艦これの世界に転生したって早期に気付くのは無理 作:アズレン提督
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【速報】チート持ちより強いリアルチートが居る【味方が強過ぎる】
うそでしょ……。
龍驤さんが本腰入れて防空し出してから、深海棲艦の航空機しか落ちてない……。
天ねーが突っ込んだ水雷戦隊の半数以上が叩き切られて死んでる。砲使えよ。
鳳翔さんが弓だけで水雷戦隊に応戦して一射一殺してる……って言うか空母なんだから突っ込むなよ……。
いや、アレどうなってんの?
天ねーは当たり前のように戦艦の首を叩き切るし、鳳翔さんも敵艦を平気で射殺してる。
龍驤さんはエースコンバットみたいな無双をし出す。龍驤さんを守るために防空がんばるぞい! と思ってたのに何もしてないぞ私……。いや、敵艦攻落としたりはしてたけど、たぶんやらなくても龍驤さんが殲滅してた。
って言うか、どうしてどいつもこいつも突っ込むんだ。頭島津か?
「……龍驤さん、うち居っても役に立たなそうやから突っ込んでくるわ!」
「おー、行きや。うちは大丈夫や。艦隊防空も出来る程度に手ぇ空いてきたわ。援護もしたる」
「いってくる!」
戦闘機でどう援護するんだろうとも思ったが、とりあえず大丈夫そうなので行くことにする。
機関出力を上げ、海上を疾走。妖精さんに頼むと、艤装に収納されていた義手を取り付けてくれる。
「うっし、待っとり天龍! うちが助けたるからなー!」
天龍と同じ剣を右手に握り、私も敵へと突っ込んだ。
たっぷりとスピードを乗せて叩き付けると、イ級どころかホ級も艤装ごと真っ二つに出来る。
リ級の腕を叩き折り、超至近距離からの頭部への発砲で水底逝き。
天龍剣意外と強い。って言うか、リーチの差って本気で大きい。
大抵の敵が剣なんか持っていないので、剣を持っているだけで接近戦で圧倒的なアドバンテージが取れる。
まぁ、全員が砲か艦載機を持っているので、剣如きのリーチの差なんてほぼ意味はないハズなんだが……。
「意外とイケるやん」
「だろ、黒潮」
海上で天ねーと隣り合い、お互いに剣を肩に乗せながら、そんな風に言葉を交わす。
超至近距離にまで入ると、砲の旋回速度が追い付かなくなる。そのため、一方的に嬲り殺せる。
本来、軽巡や駆逐と言う戦艦相手には無力なハズの存在がここまで一方的に狩れるとは愉快な現象もあったものである。
まぁ、普通なら超至近距離まで接近できないからね……。
天ねーは剣で砲弾を逸らすという意味不明な真似をして力づくで接近する。
私は25倍の認識速度で砲弾を認識して回避、あるいは機銃か主砲で迎撃して超至近距離まで接近できる。
これを利用した結果、私と天ねーは接近戦で敵をぼてくりこかすと言う艦これにあるまじき戦闘を実現できるわけだ。
ちなみに、砲弾を剣で逸らすの、これ真似できない。
一応剣を砲弾に当てるのは可能だが、どうやったらこれを起爆させずに軌道を逸らせるのか全く分からない。
運が良ければ逸らせるし、仮に逸らせなくても私に命中しない場所で起爆するのでダメージはほぼないのだが……。
「黒潮、主力までの道は開けた。相手の艦載機とやらは品切れなんだよな?」
「そや。つまり、がら空きの主力を丸ごと頂きます言うわけやな」
「っしゃ、行こうぜ」
そう言い合ったところで、後方から激しく波を蹴立てて現れる影。
それを認識した時、私が咄嗟に取ったのは防御の行動だった。
天ねーもそれは同じく、剣を正面に、正眼の構えを取って息を止めていた。
「みんなー! おまたせ! 駆逐艦皐月、見参だよ!」
現れたのは皐月だった。それを見て、私は拍子抜けしたような、驚いたような、そんな感慨を抱いた。
正眼に構えていた剣を下ろし、息を吐く。左手を見れば、それはカタカタと震えていた。
隣の天ねーの背中を引っ叩くと、だらだらと脂汗を流していた天ねーがようやく剣を下ろした。
「えと……どうしたの?」
どうしたんだろう? と言う不思議そうな顔をする皐月。
冗談だろう、と言いたくなる私と天ねー。
こいつ、私より強くねー?
