艦これの世界に転生したって早期に気付くのは無理   作:アズレン提督

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つかの間の休息

 私は風呂が大好きだ。前世でも好きだったが、今世ではもっと好きだ。

 たとえ怪我の影響で発熱してようが、満を持して風呂に入ろうとするくらいに好きだ。

 入浴で血流よくなったらもっと痛くなると分かっていようが入りたいと思う程度に好きだ。

 ボクシングで稼げるようになったら、まず自宅の風呂を檜風呂にしようと思ってる程度には好きだ。

 なおこの夢を語ったら、天ねーにおっさんみてぇ、と言われた模様。

 

「天龍にうちの風呂は貸したらんからな」

 

「いきなり何の話だ」

 

「うちが家の風呂を檜風呂にしても入れたらん言う話や」

 

「ああ……前にンなこと言ってたな。別にいいよ、自分ちの風呂入るから」

 

 まぁ、お隣さんだからそうなるな。

 そこで、服を脱いでいた皐月が疑問気な顔をする。

 

「天龍さんと黒潮って、艦娘になる前から知り合いなの?」

 

「そやよー。うちが0歳、天龍が1歳の時からの古なじみなんよ」

 

「だから仲いいんだ~」

 

「ま、気付いたら傍にいたような関係だからな。黒潮は妹みてーなもんだよ」

 

「そやねぇ、天龍はうちの姉やんなんよ」

 

 龍田が居たらブッ飛ばされそうなことを言う。

 いや、意外とイケるだろうか。龍田も私の姉やんになるのだろうか。

 龍田は私の姉になってくれるかもしれない女性だ。

 

「まぁ、風呂入りながら昔話でもしてやるよ」

 

 なんて言いながら天ねーが服を脱ぐと、ブラジャーに覆われた胸が露になる。

 相変わらずだっさいデザインのブラジャーつけてる。でかすぎてダサイのしかないんだって。

 そのブラジャーも外すと、もうとにかくでかいのが露になる。でかい。でかすぎる。

 

「うわぁ……」

 

 皐月が天ねーの大変立派な乳を見て羨ましそうな声をあげる。わかる。

 でかいよね。でかいのに張りがあって、上向きなんだよね。あれ日本人の乳じゃないでしょ。

 エロ漫画みたいだし、外国人みたいな胸の形してるんだよね。なんなんだろね、あれ。

 

「うわっ、くすぐってぇ! なにすんだよ黒潮!」

 

「いや、なんや、ほら、目障りやから、切り取り線」

 

「怖っ!?」

 

 思わず天ねーの乳にカラーリップクリームで切り取り線を書いてしまう私。

 ちなみにこのリップは天ねーからのプレゼントをリピートしている。お気に入りだ。

 

「ほんまに何喰うたらこんなでかなるの」

 

「普通のもんしか食ってねーよ!」

 

「これサイズなんぼなん。うわ、マジでデカい。皐月っちゃん、これ被ってみ」

 

 天ねーのブラジャーを手に取り、皐月の頭に被せてみる。

 

「うわぁ、これもう帽子だよ。おっきい~」

 

「ええと……H75……うそやろ……」

 

 こんなエロ漫画みたいな体形の人間が実在して許されるというのか……。

 H75自体は居るとは思うが、あのすげー形した胸かつ、腹回りも尻回りもきゅっとしまった胸だけ大きい人間とかまずいないぞ……。

 

「俺のブラで遊ぶな!」

 

 天ねーにブラジャーを引っ手繰られる。

 

「だいたい、黒潮だって言うほど小さくねーだろ! サイズは……」

 

「普通のやとC70やけど」

 

 滅多に使わないが、一応ノーマルタイプのブラも持っては居る。ほんとに滅多に使わないが。

 基本的にスポーツブラジャー以外の世話になることが無い。毎日トレーニングしてたし、しない時は寝てばっかりなのでナイトブラをつけっぱなしである。

 

「Cカップあるなら十分でかいだろ」

 

「Hカップの化け物が言うと説得力が欠片もないな」

 

「化け物扱いかよ……」

 

 自覚しろや。H75ってトップバストで言うと103センチはあるからな。メートルだぞ、メートル。

 なんて話していると、皐月が自分の胸をぺたぺた触りながらおずおずと尋ねてくる。

 

「あ、あのさ、ボクもそろそろブラジャーって使った方がいいのかなぁ……?」

 

「んー」

 

 皐月の胸をしげしげと眺める。

 

「トップが目立ち始めた頃やから、まだやない? とりあえずカップ付きキャミとか使うたらええよ。持って……ないよなぁ。うーん……ジュニアブラって特殊やからなぁ」

 

 皐月の様子からして、ほんとに胸が膨らみ始めたばかりと言う感じだ。

 この頃だと、敏感になり出すバストトップを刺激から守るハーフトップタイプのブラが適性。

 あとは、ジュニア向けのカップ付きキャミソールとか。

 

「そうなの?」

 

「そうなんよ。ほんまにブラジャーって感じのヤツでも、ジュニア用とアダルト用って色々と違うんよ。ワイヤーがやーらかいやつやったりしてな」

 

 私が使ってるのもそうである。と言っても、私は先ほど言ったとおりにほぼスポーツブラなわけだが。

 

