機動戦士ガンダムSEED~偽り~   作:量産型すき焼き

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注意書き
この作品はオリジナルモビルスーツ、オリジナルキャラクター、オリジナル設定など多数含みます。

後で追記


その機体の名はGUNDAM~前編~

 キラはコックピットに入り込むと、慣れた手付きで空いたスペースへと体を動かす。

 それを見た女性士官は、目を見開いたがすぐにコックピットであれこれ操作を始めていく。

 その間、キラはモニターに映る隣の機体を見た。

 

 その機体に親友とよく似た人物が、乗り込んだのを見たからだ。

 彼は未だに信じられないと、嘘だったのではないのか。見間違いだったのではないかと、思い込んでいた。

 しかし、それならばなぜ彼は生き残ったのか。

 

 相手がキラを視認したことで、その手を止めた。

 

(戦争なんて嫌いだって言っていた。だから、そんなことはないはずだ)

 

 だから違うとキラは思い込もうとした。

 女性士官が機体を動かそうとスイッチを入れていく。

 モニターにGeneral Unilateral Neuro-Link Dispersive Autonomic Maneuver Synthesis Systemと表示される。

 これを見たキラは咄嗟に頭文字をとって――。

 

「ガ、ンダ、ム?」

「動くわよ――」

 

 キラは慣れた手付きで体を固定し、モビルスーツの動作に備えた。

 

「――捕まって、るわね」

 

 キラはコックピット周辺を見渡す。

 

(それにしても、このコックピット。ジンと同じ?)

 

 実際にはザフト軍のジンと、キラが扱っていた作業用のジンのコックピットは違う。

 ヘリオポリスイレブンで運用されていたジンは、Gの開発のためモルゲンレーテ社がコックピットを換装したのである。

 当然ながらキラは、ザフト軍のジンのコックピットを知らない。彼が知っているジンは、その換装されたジンだからだ。

 

「飛び出すわよ。備えて」

 

 キラは衝撃に備えた。

 

 

 

 

 

 コロニー上空――と言っても筒状なので中央部分――で光が瞬く。

 ミゲル・アイマンは舌打ちして、機体を縦横無尽に動かす。

 コックピットでは絶えずアラートが鳴り響き、モニターに光が走る。

 

「俺の機体があればこんなやつ! って言いたかったがな……」

 

 戦いは一方的にミゲルの優勢で進んでいる。普通のモビルアーマーなら、とうの昔に落としていた。恐らく撃墜だけなら五回はできただろう。

 だが相手のモビルアーマーは今も現存し、平然と動いていた。

 ミゲルのジンに肉薄しようと、全力で噴射して突進してくる。

 

 彼は余裕をもって機体を旋回させる。

 

「旋回性能はこっちが上なんだよ!」

 

 コックピット内で叫んだところで、接触しないと相手に声は届かない。単なる独り言だ。

 それでもモビルスーツ、モビルアーマーのパイロットは戦闘中に独り言を言うのが多かった。

 ミゲルは頭のどこかで、これを言っても意味がないことはわかっていても、湧き上がる激情を吐き出さずにはいられない。

 

 ジンが重突撃銃を発砲。

 連射せずに、三点バーストに切り替えていた。

 原因はわからないが、相手のモビルアーマーはジンの攻撃を弾いていた。

 

(衝撃は届いているのか? 鈍くなっているな)

 

 彼は目の前のモビルアーマーに、似た機体と戦闘したことがあった。

 新星、今はプラントを守る宇宙要塞ボアズ。それの争奪戦の時に、メビウス・ゼロと戦闘していた。各部に差異は見られ、武装や推進ユニットの配置なども違う。色もオレンジではなく、黒と白と違っていた。

 そして戦闘したメビウス・ゼロと違い、起動ポッドなどが射出される様子はなかった。

 

(しかし、厄介だな。モビルアーマーがビーム兵器の小型にこぎつけたのか。こいつが量産されれば、これからの戦争は難しくなるな)

 

 ミゲルは撤退を視野に、相手の機体の情報を収集していく。

 

