機動戦士ガンダムSEED~偽り~   作:量産型すき焼き

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注意書き
この作品はオリジナルモビルスーツ、オリジナルキャラクター、オリジナル設定など多数含みます。


宇宙の大陸~後編~

 青い星地球。その星が太陽という光を遮り、宇宙に暗闇を作る。闇に光が差し、影から浮かび上がる無数の破片や残骸の数々。太陽が顔を覗かせて、闇に隠れたものを浮かび上がらせる。

 陽の光によって存在が顕になったのは、残骸だけではない。緑と青の船体だ。ローラシア級の戦艦。ナスカ級の戦艦。

 四隻の戦艦は眩い光を反射しているのだが、戦艦が自ら輝いているようにも見えた。

 

 その周囲を人形の機動兵器がゆったりと飛ぶ。武器を構えて周囲を睨む。

 ツインアイのデュアルセンサーが太陽の光に負けじと光る。白と青のカラーリングの機体デュエルはレールバズのゲイボルグを構えて、周囲を眺めた。

 周囲は瓦礫が漂っていた。ローラシア級の戦艦だったモノ。地球軍のモビルアーマー。脱出艇のようなもの、コロニーのシャフト。

 

 ローラシア級の戦艦だったモノの中から、小型船がゆっくりと出てくる。

 

『回収できるだけしたくなるでしょうが、遺品なんだよ』

『わかっちゃいるが、ここは敵地なのだから。時間をかけられないと言っている』

 

 デュエルのコックピットで、イザークは鼻で笑う。

 彼はシートの横からボトルを取り出すと、メットのバイザーを開いた。ボトルからストローを取り出す。そして口をつける。

 ジェル状のモノが彼の喉を潤し、栄養が胃袋に届く。

 

『お前はアカデミーの頃から変わんねーな』

『そっくりそのまま言葉を返させていただきます』

『何を!』

『こっちのセリフだ!』

 

 イザークは大きな溜息をつく。

 

「じゃれ合うな」

『なんだとイザーク。俺はまだお前にもアスランにも負けを認めてないからな』

『でもイヴァンは六位じゃんよ。一位と二位には程遠いじゃん』

『ミヒャエルは九位だろうが』

『俺、五位な』

『『お前が威張るな』』

『皆さん落ち着いてください』

 

 ニコルが制止に入り、言い合いはそこで止まる。

 イザークは「やれやれ」と言いながらボトルをしまう。

 

「ディアッカ。そっちはどうだ?」

『こっちも異常なしだ』

 

 デュエルに背中を向けて、バスターは反対側を警戒している。

 両機の間には戦艦が全部で四隻。デブリを背にしているため、月の地球軍の基地からは見えない位置にあった。

 デブリを影にしつつジンが三機、姿勢制御しながら移動。

 

『ミラージュコロイドっての? やっかいだな』

『地球軍の新型。見れば見るほどかっこいいな』

『そうかしら? 私はジンが可愛くて好きだけど』

 

 イザークとディアッカはサブモニターで互いの顔を見合わせる

 

「ジンが」

『可愛い?』

『そうでしょ。可愛いじゃない愛嬌があって』

「マックス。オーレリアンどういうことだ?」

『俺たちに聞くな。わからんよ』

『それはそれとして、みんな機体がかっこいいよね』

 

 オーレリアンは羨ましいと付け加えた。

 

『とんでもないOSだったが』

 

 首を左右に倒してストレッチしながら言う。

 

「見た目なんてどうでもいいだろう」

『ザウートは嫌だって言ってたじゃないか』とマックス。

「に、任務なら乗ったさ」

『その話覚えてるよマックス。ずんぐりむっくりしてて的だって言ってたな』

「う、うるさい。忘れろ」

『アカデミートップファイブは最新鋭機にも乗れて、随分と出世したな』

『イヴァン羨ましいって正直に言いなよ』

『うるさいミヒャエル』

『へっへーん。俺のスティンガーはミラージュコロイドを使って隠密狙撃できるんだぞ』

『ミラージュコロイドなら僕のブリッツにもありますけどね』

 

