この作品はオリジナルモビルスーツ、オリジナルキャラクター、オリジナル設定など多数含みます。
アークエンジェルの艦橋にて、マリュー、ムウ、ナタルらは今後についての話し合いを進めていた。
まずはヘリオポリスイレブンからの脱出だ。アークエンジェルをコロニー内に入る際、ローエングリン砲を使用したため、工場区からの脱出はできなくなってしまった。使った影響で道が塞がれてしまったのである。
ローエングリン砲はアークエンジェル最大の威力の武装だ。ナタル・バジルールの計らいによって出力は絞ったものの、その影響は少なくない。
「最大出力で使うのは?」
「コロニー壊せっての?」
ナタルの提案をムウは却下した。
残された手段としては、ヘリオポリスイレブンの宇宙港から出ることだが、それは難しい。
艦長席に座ったマリューは、受話器を元の位置へと戻す。
「駄目ね。連絡がつかないわ。シェルターのロックも、いつ解除されるかわからないわ」
ヘリオポリスイレブンの宇宙港管制塔と、連絡がつかない状況であった。
そのため、キラたち逃げ遅れた人々を、シェルターに入れられないのである。
「あれ? じゃあ、あの広場にいる人達はどうするんだ?」
ムウの指摘にマリューの顔は曇った。
彼女は地球軍の英雄を見据える。
「キラ・ヤマトは機密を見ています」
「そんなこと言ってる場合かよ。ってか子供だぜ? 戦わせるのか?」
「ですが、軍規では――」
「そもそもだけど。まずはオーブに申し入れしないと、駄目なんじゃないの?」
どちらの言い分も正しい。マリューとしては、早々に安全な場所に送りたかった。
とはいえ、非常事態だ。ジャミングの影響で連絡はつかないままだ。政治的な取引するにも、時間も人も足りない。
彼女はストライクを運び出すこと、任務を優先した。
「脱出にはストライクの力も必要だと思うのです」
マリューの言葉の裏にある意味を、ムウは理解し顔をしかめた。
「子供を戦場に立たせるってのか? 馬鹿なこと言うな。メビウス・ストライカー。メビウス三機あるんだろ? 余ってるメビウスがあるなら、俺がそれに乗る」
「それで脱出できますか? 相手はクルーゼ隊、なんですよね?」
ムウは反論できないのか「そうだった」と頭の後ろで手を組んだ。。
「待ってください。子供の、それもコーディネイターにストライクを乗せるっていうのですか?」
ナタル・バジルールは血相を変える。
地球軍の最新鋭機。それもコーディネイターに対するための兵器だ。
それをコーディネイターに乗せるなど、本末転倒である。
「バジルール少尉は、坊主が書き換えたOSを見てないのか?」
「それがなんだというのです?」
「あんなの乗れるやつ、いないって」
「なら元に戻させて、大尉が乗ればよろしいじゃないですか!」
「弱くして、すっとろく動いて、的になれっての? 棺桶に入れるってんなら、せめてまともに動くものしてくれ」
マリューは「とにかく」と二人の話を切った。
「ストライクは必要でしょう?」
「坊主は承知しているのか?」
「アスラン。お前は後ろで俺たちの支援だ。いきなり新人が死ぬなんて真似、俺は許さないからな」
ヴェサリウスの更衣室にて、ミゲルはアスランに言い含める。
彼はすでにパイロットスーツを着用しており、いつでも準備万端といった具合だ。
オロール、マシューもパイロットスーツの袖に腕を通し、各部位を確認している。
「お前が優秀なのはわかっている。いずれ、自分の部隊も持つだろう。だから、つまらない意地を張って死ぬな」
「わかったミゲル」
頷くアスランに、オロールは口を開く。
「新機体手に入れたからか?」
先程の艦橋とは違い、落ち着いた雰囲気で問いかけている。
「試し乗りしたい気持ちもわかるけどね」と褐色の青年がにこやかに言う。
「マシュー、茶化すな」
「へいへい」
「確かめたいことがあるんだ。どうしても」
ミゲルらはその先を問いたださなかった。
彼の声音には、それまでにない切実さが滲み出ていたのである。
そんなアスラン・ザラを彼らは見たことがなかった。
「なら、ちゃんと確かめてみるんだな」
ミゲルはそれ以上言うことをやめた。
「ただ、ミゲルが言ったこと守れよ。死ぬのはなしだ」
「そうそう。後ろで援護してくれればいい」
オロールとマシューの言葉に頷くアスラン。
「わかっている」
四人はパイロットスーツの着用を済ませると、格納庫へと足早に移動。
コックピット付近に待機している整備兵たちに助けてもらい、各機へと搭乗。