(仮称、メビウスメタルスってところかな)

 

 重突撃銃の三点バーストがクリティカルヒットしたのか、相手の仮称メビウスメタルスは機動がふらつく。

 そこを見逃すミゲルではない。彼は機体の四肢を振り回し、スラスターを噴射。先程とは違った急旋回を見せる。

 そのまま新型のモビルアーマーに肉薄して、左手で逆手に抜刀した重斬刀で、すれ違いざまに斬りつける。

 

 接触回線から悲鳴が響く。ミゲルは一瞬だけ、動揺したもののすぐに平静に戻る。

 

(これだから接近戦は嫌なんだ)

 

 モビルアーマーはそのままコロニー地表へと落ちるが、機体の破損は見られない。

 

「インチキかよっ! その装甲!」

 

 そのまま追撃しようとしたが、眼下で光が膨れ上がる。

 直後にコックピット内にも響く爆発音。

 ミゲルは咄嗟に音の方へと視線を向けた。

 

「アスラン! ラスティ! そっちは大丈夫なのか?!」

『ミゲル! 機体のOSが糞でまともに動かせない。援護頼む!』

 

 地上で地面に四つん這いとなっていたMSが一機。

 爆発の中から二機飛び出す。どの機体も色味が灰色である。

 ミゲルはこの時「塗装前か」としか思わなかった。

 

(ラスティのは……イザークのに似ているな。ってことは、あのタイプは量産されているかもしれないな)

 

 ミゲルは内心ゾッとする。

 地上の戦力に注意を払いながら、機体を下降させていった。

 途中生きていた戦闘車両から攻撃を受けるが、重突撃を単発で発砲して撃破。

 

「悪いな地球軍。俺たちは負けられないんだ」

 

 

 

 

 

 ヘリオポリスイレブンにある、工場区画が爆発によって吹き飛ぶ。

 ザフト軍と地球軍による戦闘で、何かしらに引火したのが原因だ。

 炎と黒煙を背に二つの影が飛び出し、それらがコロニーの大地に降り立つ。

 

「生き残っている友軍は応答せよ! 至急援護を!」

 

 女性士官の呼び声に応答する声はない。

 キラは驚きながらも、モニターから周囲の状況を確認していく。

 見知った顔がいくつか視界に入る。

 

(トール! ミリアリア! まだ逃げてなかったのか?!)

 

 コックピット内部に警告音が鳴り響く。

 

「上?!」

 

 ジンが一機降り立ち、他の二機のモビルスーツより前に出る。

 

「六機目だと?」

「そっちは地球軍の士官が乗り込んでいる」

「アスラン! ラスティを連れて撤退しろ!」

 

 ミゲルの駆るジンが飛び出す。重斬刀を抜き放つ。

 この時彼は、接近戦によって機体の奪取を狙っていた。重突撃銃で機体の動力部に被弾することを恐れたのだ。

 また彼のコックピット内からでも、逃げ遅れている民間人が多数いることが確認できていた。

 

 流れ弾が民間人を吹き飛ばす可能性を考慮し、なおかつ白い機体の視線を自身に誘導したのである。

 白い機体は頭部に備えられた兵装で対抗するが、まるで照準が合っていない。

 明後日の方向に弾丸の軌跡が走った。

 

(え? この機体)

 

 キラは、自分の乗っている機体が未完成であると理解する。

 白い機体はノロノロと動きながらジンから、距離をとろうとするが、あっという間に詰められてしまう。

 女性士官は咄嗟にコックピット内にあったボタンを押す。

 

「もらったぁ!」

 

 直後、機体に色が走る。

 

「何ぃ?!」

 

 六機目が前腕で重斬刀を受け止める。直後、質量の伴った金属と金属がぶつかり合う激しい衝撃と轟音。

 近くを逃げる人々の歯の奥にまでビリビリとした衝撃が伝わる。

 ミゲルは叫んだ。

 

「こいつもインチキ装甲だってのかよっ!」

 

 重斬刀を受け止めた部分からは、血が吹き出すように火花が散る。

 

