機動戦士ガンダムSEED~偽り~   作:量産型すき焼き

7 / 21
注意書き
この作品はオリジナルモビルスーツ、オリジナルキャラクター、オリジナル設定など多数含みます。


コロニー崩壊~後編~

 アークエンジェルの艦橋にて、マリュー、ムウ、ナタルらは今後についての話し合いを進めていた。

 まずはヘリオポリスイレブンからの脱出だ。アークエンジェルをコロニー内に入る際、ローエングリン砲を使用したため、工場区からの脱出はできなくなってしまった。使った影響で道が塞がれてしまったのである。

 ローエングリン砲はアークエンジェル最大の威力の武装だ。ナタル・バジルールの計らいによって出力は絞ったものの、その影響は少なくない。

 

「最大出力で使うのは?」

「コロニー壊せっての?」

 

 ナタルの提案をムウは却下した。

 残された手段としては、ヘリオポリスイレブンの宇宙港から出ることだが、それは難しい。

 艦長席に座ったマリューは、受話器を元の位置へと戻す。

 

「駄目ね。連絡がつかないわ。シェルターのロックも、いつ解除されるかわからないわ」

 

 ヘリオポリスイレブンの宇宙港管制塔と、連絡がつかない状況であった。

 そのため、キラたち逃げ遅れた人々を、シェルターに入れられないのである。

 

「あれ? じゃあ、あの広場にいる人達はどうするんだ?」

 

 ムウの指摘にマリューの顔は曇った。

 彼女は地球軍の英雄を見据える。

 

「キラ・ヤマトは機密を見ています」

「そんなこと言ってる場合かよ。ってか子供だぜ? 戦わせるのか?」

「ですが、軍規では――」

「そもそもだけど。まずはオーブに申し入れしないと、駄目なんじゃないの?」

 

 どちらの言い分も正しい。マリューとしては、早々に安全な場所に送りたかった。

 とはいえ、非常事態だ。ジャミングの影響で連絡はつかないままだ。政治的な取引するにも、時間も人も足りない。

 彼女はストライクを運び出すこと、任務を優先した。

 

「脱出にはストライクの力も必要だと思うのです」

 

 マリューの言葉の裏にある意味を、ムウは理解し顔をしかめた。

 

「子供を戦場に立たせるってのか? 馬鹿なこと言うな。メビウス・ストライカー。メビウス三機あるんだろ? 余ってるメビウスがあるなら、俺がそれに乗る」

「それで脱出できますか? 相手はクルーゼ隊、なんですよね?」

 

 ムウは反論できないのか「そうだった」と頭の後ろで手を組んだ。。

 

「待ってください。子供の、それもコーディネイターにストライクを乗せるっていうのですか?」

 

 ナタル・バジルールは血相を変える。

 地球軍の最新鋭機。それもコーディネイターに対するための兵器だ。

 それをコーディネイターに乗せるなど、本末転倒である。

 

「バジルール少尉は、坊主が書き換えたOSを見てないのか?」

「それがなんだというのです?」

「あんなの乗れるやつ、いないって」

「なら元に戻させて、大尉が乗ればよろしいじゃないですか!」

「弱くして、すっとろく動いて、的になれっての? 棺桶に入れるってんなら、せめてまともに動くものしてくれ」

 

 マリューは「とにかく」と二人の話を切った。

 

「ストライクは必要でしょう?」

「坊主は承知しているのか?」

 

 

 

 

 

「アスラン。お前は後ろで俺たちの支援だ。いきなり新人が死ぬなんて真似、俺は許さないからな」

 

 ヴェサリウスの更衣室にて、ミゲルはアスランに言い含める。

 彼はすでにパイロットスーツを着用しており、いつでも準備万端といった具合だ。

 オロール、マシューもパイロットスーツの袖に腕を通し、各部位を確認している。

 

「お前が優秀なのはわかっている。いずれ、自分の部隊も持つだろう。だから、つまらない意地を張って死ぬな」

「わかったミゲル」

 

 頷くアスランに、オロールは口を開く。

 

「新機体手に入れたからか?」

 

 先程の艦橋とは違い、落ち着いた雰囲気で問いかけている。

 

「試し乗りしたい気持ちもわかるけどね」と褐色の青年がにこやかに言う。

「マシュー、茶化すな」

「へいへい」

「確かめたいことがあるんだ。どうしても」

 