 咳払いが通信機を叩く。

 

『久しぶりの再会なのはわかるが、同窓の話し合いは後で頼む』

 

 イン隊長の声で話が終わる。小型船はイン隊の旗艦に入る。

 着艦すると、イヴァンとミヒャエルと呼ばれた二人は荷物をもって消える。

 ニコルとラスティーは、格納庫中央に鎮座している自機のコックピットへと潜り込むと出撃。

 

 彼らの機体から、ミラージュコロイドのデータを取得していたのだ。

 L1宙域に地球軍の打ち上げているものがあると、把握したクルーゼ隊とイン隊は、合同で攻略しようと準備に取り掛かっていた。

 ミラージュコロイドを展開されると、今現在は見つける手段がない。

 

 とはいえ、手をこまねいているわけにもいかず、手持ちでなんとかできないかと考えたのである。

 索敵用のセンサーは作れないかと、試しているところだ。

 ザフト軍は戦艦に小さな工房がある。各部隊つど、作戦に必要な武器などを作ることができた。

 

 ミラージュコロイドを探知するセンサーを作ろうとしているのである。

 音紋は宇宙のため確認できず、熱紋による探知も試したものの、地球軍はなかなか尻尾を掴ませない。

 以上のことから、強力な冷却装置を有していると彼らは予想していた。

 

 どっか適当に撃ってあぶり出すことも考えないことはなかったが、L1宙域に絞ったとしても宇宙は広い。そのため攻撃したことでかえって自分たちの首を締めかねなかった。

 ならば簡易なものでもセンサーを作り、それで確実に敵に打撃を与えるというのだ。

 

 そんなわけで、イン隊はセンサーを作ろうとしているのである。

 その間、ヴェサリウスが来るまでやることがないため、友軍の戦艦から遺品と物資を回収できるだけ回収していたのだった。

 

『ヴェサリウスが来るまでまだ余裕がある。偵察にいってきてくれ』

「ディアッカ、ニコル、ラスティー。今度は俺たちが偵察に出るぞ」

 

 三者三様に了解と反応。デュエルを先頭に、四機はデブリの間を縫いながら移動していく。

 

『ラスティーしっかりしろよ。お月さんに見つかったらことだぞ』

『そっちこそ。重い機体なんだ。軽すぎるデブリを蹴っ飛ばすなよ』

 

 程なくしてディアッカとラスティーは言い合う。

 

「おいおい。いい加減にしてくれよ」

『しかし、どこに隠しているんでしょうね?』

『木を隠すなら森の中って、日本にそういう言葉があるぜ』

 

 ニコルの疑問にディアッカは、それっぽく答えた。

 

『じゃあコロニーの残骸に隠してあるんですかね?』

『ひとつだけって限らないんだろ?』

『他の部隊の話も総合すると、ひとつや二つってどころじゃないだろうな』

 

 三人の話を聞きながらイザークは、コックピットに映し出される映像を眺める。

 この瞬間も、ゼルマンたちはガモフが捉えた映像を解析していた。

 だが、その結果を待つとしてもイザークは、思ったことを口にする。

 

「あれは戦艦っぽくなかったな」

 

 打ち上げているものが建造物のようなものだった。他の部隊も含めて、口を揃えているのがそれだった。

 イザークも実際に目の当たりにして思ったのは、同じ感想である。

 それでも妙な引っ掛かりを感じていた。

 

『言われてみれば……』

『そうでしたか?』

『俺はブロックみたいに見えたけどな』

 

 ラスティーの言葉に、彼の言葉をイザークたちはオウム返しする。

 

『ああ、ガキの頃遊んでたブロックの玩具。あんな感じに見えたけどね』

『玩具ってなんだよ。俺たちは戦争してんだぜ』

『それに砲塔とかもありましたよ』

 

 ディアッカとニコルの言葉に、ラスティーは『わかってるよ』と言う。

 