「フェイズシフト装甲だ」

「何?!」

 

 アスランは素早く機体のコンソールを操作して、どういう装甲なのか説明する。

 電力を通電することで装甲が相転移する仕組みの装甲だ。

 一度展開されれば、実弾兵器や実剣の攻撃は全て無効化されてしまう。

 

 アスランの奪った機体も色が走る。次いでラスティの機体も色がついた。

 赤の機体。灰色と黄色の機体。

 ジンはモビルアーマーの方を睨む。

 

「そういうことか。だったらあのモビルアーマーも奪わないとな」

「モビルアーマーもかよっ!」

 

 ラスティは驚きのあまり口をついで出る。

 ミゲルは、いつまでも動かないアスランに気づく。

 彼が二人より前に出ているのには、もうひとつ理由がある。

 

 相手の注意を自分に向けさせるためだ。

 もし相手が自分たち以上に、機体を動かせるのならば。

 彼自身は「ナチュラルがモビルスーツなどと生意気だ」と一蹴したい。

 

 とはいえ、相手は未知数だ。せっかく奪った機体と、新入りのパイロットを失いたくなかった。

 このまま二人に戦場にいられては困るのだ。

 ミゲルはアスランらしくない挙動に、苛立ちを覚え声音に乗せた。

 

「おい急げアスラン! ラスティはお前と違うんだぞ!」

「悪いアスラン。手を貸してくれ。この場でOSの調整するのはムズい」

「フェイズシフト装甲とやらなら、護衛もいらんだろう! 行け!」

 

 アスランは顔をしかめる。そしてミゲルと対峙している白い機体を見つめる。

 

(あいつがこんなところにいるはずなんてない……だが……)

 

 アスランは渋々といった様子で、ラスティの機体と共に離脱。

 二機はコロニーの空へと消えていった。

 直後にジンが発砲。まともに動けない白い機体はそれを受けてよろめく。

 

「みすみすと……」

 

 奪われた機体が飛び去るのを、眺めることしかできなかった女性士官は下唇を噛みしめる。

 

「脅かしやがって。鈍くさ動くところは、ナチュラルに相応しいな」

 

 ミゲルは素早く機体の状況を確認。

 噴射剤の残量は残り半分以下。重突撃銃の残弾は三分の一。バッテリー残量も残りは少なかった。

 

(あのモビルアーマーに時間かけすぎたな)

 

 そこでコックピット内にアラートが鳴り響く。

 彼は舌打ちして、モビルアーマーが墜落した方角から機体を隠すように、光を避けた。

 直後に地面が焼かれ爆発が複数起こる。

 

「だからナチュラルは! コロニー内でビームをぶっ放すやつがあるか!」

 

 光弾が走った後に、白黒のモビルアーマーが駆け抜けていく。

 ミゲルは咄嗟に重突撃銃を構えて、民間人がいることに気づいた。

 発砲せずペダルを踏み込む。

 

「それが軍人のすることか!」

 

 ジンは飛翔し、モビルアーマーに一気に迫った。

 推進剤が足りないのか、あるいは先程の戦闘の影響か、モビルアーマーの動きは格段に悪い。

 それを見逃すミゲルではない。重斬刀を抜刀し、上段から一気に振り下ろす。

 

 重斬刀とフェイズシフト装甲が激突。

 金属と金属が激しくぶつかり合い轟く

 モビルアーマーから火花散り、工場地区へと墜落。フェイズシフト装甲を装備しているのか、バラバラにならず地面を滑った。

 

「お前も! 民間人を巻き込むってのか!」

 

 ミゲルの視線の先。白い機体の背後には民間人の姿。

 

 

 

 

 

 モビルアーマーが放ったビームは、思わぬ形で被害を生んでいた。

 二人の男女の目の前は赤黒く、道路がドロドロに溶けている。

 そこには彼らより先に、逃げていた人たちがいたはずだった。

 

 老いも若いも、男女も関係なく、跡形もなく消えていた。

 モルゲンレーテの工場から逃げていたのである。

 だが、その人達は光が走ると消えていた。

 