 ミゲルらはその先を問いたださなかった。

 彼の声音には、それまでにない切実さが滲み出ていたのである。

 そんなアスラン・ザラを彼らは見たことがなかった。

 

「なら、ちゃんと確かめてみるんだな」

 

 ミゲルはそれ以上言うことをやめた。

 

「ただ、ミゲルが言ったこと守れよ。死ぬのはなしだ」

「そうそう。後ろで援護してくれればいい」

 

 オロールとマシューの言葉に頷くアスラン。

 

「わかっている」

 

 四人はパイロットスーツの着用を済ませると、格納庫へと足早に移動。

 コックピット付近に待機している整備兵たちに助けてもらい、各機へと搭乗。

 アスランがコックピットに着席すると同時に、ミゲルの声が通信から届く。

 

『戦闘の映像を撮るだけって話だが、例外はありえる』

『隊長は、なにかありますよって感じだったな』

 

 オロールはコックピットの計器類を見てわずかに眉をひそめる。

 

『じゃあ、なにかあるんだろうな。スパイ共が後ろから撃ってくるかもな』

『滅多なこと言うんじゃないよマシュー』

『ビビってんの? オロール』

 

 ミゲルはD型装備で出撃させる意味を説く。

 D型装備とは、主に拠点攻撃用の装備だ。

 ただの偵察ならば、重武装する意味はないはずである。

 

 アスランもミゲルの話に頷き考える。

 やはり例外や不運な事故が起こるのだろう。

 コロニーを失う。その意味をアスランたちは知っている。

 

(母上のように……そして、あいつも……いや違う。まだ決まったわけでは)

 

 

『はしゃぐな。エンデュミオンの鷹もいるんだぞ』

 

 オロールとマシューは息を呑む。

 そんな二人の様子にアスランは驚く。

 その名はアカデミーで聞いた覚えがあった。

 

(エンデュミオンの鷹……確か、エンデュミオンクレーターでジンを五畿撃墜したっていう)

 

『エンデュミオンの鷹。結構なやつだ』

『そんなに?』

『ああ、油断すると死ぬな』

 

 オロールの声には悔しさも滲んでいる。

 マシューはコロニー内部に突入していたので、相手に対する脅威がよくわからない様子だ。

 そんな二人の様子を見て、ミゲルはゆっくりと口を開く。

 

『俺も専用機で戦ったが、油断ならない相手だった』

 

 ミゲルは専用機で激突したことがあり、撃退経験がある。

 

『エンデュミオンの鷹だけじゃない。地球軍の最後の機体だ。あれにも気をつけろ』

『黄昏の魔弾の仰せのままに』

『ははぁ~神様仏様ミゲル様~』

『出撃前にふざけんな二人共! ぶっとばすぞ!』

 

 ミゲルが言い終わるのを待ってじゃ、ブリッジから通信が入る。

 

『オロール機。発進カタパルトへ』

 

 アスランはここではない、どこかを見ながら思う。

 

(本当に、お前なのか? キラ)

 

 

 

 

 

 ヘリオポリスイレブンモビルスーツ格納庫。そこには四機のジンがハンガーに収まっていた。

 オリバーを含めて四人の男たちが、自分の機体を見上げる。

 オリジナルのジンにある特徴である、トサカと翼のないジン。

 

「そろそろ行くぞ」

「今、避難命令出てるなら銀行は誰もいないよな?」

「あ、俺も金はほしい」

「それよりも試し撃ちさせてくれよ。地球軍の武器がどんなもんなのか試したいんだよ」

 

 四人はまるでバラバラだった。

 それでも別にいいのか「行くぞ」と言ったオリバーは気にも留めない。

 彼らを下に見ているので、考えるだけ無駄だと思っているのだ。

 

(まあ、どうせこいつらも駒だしな)

 

 オリバーは他の三人には、キラと戦ったことを伏せていた。

 彼らを上手く使って自分は楽しようと考えていたのである。

 そういった思惑を気取られないために、彼は大して興味のないことを聞く。

 

「お前らは、プラントに行ったらどうするんだ?」

「このまま軍に入って、美人の嫁さんがほしい」

「俺も、俺も」

「人を殺してぇ。武器を使って蹂躙してぇ! ナチュラル共ならいくらでも殺していいんだろ?」

 

 三人のうちひとりが「オリバーは?」と聞く。

 

「そうだな。俺もみんなと同じだ。軍に入ってそれなりの成果を出してって感じだな」

 

 オリバーは胸中ほくそ笑む。

 