『言うんじゃなかった』

『ラスティーブロック遊びしたいのかな? なあイザーク』

「そうか。ブロックか。確かに、そうなるとある程度の規模も推察できるんじゃないか?」

 

 ディアッカは素っ頓狂な声を出す。

 デュエルは急制動かけると、反転する。

 ディアッカたちは突然の動きに当然ながらついていけず、少し遅れて後に続く。

 

『イザークどこへ?』とニコル。

「一旦ガモフ戻るぞ」

『どういうことだ?』

「何かしらの建造ブロックだとするなら、ある程度規模は絞れる。闇雲に探すより効率的だ」

『そうかもだけどよ。だだっ広いここで?』

 

 イザークたちが急遽戻ったことで驚かれるが、彼の話を聞いて全員が映像の解析に本腰を入れる。

 そんな中、イン隊の索敵に戦艦が二隻の到来を告げていた。

 太陽の光を浴びて、青と緑の船体が輝いて見える。

 

「ヴェサリウスとツィーグラーです」

「来たか」

 

 ジェン・インは小さく笑う。予定より早い到着だったため、彼らは少し驚く。

 クルーゼ隊は月にかなり近づく形の航路を選んだため、予定より早めに到着したのである。

 道中、地球軍に遭遇することなく、ここまで無傷で辿り着いている。

 

「隊長の勘はエスパーに近いんじゃないかって、時々驚かされます」

「私とて、そこまで万能ではないよ。その証拠にこのヴェサリウスは、優秀な仲間がいて初めてここまで来れるのだから。私の勘で来たわけではない。クルーゼ隊の諸君らがここまで導いてくれたのだよ。誇れよ」

 

 ラウ・ル・クルーゼの言葉に艦内の士気が上がる。

 

『早かったな』

「始めてくれても良かったのだが、手をこまねいている様子だな」

 

 ジェン・インは軍帽を取り出して団扇のようにして扇ぐ。

 

『クルーゼ隊長の意見も聞きたいところだ』

「承知した」

 

 ヴェサリウスとツィーグラーが合流すると、ラウはアスランとミゲルを伴ってイン隊の艦に移動する。

 ブリッジに到着すると、今までの情報を連携された。

 仮面の男は顎に手をやって考え込む。

 

「イザーク・ジュールの読みは宛になると思う」

「となれば、世界樹のあった場所。そこに敵はいるな」

「なぜわかる?」

「私の勘が告げている」

「数は?」

「ひとつだろうな」

「そうか。ならやりようはあるな」

 

 話を傍で聞いていた面々は驚く。

 それだけのやり取りで、敵を決めつけて良いものかと思ったのだ。

 アスランはたまらず口を開いた。

 

「隊長。よろしいのですか?」

 

 仮面の男は不敵に笑う。

 

「むろん布石は打つさ」

 

 ジェンが先を促す。

 

「ここには使えるモノが山程あるからな」

「なるほど、その手で行こう」

「だから隊長たち、俺らわかんないですって」

 

 今度はミゲルが全員の気持ちを代弁する。

 

「すまない。アスラン、君ならどうする?」

 

 アスランは試されていると感じながらも、状況を整理していく。

 彼は宙域図を見て、瞬時に閃く。

 ラウはそんな部下の様子を見て、微笑ましそうに笑う。

 

「デブリを使います」

 

 二人の隊長は満足そうに頷く。

 

「そうだ。デブリを使い、多方向から世界樹のあった座標へと押し出すんだ」

「なるべく数を用意してな」

 

 そうと決まれば彼らの動きは早い。

 イン隊の方は二つの部隊の工作兵をブリーフィングルームに、クルーゼ隊のブリーフィングルームにはパイロット連中が集められる。

 工作兵は、デブリに簡易ブースターをつけて射出するための、行程確認。パイロットの面々はその後の作戦行動についての話し合いだ。

 

「一気に叩き潰さないのですかクルーゼ隊長」

 

