機動戦士ガンダムSEED~偽り~   作:量産型すき焼き

8 / 21
注意書き
この作品はオリジナルモビルスーツ、オリジナルキャラクター、オリジナル設定など多数含みます。


祖国からの逃亡~前半~

 話はコロニー崩壊より前へと遡る。

 足つきと呼ばれる地球軍の新型戦艦と、四本角と呼んでいるモビルスーツの戦闘データを彼らはつぶさに記録していた。

 その結果、わかったことは戦艦の戦闘はコンピュータ任せであることだ。

 

 まるでマニュアル通りにやっています。そう言った戦いだった。

 新造艦の運用の実績がないのだろう。そのためコンピュータ頼りといった具合。

 それでも人らしい動きをするはずだとミゲルは言う。彼は続けてアスランたちの奇襲で主だった士官を倒したのだろうとも、予想を口にする。

 

『――アスラン、ちゃんと記録は出来ているか?』

 

 アスランは「ああ」と言いながらも、視線は白い四本角の機体――コックピットには、STRIKEと表示されている――に釘付けになっていた。

 彼の頭の中では月の幼年学校での思い出。最後に別れた時の物悲しそうな友人の顔。

 爆炎の中で見た顔は、その面影を色濃く残した少年。年の頃はアスランと同じくらいだ。

 

(そう思いたいだけなのか。それとも、本当に君なのか?)

 

 考えにふけっていたアスランを、オロールの声が現実に引き戻す。

 

『おいおい。あの戦艦。主砲使い始めたぞミゲル』

『利用するだけ利用したら、後はどうでもいいってことか……』

『コロニーだぞ。人の住む場所なんだぞ。なんてやつらだ!ミゲル行こう』

『駄目だ。抑えろマシュー』

 

 アスラン以外の三人は、義憤から地球軍への怒りを口にする。

 彼らプラントの住人は、コロニーにしか住処がない。そんな彼らにとって、コロニーの破壊というのは、強い憤りを抱くものだった。

 それを地球軍がやっているのだから、彼らはより怒りに燃える。

 

『血のバレンタインの悲劇でもそうだ。やつら地球以外はどうでもいいんだよ』

 

 アスランの脳裏には崩壊するユニウスセブンの映像。

 それと同じことが目の前で起きつつある。赤き機体に乗る少年は、奥歯を噛みしめた。

 外から見ていても、コロニーの整った筒型が崩れていく。

 

『おいおい。本当にコロニーが壊れるぞ』

『人がいる。人がいるぞ。やめろ地球軍!』

 

 マシューは叫ぶ。彼のモニターでは、逃げ遅れている人が確認出来たのか、機体が少し前に出る。

 

『待てマシュー!』

『ほっとけない!』

 

 マシューのジンが先行しかけ、オロールのジンがその肩を掴む。

 

『どうするミゲル?』

『――例外が発生した。接近するぞ。各自母艦の座標を確認。アスランはここで待機だ』

 

 ミゲルは『いいな?』と話を終わらせる。

 アスランが返答するよりも、三人は三つ数えるより早く動き出す。三つの軌跡はコロニーの中へと消えてしまう。

 彼が逡巡したのは一瞬。赤い機体もまたコロニーへと飛翔した。

 

 コロニーの外壁は形を保てなくなっていた。

 外壁には山と谷が出来ている。それをイージスは縫うように飛ぶ。

 目の前で外壁と外壁の間から、土砂が吹き出す。

 

(母上のようなことが、起きるのか)

 

 赤き機体はコロニー内部に入ると、程なくして白い機体を見つける。

 壊れそうなシャフトを防ごうと、抑えようとしていた。

 アスランはそれを見て、胸中「間に合わない」とつぶやく。

 

「キラ。キラ・ヤマト。君なのか?」

 

 発した言葉は、彼自身も驚くほど震えていた。

 応答は驚くほど早く、そしてそれは彼の予想を悪い意味で的中させてしまう。

 

『アスラン!? アスラン・ザラ!』

 

 聞き慣れた。でも、ここでは聞こえてはならない声が、彼の心臓を掴んだ。

 白き機体と赤き機体は対峙する。その場で互いに睨み合ったまま、動かない。

 

『どうして君が?!』

「お前こそ、なんで地球軍なんかに!」

『君も戦争なんていやだって言ったじゃないか!』

「血のバレンタイン。そこで母上が犠牲になった! だから……!」

 

 お互いに武器を構えるが、それも一瞬。イージスは変形し四つのクローでストライクを捕縛した。

 

『何を!? 僕はザフトになんか行かないぞ!』

「撃たなければならないんだぞ! 俺がお前を!」

『そんなことって……――』

 