アスランがコックピットに着席すると同時に、ミゲルの声が通信から届く。
『戦闘の映像を撮るだけって話だが、例外はありえる』
『隊長は、なにかありますよって感じだったな』
オロールはコックピットの計器類を見てわずかに眉をひそめる。
『じゃあ、なにかあるんだろうな。スパイ共が後ろから撃ってくるかもな』
『滅多なこと言うんじゃないよマシュー』
『ビビってんの? オロール』
ミゲルはD型装備で出撃させる意味を説く。
D型装備とは、主に拠点攻撃用の装備だ。
ただの偵察ならば、重武装する意味はないはずである。
アスランもミゲルの話に頷き考える。
やはり例外や不運な事故が起こるのだろう。
コロニーを失う。その意味をアスランたちは知っている。
(母上のように……そして、あいつも……いや違う。まだ決まったわけでは)
『はしゃぐな。エンデュミオンの鷹もいるんだぞ』
オロールとマシューは息を呑む。
そんな二人の様子にアスランは驚く。
その名はアカデミーで聞いた覚えがあった。
(エンデュミオンの鷹……確か、エンデュミオンクレーターでジンを五畿撃墜したっていう)
『エンデュミオンの鷹。結構なやつだ』
『そんなに?』
『ああ、油断すると死ぬな』
オロールの声には悔しさも滲んでいる。
マシューはコロニー内部に突入していたので、相手に対する脅威がよくわからない様子だ。
そんな二人の様子を見て、ミゲルはゆっくりと口を開く。
『俺も専用機で戦ったが、油断ならない相手だった』
ミゲルは専用機で激突したことがあり、撃退経験がある。
『エンデュミオンの鷹だけじゃない。地球軍の最後の機体だ。あれにも気をつけろ』
『黄昏の魔弾の仰せのままに』
『ははぁ~神様仏様ミゲル様~』
『出撃前にふざけんな二人共! ぶっとばすぞ!』
ミゲルが言い終わるのを待ってじゃ、ブリッジから通信が入る。
『オロール機。発進カタパルトへ』
アスランはここではない、どこかを見ながら思う。
(本当に、お前なのか? キラ)
ヘリオポリスイレブンモビルスーツ格納庫。そこには四機のジンがハンガーに収まっていた。
オリバーを含めて四人の男たちが、自分の機体を見上げる。
オリジナルのジンにある特徴である、トサカと翼のないジン。
「そろそろ行くぞ」
「今、避難命令出てるなら銀行は誰もいないよな?」
「あ、俺も金はほしい」
「それよりも試し撃ちさせてくれよ。地球軍の武器がどんなもんなのか試したいんだよ」
四人はまるでバラバラだった。
それでも別にいいのか「行くぞ」と言ったオリバーは気にも留めない。
彼らを下に見ているので、考えるだけ無駄だと思っているのだ。
(まあ、どうせこいつらも駒だしな)
オリバーは他の三人には、キラと戦ったことを伏せていた。
彼らを上手く使って自分は楽しようと考えていたのである。
そういった思惑を気取られないために、彼は大して興味のないことを聞く。
「お前らは、プラントに行ったらどうするんだ?」
「このまま軍に入って、美人の嫁さんがほしい」
「俺も、俺も」
「人を殺してぇ。武器を使って蹂躙してぇ! ナチュラル共ならいくらでも殺していいんだろ?」
三人のうちひとりが「オリバーは?」と聞く。
「そうだな。俺もみんなと同じだ。軍に入ってそれなりの成果を出してって感じだな」
オリバーは胸中ほくそ笑む。
(バカが。軍になんか入って命を危険に晒すか)
「地球軍の戦艦がコロニー内部に入ったようだ。コロニー内でドンパチできないだろうから、こっちは好き勝手撃ち放題だ」
「しかしザフトはケチだな。俺たちに武器くらい貸してくれてもいいのに」
「そんなことより時間だ。急ぐぞ」
オリバーたちは、それぞれの機体のコックピットに乗り込む。
「じゃあお仕事しますか」
アークエンジェルに続々と、荷物が運び込まれていく。
逃げ遅れた人々も手伝ったおかげで、思った以上に物資の回収は進んだ。
そんな流れと逆行するように、マリュー・ラミアスは、アークエンジェルの外にいる避難民たちの元へと来ていた。
その後ろにはカオル・ウラベ。彼は申し訳程度の武装で、艦長の護衛だ。
『マードックです艦長。報告します』と胸元の通信機が声を発する。
マリューは歩きながら、話を促す。
『ストライク以外は戦闘で使えません』
「メビウスは?」
『人員不足で確認が出来ていません。あれの出撃に責任がもてませんよ』
マードックは『パイロット共はやる気ですがね』と続けた。
(モビルアーマー乗りを出すの?)
