この作品はオリジナルモビルスーツ、オリジナルキャラクター、オリジナル設定など多数含みます。
ムウ・ラ・フラガは舌打ちをした。
コロニー内部での戦闘は、予想以上に苦戦を強いられたのだ。
機体を暴れさせて戦うものの、宇宙区間と違い、戦闘できる空間が限定的であった。
故にモビルアーマーの機動性を、十全と発揮できないでいる。
地球軍のモビルアーマーはモビルスーツに勝っている点は、加速力だ。
直線距離での勝負ならまず負けない。対してモビルスーツは旋回性能が勝っており、特に宇宙空間では、人型であることを生かして四肢を動かして急旋回するパイロットもいた。
そしてその戦法を使える相手が目の前にいて、モビルアーマーの加速性能が活かせない閉所にて戦闘をしている。
それらを承知の上で、飛び込んだムウ・ラ・フラガだが、圧倒的不利に「卑怯だぞ」と叫んでいた。
モビルアーマーにとって、壁や遮蔽物は敵だ。激突すれば機体は損傷するのだ。対してモビルスーツにとっては違う。激突することはあっても、利用することができる。
機体を隠し、あるいは壁を足場として蹴り、無秩序な機動で攻撃を回避していく。
ムウ・ラ・フラガは不満が爆発し、コックピットの中で悪態をついた。
「くそったれ」
衝撃が機体を叩く。遮蔽物にメビウス・ゼロがこすったのだ。
眼前に開けた場所があり、ムウ・ラ・フラガは素早くガンバレルを展開。ラウ・ル・クルーゼの駆るシグーを狙うが、純白の機体は素早く遮蔽物に隠れてしまう。そして時折顔を出しては四基あったガンバレルを撃ち落としていく。
徐々に追い込まれていることに焦りが募るムウ。対してラウは冷静だった。
「そろそろご退場願おうか、ムウ・ラ・フラガ」
遮蔽物を蹴飛ばし、機体を加速させてシグーのスペック以上の速度を出す。
機体のGが彼の体にかかるが、ものともせず笑みを浮かべる。
シグーの接近に、メビウス・ゼロは咄嗟に反応するも、リニアガンの砲口は捉えきれない距離まで肉薄される。
「ちくしょう!」
ムウ・ラ・フラガの視界が煌めく。彼は咄嗟に機体を操作して、急制動。機体に残っていた唯一の武装を犠牲に撃墜は免れた。
「やるな。だが、それでは見ているだけしかできまい」
ラウは、ムウに戦闘能力が残されていないと見ると、無視してコロニー内部へと悠々と進撃。
ムウ・ラ・フラガも追いかけるが、メビウス・ゼロは、推進力も兼ねているガンバレルが全損しているため、あっという間に置いていかれてしまう。
ほどなくして、ラウは広場に灰色の機体を発見する。
「あれが最後の一機か。ここで落ちてもら――民間人か」
ラウ・ル・クルーゼはひとつと数えない間に思考する。
最後に残った一機の近くに、人が多数いた。軍関係者のようにも思えたが、女子供がいることに彼は違和を覚える。
しかし、地上に降りた友軍の報告を彼は思い出す。
「なるほど民間人を盾に、か。落ちたものだな地球軍」
シグーを認めたマリューは悲鳴にも似た叫び声をあげた。
「パックを早く装着して!!!」
彼女の言葉に、応えるようにキラはランチャーストライカーを機体に装着。
素早くフェイズシフト装甲を展開すると、広場より跳躍して機体を前へと出した。
その行動はラウ・ル・クルーゼを驚かせる。民間人は盾ではなく、集まったものだと断定。
キラは機体を移動させて射線に入らないように留意する。単発で重突撃銃を発砲。弾丸はすべてストライクに被弾。
衝撃でコックピットが暴れるが、キラはなんとか耐えて見せた。
モニターから煙幕が晴れると相手を探す。
「くそっ。こんなところじゃ!」
ストライクは広場から離れるように移動。これ幸いとシグーは重突撃銃を連射モードに切り替えて攻撃。
「あれがフェイズシフト装甲か。厄介なものを作ってくれた」
ラウ・ル・クルーゼは次の攻撃をしようとしたところで、コックピットにアラームが鳴り響く。
モニターは巨大な爆炎が燃え上がったのを捉えた。そして、その中から巨大な影が突き破ってくる。
シグーは目標をストライクから、巨大な物体へと変える。重突撃銃を連射するものの、影はそれを回避。