 キラが何かを叫ぶ。

 直後互いのコックピットに激突音。二人は大きく揺さぶられる。

 衝撃でイージスはストライクを離してしまう。

 

 

 アスランは咄嗟に、ストライクを掴もうとしたが、それより先にコロニーが限界を迎えた。

 伸ばしたマニピュレータは空を切り、白い機体のマニピュレータはすり抜けてしまう。

 真空に空気が放たれ、発生した嵐に呑まれてしまう。イージスは追いかけようにも、瓦礫が彼らの行く手を阻んだ。

 

「キラァー!」

 

 コックピット内にアラートが鳴り響く。

 彼は舌打ちすると、イージスを操作してコロニーから脱出。振り返るとアスランの眼前で、円筒の居住地に亀裂が走る。

 他国とはいえ、彼は辛そうにそれを見た。その光景を目の当たりにするのは、二度目だからだ。

 逃げ遅れた動物や、人らしきもの。それらが亀裂から噴出して、宇宙の闇に消えていく。

 

「これが、これが地球軍のすることなのか。キラ、お前はそんなところにいちゃ駄目なんだ! 俺が必ず――」

 

 宇宙に出たイージスは再び振り返り、崩壊するコロニーへと向き直る。放射状に広がっていくデブリ。彼はそれを注意深く見たのは、一秒にも満たない。

 

『アスランどこにいる? ヴェサリウスに帰還するぞ』

「了解」

 

 アスランは、ミゲルからの通信を受け取って、母艦へと帰投する。

 

 

 

 

 

(母さん。父さん。無事だよね?)

 

 キラはコックピット内で、肩で息をしていた。

 目の前に映し出されるモニターには、外に向かってデブリの破片が広がっている。

 見れば、いくつか大きな塊は、ヘリオポリススリーからテンへと流れていた。

 

(止めなくちゃ……)

 

 僅かに白い機体が動くが、いくつかの光が各ヘリオポリスから、出現していた。

 

(あれは、オーブの? なら、安心……だよね?)

 

 デブリの撤去から、救命艇の回収が始まったことを確認して、キラは胸を撫で下ろす。

 

『X105、ストライク。キラ・ヤマト。応答せよ。繰り返す、こちらアークエンジェル――』

「あっ! こちら、X105、ストライク。キラ・ヤマト」

『無事か?』

「――はい」

『アークエンジェルの場所はわかるか?』

 

 キラは一瞬だけレーダーを見る。

 

「大丈夫です。戻れます」

『よし。帰投しろ』

「わかりました」

 

 

 

 

 

 アークエンジェルの艦橋内は騒然となった。

 誰も彼もが信じられないと、目の前で崩れ行くコロニーを見つめる。

 その中で誰よりも早く、我に返った人物がいた。

 

「X105、ストライク。キラ・ヤマト。応答せよ。繰り返す、こちらアークエンジェル――」

 

 ナタルは通信機に手を添えて繰り返し呼びかけた。

 それを見ていたマリュー・ラミアスも、我に返ると次なる指示を飛ばす。

 面々に現状の把握に務めるように言うと、ナタルに話しかけた。

 

「バジルール少尉。ストライクは?」

「応答を確認しました。こちらの位置はわかっているそうです」

 

 それを聞いたマリューは、少しだけ胸を撫で下ろす。

 横目で見ていたムウが彼女にだけ見えるように、サムズアップした。

 小さく頷いて、彼女は口を開く。

 

「他のヘリオポリスへの被害は?」

「いくつかのデブリが、ヘリオポリススリーからテンに向かっています」

「脱出艇は、ヘリオポリステンに向かっているようです」とカオルが補足。

 

 ヘリオポリスイレブンが崩壊する前、避難シェルターが脱出艇となって、他のヘリオポリスへと移動している。

 

「なんとか対応は出来ないんでしょうか?」とメアリーが問いかける。

 

 なんとか救出が出来ないかと、マリューも考えてみるものの、自分たちはまだ戦闘状態だと思い出す。

 ザフト軍がこちらを探しているはずだ。救助活動などの余裕はない。

 少しでもアークエンジェルが動かせば、熱源から発覚してしまう。

 

「本艦は戦闘状態です。ですから、そんな余裕はないわ」

「どうする? 坊主たちの受け入れ先は?」

「え?」

「いやいや。他のヘリオポリスに受け入れてもらわないと、このまま月基地まで連れていくわけにはいかないだろう?」

 

 ムウは「無様だが脱出は出来た」と付け加える。

 

「そう、ですね」

 

 マリューの中でストライクが使用出来なくなる。というデメリットが脳裏に浮かぶ。

 