マリューは胸元に手をやる。
「ストライクは出せるのね?」
『ええ』
「なら、今すぐメビウスのメンテをお願い。一機でもいいわ。ゼロとストライカーは?」
『どちらも、もう少し時間ください』
「わかったわ」
「艦長、あまりお時間がありません」
「わかっているわ」
彼女はジンとの戦闘の後、曖昧となっていた記憶が元に戻ったのだ。
そこで、とある疑問が生まれたのである。そしてそれを確認するために、足早に来たのだった。
探していた人物を見つけると、彼女は駆け寄った。
「キラ・ヤマト。ひとつ確認したいことがあるの」
「はい。なんでしょうか?」
キラたちには、相当嫌われているらしく、彼女を確認するやいなや、周囲の面々も腰を浮かしている。
内心「嫌われたものね」と自嘲しつつ、彼女は話を進める。
「先の戦闘のことでひとつ、聞きたいの」
刹那、キラは目を見開く。
「そうだ! そうだった!」
彼は何かを思い出したかのように、大きな声を出した。
トールはミリアリアと顔を合わせてから、首を傾げ合う。
彼らは疑問を口にする。
「おい、どうしたんだキラ?」
「オリバーさんだ」
「あの傲慢野郎が、どうかしたのか?」
「あの人、作業用のジンを使って襲ってきたんだ」
トールは驚きの声をあげた。
「その、オリバーって人は?」とマリューは会話に入る。
「ヘリオポリスイレブンで、コロニーの保守作業を仕事にしているコーディネイターの人です」
「その人が、襲ってきたのよね?」
キラは頷き、話を続けた。
「オリバーさんが、ザフトと通じているのかも。ザフトのジンは、オリバーさんを攻撃しませんでした」
マリューも思い出してきたのか「確かに」と頷く。
ザフト軍のジンが撤退後、作業用のジンが攻撃してきたのである。
「そういうこと。迂闊だったわ」
話を聞いていた赤髪の少女は、キラに掴みかからん勢いで近づく。
「なによ。やっぱり裏切り者がいるんじゃない!」
「よすんだフレイ」とサイは制止する。
「だとすると、まずいわ」
マリューとキラは視線が合う。
『フラガだ。ジャマーが解除された。なんだか嫌な予感がする。艦に戻ってこい』
「わかりました」
マリューが通信機を切るよりも先に、誰かが叫ぶ。声のする方へと視線を向けると、宇宙港付近で爆炎が上がっていた。
「皆さん落ち着いて!」
マリューは大きな声をあげて、全員を落ち着かせる。そして、今のヘリオポリスイレブンとアークエンジェルの状況を説明。
「脱出後には、他のヘリオポリスに皆様を送り届けます。ですので、一旦アークエンジェルへ避難してください」
「皆さん急いでください。私の後に続いて」
ヘリオポリスイレブンが戦場になる。そのことに怯えた五歳くらいの少女が泣き出してしまう。母親は必死に泣き止まそうとするが、励ます言葉が出てこない。
誰も彼もが、明日への保証がもてなかったのだ。誰もが顔を俯かせて、絶望感に無力感を抱く。
マリューは、キラへと向き直る。
「大丈夫だよ」
彼は、幼い少女の視線に合わせるようにしゃがんでいた。
「僕が守るから」少年は優しく微笑む。
「ほんとう?」
「うん。ストライクっていうロボットがあるから」
「あのでっかいロボで?」
「僕は動かせるんだ」
「もとにもどれる?」
「必ず、ね」
キラ・ヤマトは立ち上がると、マリュー・ラミアスの目を真っ直ぐと見据えた。
「そのお話も、しにきたんですよね?」
「え、ええ。卑怯よね。でも――」
「みんなを、必ずオーブに送ってください」
真っ直ぐな少年の瞳に、女性は真正面から受け止めた。
「必ず。無事に送り届けるわ」
「焦点拡散で使用。戦闘ではコロニーへの被害を最小限にせよ」