炎と煙の中から純白の船体が姿を現す。
それを見入ってしまうキラと、避難した人々。
その場にようやく追いついたムウ・ラ・フラガは、戦艦がコロニー内部にいることに驚く。
「なんだってそんなもん。コロニー内部だと撃たれ放題なんだぞ」
シグーは戦艦をやり過ごすと、目標を再びストライクへと変える。
ラウ・ル・クルーゼは「これならば」と弾倉を交換。素早くストライクへと照準して、発砲。
白い機体は先程より少し仰け反ったが、機体に損傷は認められなかった。
「駄目化か。強化APSV弾でも」
再びコックピット内にアラーム。仮面の下の眼が、戦艦の艦尾からミサイルが発射されたのを視認。
重突撃銃でミサイルを破壊していくが、いくつか残ってしまう。
残ったミサイルの追尾を振り切るため、彼はコロニーシャフトを遮蔽物にして、攻撃をいなす。
「やれやれ。地球軍は随分と恩知らずと見受ける。オーブのおかげで、戦艦やモビルスーツが出来たというのに」
それを見ていたキラは「冗談じゃない」と叫ぶ。
「ランチャーって名前なんだろ。なら、砲撃用の武器でもあるってことでしょ」
すぐに武装が判明。超高インパルス砲「アグニ」と表示される。
キラは武器を選択すると、それを展開。ストライクが構えた。
コックピット内ではスコープを展開して、少年はシグーを照準。
「出ていってくれよ! 戦争なんかごめんなんだ!」
アグニを構えたストライクを見たマリューたちは、キラへと制止の声をあげるが、相手は戦場の、しかも機体の中。声は届かず、巨大な光が一条。シグーを襲う。
寸前。その一撃は躱されてしまう。シグーは右腕を吹き飛ばされるが、撃墜は免れた。
放たれた巨大な光は、そのままコロニー内壁へと激突し、爆発と共にコロニーに巨大な穴を穿つ。
「穴? コロニーに? 僕が?」とキラは自身のやったことに恐れおののく。
コックピット内でラウ・ル・クルーゼは、淡々と「モビルスーツに、これほどの火力を持たせるとは」言いながら、機体のステータスを確認。
すぐさま彼は撤退を選択し、コロニーに出来た穴から離脱する。
辛くも地球軍は、敵の攻撃の撃退に成功した。
白い機体は星々が瞬く暗闇を行く。背中にある翼を模したスラスターから、一見して天使が飛翔しているようにも見える。
コックピットの中では、先程の戦闘の映像を繰り返し確認する仮面の男。
自身が見ていない方向にあったカメラが、白い機体の攻撃を捉えていた。
(スパイからの情報とは違う装備。我軍の軍部が気に入りそうな機体だな)
ラウ・ル・クルーゼは、映像から最後の機体に換装能力があることを推察。
光通信で母艦へとエマージェンシーを通達。緊急着艦を要請した。
見てくれは右前腕の損失だけだが、コックピット右辺周辺が異常を示している。
「ここで死ぬか。それとも――」
仮面の男は小さく笑う。胸中「それも運命か」と自嘲。
「それにしても、ムウ以外に私を感じさせる者がいるとは……」
青い戦艦がシグーを受け入れる。
被弾した隊長機を見た整備兵たちは、一様に驚きの表情を作った。
ただひとりを除いて。
その少年はイージスのコックピット内で、神妙な面持ちになるとキーボードを操作していく。
その外で二人の整備兵が、イージスに繋げた機器から、キーボードを操作していく。
その内のひとりが、作業したままシグーを見て口を開く。
「隊長機が被弾とか、こんなOSでか?」
「とても動かせるようなものじゃないぞこれ」
「ナチュラルには、まだまだモビルスーツは早いってのがわかる」
「でも被弾したんだよな?」
「まぐれ当たりだろ」
「うちの隊長がか? ありえんだろ。今までうちの隊長機に被弾させたのは。エンデュミオンの鷹くらいだ」
二人の整備兵は突如驚きの声をあげた。
「すまない。そちらの方までやってしまった」
コックピット内から声がかかる。
整備兵二人は「お気になさらず」と言って、イージスのOSを確認。
「機体のデータも、すべて取得できました」
「ああ……」
アスランはコックピットから出て、被弾したシグーを見る。
(やはりキラ。君なのか?)