「トール。さっきまであそこに……みんなが」

「あ、ああ! ああっ! もう見るなミリィ!」

「どうして……どうしてなの?!」

 

 彼らは人が蒸発するところを、目の当たりにしたのである。

 

「う、嘘よ」

「ミリィ。逃げよう。立つんだ」

「でも、どこに?」とカズィは辺りを伺う。

「まだ高温だ。迂回しよう」とサイは提案する。

 

 誰も彼もが「こんなのは嘘だ」と叫びたかった。平和なはずの中立国オーブ。そのコロニーであるヘリオポリスイレブン。

 つい数時間前まで、戦争と無縁だった場所は、あっという間に地獄と化した。

 戦争から逃れるように、彼らは走る。

 

「君たちこっちよ!」

 

 声がトールたちの耳朶に届く。

 見れば金髪の女性が手招きしていた。

 彼らは無我夢中で、その声にすがりつく。

 

「急いで!」

 

 白い機体の近く。トールたちは走って逃げていた。

 シェルターに逃げ込むはずだったのだが、教授の研究施設――否。モルゲンレーテの工場にあるシェルター―は、埋まっているか、戦いの影響で使えなくなっていた。

 彼らは自分たちの足で逃げるしかなかったのだ。

 

 

 

 

 

 そしてそれをキラは、白い機体の中で視認する。

 

「来るっ! 掴まって!」と女性士官は悲鳴のように叫ぶ。

 

 ジンはスラスターをふかして、キラたちに肉薄しようとしていた。

 女性士官は咄嗟に後ろに逃げようとするが、それよりも早くジンは手を伸ばし、機体の肩の部分を掴んで引っ張り転がす。

 モニターに映し出される天地が目まぐるしく、変わっていく。

 

 女性の士官は目をつむり衝撃に叫ぶ。

 そんな中、キラは咄嗟に視線を動かす。

 ミリアリアたちから、離れていくことに安堵する。

 

「このぉ!」

 

 機体を素早く起き上がらせようとするが、機体は思うように反応しない。

 ジンはゆっくりと重突撃銃を構えて、単発射撃で確実に当てていく。

 コックピット内は激しく揺れる。女性士官は衝撃に耐えかねて、負傷した肩を抑えた。

 

 ようやく起き上がった白い機体にジンが迫る。

 重斬刀でコックピットを狙った一撃。刺突をお見舞いしようとしていた。

 ミゲルは先程のモビルアーマーとの戦闘で、フェイズシフト装甲は完璧ではないと看破している。

 

 如何に実弾に強くとも、衝撃までは無効にできない。そしてそれは、中のパイロットまでダイレクトに届くと確信していた。

 ミゲルは更に強い一撃を見舞うため、ジンのスラスターを使って一気に加速。

 白き機体はようやく動き出す。

 

「これなら!」

 

 キラは咄嗟に操縦桿に手を伸ばす。

 重斬刀の切っ先がモニター全面を覆う。

 激突する間際、白い機体は姿勢を崩し、しゃがむような形となる。

 

 重斬刀の切っ先は空振り、白い機体とジンは激突。

 キラは気合の雄叫びと共に、更に操作。機体が立ち上がり、相手の機体を突き飛ばすような形となった。

 突き飛ばされたミゲルは、驚きの声を上げる。

 

「何ぃ!?」

 

 驚く女性士官を他所にキラは横からの操作で、白い機体を動かす。

 

「ちっ! こいつ急に動きが――」

 

 ミゲルは再び驚きの声を小さく漏らす。コックピット内に聞き慣れた、けれどエースと呼ばれた彼は、久しく聞いていなかった警告音が響く。

 バッテリー残量を示す部分が明滅していた。また噴射剤も残量が少なくなっており、帰還するので精一杯といったところだ。

 モビルアーマーとの戦闘で使い過ぎたのだと、自らを叱咤するミゲル。

 

「どうする?」

 

 ミゲルが自問自答をしていると、爆煙と衝撃がジンと白い機体の間で巻き上がる。

 

「ようやく来たか」

 