そんな、心胆を寒からしめるような実感を、脊髄に無理やりねじ込まれたような錯覚を覚えたのだ。
なにがどう強いのかよく分からない。ただ、正面に立つだけで格の差を脳髄に叩き込まれたかのようだ。
何もかもが敵わない。絶対的な強者との格の違いを思い知らされる。私が本気で戦っても、艦娘として敵わない。
たぶんだが、艦娘として艤装を背負っている状態なら、私が艤装を背負って5倍チートで身体能力を強化しても、肉弾戦で負ける。
そもそも、なぜ艦娘が6人しかいないのか。
妖精さんたちは6人分の艤装しか用意できなかったから、とそれを説明した。
では、それを渡した6人の艦娘はいかなる存在だったのか?
答えは単純で、艦娘としての適性が最も高かった6人。それを選抜した結果だという。
つまり、ここに居る5人の艦娘は、日本国内の適性者でトップ6に入る天稟を持つ。
そして、皐月はその中で間違いなく頂点に立っている。
適性を数値で表せるとして、私や天龍が100だとしたら、皐月だけおそらく10万とか100万の領域にいる。いや、もしかしたらもっと……差があり過ぎて、その差を推し量ることすら困難なのだ。
シンプルに桁が違う存在。強いから強い。そう言う存在だ。
戦闘態勢に入ってようやく気付いた。って言うか、よく考えたらそんな変な話でもない。
私はズタボロになってようやく初陣で勝った。
この点に関して、自分を卑下するつもりはない。
駆逐艦なのに1人で大艦隊をブチのめしたんだ。十分凄いことをやってのけた。
じゃあ……皐月はどうだったのか?
私たちの居たところに特別強い敵が居たという可能性は否めない。
だが、日本に同時多発的に侵攻している敵勢力にそれほど差がある様子はない。
つまり、皐月は私とほぼ同じ程度に最悪の状況を、無傷で勝利したのだ。
私と違って、チート能力すら無しで。艦娘としての能力だけで勝ったのだ。
格が違い過ぎたことに、私が気付いていなかっただけだ。
「皐月さん」
「えっ、ボク?」
「すんません、うちらナマ言いました。皐月さんの援護しますんで、どうぞ何卒よろしくお願い致します」
「お、押忍ッ! 皐月さんよろしくお願いします!」
私と天ねーが皐月さんにペコペコする。
やばい、こわい。っょぃ、かてない。
「え、え? ど、どうしてぇ!? なんでそんなになっちゃってるの!? ボクそんなに凄いことしてないよ!?」
「いや、そんな。皐月さん、謙遜もほどほどにせんと嫌味ですよってに」
「押忍! ご指導お願いします!」
「やめて! やめてよぉ! ふ、ふつーにしてよ! ふつーに!」
「えぇ……難易度高い……」
「どこが!?」
こんな怖いの相手にタメ口使えとか難易度高いよ。
いつの間にか後ろに世紀末覇王居て、ラオウっちって呼んでね、とか言われた気分だぞ私。
まぁ、世紀末覇王と違って大変可愛らしい皐月ちゃんなのだが……。
って言うか待てよ。
時計を見る。時刻は9時23分。戦闘開始から2時間ちょっと。
妖精さんに位置を確認。航路からして、硫黄島まで約160キロ。
私たちはこの近辺に降下し、自衛隊員を硫黄島に届けてくるように皐月に頼んだ。
つまり、往復で320キロに渡る距離を、2時間ちょっとで走破したのか?