アスランの脳裏には、先程モルゲンレーテの工場で出会った少年。
(いや違う。あいつがあんなところに、いるはずがない。あいつはコーディネイターなんだ)
プラントのどこかにいる。そうに違いないと、アスランは思うことにした。
彼は更衣室に行こうとコックピットの出入り口に手をかける。ため息をひとつ飛び出す。
そんな彼の耳朶に、先程の整備兵の声が突き刺さる。
「さっきの話だけどよ。オーブって中立国だよな?」
「ああ。それがどうかしたのか?」
「最後の機体だけどさ。コーディネイターが動かしているんじゃないか?」
アスランは咄嗟に二人の整備兵へと向き直ってしまう。
驚きの表情に固まる彼に気づかず、二人は話を続けた。
「地球軍の兵器だろ? ないない」
「でも、コーディネイターでも結構オーブに行ってる奴も多いんだよな」
整備兵のひとりは「俺の友人も戦争が嫌でオーブに行っちまった」と付け加えた。
「それであんな小さな島国が、コロニー十一基も持ってるのか」
「戦争嫌な奴が多いんだろ。でもそんな奴らも、俺達が自治独立を勝ち取ったら、帰ってきてくれるさ」
「呑気だなお前は」
会話は突然終わりを迎える。
「アスラン。機体の方はどうだ?」
アスランを含めて三人は、その声に反応して素早く敬礼した。
彼らの視線の先には白い仮面の男。エアロックは閉じており、パイロットスーツを身に着けていない彼はようやくシグーから降りたのだ。
アスランは、OSの調整。データの吸い上げを終えたことを報告。
「ご苦労。次の作戦に移る。少し休んだ後、艦橋に来てくれ」
アスランは「はっ」と応じて、敬礼で返す。
(なんとしても、確かめないと)
アークエンジェルがコロニー内へと着陸すると、中から数名の地球軍の兵士が降りてくる。先頭を行くのがナタル・バジルールだ。
彼女はマリュー・ラミアスと面識があるのか、彼女を見つけると小走りで近寄った。
後ろには銃を手にした兵士が数人。それを見て広場にいた人々が身構える。
「これは……避難シェルターは?」
「バジルール少尉、無事だったのね? か――」
マリューは「艦長たちは無事?」と聞こうとして、乱入してきた声に遮られた。
「おーい。艦長はどこだ?」
見れば紫と黒のパイロットスーツの男が走ってきていた。マリューとナタルは顔を見合わせる。
どちらも、男について認知していないのだ。
「よお、おたくらの艦長はどこだい? 乗艦の許可もらいたくてね」
ムウ・ラ・フラガだ。男は自身の所属と名前を名乗ると敬礼。マリューらも返礼して、所属と名前を名乗った。
彼は「すでにメビウス・ゼロを着艦させたんだがね」と話を続ける。
「乗艦の許可が欲しいんだよ。落とされちまってね。俺の乗ってきた船も」
マリューはナタルへと視線を向けると、彼女は顔を曇らせていた。
「艦長以下、主だった士官は――」
ムウとマリューは、その先の言葉を聞くまでもなく理解した。戦争が始まってからよく聞く話だ。
アークエンジェルの主だった士官は全滅していた。今生き残っているものは、交代要員だったり、将来を見込まれて選ばれた者たちだ。
「そう……艦長は」
「よって、艦の責任者は――」とナタルはマリュー・ラミアスを見た。
その視線に他の下士官や、メアリーとカオルもマリューへと視線を集めた。
「私……?」
彼女は目の前が真っ暗になるような感覚に襲われる。なんとか持ちこたえたのは、奇跡だった。
「まいったね。着艦させちまったんだ。とにかく乗艦許可くれよ。ラミアス大尉」とムウは軽い調子だ。
「え、ええ。許可します」
「んで、あれは?」
ムウの視線の先にはストライクから、降り立つキラ。そして、その周囲をトールたちが囲んでいた。
「ご覧の通り、民間人の少年です」とマリューは、先程の戦闘も含めて、ジン一機を撃退したことを伝えた。