 ミゲルは白い機体を忌々しげに見た後に、噴射して上昇。

 

「せいぜい頑張ってくれよ」

 

 ミゲルは届かない声援。後から来たジンに送ると戦場から離脱。

 そんなジンを見上げる白い機体。直後に光が瞬くと、羽のないジンが一機、急降下してきた。

 キラはその見慣れた機体に驚愕する。

 

「あれは、作業用のジン?!」

「えっ!?」と驚く女性士官。

 

 オーブのコロニー群周辺のデブリを片付けるためを目的とした機体。

 だが昨今はそれ以外の目的もあった。オーブがMS開発技術を手に入れるための、テストを目的とした機能などを盛り込んでおり、改修が加えられていた。そのためジャンク屋ギルドのよりは高性能である。

 後にザフト軍は別呼称としてオーブジンと名付けていた。

 

「確か、モルゲンレーテで改修していたジン、よね?」

 

 独り言のようにつぶやいた言葉。

 しかし、それを隣で聞いていたキラは驚いた。

 自身がバイトで使っていたモノが、国営企業が手を加えているとは知らなかったのだ。

 

(ってことはジンのコックピットに、そっくりなんじゃないってことか。この機体のテストのため? ってなると、この機体のOSは……)

 

 キラの思考は機体を襲う衝撃で途切れてしまう。

 オーブジンの手には重突撃銃が一丁。腰には片刃の剣を装備している。ザフトが使用する正規のとは違いどちらも緋色のラインが一本入っていた。

 それはオーブ所有を示すものであり、前述の通りモルゲンレーテが実験的に改修、開発した武装だ。

 

「あれさえ奪えば、俺たちはプラントに行けるんだ」

 

 オリバーは白い機体へと砲口を向け、数発発射。

 狙いは大きく外れ、目標のはるか後ろを吹き飛ばしていく。

 操縦桿を殴りつけるオリバー。

 

「くそっ! OSは元に戻ったんじゃないのかよ! 全然照準が合わないじゃないかよ!」

 

 

 

 

 

「今、なんと?」

『例のジンですが、一機だけかなり改修されておりまして』

「スパイ共が使っていたのにか?」

 

 驚くアデスを他所にクルーゼは不敵に笑う。

 

「やはり、手に入れておいて良かったな」

「はい」

「思わぬ戦利品だ」

 

 クルーゼ隊は作戦を順調に推移させていた。そして思わぬ戦利品が羽なしのジンだ。

 とはいえ、良いことばかりではなかった。最初の、そして一番大きな失敗がスパイたちだ。

 彼らの行動は察知されていたらしく、突入した陸戦隊はヘリオポリスイレブンのオーブ軍と交戦。死者は出ていないが、負傷者を出したため、作戦遂行能力が大きく下がったのだ。

 

「所詮は裏切り者――信用に足らないということか」

「当初の予定通り、切り捨てるのですよね?」

「自分たちの命欲しさに裏切るような奴らだ。また、いつ裏切るからわからんぞ?」

「確かに」

 

 さらに、当初の予定では作業用のジンを使って、ヘリオポリスイレブン内部で、暴れてもらう手はずだったのだが、それは叶っていない。

 そのジンらはOSを書き換えられたため、動けないという事態になっていた。

 そこでクルーゼはヴェサリウスの腕利きを送って、ジンを動けるようにさせたのだ。

 

 そんな中整備兵たちからとある報告が上がり、一機を持ち帰らせたのである。

 ジンのコックピット周りや、武装などなど、色々と改修が加えられているというのだ。

 敵の新型を強奪することも重要なのだが、自軍で使っている兵器が、どのように手を加えられたのか、そこから敵の技術を得ることもできる。

 

「しかし驚きです。一機だけ特別に改修されているとは」

「確かに不思議だな。その乗り手もいないというのが、殊更興味を持たせる」

 