「え、ええと、皐月っ……ちゃん」
「え、うん。なぁに?」
「硫黄島まで、2時間ちょいで往復しはったんですか……?」
「うん」
「……硫黄島からここまで何分くらいで到着したんです?」
「えっと……」
皐月が腕時計を見る。
「30分くらいだね」
「30分!?」
単純計算で時速300キロ超で移動したことになるんですがそれは……。
いや、そもそも1時間30分ちょいで約150キロ先の硫黄島に行ったのも普通におかしいぞ。
まだしも常識的な速度ではあるが、軍艦が出していい速度じゃない……。
「えと……じゃあ、突撃、でいいんだよね?」
「あ、はい……えと、天龍が前衛を務めるから、艦隊移動速度はそれに同期や。つまり、みんな一列になって移動や」
「わかった! 天龍さん、おねがいします!」
「はい! 分かりました!」
ピンッと背筋を伸ばして天ねーが勢いよく返事をする。
ガチガチの天龍の背中を引っ叩いて緊張をほぐしてやろうとするが、私自身もガチガチなのでむずかしぃ。
「い、いくで天龍!」
「お、おう! 最大戦速! 機関過負荷いっぱい! とっつげきぃぃ――――!」
天ねーが波を蹴立てて駆け出す。私もその後に続く。
後ろをちらっと見ると、不思議そうな顔をする皐月。
なんでこんなゆっくり移動してるんだろう、みたいな顔だ。
すんません、うちらこれで精一杯なんです……。
ちなみにだが、天ねーのいう機関過負荷は実際には過負荷運転ではない。
私の艤装の妖精さん曰く、今は艦娘を絶対に喪えない状況なのでかなり余裕を持たせて色々運転しているらしい。
機関過負荷運転は定格出力の90%しか出していないんだとか。定格出力は本来の定格出力の82%程度らしい。
「居たぞ! 行くぞ黒潮!」
「任せぇ!」
「ボクもやっちゃうよ!」
言って、皐月が発砲。私たちが視界に捉えたヲ級の頭部が消し飛ぶ。ぅゎ皐月っょぃ。
波を蹴立て、皐月が急旋回したかと思うと、魚雷発射管が稼働し、魚雷が掃射される。
私たちの5~6倍くらいの猛スピードで海中を疾走したかと思うと、ヲ級2隻を丸ごと飲み込む爆炎が吹き上がる。推定雷速200ノットとか、スーパーキャビテーション魚雷かな?
一瞬後に爆炎が消え去ると、半球状に抉れた海面がザザザザ……と音を立てて崩れ、水をしぶかせる。
なるほど、スーパーキャビテーション魚雷じゃなくて、蒼き鋼のアルペジオコラボの浸蝕魚雷だったかぁ……。
「いっけぇー!」
更に皐月が発砲。ヲ級が丸ごと消し飛ぶ。って言うか、こいつら反撃してこないな……? あ、艦載機全滅してるのか……。
そう思いつつ、襲い掛かって来たハ級に真っ向唐竹割を叩き込んで水底に送り込む。
続けざまに主砲をヲ級へと叩き込み、その頭部を木っ端微塵に粉砕する。あ、主砲に関しては同じようなことできるな私……。
「よっしゃ、空母機動部隊のド阿呆どもは撃滅……」
言った直後、海中からホ級が飛び出して来た。
それに思いっ切り剣をフルスイングすると、ごぎぃぃん、とか言う凄い音を立ててホ級が空へと吹っ飛ぶ。
直後、皐月がそれに砲撃して撃破。
その最中にも、海中から次々と深海棲艦が姿を現しだす。
イ級、ロ級、ハ級と駆逐系を主体とし、ホ級、ヘ級と言った軽巡系が多い。
が、後方にはル級やタ級を旗艦とした主力艦隊が見られる。
主力艦隊が潜航して接近してくるとか卑怯すぎるだろ。潜水空母戦艦とか意味の分からんものが出てくる架空戦記じゃないんだぞ。
「増援や! あかんなこれは」
「ちっ。鳳翔さんは航空機全滅。矢も品切れらしい。後退するしかねぇか?」
「そやな。龍驤さんは確保したし……とは言え、こいつら連れて硫黄島行くわけにはいかんな……龍驤さん! 聞こえるか!」
電信に一縷の望みをかけて声をかけてみるが、妖精さんはノイズしか聞こえないとのこと。ほんまつっかえ!
「ああもう! 鳳翔さん! 聞こえるか!」
インカムに声をかける。こちらは問題なく繋がる。先ほど天ねーも通信してたし。
『はい。そちらの状況はどうですか?』
「既存の敵艦隊は撃滅完了やけど、増援や。うちらは殿を務めるついでに敵艦隊を誘引して硫黄島から引き離す。無理そうならなるたけ殲滅する。鳳翔さんと龍驤さんは硫黄島に撤退して欲しい」
『分かりました。矢のない私は足手纏いですものね……龍驤さんも艦載機が限界だそうです。撤退します。御武運を』
「はいよ、任しとき」
インカムから指を離し、私は深海棲艦を見やる。
「さぁて、うちらはこいつらを撃滅しつつ、硫黄島には行かへんように誘引や。そやからまずは」
「ああ、引きながら撃つのか?」