 疑問を口にしたのはイザークだ。

 ラウはアスランに目配せをする。

 彼はイザークへと向き直り、口を開く。

 

「相手の居所がわかっても、戦力は不明だ」

「だからこそ、突撃すれば」

「いや駄目だイザーク。それだと攻める側が、不利になる」

「手をこまねいていろというのか? アスラン」

「分析するんだ」

 

 仮面の男は大仰に頷く。

 

「その通りだ。多方向からデブリをぶつけようとすれば、相手は迎撃行動に出るはずだ」

 

 ミラージュコロイドで姿を消しているとはいえ、何らかの迎撃で相手の数や位置はできる。

 が、しかし。その内包する戦力までは把握できるわけではない。

 デブリが接近するからといって、基地の兵力総出で対応するかといえば違う。

 

 ではどうするかということなのだが、これについてはイザークもすぐに察する。

 近くに撃沈されて漂流しているローラシア級の戦艦を使うのだ。

 多方向からデブリが接近することで、地球軍は警戒をするだろう。

 

「ローラシア級の戦艦を見つけた地球軍はどう思うかな? ザフト軍に場所が知られたと考えるだろう」

 

 地球軍は口封じのため、見つけたローラシア級を見逃さないはずだ。

 内包する戦力の一部を出して、戦艦を必ず轟沈させようと動くと考えられた。

 そこから相手の戦力を分析して、作戦を立てるのだという。

 

「いささか手間ではあるが、何分相手も一筋縄ではいかないだろう。なにせ、こんなところに建造物……私の読みだと基地だが。そんなものを最新の技術を使ってまで秘匿しているのだ」

 

 ラウは厄介な相手だと評した。しかし、同時に自分たちの部隊とイン隊が協力すれば、撃滅できるとも豪語する。

 

「我々には地球軍が持つ新兵器を手にしている。状況は五分。いや、それ以上だ」

 

 

 

 

 

 光が走る。宇宙の闇を切り裂くように一閃。

 白い機体の眼前には黒い機体。胴体部を赤熱した穴がひとつ。

 バッテリーから放出されるスパークが、放出されながら宙空を漂う。

 

 偵察型のジンは爆発四散し、宇宙に散っていく。

 ストライクのコックピットでキラは言葉にならない叫び声をあげた。

 通信を切って、ただひとり涙を流す。

 

 話は遡る。偵察型のジンは確かに帰ろうとしていた。しかし、運悪くそこをチャンドラとカズィの乗るミストラルが横切ったのだ。

 気づかないでくれと願ったキラだが、結果は最悪なモノとなり、引き金を引くしかなかった。

 偵察型のジンはスナイパーライフルを構え、ミストラルへと発射。ストライクが応戦して左腕を吹き飛ばす。当然相手はストライクに気づき、銃口を向けた。

 

 キラは左腕を吹き飛ばしたことで、敵に撤退をしてほしかったが、狙われたことで殺すしかなかった。

 左手には脱出ポッドを把持しており、それを守るしかなかった。

 と同時に、相手はアークエンジェルを捜索しに来たのだと、キラは考えたのである。

 

 ならば脱出ポッドを守るため、アークエンジェルの存在を敵に知られないため、そして友を殺させないため、彼はビームライフルの引き金を引いたのだ。

 仲間たちはキラを気遣って通信するが、彼は通信を切っているため、状況が伝わらない。

 

『ストライクはやられたのか? って聞いてんの!』

『ストライクは無事です』

 

 ムウの質問にチャンドラは、しどろもどろになりながら答える。

 

『キラ。キラどうしたんだよ?』

 

 カズィはモニターにしがみついて、呼びかけるが反応はない。

 

『それより報告が先でだろ。なんの爆発だよチャンドラ』

『ジンの爆発です。リーヴ軍曹』

 

 ジェイクは驚き叫ぶ。

 

『そっちが先だろ! 敵機じゃねーか!』

『偵察に出るぞジェイク。文句は後だ』

 

 ネイサンとジェイクのメビウスがスラスターをふかし、デブリの中へと消えていく。

 