マリューの指示に、誰もが「無理だ」とぼやく。
沈んでいく士気に、ムウ・ラ・フラガがいち早く反応。
「オーブのジンが敵とはね。照準マニュアルで、こっちに回せ。不可能を可能にする男は、艦砲射撃もお手の物なのを見せてやるよ」
彼はサブの操舵士として、アーノルド・ノイマンのサポートをしている。
CIC担当はナタル・バジルール、メアリー・セーラ、カオル・ウラベ、ジャッキー・トノムラが担当。
ダリダ・ローラハ・チャンドラII世とロメロ・パルは通信とオペレーターを担当している。
「もう少し時間があれば」
全員が全員不慣れであった。コンピュータがすべて対応してくれるとはいえ、使っている人間がバッチリ対応できるというものではない。
「宇宙港付近の熱紋パターン。あ、アンノーン?!」と驚くジャッキー・トノムラ。
「あんなの見れば一発だ。オーブのジンだよ」とムウが映像を見て指摘。
「りょ、了解。オーブのジンとして登録作業を」
「登録は後だ」
ナタルは息を呑んでから、各武装のレーザー誘導を指示する。
映像を見て、マリューは驚愕した。
「武装がGの予備だわ」
デュエルが本来装備するはずだった。レールバズーカ「ゲイボルグ」装備したジン。バスターのガンランチャーと高エネルギー収束火線ライフルを両手に持つジン。ブリッツの攻盾システム「トリケロス」とイージスの高エネルギービームライフルを装備したジンが、それぞれいた。
その四機がアークエンジェルを目指して飛行している。
「おいおい。あのジン、こっちの武装使えるのかよ」
「色々とテストで使った機体なんでしょうね」
マリューはオーブのジンのマニピュレータがストライクらGATシリーズと、同じ規格であることを映像から見抜く。
「さらにコロニー外に、ジンの反応三――」
「あの野郎。高みの見物ってか」とムウは、ここにはいない男の顔を想像した。
ジャッキー・トノムラは息を呑む。ジン三機の他に、コンピュータに表示された機体があった。
「――それと、イージス!」
艦橋が騒然となる。
「もう、戦場に?!」
「まだコロニーの外だ。今は中にいるジンに集中しろ」
ムウが指示を出し、全員の意識がジンへと向かう。
「ストライク発進させろ」とナタル・バジルールが言う。
程なくして右舷カタパルトから、白い機体が飛び出す。
その背中をマリューたちは、歯痒い気持ちで見送った。
ストライク発進数分前。
『三番コンテナを開く。カタパルトで待機だ』
壮年の男性、コジロー・マードックが通信で指示する。キラはそれに従って、機体を操作。
程なくして映像に、水色武装が表示。モニターにはソードストライカーと、表記されていた。
「剣……今度はあんなことには、ならないよな?」
『坊主! 逃げてもいいから落ちるなよ!』
「ありがとうございます」
キラは装備を確認すると、フェイズシフト装甲を展開。
モノトーンカラーだった機体が、色鮮やなトリコロールカラーとなる。
ナタルの命令を受けてから、キラはストライクを発進させた。電磁カタパルトの勢いに、キラは歯を食いしばる。
もしも彼の出撃を見たなら、地球軍のトップガンたちは驚いただろう。訓練で電磁カタパルトからの出撃ですら、彼らは失神したことがあった。
だが、コーディネイターの少年のキラは、訓練もなしに、それに耐えてしまったのである。加えて彼はパイロットスーツを着用していない。
パイロットスーツには耐G機能も備わっている。それがない状況でも体調が不良にならないのは、それだけの身体能力を獲得しているからだ。
ストライクは飛翔する。
コロニーの内壁には遠心力で、擬似的な重力を発生させていた。