「は? そんな生温いことするわけないやろ、殺されたいんか?」
「なんで!?」
私の怒りの大日本帝国節に天ねーが困惑する。
「突撃や。ど真ん中に」
「ど真ん中に!?」
「なんで!?」
「ど真ん中には来ないやろー、って相手は油断しとるからな。一気に突っ切る。んで、敵主力艦隊……あすこらへんにいる連中……戦艦連中やな。そいつらをできるだけ食うてから行くで」
「黒潮、それをする理由は?」
「うちらは水雷戦隊やからな。戦艦を回す相手やない。相手方も水雷戦隊を寄越して終わりや。そやから、生半なやり方やと誘引は不可能や」
現実を言えばそうなるのが必然である。
もちろん私たちは水雷戦隊如きを差し向けられても余裕で食い破るのだが。
相手はそう思わない。主力は龍驤さんと鳳翔さんを狙って進撃するだろう。
水雷戦隊を誘引して撃滅、その後にこちらの主力を追った敵主力艦隊を背後から強襲するのも考えたが、距離が近すぎる。
敵連中からこちらの主力の目視距離までほんの数カイリしかない。私たちが強襲するまでに主力が襲われる可能性が高い。
なら主力殲滅して、水雷戦隊を誘引する。これしか手が無い。
「必要ってことだな。りょーかい。やったろうぜ」
「う、うん……ボクもがんばる!」
「っしゃ、行こうや」
私たちは覚悟を決めると、突撃を始めた。
相手もまさか突っ込んでくるとは思わなかったのか、動揺したような気配。
「酸素魚雷の力、思い知れー!」
皐月が魚雷を投射。敵前衛が巻きあがる爆炎に巻き込まれ、纏めて十数隻が消し飛んだ。魚雷の威力じゃない……。
私も負けじと魚雷を掃射する。皐月ほどの異常な威力は出ないが、1発当たれば戦艦だろうが撃沈させられる。
って言うか、手で投げないで普通に魚雷発射管で魚雷撃ったのこれが初めてだな……。
前衛の水雷戦隊を纏めて食い破ると、更に増援が海中から現れだす。
水を突き破って現れるのは、奇妙な帽子のようなものを被った少女そのものの姿をした深海棲艦。
「ッ!?」
天ねーが一瞬動揺したように剣を止めるが、私はそいつの首を刎ねるように剣を振るっていた。
「ヤラセハッ、シナイヨ……!」
左手の艤装を盾に、私の剣戟を辛うじて食い止める駆逐棲姫。
姫級の深海棲艦まで交じっている水雷戦隊とは。
よくよく見れば、周囲の深海棲艦も奇妙なオーラを纏っているのが見える。
フラグシップやエリートタイプの深海棲艦が交じっているというわけだ。
「どうやらこいつらガチの主力らしいで!」
無理やり押し切ろうとチートを全開にし、左手を添えて剣を押し込みながら私は叫ぶ。
金属が擦れ合わさるような耳障りな音を立てて押し込まれる剣。
駆逐棲姫が必死の形相で剣を押し返そうとしてくるが、生憎とこっちの方が出力は上だ。
「っと!」
駆逐棲姫を巻き込むことを恐れない砲撃を認識し、私は海面を蹴り飛ばして後ろに下がる。
チートを全開にした瞬発力を活用すれば、時速200キロ近い初速で移動ができる。
海面を蹴っ飛ばして移動する、と言う都合上、あまり連続して使えるものではないが。
「死ねぇ!」
私が下がると同時、皐月が主砲を発砲。駆逐棲姫の腹が丸ごと消し飛び、上半身がくるくると上空に舞い上がった。
「ダメだよ! 人間みたいに見えても、あれは化け物なんだ! 殺さなきゃダメなんだ! 存在しちゃいけない化け物なんだ! 天龍!」
「は、はい! すんませんした!」
「そうや、殺すんや! 深海棲艦を殺せ! これが日本国民の祈りや! 深海棲艦を殺せ! これが死んでいった者たちの祈りや! 分かったな!」
「わ、悪い!」
皐月に何があったかは不明だが、姫級深海棲艦に相当嫌な思い出があるらしい。
なんの容赦もない死ね宣言の上、どっかの長男みたいな発言である。
天ねーは陸上でしか戦っていないから、姫級には出会ったことが無かったのだろう。
「もう油断も躊躇もしねぇ。皐月と黒潮以外はみんな斬りゃいいんだろうが! 簡単だぜ!」
「龍驤さんと鳳翔さんも斬ったらあかんでぇ!」
「わーっとるわい!」
なんて軽口を叩き合いながら、私たちは新たに現れた増援らへと挑みかかる。
天龍が軽巡棲姫の腕を斬り飛ばしたかと思うと、直後に頭を叩き割り、続けざまにネ級を叩き切る。
凄いんだけど、主砲と魚雷使えよ。いや、本気で。剣だけで戦うなよ。魚雷発射管はつけててカッコいい飾りじゃないんだぞ。
「こんのぉぉお!」
皐月は主砲の威力がヤバい。って言うか普通に後方にいる戦艦級の敵にすら通じてるのがおかしい。
当たり前のように直撃した箇所が消し飛び、当たり所が悪ければそれで撃沈である。大和かな?