「他のヘリオポリスとコンタクトは取れるかしら?」

「ジャミングが展開されています」

「敵艦の位置は?」

「駄目です。デブリの中には熱量のあるものも多数ありまして」

 

 艦橋内の空気が沈む。

 

「これからどうする? 他のヘリオポリスに逃げ込んでみるか?」

「そうですね。地球軍とオーブ……モルゲンレーテの契約はまだ生きているはずです」

 

 別のヘリオポリスに逃げ込み、時間稼ぎするのが今思いついた内容だ。

 と言っても、その場しのぎでしかない。ザフトは先程のような大規模攻撃は出来ないにしても、居座るつもりなのは想像に容易い。

 長期戦になるだろうと、誰もが予想はできる。

 

「これだけのことをしたんだ。連中も評議会ってのに、呼び出されるんじゃないか?」

 

 その間に友軍との合流ができるのではないか。というのがムウの考えだ。

 全員が「確かに」と頷く。人員も補充され、援軍も来る。

 そう何個もコロニーを落とすほどザフトとて愚かではない。というのがマリューらの考えだ。

 

「ここは中立国ですからね」

 

 アークエンジェルは慣性航行のまま、ヘリオポリステンへと近づく。

 

 

 

 

 

 クルーゼ隊所属。ナスカ級戦艦ヴェサリウス艦橋。

 モニターに映し出されているのは、崩壊したコロニー。そして、そこから発生したデブリが目の前で止まると、壁のようにヴェサリウスを覆う。

 破片を抑えているのモノトーンカラーのモビルスーツ。フェイズシフト装甲を展開していないイザークたちの機体だ。

 

「足つきの様子は?」

「駄目です。わかりません」

「デブリの固定終わりました」

 

 部下の報告に満足そうに頷くクルーゼ。

 コロニーの崩壊によって発生したデブリ。その一部はクルーゼ隊の艦船のあるところまで及んでいた。

 出撃中のアスランたちを除くと、満足に使えるのは地球軍から奪った機体だけである。

 

 なので、対応させられるのはイザークたちだけなのだが、彼らからは不満を滲ませていた。

 しかし、彼らの気持ちとは裏腹に、その出撃は無駄ではなかったのだ。

 映し出されるモニターの中で、四機のモビルスーツがローラシア級戦艦ガモフへと帰還する。

 

「やはり動かして見ないと、わからんもんだな」

「設計局の人間は――量子コンピュータですべて済む――なんて言いますがね」

「それでは、コートニーがいる理由の説明がつかんな。彼は優秀なテストパイロットだ」

 

 アデスは軍帽を脱いで「ですな」と言いながら頭をかいた。

 ザフト軍の現在の主力モビルスーツジン。それらを圧倒的に凌駕する性能。そして動作精度。

 それらはデータ上ではわからなかった。それは不満を抱いていた四人も同じだったようで、自身の乗機を忌々しくも誇らしげに見上げていた。

 

 仮面の男は考える素振りとなると、口を開く。

 

「念の為にEジャマーを戦闘レベルまで上げておけ」

「よろしいのでしょうか?」

 

 アデスは二つの観点から、Eジャマーを使用することを躊躇っていた。

 ひとつは被害対応の、邪魔になることを懸念してだ。ヘリオポリスイレブンが崩壊したことによるデブリの撤去作業。それを邪魔してしまうからだ。

 もうひとつは、自分たちザフト軍がこの場にいることを知らしめることになってしまう。正確な位置はわからないまでも、いずれジャミングの発生源は特定される。

 

「ヘリオポリスに逃げ込まれませんかね?」

「その時はその時だ。アデスだったらどうする?」

 

 アデスは顎に手をやり、考える素振りとなる。

 まず彼が考えたのは、クルーゼ隊は最低でも二つのことを成し遂げなければならない。

 ひとつは足つきの監視。これは言うに及ばないだろう。できれば撃破もしたいところだ。

 

「監視するにしても、地球軍の新型兵器も持ち帰りたいですね」

「そうなるな。データと実機は一機でも持ち帰りたいな。ならば、どうする?」

「ガモフとイザークら四人を残し、足つきを監視させます」

 

 ラウ・ル・クルーゼは「そうだな」と頷く。

 

「足の速い本艦が本国に戻り、報告とデータを持ち帰る」

「そんなところだな」

「後は――」

「ん?」

 

 アデスは「いえ」と言葉を切ったが、仮面の男は無言で先を促す。

 

「ツィーグラーの応援を要請します」

 