『それより、キラの安否の方が先でしょ』

 

 メアリー・セーラーはメビウス・ストライカーでストライクに接近。

 接触回線用のケーブルを打ち込み、呼びかける。

 

『接――』

「殺したくなんかないのにぃ!」

 

 メアリーはなんと言葉をかけていいかわからず、しばらく押し黙ってしまう。

 自分たちが戦争に巻き込んでしまった責任の重さ、不甲斐なさに強い衝撃を受けた。

 熟考した結果、聞かなかったことにして、最初からやり直す。

 

『接触回線です。キラ・ヤマト。そちらは無事で?』

「あ、はい。すいません。ちょっと」

『いいわ。でも次から通信には応答してほしいわね』

「そ、それより脱出ポッドを回収しまして」

 

 ストライクの左マニピュレータに把持された脱出ポッド。それに初めて気づくメアリーは、ゆっくりと言葉を選ぶ。

 

『わかったわ。艦長に報告を』

「わかりました」

『ごめんなさいね』

「え?」

 

 メアリーはキラと向き合うことを恐れた。彼の気持ちを受け止められる気がしなかったのだ。

 殺させてしまったこと、向き合わなかったことから、そんな気持ちから言葉が出てしまう。

 だが、そんな気持ちを汲み取る余裕のないキラは、それ以上何も言えなかった。

 

 

 

 

 

 大小様々なデブリにブースターが取り付けられ、火が灯る。

 世界樹のあった場所めがけて動き始めた。

 ガモフから、ブリッツとスティンガーが出撃。二機はミラージュコロイドを展開して、宇宙の闇へと消える。

 

 二機にはそれぞれ隠れながら、索敵してもらう手はずだ。

 イン隊からも偵察型のジンが出撃し、デブリに隠れながら周囲を警戒。

 機関部だけを応急処置されたローラシア級も動き出す。外装もできるだけありあわせで直した。

 ただ完璧な修復ではない。少しでも近づけば、損傷していることは、子供でも判別できるレベルのものだ。

 

 それを宇宙の、しかもデブリの多い宙域ですぐに判別するのは難しい。

 ヴェサリウスの艦内にブリッツとスティンガーが位置についたことを知らせるアナウンス。

 仮面の男は満足そうに頷く。

 

 ブースターをつけたデブリたちは、予定通り宇宙ステーション世界樹のあった座標へと突き進む。

 その映像はブリッツ、スティンガー、そして偵察型のジンを通して、クルーゼ隊とイン隊に届けられていた。

 闇の中から突如光が発生。次の瞬間、いくつかのデブリが爆発して消滅。

 

 アデスは腰を浮かせた。

 

「隊長」

「熱反応、どうだ?」

「反応あり。これは――巨大です!」

 

 一瞬ではあったが、巨大な熱反応を完治したと報告があがる。

 そしてさらにわかったことは、砲撃は一方向しか行われていないということだ。

 

「なるほど、と、なるといくつかのデブリを迎撃に出ないとならなくなるな」

 

 ブリッツの映像にメビウスに似たモビルアーマーが数機出現。

 

「足つきのメビウスか」

 

 そのメビウスには足があり、武装なども多数変更点が見られた。

 挙動はわずかにモビルスーツに寄っているが、いくらか直線的な動きである。

 それらが、いくつかのデブリを落とすと、闇の中へと消えていく。

 

「軍事基地だな」

 

 アデスは驚く。

 

「どうやって?」

「カーペンタリアと同じだろう。我々の作戦の猿真似だ」

 

 ザフトは地上に基地を作る際、基地の土台を宇宙から直接降ろして、短時間で基地を用意した作戦があった。

 今回はその逆。地上から宇宙に打ち上げて、基地を作っているのだ。

 

「なるほど。基地の基礎を打ち上げて組み上げていると」

「ミラージュコロイド。あれを使えば確かに可能だ」

「テスト機の実証もせずにですか?」

「何もヘリオポリスだけで、新型を作る必要もあるまい」

 