「あの子供が」
ナタルをはじめ、多くの地球軍の兵士たちが驚きを顕にする。
マリューは工場区にいたことや、Gに乗せて避難させた経緯を説明。
ムウが興味を示したことに、彼女は彼ら守る意味を込めて「彼のおかげで、ストライクだけは守れた」と付け加えた。
「あれに乗るひよっこ共の護衛で来たんだがね、俺――」
ムウの脳裏には艦内のシミュレーターで、鈍くさと動かす姿だ。そして先程の戦闘をムウも見ていた。
「――連中はどうした?」
ナタルからは、恐らく戦死しているだろうと告げられる。艦長に着任の挨拶をしていたところを爆破されたのだ。生存しているとは思えなかった。
それを聞いたムウは「そうか」と言うと、キラの元へと歩んだ。それに続くように、マリューとナタルも続く。
キラたちは僅かに身構える。
「な、んですか?」
「君、コーディネイターだろ?」
ムウは穏やかな口調で問いかける。どよめきが起こり、場は騒然となった。
とくにキラの友人である、トールたちの血相は一瞬で変わる。
マリュー、メアリー、カオルの三人が顔を、僅かに俯かせた。
キラ・ヤマトは友人たちよりも一歩前へ出る。
「はい」
瞬間、地球軍の兵士たちは彼へと銃を向けた。
「やるってのかい?」
皮肉げな声が割り込む。
視線は灰色の少年へと向いた。
「コロニー内でどんぱちやって、今度はこの中立国で民間人を殺すんだ。おたくら地球軍ってのは」
「なんだと!」
ひとりの地球軍の兵士が激高する。
「あー、やだやだ。敵じゃないのはわかるだろうに」
「そ、そうだ! お前ら何見てたんだ! 敵じゃねぇよ! どういう頭してんだよ!」
トールはキラを庇うように前に出る。その隣にはサイ。
「やめてくれませんか。そういうの、ここは中立国です。あなた方の敵はプラントの、ザフト軍でしょう?」
サイは冷静を装いつつ、地球軍の兵士たちに語りかけた。
急激な緊張感が場を支配する。
マリューは誰よりも早く動き出し、銃を下ろすように命令。
「ラミアス大尉。しかしこいつはコーディネイターです」と男たちは引き金に指をかけた。
「ここは中立国。戦火に巻き込まれるのが嫌で、コーディネイターがいるのも不思議じゃないわ」
「違うわ! そいつ宇宙人なんでしょ! パパの軍隊なら早く倒してよ!」
声が乱入する。キラたちはその声をよく知っており、キラとサイは驚きをもって彼女を見つめた。
「フレイ。そんな言い方はないだろ。それに知ってたじゃないか」
「こいつが裏切ったのよ。コーディネイターが攻めて来たなら、そうに違いないわ」
「フレイ!」
「とにかく、銃は下ろしなさい」
マリューの命令に兵士たちは従う。
「なんでよ! パパの軍隊なんでしょ!」
「パパって、あなたは?」
「フレイ! フレイ・アルスターよ」
その名を聞いた面々は驚く。だが、それも束の間。
「だとしても、そんな話聞けないわ」
「なんでよ!」
「フレイやめろって」
サイ・アーガイルは彼女の前まで歩いて行き、言葉を遮る。
「悪いキラ。俺が言っとくから、ごめんな」
「あ、うん。……サイありがとう」
彼はフレイの手を取って、無理矢理その場から引き剥がした。
「いや、ごめんな。そんな空気にするつもりじゃなかったんだが」
ムウは頭をかきながら謝罪をする。彼は「ただな――」と話を続ける。
「ここに来る道中の、ひよっこ共の姿を見ていてな。連中、こいつら動かすのも苦労してたんだ。それがね――」
ムウ・ラ・フラガは「やれやれ」と言って、アークエンジェルの方へと戻っていく。
「どちらへ?」とナタル。
「ゆっくりしている時間はないぞ。外にいるのはクルーゼ隊だ」
その時、キラは地球軍の面々が顔を暗くしたのを見た。
(クルーゼ……隊?)