 ラウは「ほう」とつぶやき、先を促す。

 アデスは近くの宙域に、ユーラシア連邦の所有する宇宙要塞、アルテミスの存在を指摘。

 そこに逃げ込まれないために、もう一隻用意するべきだと提案。

 

「失念していた。確かに、そこに逃げ込まれるかもしれんな」

「はい。ですから、ツィーグラーに応援を要請するのです」

「宙域図を出してくれ」

 

 ラウの指示にオペレータのひとりが対応。二人の前に地球を中心とした宇宙のマップが表示される。

 宙域図は3Dマップで表示されており、彼らがプラントを出航する前の、各部隊の航路図が表示されている。

 クルーゼ隊のいる宙域の近くを、通る部隊がひとつあった。

 

「ツィーグラーは受領してからになるので、タイムラグが発生するな。いっそのこと、イン隊に頼むのはどうだ?」

「それも良いかもしれません。イン隊にレーザー通信を」

「お前は頼りになるよ。アデス」

「恐縮です」

 

 すぐさま彼らは連絡を送ったが、イン隊からの返事は良いものではなかった。

 結論から言うと、無補給で戦闘するのは難しい状況なのである。

 補給さえなんとかなれば、彼らも対応できるという話だ。

 

『――だが、地球軍の新型機動兵器と、新造艦が相手となると無理もしないとな』

 

 モニターに映る黒髪の青年はにこやかに笑う。

 

『そちらは帰還までの余裕はあるか?』

「あるな。どれくらいだ?」

 

 クルーゼは相手の思惑に気づいたのか、その先を促す。

 

『本艦分の物資だな。後、貴艦に護衛を頼みたい。本国に戻るのだろう?』

「そのつもりだ。そろそろ呼び出しが来るはずなのでな」

『モテるな』

「美人の呼び出しなら、喜んで対応するんだがな。生憎とその手の話に縁がなくてな」

『よく言う。引く手数多だろうに。至急、ハイヤームを向かわせる。指揮はゼルマンに頼むよ』

「了解した。ランデブーポイントはそちらで決めてくれ」

『了解。ザフトのために』

 

 通信を終えると、仮面の男は小さく息を吐く。

 

「補給基地をやられたのは、手痛いな」

「サーペントテールのジンは撃破しました」

「撃破はな。基地の破壊だけなら、やりようはいくらでもある」

 

 クルーゼは「それはさておき」と話を続ける。

 

「ゼルマンを呼び出せ」

 

 

 

 

 

 デブリ撤去に出たオーブの救助部隊の面々は、事態を把握していなかった。

 ザフト軍が、ヘリオポリスイレブンを襲撃したのは知っている。

 しかし、彼らが対応しようとした頃には、ヘリオポリスイレブンのコロニーが崩壊していたのだ。

 

『ザフト軍の仕業か?』

「わからんが、今はデブリを集めろ」

 

 デブリを集めて再利用する。プラントと地球連合軍で戦争が始まってからは、とくにその傾向が強い。

 戦争で廃棄された、モビルアーマーからモビルスーツ。それらを回収して、オーブも利用している。

 実際に作業に参加しているのは、赤いラインの引かれたモビルアーマーとモビルスーツだ。

 

「ザフト軍がいるかもしれない。気をつけろ」

『モルゲンレーテの話じゃ、地球軍の戦艦があるんだろ?』

『おい! あれを見ろ! モルゲンレーテのジンじゃないか?』

 

 赤いラインの入ったジンが指差す先には、両腕が切り飛ばされた羽なしのジン。

 彼らは慌てて近寄り、パイロットの無事を確認する。程なくしてくぐもった声が通信越しに反応。

 

「無事か?」

『無事じゃねぇよ――って、ここは?』

 

 返ってきた言葉に対して不満はあるものの、無事な人物がいたことに彼らは安堵する。

 彼らは一様に『良かった』と口にする。

 オリバーはようやく違和感に気づく。

 

『ヘリオポリスイレブンは? ここは?』

「……宇宙だ」

 

 オリバーは息を呑む。

 

『イレブンの崩壊を見たのか? 何があった?』

『あ、ああ……。そう、その……』

「ザフト軍がやったのか?」

『いや……いや、違う。お――地球軍だ。地球軍の連中だ』

「なんだって?!」

 

 オリバーの言葉に、救助部隊の面々は驚愕する。

 

『地球軍って、モルゲンレーテにいた?』

『ああ、そうだ。あいつら。あいつらだ! あいつらが戦艦をコロニーの中に入れやがって!』

「そんな馬鹿な?! 戦艦を? ありえないだろ!」

『本当だ! 俺は見たんだ! 映像もある!』

 

 オリバーは救助部隊の面々に映像記録を共有。あることないことを話していく。

 

