艦これの世界に転生したって早期に気付くのは無理   作:アズレン提督

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2021/10/12 タイトル修正


緒戦
プロローグ


 異世界に転生するらしいですよ。

 チート能力貰えるらしいですよ。

 で、貰いました、転生しました。

 

 

 まぁ、前歴の説明なんてこのくらいで十分でしょ。

 異世界転生する前にどこでなにしてたとか端折ってOK!

 

 戦前生まれで硫黄島に配属されていたけど、当時の指揮官が敗残兵の汚名を受けても部下を生き残らせることを決意したことで生き残り、焼け野原になった日本を復興させるために歯を食いしばって来た漢が転生みたいなのだったら前歴も見てみたいもんだが、生憎と見たことがない。

 って言うかそこまで行ったら最早前歴の方が主題になりそうなので結局NGです。

 

 

 さておき、異世界とか言うけれど、転生したのは現代日本だった。

 安穏とした退屈で既知に満ちたもう1度の人生を送っている。

 

 違いと言えばまぁ、前世よりもちょーっとばっかり遅く生まれたくらい。精々数年程度だけど。

 無駄無駄オラオラやってる漫画もあれば、時空を超越した底知れぬ漆黒の深淵に通じる袋状の器官から奇怪な装置を取り出す機械のアニメもある。

 

 そんな世界で私がなにをしているかと言えば、ふつーに小学校に通い、ふつーに中学校に通い、とやっている。

 強いて特別なところがあるとすれば、もらったチート能力を活かして活動してるってことかなー。

 

 なにをしてるかって?

 

 ボクシングだよ。

 

 私のチート能力は『身体能力5倍』である。シンプルに身体能力が5倍になる。

 かなりしょっぱく感じるチート能力だが、あらゆる身体能力が5倍になるので結果は5倍どころではなかったりもする。

 プロボクサーが時速30キロから40キロで拳を放つと言われる中、私のパンチスピードは時速160キロである。こんなん頭に当たったら死にますよ……頭じゃなくても死ぬが。

 もちろん本気で人を殴るわけはない。対戦相手が片っ端からリング禍で死ぬとか死神か何かかな?

 

 殺さない程度に手加減して戦い、勝つ。そしてファイトマネーを稼ぐのだ。

 私のチート能力があれば、一方的に相手を殴って勝てる。だからボクシングだ。

 あるものは使う。それが私のライフスタイルだ。だからチート能力も使っていく。

 

「そやけど英語のべんきょはなー……」

 

 がりがりと頭を掻きながらブツクサ呟く。そう、私がボクサーになるのは日本ではなくアメリカの予定である。

 なんでかって、まぁ、ファイトマネーの差かな……日本だと興行収入的にね……まぁ、日本でプロボクサーになってアメリカに殴り込むという形ではあるのだが。

 しかし、そのためにはアメリカで活動出来る程度に英語もできる必要がある。

 

 チート能力のお蔭でトレーニングなんぞしなくても世界王者になれるが、勉強にまでチート能力は適応されないのだ。

 一応、思考能力5倍、記憶力5倍と言った強化は出来るのだが、それをしても焼け石に水な感は否めない。

 5倍にのーみそ強化しても、頭に入ってく量はあんま変わらない気がするんだよなぁ、なぜか。頭の痛い問題だ。まぁ、頭は痛いのではなく悪いわけだが。

 

「はぁ~……詰まった。今日はやめとこ」

 

 ぽいっ、と机の上にシャーペンを放り投げ、椅子に背を預けて天井を見上げる。

 天井はクリーム色、壁紙は淡いピンク。傍らのベッドの上にはぬいぐるみやらなんやら。

 なんともまぁ女の子っぽい部屋で、実際に私は女の子なのだよなぁ。

 

 そう、いわゆるTS転生ってやつだね。

 

 これのせいで稼ぐのちょっと難しくなってんだから困る。男子だったらもっと楽だったのに……。

 男子プロボクシングなら日本国内でも十分な興行収入が得られただろう。女子プロボクシングは人気無いんだよ。

 

「はぁ~」

 

 しばらくぼけ~っとしていたが、ヒマさを感じる。かと言って勉強はしたくない。

 じゃあ、とりあえず外にでも出るか、とも思うのだが、服装は部屋着で外に出れる格好ではない。

 この格好で出れる限界は庭先くらいまでだろう。それ以上はさすがにやべーでござる。

 じゃあ、この格好で出れる限界まで出るか……と、階下に降りて、居間の窓から突っかけ履きを履いて庭に降りる。

 

 太陽燦々、青い空、白い雲。まさに快晴と言った感じの空だ。こんないい天気に家の中で勉強とか青春の浪費だよね、間違いない。

 と言うわけで、勉強はしない。じゃあなにするかって……まぁ……庭先で青春の浪費とか……?

 うーん……と考え込んでいると、視界の端に人影。そちらにちょいと視線を向けてみると、汗だくの美少女がそこに!!!