 そして、時間はかかったものの、一機だけはヴェサリウスに持ち帰ったのだが、その機体を現在調べている整備兵たちからすると、かなり手が加えられていた機体だと言う。

 ザフト軍からすれば、おかしなことではない。エース級のパイロットは自分用に機体をカスタマイズすることは少なくない。

 だが、その乗り手がスパイの中にいないというのだ。

 

『いえ、なんでもコーディネイターの学生がバイトで使っていた機体だそうです』

 

 アデスは内心「バイトで学生にジンを使わせるのか」とツッコミを入れる。

 

「いや、待て。特別カスタマイズしたっていうのか? 学生のために」

『その可能性はあります。それに加えてこの機体、イザークたちが持ち帰った機体に使われている機能なども備えられています』

「いやいや、ありえないだろう? 学生だぞ? まさか開発を手伝わせていたって、言うのか?」

 

 ありえないとしながらも、アデスはその学生について興味を抱く。

 そんな逸材がこのオーブにいるというのだ。

 そこまで黙っていたクルーゼは、疑問を口にする。

 

「名前は聞いたのか?」

『いえ、そこまでは』

「そうか。引き続き調査、解析を進めてくれ」

 

 クルーゼは座席に腰を深く落とし、手を組む。

 

「妙なこともあるものだ」

 

 アデスは一回軍帽を脱いで頭をかく。そして視線を艦橋から見えるヘリオポリスイレブンへと向けた。

 

「一体何者なんでしょうか?」

「それもそうだが――」クルーゼは不敵に笑う。「うるさいハエが一匹いるな」

「はい?」

 

 アデスが聞くと同時に、友軍のジンの被弾報告が上がる。

 

「オロール機右腕損傷。帰投します」

「ミゲル機よりレーザービーコン受信」

 

 次いでミゲルのジンより、緊急事態を告げていた。

 

「予定外のことがあったとはいえ、残りの一機と新型のモビルアーマー。ここで叩いておく必要が出てきたな」

 

 クルーゼはゆっくりと艦橋を後にする。

 

「整備班。隊長機の準備急がせ!」

 

 アデスは振り返ること亡く指示を出した。

 

 

 

 

 

『その機体をよこせ!』

「その声?! オリバーさん!?」

『その声! キラか!』

「オリバーさん?! どうして!?」

『関係ないんだよ! ガキにはなァ!!』

 

 オリバーはここまでの失敗や、苛立ちをぶつけるように吠えた。

 彼は文字通り操縦桿を暴れさせる。

 そして白い機体を蹴飛ばし、距離を置く。

 

「お前みたいなガキが優遇されて! なんで俺は違うんだよ!」

 

 コックピット内で一人叫ぶ。

 片刃の刃を振り下ろし、白い機体の肩部を叩きつける。そのまま建物へと激突。

 瓦礫が降り注ぎ、足元にいる人々が逃げ惑う。その中に、まだ友人たちがいることに、キラは気づき叫ぶ。

 

「逃げるんじゃあねぇよ!」

 

 女性士官は機体を動かし、鈍臭く逃げ惑う。

 

「まっすぐ歩けないんですか!」

「わかっているわ!」

 

 羽なしのジンは重突撃銃を発砲するがまるで狙いが出鱈目だった。

 狙いは逸れてはるか後方を吹き飛ばしていく。

 キラはコックピットの中で、逃げていく人たちが粉々になるのを目の当たりにする。

 

「くそっ! くそっ! OSは直したんじゃねぇのかよ!」

 

 オリバーはキラが乗っている機体を睨みつける。

 

「お前のいじったOSのせいでぇ!」

「みんな? みんなは?」

 

 コックピットに映し出されるモニターにはジンの攻撃による煙で、まるで何も見えない。

 キラは、お腹の辺りに冷たいモノを押し込まれたように感じた。今にも足元が崩れていきそうな脱力。

 先程の攻撃で、自分の友人たちが死んだのではないか。

 

「よくも!」

 

 モニターに映し出される作業用のジンを睨む。

 キラは横からコックピット内部を操作し、機体のOS状況を確認。

 そして愕然となる。

 

「無茶苦茶だ。こんなもので、これだけの機体を動かそうって言うんですか?」

「まだ調整中なの。仕方がないでしょ」

「どいてください!」

「え?」

「早く!」

 