『あいつら、新兵器を作るのに俺たちを利用するだけ利用して、用済みになったら俺たちを殺すつもりなんだよ!』

「他のヘリオポリスも危ない! モルゲンレーテが襲われる!」

 

 

 

 

 

 アークエンジェル艦内にある、レクリエーションルーム。そこにオーブの避難民たちはいた。

 彼らは全員顔面蒼白となり、言葉を失っている。それもそのはず、自分たちが住んでいたコロニーが壊れる瞬間を目の当たりにしたのである。

 アークエンジェルの艦内からは、外の様子は映像で確認することが出来た。

 

「トール。私達どうすれば……」

「他のヘリオポリスに降ろしてもらえると思うけどさ……」

 

 ミリアリアとトールが心配しているのは、両親たちのことだ。

 コロニーが崩壊する中、逃げ遅れた人々が吹き飛んでいくのを見てしまっていた。

 

「父さん。母さん。無事だと良いけど」

 

 カズィは膝を抱えて、その場に座り込んでしまう。そんな彼をサイは「信じようカズィ」と励ます。

 

「でも、でもさ。俺の両親もさっきの人たちみたいに」

「やめろって、そういう考え」

「わかってる。わかってるさ。でもさ」

 

 サイとカズィの会話は、フレイの声で途切れてしまう。

 

「げっ、宇宙人」

 

 キラがレクリエーションルームに顔を出すと、フレイは露骨に嫌悪感を顕にした。

 彼は居心地悪い様子で、部屋に入るか入るまいか悩んでいるようだ。それを見かねた部屋の前にいた地球軍の兵士たちに「中に入れ」と言われ、恐る恐るといった様子で入室する。

 そんな彼に、フレイはあからさまに距離を置く。

 

「フレイ!」

「だってサイ」

 

 二人が言い合いをしている横で、大人たちはキラを称賛の拍手で迎えた。

 

「よく頑張った。ありがとう」

「助かったよ」

 

 称賛の言葉にも彼は浮かない顔をした。

 

「でもコロニーが」

 

 コロニーの破壊を防ぐことは出来なかったのだ。

 

「そうよ! 壊したじゃない!」

「違うだろフレイ。やめないか」

 

 サイはフレイを連れて部屋から出ていく。部屋の前で警護していた地球軍の兵士も、隣の部屋を使うことを薦めるだけにして、二人を注意をしなかった。

 

「君が頑張ったことは知っているし、君は軍人ではない。モビルスーツを動かせるだけの、ただの学生、だろ? よく頑張ってくれた」

 

 男性がそう言うと「そこに座ってくれ」と話を続ける。

 

「私は医者でね。診察する」

「僕は大丈夫ですよ?」

「医者の言うことは聞きなさい」

 

 キラは言われるがまま、診察を受ける。

 

「君はパイロットスーツなしで戦闘をしたんだ。何かあるかもしれない。例え、コーディネイターだとしてもだ」

 

 まして彼は宇宙空間に出てしまっている。

 パイロットスーツなしで、宇宙に出ることの危険さは、キラもよく知っていた。

 

「はい。ありがとうございます。えっと……」

「ジークフリート。ジークフリート・リヒトシュタイナー。医者だ」

 

 今までそんな余裕がなかったからか、そこでキラは避難民の多さと、年齢層の広さに驚く。

 

「たくさん、いますね」

「君が守った命だ。誇りに思ってくれ」

 

 キラははにかんだ様子で「はい」と頷く。

 

「そんなことより、これからどうなるか聞いているか?」とソウマが口を挟んだ。

 

 キラは頷き、話を続ける。

 

「他のヘリオポリスに連絡してくれるそうです。そこで僕らは、この艦から降りられるように手配してくれるそうです」

 

 ストライクから降りる際に、マリューから通信で聞かされていた。

 アークエンジェルも、他のヘリオポリスに匿ってもらいつつ、キラたちを解放するという手順だ。

 全員から歓喜の声が上がる。誰も彼もが笑みを浮かべて、戦争から離れられることを喜んだ。

 

「キラは? キラは大丈夫なのか?」

「僕も降りられるよトール。本当は駄目みたいだけど。戦時特例ってので」

「そりゃあ良かった。早くこんなことから、離れようぜ」

 

 キラは頷き笑う。

 

(そうだ。こんなことから早く離れよう)

 

 脳裏にはコロニー内で再会した友人の顔。そして声。

 

(僕はもう降りるよアスラン)

 

 

 

 

 

~続く~




評価や登録はお任せしますので、次のお話も見ていただければ嬉しいです。
次も来週更新です
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定