マリューたちも後を追うように動き始める。
「あ、キラ君。ストライクをアークエンジェルの中に、コックピットで待機していてちょうだい」
「わかりました」
マリューたちが行くと、トールたちは大きく息を吐いた。
「いや、マジでビビった」とトール。
「よくやるよ」とカズィ。
「カズィ手伝ってくれよ」
「やだよ」
カズィは彼らの後ろで見ているだけだった。
「まあ、そういうところがカズィの良いところなんだけど」
「褒めてる?」
「褒めてる褒めてる。キラもどうもな」
トールのお礼にキラははにかむ。
「お前がストライク、動かしてなかったら俺たち死んでたぜ」
「本当、何回も死にそうになったし、死んだ人も……たくさん……」
ミリアリアは口元を抑える。トールはそんな彼女の肩を抱き寄せて「本当にな」と声をかける。
キラは、彼らになんと言葉をかけていいのかわからず、俯いてから「無事で良かった」と口にした。
カズィは後頭部で手を組んで口を開く。
「本当。さっさと出ていってもらって、家に帰りたいなー」
「おいおい。呑気すぎやしないか?」
灰色の髪の少年がキラの元へと歩み寄る。
「あんたはさっきの」
「警戒するなよ。俺はソーマ・カガってんだ。お前、キラだっけ?」
「え、ええ。なんでしょうか?」
「ありがとうよ。俺も工場区の近くにいてよ。お前のおかげで助かったよ」
ソーマを皮切りに、広場にいた大人たちもキラにお礼を口にする。
感謝と称賛の声に、キラは嬉しいやら恥ずかしいやらで、困ったように笑ってストライクへと向かう。
「まあ、さっさと地球軍に出ていってもらって、戦争なんて忘れようぜ」とソウマ。
キラは「そうですね」と言って顔を暗くする。
彼の脳裏には先程の工場区での光景。そこで出会ったザフト兵は、友人にそっくりだった。
もしも彼だったとしても、地球軍が出ていけば悪い夢として忘れられる。
「諸君らも知っての通り、オリジナルのOSは、モビルスーツを動かすに値するものではない」
ミゲルのジンが撮影した戦闘が、艦橋で流されていた。
それをアスラン、ミゲル、オロール、マシューの四人が真剣な眼差しで見ている。
「しかし、ミゲルがこれを持ち帰ってくれて良かった」
ラウの言葉にアデスが首肯して口を開く。
「これがなければ、我々は本国で笑い者でしたな」
「私なんか最新鋭機を損傷させたからな。無能者と笑われるところだった」
クルーゼ隊はザフト軍の中でも、羨望と嫉妬の眼差しを向けられていた。
隊長のクルーゼは戦争の初期で大戦果を上げたのである。その結果、彼の部隊は最新鋭機や、最新の装備を優先的に受領していた。
それだけ本国から期待がかけられている。故にクルーゼ隊に、失敗という文字は許されない。
「とはいえ、今回は我々の出番ではない。高みの見物だ。彼らがやってくれるだろう」
「ミゲル、オロール、マシューの三人は、コロニー外より内部の戦闘状況を記録しろ。戦闘には加わるな」
三人は僅かに表情が動くが、すぐに「了解」と応じた。
彼らは先の戦闘の雪辱を果たしたいと考えていたのだ。
アデスが「解散」と口を開きかけたところで、声が入り込む。
「あの、自分も出撃させてください」
声の主は、そこまで黙って聞いていたアスランだ。
彼がそんな発言をしたのが、意外だったのかミゲルらは驚いた様子だ。
クルーゼは顎に手をやり考える素振りとなる。
「今回は戦闘をするのが目的ではない」
「なので――あの機体のテストも兼ねて、どうでしょうか?」
「手に入れた玩具を試したいってか?」茶髪をオールバックにした男、オロールが試すように聞く。
「おい。よせよオロール」とミゲルが制止する。
ことの成り行きを見ていたクルーゼは口元を緩める。
「いいだろうアスラン」
「隊長!」
ラウ・ル・クルーゼは手で、アデスの発言を制す。