 女性士官は言われるがままに、コックピットをキラに渡してしまう。

 だが、内心確信にも似たモノを彼女は感じていた。この少年は「もしかしたら」と。

 キラはコックピットのシートに座ると、キーボードを取り出し素早くタイピングしていく。

 

「作業用のジンの――駄目だ」

(この子……)

 

 機体の制御を司るOSの部分を素早く修正していく。最初はジンで使っていたOSを構築しようとしたが、上手く行かなかった。

 白い機体のスペックと各動力の制御が、ジンとは別物でこの機体用に構築し直さなければならなかった。

 そのためキラは、この機体のスペックを解析しながら最適のOSを組み上げていく。ということをやらなければならなかった。

 

「ストライクっていうのか」

「だったら接近戦だ!」

 

 オリバーは片刃の刃――試作型対艦刀――を抜刀。作業用のジンは大きくふらつきながら、スラスターを使い一気に迫る。

 キラはOSの書き換えをしながら、頭部兵装、バルカンガン「イーゲルシュテルン」で迎撃。

 

「生意気なんだよ! クソガキがぁ!!」

 

 弾丸の雨にジンは思ったより加速できず、再び大地を蹴って加速。

 振り抜かれた刃は空を切り、ストライクは拳を振り抜く。金属と金属が激しくぶつかり合い、火花が吹き散らす。

 作業用のジンとはいえ、加速していた物体をストライクは容易く吹き飛ばす。ジンはそのまま建物へと激突し動けなくなった。

 

「――ブートストラップ起動」

 

 ジンが起き上がり重突撃銃を構える。先程より距離は詰まっており直撃は免れないが、キラは避けようとしない。

 ストライクに銃弾が命中し爆発。衝撃がコックピットを襲う。

 彼はそれよりも機体のことを解析して、武装を確認。使えるものは腰部にあるアーマーシュナイダー二本のみ。

 

(ナイフ二本で接近戦しろっていうのか!)

 

 キラは内心舌打ちする。

 

「――これだけか!」

 

 ストライクは飛び上がる。

 

「逃がすか!」とオリバーは銃撃しながらストライクを追う。

「トールが! みんながいるんですよ! オリバーさん!」

 

 銃撃を回避しながら腰部左右から、アーマーシュナイダーを展開。

 着地と同時に、軽やかに走りながら作業用のジンへと接近していく。

 そんな最中、キラはオリバーのジンの動きが悪いことに気づいた。

 

(OSの不調? 機体の反応が鈍い。いや違う。神経接続とのタイムラグ)

 

 ストライクはひとつと数える前に、ジンへと肉薄。

 

「く、来るんじゃねぇ!」

 

 重突撃銃は先程とは違い、至近距離でも当たらない。

 

「戦争が嫌で! オーブにいるんじゃないんですか!? オリバーさん!」

「ガキがよぉ!」

 

 ストライクはアーマーシュナイダーを、ジンの右肩と首筋に突き立てる。

 火花を吹き上げながら、ジンの右腕はだらりと下がり、モノアイからは光が失われる。

 キラは恐怖する。無我夢中だった。たまたまコックピットを狙っていなかっただけだが、ひとつ間違っていたらコックピットに突き立てていたかもしれない。

 

「僕は……」

 

 人を、それも知っている人を殺していたかもしれない。その事実に気づいて、動けなくなる。

 

「くそったれ! 死にやがれ!」

 

 オリバーはコックピットハッチを脱出用のため吹き飛ばす。そして背部に装備したスラスターユニットでコロニー上空へと消える。

 

「え? あ?」

「まさか! ジンから離れて!」

 

 キラはコックピット内のモニターに、人の姿を確認。

 逃げ遅れた人がいることに気づき、機体で覆いかぶさる。

 直後、巨大な爆発にストライクは飲まれた。

 

 

 

 

 

~続く~




評価や登録はお任せしますので、次のお話も見ていただければ嬉しいです。

後編は来週土曜日
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