 

「おっす、潮」

 

「おーっす、天ねー」

 

 お隣さんの龍田川天音さんである。いわゆる幼馴染と言うやつ。

 歳は1つ上で、私が中学3年なので天ねーは高校1年生である。

 ショートヘアの美人さんな上に、スタイルもバツグン。

 かーっ、出来ることなら前世で幼馴染になりたかった。

 

「今日も素振りしとるん? 土曜日の昼間っから精がでますなー」

 

「おう。潮もやるか?」

 

「昼間っからヤットウの稽古かー。まぁ、たまにはええかー」

 

 天ねーは剣道美少女と言うやつである。

 父親が剣道やってて、兄3人も剣道やってる剣道一家である。

 実は私も昔はやってた。まぁ、お隣さんだからね。誘われたらご近所付き合い的にやるよね。

 大人げなくチート能力使ったので、全員べっこんぼっこんにしてしまった。

 本気で振らなくても、動体視力5倍にして反射神経5倍にするだけで余裕である。

 

 そんなわけで、天ねーに誘われ、竹刀を借りてヤットウのお稽古である。

 寸止めでやればOKだろ、的な雑さで防具無しでの試合をする。

 まぁ、動体視力5倍反射神経5倍の私に勝てるわけもないのだが。

 

 ただ、そんな化け物とやり合ってるせいで天ねーがだんだん超人の領域に脚を踏み入れてんだよね。

 動体視力5倍にしても追い切れない太刀筋とか、反射神経5倍でも躱し切れない一撃とか出してくる。

 それでも反応して防いだり躱したりするわけだが、これ普通の相手なら全員ボコボコなのでは?

 天ねーの反応速度もなんか異常と言うか、そもそも私が振る前に既に反応してることが稀によくある。未来予知でもしてらっしゃる???

 私が本気で振ると剣先見えないからって、未来予知をすることで対応とかどうしてそうなるのかそれが分からない。

 

「だーっ! くそ! 勝てねー!」

 

「天ねーもまだまだやなー」

 

「潮がおかしいんだっつーの! いまじゃ俺が一番強いんだぜ!?」

 

 俺っ娘剣道美少女とか属性盛り過ぎな天ねー、いつの間にか家庭内最強になっていた模様。

 これもうインターハイとか出禁にすべき強さなのでは?

 

「まだやる?」

 

「今日はおしまい! 疲れた! 午後はどっか遊びにいこーぜ!」

 

「ええよー。そこらの川原で殴り合いでもしよか」

 

「なんで昭和のドラマみてーなことしなきゃなんねーんだよ!? もうちょっとこう、なんか、あるだろ!」

 

「なんかってなんや」

 

「こう……なんか……シャレた喫茶店で茶ぁ飲んでみたり、服とか見てみたり……なんか、そう言う感じのだ!」

 

 天ねーは男所帯で育ったので女の子っぽいことが苦手なのだ。

 嫌がるとか恥ずかしがるとか言う意味ではなく、出来ないという意味で苦手だ。

 腹が減ったら牛丼屋で特盛の牛丼を掻き込み、出掛ければゲーセンに脚を誘われ、買い物に行けば兄たちに影響されてエアガンやらバイクに目を惹かれる女子高生だ。

 

 女の子らしい服は高ぇよ! ユニクロでいいだろ! と文句を垂らす。

 流行りのスイーツは、量が少ねぇ! スーパーのカステラがコスパいいじゃねーか! と質より量。

 LINEをすればスタンプも絵文字も使わない業務連絡のような端的な文書ばかり。

 

 でも女なのは間違いないし、可愛いものも嫌いなわけではない。

 ぬいぐるみとか喜んで受け取るし、下着はお洒落なのつけたがる美少女だ。

 

 いいだろう、これが私の幼馴染の天ねーだぞ。最高だろうが。

 

「まぁ、とりあえず町中出てみよーや。そーゆーわけで、汗流して出掛けよかー」

 

「おう。パパッと汗流してくらぁ!」

 

 そう言って家の中に飛び込んでいく天ねー。

 私も家の中に引っ込み、服を着替える。汗を掻くほど動いてないので着替えだけでOKだ。

 

 

 そして家の外に出て、ぼへ~っと天ねーを待っていると、私服の天ねーが出てくる。

 

「おう、なんだ、潮。速いじゃねーか」

 

「まぁ、うち汗とか流してへんし」

 

「大丈夫かぁ?」

 

「シャワー浴びてないって意味やなくて、汗流すほど動いてへん言う意味やで」

 

「くそーっ! 次こそボコボコにしてやる!」

 

「頑張りや~」

 

 へらへらと笑っておく。

 

「くっそー、とにかく行くぞ! 潮!」

 

「はいよ~」

 

 天ねーに誘われて私は歩き出す。

 なんだか楽しい1日になりそうな気がして来た。

 

 

 ああ、そうそう。

 

 私の名前は黒川潮。

 男の子っぽい名前と言われるけど、前世男の子で今世女の子なTS転生者だ。

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