いくら空気が満たされているとはいえ、偽りの重力から解き放たれれば、そこは宇宙と等しい。
ならば飛行機能のないストライクといえど、空を飛ぶことができるのだ。
ストライクのコックピット内には、キラの見慣れたジンが、四機映し出される。
(マリューさんたちは、戦わなくていいって言ってたけど)
どれも知っている人たちだ。事情を知ったマリューらからは、逃げるようにと言われている。撃破よりも、相手の注意を引くことを頼まれている。
もちろんキラもそのつもりだ。無理に突出しようとせず、アークエンジェルの近くで待機。
『キラ君。三機ほど武器がビーム兵器よ。フェイズシフト装甲でも防げないわ』
マリューから『ソードストライカーのシールドで防げるわ』と言われる。
「わかりました」
光が瞬く。キラは一も二もなく、機体を左右に振った。直後、光がストライクのモニターを走り、コロニーの内壁が吹き飛ぶ。
キラはその光景を見て、自身がコロニーに穴を開けたことを思い出す。
「冗談じゃない!」
ストライクのモニターにアンノーン四機と表示。キラは素早く作業用のジンを登録すると、機体を暴れさせた。
ビームの光が、雨となって襲いかかる。それらをシールドで受け、緩急つけた動きで避けていく。
コロニーの内は再び破壊が始まる。彼の視界の端で、通っていた思い出の場所が吹き飛んでいくのが見えた。
両親とよく行くショッピングモール。友人のトールと通ったゲームセンター。サイと共に行ったジャンク店。休みの日には遊んだ公園。
キラの思い出の場所が、戦火に消えていく。
「ストライクは俺がやる! お前たちは戦艦をやれ!」
「獲物を独り占めかよ」
「戦艦のデータがほしいって、言ってただろ。大体なぁ。でかい獲物なら戦艦の方だろう?」
三人はオリバーの指示に渋々従った。
羽なしのジンが三機、ストライクとの戦闘を切り上げると、アークエンジェルへと向かう。
それを阻もうとストライクは追う。直後にコックピット内をアラートが鳴り響いた。
キラは歯を食いしばって、機体を旋回させる。四肢を振り回して、機体を反転。
彼がモニターで見たのは、コロニー内部の人工の明かりで照らされる実体の刃。
片刃の剣が振り下ろされ、ソードストライカーのシールドで受け止める。
金属が激しくぶつかり合い、轟音を響かせて火花が散った。
「オリバーさん!」
「俺より優秀なガキなんていらないんだよ!」
二機は接触したことで回線が繋がる。
「どうしてこんなことを!」
「俺はコーディネイターだ! 優秀なんだよ! なのにどいつもこいつも認めやがらねぇ!」
「そんな理由で?!」
「誰からも認められる僕ちゃんには、わからんだろうさ!」
「アークエンジェルには、逃げ遅れた人もいるんですよ!」
「そいつぁ好都合だ! 憂さ晴らしが足りてなかったからなァ!」
オリバーは機体を操作して、ストライクを蹴飛ばす。吹き飛ばしたところに重突撃銃を乱射。
照準はブレにブレ、ストライクは数発しか被弾しなかった。また実弾はフェイズシフト装甲の前にはまるで効果がない。
「くそっ! そいつだ。そいつさえあれば。俺は認められるんだァ!」
「やらせない。やらせるもんか!」
ストライクはソードストライカー装備の、対艦刀を展開して構えた。
「ジン三機、接近中」
「イーゲルシュテルン機動。ターゲット自動で照準。艦尾ミサイル発射管にコリントス装填。レーザー誘導」
白い戦艦からハリネズミの針のように、火線が生えた。それをかいくぐって羽もトサカもないジンが、ビームを当てていく。
彼らは一様に「的がでかい」「攻撃しがいがある」と嗤う