(バカが。軍になんか入って命を危険に晒すか)

 

「地球軍の戦艦がコロニー内部に入ったようだ。コロニー内でドンパチできないだろうから、こっちは好き勝手撃ち放題だ」

「しかしザフトはケチだな。俺たちに武器くらい貸してくれてもいいのに」

「そんなことより時間だ。急ぐぞ」

 

 オリバーたちは、それぞれの機体のコックピットに乗り込む。

 

「じゃあお仕事しますか」

 

 

 

 

 

 アークエンジェルに続々と、荷物が運び込まれていく。

 逃げ遅れた人々も手伝ったおかげで、思った以上に物資の回収は進んだ。

 そんな流れと逆行するように、マリュー・ラミアスは、アークエンジェルの外にいる避難民たちの元へと来ていた。

 

 その後ろにはカオル・ウラベ。彼は申し訳程度の武装で、艦長の護衛だ。

 

『マードックです艦長。報告します』と胸元の通信機が声を発する。

 

 マリューは歩きながら、話を促す。

 

『ストライク以外は戦闘で使えません』

「メビウスは?」

『人員不足で確認が出来ていません。あれの出撃に責任がもてませんよ』

 

 マードックは『パイロット共はやる気ですがね』と続けた。

 

(モビルアーマー乗りを出すの?)

 

 マリューは胸元に手をやる。

 

「ストライクは出せるのね?」

『ええ』

「なら、今すぐメビウスのメンテをお願い。一機でもいいわ。ゼロとストライカーは?」

『どちらも、もう少し時間ください』

「わかったわ」

「艦長、あまりお時間がありません」

「わかっているわ」

 

 彼女はジンとの戦闘の後、曖昧となっていた記憶が元に戻ったのだ。

 そこで、とある疑問が生まれたのである。そしてそれを確認するために、足早に来たのだった。

 探していた人物を見つけると、彼女は駆け寄った。

 

「キラ・ヤマト。ひとつ確認したいことがあるの」

「はい。なんでしょうか?」

 

 キラたちには、相当嫌われているらしく、彼女を確認するやいなや、周囲の面々も腰を浮かしている。

 内心「嫌われたものね」と自嘲しつつ、彼女は話を進める。

 

「先の戦闘のことでひとつ、聞きたいの」

 

 刹那、キラは目を見開く。

 

「そうだ! そうだった!」

 

 彼は何かを思い出したかのように、大きな声を出した。

 トールはミリアリアと顔を合わせてから、首を傾げ合う。

 彼らは疑問を口にする。

 

「おい、どうしたんだキラ?」

「オリバーさんだ」

「あの傲慢野郎が、どうかしたのか?」

「あの人、作業用のジンを使って襲ってきたんだ」

 

 トールは驚きの声をあげた。

 

「その、オリバーって人は?」とマリューは会話に入る。

「ヘリオポリスイレブンで、コロニーの保守作業を仕事にしているコーディネイターの人です」

「その人が、襲ってきたのよね?」

 

 キラは頷き、話を続けた。

 

「オリバーさんが、ザフトと通じているのかも。ザフトのジンは、オリバーさんを攻撃しませんでした」

 

 マリューも思い出してきたのか「確かに」と頷く。

 ザフト軍のジンが撤退後、作業用のジンが攻撃してきたのである。

 

「そういうこと。迂闊だったわ」

 

 話を聞いていた赤髪の少女は、キラに掴みかからん勢いで近づく。

 

「なによ。やっぱり裏切り者がいるんじゃない!」

「よすんだフレイ」とサイは制止する。

「だとすると、まずいわ」

 

 マリューとキラは視線が合う。

 

『フラガだ。ジャマーが解除された。なんだか嫌な予感がする。艦に戻ってこい』

「わかりました」

 

 マリューが通信機を切るよりも先に、誰かが叫ぶ。声のする方へと視線を向けると、宇宙港付近で爆炎が上がっていた。

 

「皆さん落ち着いて!」

 

 マリューは大きな声をあげて、全員を落ち着かせる。そして、今のヘリオポリスイレブンとアークエンジェルの状況を説明。

 

「脱出後には、他のヘリオポリスに皆様を送り届けます。ですので、一旦アークエンジェルへ避難してください」

「皆さん急いでください。私の後に続いて」

 