よく考えたら駆逐棲姫って戦艦級の装甲に戦艦以上の耐久力持ってたわ……それを一撃で殺してるから今更か……。
「そりゃああ!」
で、私は発砲すれば重巡級くらいなら一撃で轟沈。戦艦級も艤装に損害は与えられる。
魚雷は1発で戦艦だろうが撃沈させられ、近距離戦闘になれば戦艦もヤれる。
3人しかいない水雷戦隊とは思えない異常な戦闘力である。
これなら……このまま撃滅も、イケるのではないか?
「くっ、そ……! 黒潮ォ! 増援がまだ湧いてやがる!」
「なんやて!?」
天龍の指し示す先を見やる。そこには戦艦級を主体とした敵軍……。
タ級を主体とし……あれは……レ級!? レ級が、10体近く居る。
「くっそ……空母機動部隊がおらんと思っとったんに……航空戦艦なんぞ珍妙なモン作ってんじゃあないわぁぁぁ――――!」
苛立ちまぎれに魚雷発射管から引き抜いた魚雷をブン投げ、レ級に直撃させる。
頭部を消し飛ばされて轟沈していくレ級だが、敵はそれに動揺した気配も見せない。
レ級が主砲を斉射。
機銃で可能な限り迎撃し、迎撃し切れなかったものを剣で空中起爆させてやる。
天ねーは当たり前のように剣で全て捌き切り、皐月は津波かと思うほどの凄まじい水飛沫を上げて機動力で躱し切った。
ガスタービンエンジンじゃないんだから、そんなレスポンスの早さで出力上げるなよ……。
「拙いけど、今更逃げられもせんか……! 腹ぁ括るしかないなぁ!」
「今更だろうが! やるぞ!」
「出来る限り戦うんだ! 硫黄島に行かせるわけにはいかないでしょ!」
敵はもう100を数えただろうか。嫌になる。
もっと艦これらしく6体ずつ出てきて欲しい。
そんな愚痴を内心で呟きながら、私たちは突撃を再開した。
一方、鳳翔と龍驤は。
「……鳳翔さん、悪いんやけど、ちょっと、確認してもらいたいことがあるんや……」
「はい? どうしましたか?」
顔色の悪い龍驤が鳳翔に声をかけ、鳳翔がそれに頷く。
出せる限界の速度で硫黄島に向かっていた鳳翔は、そこで龍驤の顔色が尋常ではないことに気付いた。
血の気が引いているなどと言うレベルを通り越し、完全に土気色をしているのだ。
亡くなった祖父の遺体がこんな顔色だったと思い出してしまうほどの有様だ。
「うちの、心臓……まだ、動いてるか……?」
「は、はい?」
「さ、さっきから、心臓の音が、聞こえんのや……お、おかしいな……」
慌てて鳳翔が龍驤の手首を取る。そして、自分の首筋に指先を押し当てる。
が、そんなことをする必要もなかった。龍驤の脈拍は殆ど感じ取れないほどに弱っていた。
「こ、これは……」
心臓の音が聞こえないというのは不自然ではない。そもそも聞こえないのである。
心臓の音のように聞こえるのは血管が蠢く音なのだから。聞こえる方がおかしいのである。
だが、自分の拍動を感じられない、と言うのは、存外に分かるものであるらしい。
「意識は、ハッキリしとるんやけど……うち、なんか、おかし……」
そこで、龍驤は倒れた。水面に突っ込みそうになった龍驤を慌てて鳳翔が抱き抱える。
常態化した睡眠不足で弱り切った心臓は、味方が来てくれたという興奮で高鳴り、それがトドメになった。
龍驤は過労による虚血性心疾患で急死した。享年17歳。あまりにも若い死だった。
「え、え、衛生兵! 衛生へーい!」
艤装から大慌てで妖精さんが飛び出してくると、龍驤に必死の蘇生処置を始めた。
龍驤と鳳翔の妖精さんが揃って蘇生処置をしても龍驤はなかなか蘇らない。
「生き延びたのに死んでしまったでは意味が無いでしょう! 龍驤さん、がんばってください!」
鳳翔はどんどん冷たくなっていく龍驤を抱えて硫黄島を目指す。
こんなところで死なれては困るのだ。史実の龍驤よろしく、大回転で働いてもらう必要があるのだから。
鳳翔は文字通り死人に鞭を打ってでも戦い抜くつもりであった。
硫黄島は、まだ遠かった。