「ストライク。艦から離れすぎている――」
「ジン三機に苦戦するとは、ノイマン思いっきり動かせ!」
「コロニーの内壁をこすりますよ」
「不可能を可能にする男を信じろ。ゴットフリートの使用許可を艦長」
「ですが」
「焦点拡散で使う」
「許可します」
艦首両舷から二連装の砲塔が姿を表す。
ムウ・ラ・フラガは「待ってました」と、アークエンジェルの操舵を補佐しつつ、マニュアルで照準する。
敵に油断があると見抜き、彼は直感を信じて主砲を発射させた。
直後一機のジンが胴体を撃ち抜かれて爆発四散。しかし、その爆風はコロニーのシャフトを傷つけた。
「しまった」
艦尾から発射されたミサイルから逃れようと、一機がシャフトに身を隠す。コロニーを支える柱が歪んでいく。
「まずいわ。これ以上の攻撃は」
「このままではこちらが沈められます」と叫ぶナタル。
残った二機のジンが、アークエンジェルを前と後ろから挟もうと動いた。
アークエンジェルは回避行動をとり、前後から放たれるビームを避ける。
相手の攻撃は苛烈さを増す。対してアークエンジェルの攻撃は、余裕をもって回避されていった。
「一基だけ、イーゲルシュテルンをマニュアルで動かせてください」
カオル・ウラベの進言は、ナタルによって承諾され、彼はイーゲルシュテルンを操作。
対空砲の一基が動きを変える。それを予期していなかった一機が蜂の巣となった。コックピット付近から赤い液体が漏れ出て、程なくコロニー内を漂うと持っていたデュエルのバズを暴発させて爆発。
バズの威力は絶大であり、コロニーに巨大な穴を穿った。
「このままじゃコロニーが壊れるんですよ!」
「壊れてしまえ! こんなコロニー!」
オリバーの駆るジンが上段から剣を振り下ろす。
キラは一瞬気圧されるが、歯を食いしばり機体を前進させた。
両者は気炎の咆哮を上げて激突。
ジンの振り下ろした両腕は、コロニーの空を舞う。
「な、に?」
ストライクはジンと肉薄せんと接近して、対艦刀を下から上へと振ったのだ。
オリバーの眼前に四本角の顔が覆う。男は悲鳴をあげて、顔の前で両の腕を暴れさせる。
無我夢中で離れようとして、機体はあられもない方向へと飛んでいき、コロニー内壁へと落着。
それを視認し、肩で息をするキラ。
(生きてる……よね?)
知った顔を追いかけてまで、彼は殺す気になれなかった。
モニターの端で、最後のジンに攻撃が命中。バックパックが吹き飛んだのを確認。
「やった」
だが、その羽もトサカもないジンは、誰もが予想しえない軌跡を描く。
バックパックが吹き飛んだことで操作不能になったのか、そのままシャフトに突っ込んで爆発したのだ。
コロニーを支えていた柱が、音を立てて崩れ落ちる。
「そ、そんな! 待ってくれ! 待って!」
キラは咄嗟に、壊れていくシャフトを抑えようとする。
『キラ。キラ・ヤマト。君なのか?』
そこに聞き慣れた。でも、ここでは聞こえてはならない声が、彼の心臓を掴んだ。
「アスラン!? アスラン・ザラ!」
白き機体と赤き機体は対峙する。
両機は形の上で激突。接触回線が繋がった。
「どうして君が?!」
「お前こそ、なんで地球軍なんかに!」
「君も戦争なんて嫌だって言ったじゃないか!」
「血のバレンタイン。そこで母上が犠牲になった! だから……!」
お互いに武器を構えるが、それも一瞬。イージスは変形し四つのクローでストライクを捕縛した。
~続く~
評価や登録はお任せしますので、次のお話も見ていただければ嬉しいです。
後来年はガンダムSEED20周年です。皆さんSEEDシリーズ見直して見てはいかがでしょうか?
次回の更新も来週です。