「重ねて言うが、今回はスパイたちに戦ってもらう。なにせ、あそこは中立国だからな」
それは建前だ。クルーゼたちは先程まで、そこで戦闘をしいたのである。
本国では問題となるだろうが、彼はそれ以上の成果を持ち帰ることで、帳消しになることを確信していた。
「そんな中立国で、地球軍の新型兵器たちが戦闘するのだ。データをとる必要があるだろう。不用意に戦闘すれば、こちらも損失を免れまい」
仮面の男は不敵に笑い「だが――」と口を開く。そして、その場にいる全員を見回す。
「もしも例外があった場合、その限りではない。例えば、そうだな」
彼は顎に手をあて考える素振りとなる。そして、数えて三つもしない頃、彼は鼻で笑う。
「地球軍の攻撃によって、中立国のコロニーが壊れたりすれば、我々としては大義名分を得るわけだ」
その場にいる面々は顔色を青ざめさせた。
彼らコーディネイターにとって、コロニーを失うことの意味がどれほど重いか理解しているからだ。
自分たちの住む場所。ナチュラルもいるとはいえ、中立国のコロニー。それを奪ってしまうことへの抵抗感が生まれる。
「ナチュラル共だからな。さっきの戦闘でも、民間人を巻き込んでたし、利用するだけ利用して、中立国をふっ飛ばすかもな」とミゲルは淡々と口にする。
アスランは僅かに目を見開く。
「何が起きるかわからんからな。各員、注意せよ」
「ジンの武装はD装備で行け。ただし、今回は撤退を優先せよ」
地球軍最後のモビルスーツの破壊は、今回は優先目標が低い。
もちろん落としたいのは本音だが、クルーゼ隊で現状、戦闘に使えるモビルスーツは四機だ。
強奪したモビルスーツを、投入できないわけではない。
「アスラン出撃は許可されたが、ミゲルらの援護のみだ。武器の認識は終わっているな?」
アスランが「はい」と応えると、アデスはイージスにスナイパーライフルを装備させて、出撃するように命じる。
その後、四人が艦橋を後にすると、クルーゼは小さく笑う。
「優しいなアデス」
「いえ、ザラ国防委員長のご子息ですので」
「それより、なぜ出撃をお許しに?」
「面白いものが見れると思ってな」
「と、言いますと?」
「地球軍のモビルスーツ同士の戦闘だよ」
ラウは仮面の奥底に隠した表情を見せない。
彼は自身の席へと向かい、腰を下ろすと一息いれる。
「あのスパイ共も、そうあてにならないだろう」
「後ろから、撃たれるかもしれませんか」
「それもある。後は、お前が言っていた通り、やつらのモビルスーツは、ろくに使い物にならんだろう」
オーブジンは残り四機。アデスは整備兵からの報告を聞いている。OSは無理くり合わせたが、何が起きるかわからないという話だ。
スラスター、各部駆動系の出力。それらがオリジナルとまるで違う。そのため、それ用にOSの調整も必要なのだが、その時間はなかった。
「下手に戦場をかき乱されて、我軍の戦力の損失は、御免こうむりたいものですなクルーゼ隊長」
アデスは軍帽を脱いで頭をかく。
「そうだな。やはり舞台に相応しい者に踊ってもらうとしよう」
「ガモフにレーザー通信。Eジャマー解除後も、通信はレーザーでのみとすると伝えろ」
アデスの指示後、クルーゼはとあることに気づく。
「そういえば決めてなかったな」
「何をです?」
「連中のコードネームだ。そうだな。戦艦は足つき、機体の方は四本角とでも呼ぶか」
~続く~
評価や登録はお任せしますので、次のお話も見ていただければ嬉しいです。
後、ガンプラも買って20周年に向けて盛り上がってくれたりしたら嬉しいです。
11月再販は
HGCEエールストライクガンダム
RGストライクフリーダムガンダム
RGデスティニーガンダム用デカール
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