艦と一緒には戦えない。だが光波防御シールドなら、君たちを守ることはできる」
「そんなに便利ですかね?」とムウ。
「無敵だよ。先刻崩壊したヘリオポリスのデブリも、防ぎきったさ」
『攻撃きます』
要塞内部に放送。
ついでモニターにはローラシア級二隻の攻撃。
それらはアルテミスの傘と呼ばれている防御シールドによって、無力化される。
「うちの数少ない自慢だよ。君たちはゆっくり休みたまえ」
ガルシアは兵士たちを呼んで、五人を応接室へと案内――ではなく連行――させた。
五人が出ていって、時間を開けてから副官の男が、ガルシアの元へと歩み寄る。
ガルシアは数えて三つほど時間をあけてから口を開く。
「データの方は?」
「戦艦の方は順調なようです」
ガルシアは僅かに眉を動かす。
「例の二機は?」
「起動プログラムにロックがかかっていまして」
太平洋連邦の新型兵器二機は、起動プログラムにロックがかかっているため、まったくデータ解析が進んでいないと言う。
技術者たちを集めて対応させているが、まだまだ時間はかかると言う。
ガルシアは太平洋連邦の地球軍がどれくらいの時間かけてくるか計算する。
「忌々しい」
モニターに映るローラシア級二隻。
「時間をかければいいのか?」
「技術者たちの言うには」
「それでいこう」
イージスのコックピットにアラートが鳴る。
アスランはゆっくりと目を開け、バイザーを開けて両目をこすった。
そして次に機体の状況を確認。バッテリーの残量は残り三分の二。外付けのブースターの燃料はまだ残量があるのか外れていない。
再度コックピット内を確認すると、はるか前方で爆発の光が瞬いていた。
それをイージスが検知して警報を鳴らしたのだ。
アスランはここで何か異常が起きたのだと理解する。
(前方はイン隊とのランデブーポイントのはず。ということは――)
彼の予想は正確にあたっており、前方ではイン隊と遭遇した地球軍の艦隊が戦闘をしていた。
奇しくも彼らは、ヘリオポリスの崩壊を察知して調査しようと向かっていた艦隊である。
ザフト軍に見つからないようにデブリ帯を抜けてきたのだが、その結果イン隊と遭遇戦をする形になってしまったのである。
とはいえ、アスランとイン隊にはそんな事情は知らないことだ。
知れば余計に彼らを見逃さないし、自治独立を求めて戦っているザフトとしては、地球軍の艦船を安易に見逃すわけにはいかなかった。
まだ距離のあるため、イージスの存在は、どちらにとっても察知されていない。
それをアスランは理解しているため、操縦桿を握り直し機体を駆る。
イージスのモビルアーマー形態は、巨大なモビルスーツ形態の四肢を進行方向に伸ばしている。
それらを指のように動かし巨大なクローのような形となる。
アスランはその四肢を巧みに操作して、姿勢制御の容量で質量移動をさせて、イージスの進行方向を変更。地球軍とイン隊の上をとるような形の軌道をとる。
時間にして数分後、外部に取り付けたブースターは燃料が切れ、デッドウェイトとなるブースターはパージされた。
イージスは自機の推力を使って加速。アスランの眼下では地球を背にする形で、両軍はやり合っている。
モビルスーツ形態になると、イージスにある頭部に大型センサーユニットで、戦況を確認。
コックピットのモニターに、ネルソン級一隻。ドレイク級二隻と表示される。
アスランは再びイージスをモビルアーマー形態とすると、一気に加速。四肢を広げるとイージスの腹部に備えられている兵装が姿を見せた。
その時、戦闘をしていたイン隊の隊員は、雷が落ちてきたのかと錯覚した。
巨大な光がネルソン級を中心から穿ち、そのまま船体を貫く。巨大な穴を作った箇所は赤熱し、電装系が漏電をバチバチと光らせる。
誰の目にもネルソン級は致命的だった。
ついで小さな光がドレイク級の主砲と対空砲、そして艦橋を攻撃される。
直上からの攻撃に、地球軍は大きく動揺。瞬く間に瓦解していく。
混乱の最中、モビルアーマー乗りたちはモニターに映った赤い機体に驚愕する。
ザフト軍の新型だと思い込み、彼らは慄く。
メビウスたちは我先にと逃げ出そうとする。それをイン隊のモビルスーツ部隊が攻撃。
瞬く間に地球軍の戦力は撃滅していく。