 話を聞いていたジェンも通信越しに同意した。

 

『随分と厄介なモノを用意してくれたものだ』

「なかなか厳しい戦いになるかもだな」

「ローラシア級ゴッホ。敵に察知された模様」

 

 今度はスティンガーからの映像に注視する面々。

 スティンガーの位置はちょうど世界樹の真上をとっている形だ。

 ミラージュコロイドの最適化された機体ではないため、デブリの中に隠れるようにしている。

 

 そのためカメラの橋にデブリなどが映り込んでいた。

 アデスはそれについて文句を口にするが、仮面の男は大した問題ではないようだ。

 余談ではあるが、イン隊の赤服たちは同期の仕事にハラハラした様子だった。

 

「始まってましたか」

「ミゲルか。例の試作品――シヴァだったか、あれの調整は?」

「万全です。試射したかった気持ちもありますが」

「道中どこかで時間を作るべきだったな」

 

 ラウは申し訳ないと口にする。

 

「サブとして持っていきます」

「頼りのない兵器かもしれないが、実働データを取ってくれ」

「了解です。まあ試作品の失敗は起きないことを祈りますよ」

 

 試作品が暴発してジンの右腕を吹き飛ばした。その絶大な威力からインド神話にいる破壊神シヴァから名前を戴いている。

 

「隊長。来ました」

 

 アデスの声にラウとミゲルはモニターに視線を向ける。

 

「でかいな」

「巨大な……モビルアーマーか」

 

 巨大な足がまず目を引く。全長二十メートルほどの鳥を模したと思われるモビルアーマー。

 両翼のスラスターはフレキシブルに動いて、宇宙空間を自由に動く。胴体部底部から生えた足が前へと伸びた。

 三本の巨大な爪が二度、三度と虚空を掴む。

 

 モビルアーマーはローラシア級まで接近すると、すでに撃沈している戦艦だとわかったのか。戦艦の周囲を飛ぶ。

 そして周囲の様子を伺うようにした後、前に突き出した足先から、粒子の光を照射。

 ローラシア級の戦艦はバターのように、赤熱し溶解。残り少ない燃料を燃やしながら、爆散する。

 

 情報収集が終わると、クルーゼ隊とイン隊は合同の作戦会議を行う。

 足つきメビウスに関しては、大した問題ではないという結論に至る。ただし、通常のメビウスより警戒して、相手にする必要があるという見解。大型のモビルアーマーは不可解な点があるため、地球軍の新型であるアスランらが対応することになった。

 誰が相手にするかという話になった時、アスランはイザークとディアッカを推薦する。

 

「どういう風の吹き回しだ? 俺たちに戦果でも取らせてご機嫌取りか?」

「いや、違う。イージスの特性上。強襲するのに向いているんだ。加速力を生かして、高火力で一撃を加える。基地の戦闘能力を奪うのに適している」

「なるほど、俺のデュエルとディアッカのバスターなら大型のモビルアーマーがどんな能力があっても柔軟な対応ができると」

「オーケーそれで行こう」

 

 イザークは納得したように不敵に笑い、それに合わせるようにディアッカも口元を緩める。

 アスランの提案にラウは頷く。

 基地に対しての攻撃はアスラン。大型のモビルアーマーはイザークとディアッカが応対することになる。

 

「俺のスティンガーは超長距離射撃を活かした方がいいと思う。俺は基地の砲塔を優先して攻撃するよ」

「では、僕のブリッツは迂回しての奇襲ですね」

「じゃあ俺たちはイン隊のジンらと一緒に攻勢をしかける組だな」

 

 ミゲルはオロールとマシューと共に、イン隊の面々を引き連れて突入すると言う。

 それに待ったをかけたのがイン隊の隊長ジェンだ。

 

「私も出る。部隊を二つにわけよう。我々のレッドをミゲルに預ける」

「マジかよ」と驚くミゲル。

「マジだ」

 

 ジェンは爽やかに笑う。

 