 ヘリオポリスイレブンが戦場になる。そのことに怯えた五歳くらいの少女が泣き出してしまう。母親は必死に泣き止まそうとするが、励ます言葉が出てこない。

 誰も彼もが、明日への保証がもてなかったのだ。誰もが顔を俯かせて、絶望感に無力感を抱く。

 マリューは、キラへと向き直る。

 

「大丈夫だよ」

 

 彼は、幼い少女の視線に合わせるようにしゃがんでいた。

 

「僕が守るから」少年は優しく微笑む。

「ほんとう?」

「うん。ストライクっていうロボットがあるから」

「あのでっかいロボで?」

「僕は動かせるんだ」

「もとにもどれる?」

「必ず、ね」

 

 キラ・ヤマトは立ち上がると、マリュー・ラミアスの目を真っ直ぐと見据えた。

 

「そのお話も、しにきたんですよね?」

「え、ええ。卑怯よね。でも――」

「みんなを、必ずオーブに送ってください」

 

 真っ直ぐな少年の瞳に、女性は真正面から受け止めた。

 

「必ず。無事に送り届けるわ」

 

 

 

 

 

「焦点拡散で使用。戦闘ではコロニーへの被害を最小限にせよ」

 

 マリューの指示に、誰もが「無理だ」とぼやく。

 沈んでいく士気に、ムウ・ラ・フラガがいち早く反応。

 

「オーブのジンが敵とはね。照準マニュアルで、こっちに回せ。不可能を可能にする男は、艦砲射撃もお手の物なのを見せてやるよ」

 

 彼はサブの操舵士として、アーノルド・ノイマンのサポートをしている。

 CIC担当はナタル・バジルール、メアリー・セーラ、カオル・ウラベ、ジャッキー・トノムラが担当。

 ダリダ・ローラハ・チャンドラII世とロメロ・パルは通信とオペレーターを担当している。

 

「もう少し時間があれば」

 

 全員が全員不慣れであった。コンピュータがすべて対応してくれるとはいえ、使っている人間がバッチリ対応できるというものではない。

 

「宇宙港付近の熱紋パターン。あ、アンノーン?!」と驚くジャッキー・トノムラ。

「あんなの見れば一発だ。オーブのジンだよ」とムウが映像を見て指摘。

「りょ、了解。オーブのジンとして登録作業を」

「登録は後だ」

 

 ナタルは息を呑んでから、各武装のレーザー誘導を指示する。

 映像を見て、マリューは驚愕した。

 

「武装がGの予備だわ」

 

 デュエルが本来装備するはずだった。レールバズーカ「ゲイボルグ」装備したジン。バスターのガンランチャーと高エネルギー収束火線ライフルを両手に持つジン。ブリッツの攻盾システム「トリケロス」とイージスの高エネルギービームライフルを装備したジンが、それぞれいた。

 その四機がアークエンジェルを目指して飛行している。

 

「おいおい。あのジン、こっちの武装使えるのかよ」

「色々とテストで使った機体なんでしょうね」

 

 マリューはオーブのジンのマニピュレータがストライクらGATシリーズと、同じ規格であることを映像から見抜く。

 

「さらにコロニー外に、ジンの反応三――」

「あの野郎。高みの見物ってか」とムウは、ここにはいない男の顔を想像した。

 

 ジャッキー・トノムラは息を呑む。ジン三機の他に、コンピュータに表示された機体があった。

 

「――それと、イージス!」

 

 艦橋が騒然となる。

 

「もう、戦場に?!」

「まだコロニーの外だ。今は中にいるジンに集中しろ」

 

 ムウが指示を出し、全員の意識がジンへと向かう。

 

「ストライク発進させろ」とナタル・バジルールが言う。

 

 程なくして右舷カタパルトから、白い機体が飛び出す。

 その背中をマリューたちは、歯痒い気持ちで見送った。

 

 

 

 

 

 ストライク発進数分前。

 

『三番コンテナを開く。カタパルトで待機だ』

 

 壮年の男性、コジロー・マードックが通信で指示する。キラはそれに従って、機体を操作。

 程なくして映像に、水色武装が表示。モニターにはソードストライカーと、表記されていた。

 

「剣……今度はあんなことには、ならないよな?」

『坊主! 逃げてもいいから落ちるなよ!』

「ありがとうございます」

 

 キラは装備を確認すると、フェイズシフト装甲を展開。

 モノトーンカラーだった機体が、色鮮やなトリコロールカラーとなる。

 ナタルの命令を受けてから、キラはストライクを発進させた。電磁カタパルトの勢いに、キラは歯を食いしばる。

 