残ったネルソン級は撤退しようと、艦首を動かしていたその時だった。赤き機体が艦橋の前を制圧。
赤い機体はビームライフルの銃口を艦橋から機関部まで貫通するように角度をつけて狙う。
アスランはコックピット内で小さく息を吐く。
『ザフト軍の新型か!』
『艦長!』
接触回線から、地球軍の通信が流れ込む。アスランは眉根を寄せ、胸中吐き捨てる。
(これはお前たちの新兵器だ)
イージスは構えていたビームライフルでドレイク級のブリッジを撃ち抜いた。
その一撃は予め角度をつけていたこともあり、期間部にビームの粒子が流れ込みズタズタに破壊。
程なくして地球軍は全滅。突如現れた見慣れぬモビルスーツにイン隊も、警戒体勢となる。
『アスラン……ザラか?』
「はい。クルーゼ隊より、先行してやってまいりました。アスラン・ザラです」
『そうか。それが地球軍の新型か。俺はイン隊の隊長、ジェン・インだ。助かったよ』
実際にその戦闘力を目の当たりにしたイン隊は、これからの戦場が厳しいものになると覚悟した。
『悪いが、データを取らせてもらえないか?』
「はい? 恐らく軍部から正式な情報が来ると思いますが」
『それじゃあ、遅いかもしれないからね』
彼は事後にクルーゼに確認すると伝えると、アスランは承諾した。
遅かれ早かれ情報は伝わるだろうと考えてのことだ。
それに早めに情報を渡していても、問題ないだろうと結論付けた。イン隊は国防委員会からの信頼も厚い部隊だ。
『それじゃあ我が艦、ボッシュに着艦してほしい』
アスランは彼らの指示に従ってナスカ級ボッシュの格納庫に着艦。
休憩室でドリンクを飲みながら、データの吸い出しを確認していた。
そこに白服を着た黒髪の青年が顔を出す。
「やあ。協力を感謝する」
部下に戦死者が出なかったと、彼は喜ぶ。
「イン隊長。いえ、それよりなぜ?」
アスランは念のため確認をする。
「どうして情報が欲しがった、か?」
「はい」
「部下に死んでほしくないからだ。この先、正式に情報がもらえる前に、君の機体の同型と戦うことがあるかもしれない」
アスランはその言葉を、内心否定しきれなかった。
OSは不完全でも、いずれ動かせるようになりイージスだけで部隊を編成して、プラントに襲いかかってくるのかもしれない。
その時に情報が軍部上層部で止められては、前線で戦う兵士は目隠しされたようなものだ。
「そうですね」とアスラン。
いかにナチュラルより優れているコーディネイターとはいえ、情報のないままの戦闘は分が悪い。
「まあ、非常に興味があって、先に知っておきたいっていう好奇からくるのも、否定しない」
彼は子供が悪戯を思いついたような笑みを浮かべた。
「それは、まあ確かに」
「見た目もかっこいいし、できればコピーの一機や二機、作って試し乗りしたいものだ」
「乗ってみますか?」
「え? いいの?」
「隊長のような、エースパイロットのご意見も聞いてみたいです」
彼はその場で本気で考えたが、すぐに頭を左右に振った。
「やめておくよ。ありがとうアスラン」
「そういえば、イン隊は何を?」
「特務だけど、特別だ」
彼はイージスのデータを提供したお礼に、任務の内容を明かした。
地球軍が巨大な建造物を打ち上げているという情報が入ったため、それの調査だと言う。
しかし成果はないという。
「不思議なことに何もなかったんだ」
何基もあがっているはずの巨大な建造物。
他にも巡回中の部隊の目撃情報などもあるのだが、その場所には何もなかったのである。
彼ら、イン隊が調査する前に、他の部隊でも同様の任務をおこなったのだが、建造物の痕跡すら見つからなかったのだという。
「打ち上がっているっていう話ですよね?」
「情報部が嘘を言うはずがない。何かからくりがあるはずなんだが」
とはいえ、と彼は続ける。
「補給基地をやられたんじゃ、長期に調査もできないからね」
「そういうことだったんですね」
「そういうこと。ま、もしかしたらクルーゼ隊の協力を得るかもしれないから。今の話、覚えておいてくれ」
「了解です」
アスランは敬礼で応じる。
~続く~
登録はお任せしますので、次のお話も見ていただければ嬉しいです。
【追記】20220613
まずは修正を優先したいと思います。