「それとスティンガーに護衛をつけよう。こちらには偵察型のジンがいる」

「連携もとれそうだな」

 

 顎に手をやりラウは納得した様子となる。

 

「そういうこと。偵察型のジンの索敵情報を連携。それと一緒に護衛のジンもつける。こちらも試作兵器を試したいのでね」

「近接防御兵装のバルカンガンだったか?」

「でかい重い。取り回し最悪。でも威力は十分。護衛にもってこいです」とイン隊の緑服の兵士が言う。

 

 それぞれの案を混ぜてひとつの作戦とする。

 

「ああ、それと一応アレも持っていくか」

 

 ジェンの言葉に、ラウ以外の全員が首を傾げる。

 

 

 

 

 

「やはり来たか」

「先程のは、こちらの戦力確認といったところでしょうね」

「構わん。遅いか早いかに過ぎない。迎撃準備。相手はこちらの位置はわかっていも規模まではわからん」

 

 地球軍の基地の司令は落ち着いていた。

 アラートが鳴り響き、第二種戦闘配備から第一種戦闘配備へと変わる。

 モニターには赤き機体。オペレーターはデータなしと報告。

 

「ザフトの新型か」

「それにしてもモビルアーマーとは、どういうつもりだ?」

「その後方に二機の未確認機と多数のジン!」

 

 報告を聞いた司令は顎に手をやり、考え込む。

 

「馬鹿め。真っ直ぐ突っ込んでくるということは、アグニの餌食になるということだ」

 

 副司令はいきり立つ。対して司令は、鋭い眼光でモニターを睨む。

 

「どちらにせよ、だな」

「なにかおっしゃいましたか?」

「ゴットフリート。アグニ起動。奴らを迎撃しろ」

 

 基地の全容は未だに相手に知られていない。如何にコーディネイターといえど、不意討ち気味のビームに反応しきれない。そう考えたのだ。

 砲塔が動き出し、粒子の光が一閃。赤き機体は反応して、急直角に上昇。しかしビームはそのまま後方のジンたちを襲わんと迫った。

 オペレーターは直撃と報告。粒子が弾け飛び、宇宙に花が咲く。

 

「いや、待て。索敵情報を更新しろ」

 

 巨大なスクリーンに映し出される映像が、最新の情報に更新される。

 そこには巨大な光の膜が展開されていた。

 

「あれは!」

「アルテミスの傘!」

 

 ジン三機がアルテミスの傘の発射装置を抱え、その装置からは光波防御帯が発生して、ジンたちを守っていた。

 直後、別方向から光が、基地に突き立てられる。

 

「二十一番ゴットフリート沈黙!」

「いかん! こちらもアルテミスの傘を展開しろ!」

「しかし、こちらの基地の全容が」

「急げと言っている!」

 

 副司令は司令の命令を復唱。

 司令室では慌ただしく、専門用語が飛び交う。

 宇宙の闇から基地が姿を見せる。そして光の球体を作って防御形態となった。

 

「メビウス・エイブラムスをフル装備に換装。ケツァルコアトルもスタンバらせろ」

「鉄壁ですよ」

「アルテミスは陥落したのだぞ!」

 

 

 

 

 

『宇宙に大陸かよ!』

 

 ミゲルは叫ぶ。

 彼は一旦下がろうとしたが、イヴァンが叫ぶ。

 

『こっちにも傘はあります。ぶつけましょう!』

『確度は低い』

『まずいでしょうよ。あれはここで落とさないと』

『やってみせろザフトレッド』

 

 イヴァンは気炎を上げる。それに呼応するように、マックス、オーレリアンも叫んだ。

 傘と傘が接触。ぶつかりあった場所は光波防御帯が崩壊。

 

『アスラン!』

 

 その一瞬を見逃さないアスラン。イージスは加速して一気に飛び込む。

 ラスティーが撃ち落とした砲塔を盾にするように飛び込み、防御帯の発生装置をビームライフルで破壊する。

 あっという間に、相手の壁は消えてデュエルとバスターを筆頭に、ジンたちは雪崩込む。

 