 もしも彼の出撃を見たなら、地球軍のトップガンたちは驚いただろう。訓練で電磁カタパルトからの出撃ですら、彼らは失神したことがあった。

 だが、コーディネイターの少年のキラは、訓練もなしに、それに耐えてしまったのである。加えて彼はパイロットスーツを着用していない。

 パイロットスーツには耐G機能も備わっている。それがない状況でも体調が不良にならないのは、それだけの身体能力を獲得しているからだ。

 

 ストライクは飛翔する。

 コロニーの内壁には遠心力で、擬似的な重力を発生させていた。

 いくら空気が満たされているとはいえ、偽りの重力から解き放たれれば、そこは宇宙と等しい。

 

 ならば飛行機能のないストライクといえど、空を飛ぶことができるのだ。

 ストライクのコックピット内には、キラの見慣れたジンが、四機映し出される。

 

(マリューさんたちは、戦わなくていいって言ってたけど)

 

 どれも知っている人たちだ。事情を知ったマリューらからは、逃げるようにと言われている。撃破よりも、相手の注意を引くことを頼まれている。

 もちろんキラもそのつもりだ。無理に突出しようとせず、アークエンジェルの近くで待機。

 

『キラ君。三機ほど武器がビーム兵器よ。フェイズシフト装甲でも防げないわ』

 

 マリューから『ソードストライカーのシールドで防げるわ』と言われる。

 

「わかりました」

 

 光が瞬く。キラは一も二もなく、機体を左右に振った。直後、光がストライクのモニターを走り、コロニーの内壁が吹き飛ぶ。

 キラはその光景を見て、自身がコロニーに穴を開けたことを思い出す。

 

「冗談じゃない!」

 

 ストライクのモニターにアンノーン四機と表示。キラは素早く作業用のジンを登録すると、機体を暴れさせた。

 ビームの光が、雨となって襲いかかる。それらをシールドで受け、緩急つけた動きで避けていく。

 コロニーの内は再び破壊が始まる。彼の視界の端で、通っていた思い出の場所が吹き飛んでいくのが見えた。

 

 両親とよく行くショッピングモール。友人のトールと通ったゲームセンター。サイと共に行ったジャンク店。休みの日には遊んだ公園。

 キラの思い出の場所が、戦火に消えていく。

 

「ストライクは俺がやる! お前たちは戦艦をやれ!」

「獲物を独り占めかよ」

「戦艦のデータがほしいって、言ってただろ。大体なぁ。でかい獲物なら戦艦の方だろう?」

 

 三人はオリバーの指示に渋々従った。

 羽なしのジンが三機、ストライクとの戦闘を切り上げると、アークエンジェルへと向かう。

 それを阻もうとストライクは追う。直後にコックピット内をアラートが鳴り響いた。

 

 キラは歯を食いしばって、機体を旋回させる。四肢を振り回して、機体を反転。

 彼がモニターで見たのは、コロニー内部の人工の明かりで照らされる実体の刃。

 片刃の剣が振り下ろされ、ソードストライカーのシールドで受け止める。

 

 金属が激しくぶつかり合い、轟音を響かせて火花が散った。

 

「オリバーさん!」

「俺より優秀なガキなんていらないんだよ!」

 

 二機は接触したことで回線が繋がる。

 

「どうしてこんなことを!」

「俺はコーディネイターだ! 優秀なんだよ! なのにどいつもこいつも認めやがらねぇ!」

「そんな理由で?!」

「誰からも認められる僕ちゃんには、わからんだろうさ!」

「アークエンジェルには、逃げ遅れた人もいるんですよ!」

「そいつぁ好都合だ! 憂さ晴らしが足りてなかったからなァ!」

 

 オリバーは機体を操作して、ストライクを蹴飛ばす。吹き飛ばしたところに重突撃銃を乱射。

 照準はブレにブレ、ストライクは数発しか被弾しなかった。また実弾はフェイズシフト装甲の前にはまるで効果がない。

 

「くそっ! そいつだ。そいつさえあれば。俺は認められるんだァ!」

「やらせない。やらせるもんか!」

 

 ストライクはソードストライカー装備の、対艦刀を展開して構えた。

 

 

 

 

 

「ジン三機、接近中」

「イーゲルシュテルン機動。ターゲット自動で照準。艦尾ミサイル発射管にコリントス装填。レーザー誘導」

 