 応戦せんと、足つきのメビウス。メビウス・エイブラムスが出撃。

 最初に見たときよりも、武装が増え二連装の大口径砲塔を装備。砲口がスパークして砲弾が飛び出す。

 ミゲルは瞬時にそれをリニアキャノンと看破。砲弾を重斬刀で斬り払う。

 

 それを見ていたイザークも見様見真似で斬り払い、そのまま接近してビームサーベルで薙ぎ払う。

 ディアッカは二種の兵装を操り、基地に打壁を与える。

 その合間にもスティンガーの狙撃は続き、的確に相手の攻撃手段を奪っていく。

 

 狙撃に気づいたメビウスが発進していくが、ガトリング砲を手にしたジンの迎撃に会いあえなく全滅。

 アスランはモビルアーマー形態とモビルスーツ形態を巧みに使い分け、強襲を繰り返し、イン隊長の部隊が乗り込む方角も制圧。

 次いでジェン率いるモビルスーツが突入。と、同時にブリッツの奇襲により、地球軍の対応は無秩序になっていく。

 

 こうなってしまえば後はあっという間だ。そう、誰もが思った時。

 

『巨大モビルアーマー確認』

 

 デュエルとバスターの動きが止まり、モビルアーマーを発見。

 

『来たかよ』

『いくぞディアッカ』

 

 二機はモビルアーマーへと攻勢をかける。

 

『舐めるなよ宇宙人共!』

『ビーム兵装出力安定』

『あんよはいつでも飛ばせるぜ』

『蹴っ飛ばしてやれや』

 

 モビルアーマーには地球軍のパイロットが三人乗っていた。

 ケツァルコアトルの足が切り離されると、意志を持ったかのように接近するデュエルめがけて突撃。

 意図しない攻撃に、イザークは対応が遅れて飛ばされる。

 

『蹴飛ばすのか!』

『足が飛んだぞ』

 

 ケツァルコアトルのパイロットは叫ぶ。

 

『蹴るだけじゃあない!』

『掴めるだよ』

『アイアイ!』

 

 再度足が飛び、デュエルを素早く掴む。三本の爪で機体を切り裂こうするが、まるでびくともしない。

 

『鹵獲したジンは切り裂けたんだぞ』

『ディアッカ!』

 

 バスターは足へと攻撃をして、デュエルの拘束を解除。ケツァルコアトルからもビームの応射が来るがバスターは難なく回避。

 デュエルはビームサーベルを振り回し、粒子の光を斬り裂く。

 

『迎撃! 迎撃ぃ!』

『あんよダブル!』

『アイアイ!』

 

 デュエルとバスターを掴もうと足が宇宙を飛翔。二機はビームで迎撃しようとするが、ケツァルコアトルからのミサイル攻撃にも対応しなくちゃならず、昇順が定まらない。

 そこに巨大なビームの光。ミサイル誘爆して消滅。

 余裕のできた二機は足を破壊し、ケツァルコアトルに突撃。バスターは全兵装を発射し、デュエルは加速をそのままに肉薄。ビームサーベルを二刀構えてモビルアーマーの胴体を十字に溶断。

 

 デュエルの背後でモビルアーマーが爆散。

 

『グゥレイト』

『礼を言ってやるアスラン』

 

 それから程なくして、地球軍は降伏しクルーゼ隊とイン隊は、地球軍の宇宙要塞ユグドラシルツーを拿捕した。

 

 

 

 

 

「補給物資は拾えと言ったがな」

 

 ナタルは呆れたように言うと、キラ・ヤマトを見た。

 コジロー・マードックは脱出ポッドに、何やら端末を刺して操作していく。

 周囲では銃を構えた陸戦兵たち。物々しい雰囲気の中、コジローは「開けますぜ」と言う。

 

 脱出ポッドのハッチが開く。

 

「ご苦労さまです」

 

 ひとりの少女が飛び出し、笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

~続く~

 




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