 白い戦艦からハリネズミの針のように、火線が生えた。それをかいくぐって羽もトサカもないジンが、ビームを当てていく。

 彼らは一様に「的がでかい」「攻撃しがいがある」と嗤う

 

「ストライク。艦から離れすぎている――」

「ジン三機に苦戦するとは、ノイマン思いっきり動かせ!」

「コロニーの内壁をこすりますよ」

「不可能を可能にする男を信じろ。ゴットフリートの使用許可を艦長」

「ですが」

「焦点拡散で使う」

「許可します」

 

 艦首両舷から二連装の砲塔が姿を表す。

 ムウ・ラ・フラガは「待ってました」と、アークエンジェルの操舵を補佐しつつ、マニュアルで照準する。

 敵に油断があると見抜き、彼は直感を信じて主砲を発射させた。

 

 直後一機のジンが胴体を撃ち抜かれて爆発四散。しかし、その爆風はコロニーのシャフトを傷つけた。

 

「しまった」

 

 艦尾から発射されたミサイルから逃れようと、一機がシャフトに身を隠す。コロニーを支える柱が歪んでいく。

 

「まずいわ。これ以上の攻撃は」

「このままではこちらが沈められます」と叫ぶナタル。

 

 残った二機のジンが、アークエンジェルを前と後ろから挟もうと動いた。

 アークエンジェルは回避行動をとり、前後から放たれるビームを避ける。

 相手の攻撃は苛烈さを増す。対してアークエンジェルの攻撃は、余裕をもって回避されていった。

 

「一基だけ、イーゲルシュテルンをマニュアルで動かせてください」

 

 カオル・ウラベの進言は、ナタルによって承諾され、彼はイーゲルシュテルンを操作。

 対空砲の一基が動きを変える。それを予期していなかった一機が蜂の巣となった。コックピット付近から赤い液体が漏れ出て、程なくコロニー内を漂うと持っていたデュエルのバズを暴発させて爆発。

 バズの威力は絶大であり、コロニーに巨大な穴を穿った。

 

 

 

 

 

「このままじゃコロニーが壊れるんですよ!」

「壊れてしまえ! こんなコロニー!」

 

 オリバーの駆るジンが上段から剣を振り下ろす。

 キラは一瞬気圧されるが、歯を食いしばり機体を前進させた。

 両者は気炎の咆哮を上げて激突。

 

 ジンの振り下ろした両腕は、コロニーの空を舞う。

 

「な、に?」

 

 ストライクはジンと肉薄せんと接近して、対艦刀を下から上へと振ったのだ。

 オリバーの眼前に四本角の顔が覆う。男は悲鳴をあげて、顔の前で両の腕を暴れさせる。

 無我夢中で離れようとして、機体はあられもない方向へと飛んでいき、コロニー内壁へと落着。

 

 それを視認し、肩で息をするキラ。

 

(生きてる……よね?)

 

 知った顔を追いかけてまで、彼は殺す気になれなかった。

 モニターの端で、最後のジンに攻撃が命中。バックパックが吹き飛んだのを確認。

 

「やった」

 

 だが、その羽もトサカもないジンは、誰もが予想しえない軌跡を描く。

 バックパックが吹き飛んだことで操作不能になったのか、そのままシャフトに突っ込んで爆発したのだ。

 コロニーを支えていた柱が、音を立てて崩れ落ちる。

 

「そ、そんな! 待ってくれ! 待って!」

 

 キラは咄嗟に、壊れていくシャフトを抑えようとする。

 

『キラ。キラ・ヤマト。君なのか?』

 

 そこに聞き慣れた。でも、ここでは聞こえてはならない声が、彼の心臓を掴んだ。

 

「アスラン!? アスラン・ザラ!」

 

 白き機体と赤き機体は対峙する。

 両機は形の上で激突。接触回線が繋がった。

 

「どうして君が?!」

「お前こそ、なんで地球軍なんかに!」

「君も戦争なんて嫌だって言ったじゃないか!」

「血のバレンタイン。そこで母上が犠牲になった! だから……!」

 

 お互いに武器を構えるが、それも一瞬。イージスは変形し四つのクローでストライクを捕縛した。

 

 

 

 

 

~続く~




評価や登録はお任せしますので、次のお話も見ていただければ嬉しいです。
後来年はガンダムSEED20周年です。皆さんSEEDシリーズ見直して見てはいかがでしょうか?

次回の更新も来週です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定