「まぁ、買い物とかいける機会あったらいっしょに行こか。うちも靴下とか買い足したいし」

 

「あー、俺もだな。スパッツ買い足してぇ。そのうち破れそうだ」

 

「そやね……うちもスパッツ買おかな。皐月っちゃんも買おな」

 

「う、うん! そうだった、ボク、艦娘になったからお給料もらえるんだもんね!」

 

 嬉しそうに笑う皐月。かわいい。

 

「えへへ、可愛い服とか買ったりしてみようかな」

 

「あ、可愛い服とかうちにアドバイス求めたらあかんよ。うちファッションセンス無い」

 

「いや、黒潮は結構センスあると思うけどな……俺の方がよっぽど無い」

 

 私はどっちかって言うと、前世の経験から男目線で可愛く見える服を選んでるだけなので、センスがあるというのとは少し違うと思う。

 いや、男受けのするファッションを考えることが出来ると言うと、やはりセンスがあるというべきなのか……。

 

 そんなことを話してるうちに全員全裸になって浴場へ。

 

 まず、体を洗う。公衆浴場みたいなものだから、マナーとして。

 お湯を汚すのはいけないので、ちゃんと体を洗ってから入る。当然のことだ。

 

 天ねーに背中を流してもらい、ついでに髪も洗ってもらう。

 ちなみに、シャンプーは本土で買ってきたものだ。

 輸送機の方に私たちの荷物を積んであったのよ。カバン1個分だけだけどね。

 

「ふあぁ~……沁みるぅ~」

 

 そうしたらお湯に浸かる。最高だ。ちょっと熱いけど。

 屈強な自衛官たちには適温なのかもしれない。

 

「あ~、最高だな……」

 

 天ねーも心地よさそうにしている。そして水に浮く天ねーの乳。

 いつ見てもすげーとしか感想が出てこない。

 

「そういえば……あー、天龍はいつものシャンプーやないんやね」

 

 うちの家族は無事だと聞いているが、天ねーの家族は、と聞こうとしたところで思い直す。

 皐月と鳳翔さんの家族がどうなのかは聞いていないし、聞けないだろう。迂闊な話題を出すわけにもいくまい……。

 

「ああ、売ってなかったんだよ。しょうがねぇよ、あれでかい薬局じゃねーと売ってねぇから」

 

「そやねぇ……うちのシャンプーはコンビニでも売ってるけど、天ねー珍しいの使っとるしなー」

 

 私の場合、チートの影響で髪の毛が死ぬほど頑丈である。

 そのため、薬効なんかでシャンプー選びに拘る必要が薄いのも影響してる。

 天ねーは肌が弱いので、下手なシャンプーを使うと首筋なんかが荒れてしまうらしい。

 

「ちなみに、皐月っちゃんはシャンプー何使ってるん?」

 

「ボク? 石鹸だよ」

 

「えっ、石鹸」

 

「うん。牛乳石鹸でね、髪の毛を洗うんだ。それで、髪の毛を洗ったらお酢でリンスするんだよ。ちょっと重たい感じになるけど、ボクにはそれがあってるんだ」

 

 ああ、そう言う理由か……びっくりした。

 たしかにお酢シャンプーは意外と具合がいい。私も試したことがある。ただめんどい。

 天ねーも一時期やってたが、やっぱめんどかったらしくて幾つか変遷を経て今のシャンプーだ。

 

「なるほどなぁ……うーん。ちなみに、鳳翔さんはなに使っとるん?」

 

「私ですか? 私は無印良品のエイジングケアシャンプーを使っていますよ。私、少し猫っ毛なので」

 

 今まで天ねーの乳を無表情でずっと見つめていた鳳翔さんに尋ねる。

 すると、いつも通りに朗らかな表情に戻って応えてくれた。

 

「ほへ~、なんか、見た目の印象通りと言うか。なんやこう、派手な感じのCMやっとるシャンプー使ってそうに無いな……って感じするわ、鳳翔さん」

 

「分かる」

 

 天ねーが同意してくれた。皐月も頷いている。

 

「どういうことなんでしょう……」

 

 鳳翔さんは苦笑気味である。でもなんかそんな感じなんだよ、本当に。

 

 

 お喋りしながらお風呂を楽しんだが、のぼせそうなので程々のところで上がった。

 やはりお風呂の適温は39度……ゆっくりじっくり浸かるのにはそれくらいがちょうどいい。

 ただ、あんまり長湯はダメだぞ。皮脂が流れちゃって、肌が乾燥するからな。

 

「牛乳でも売ってればええんやけどな~」

 

「ますますおっさんくせぇ」

 

「なんやとぉ。もっと洒落たもん飲め言うんか」

 

 風呂上がりに飲む洒落たもんってなに……ハーブティーとか?

 でも私はやっぱり冷たい牛乳飲みたいぞ。もっと身長だって伸びるハズなんだ……。

 ぶっちゃけもうほぼ伸びないだろうなって分かってるけど、それでも希望に縋りたいんだ。

 

「さて、と。サッパリしたし、ちゃちゃっと戦闘詳報書きまっか~」

 

「黒潮、写させてくれ」

 

「うちの写したら戦闘詳報かみ合わんやろ……宿題ちゃうんよ?」

 

 戦闘詳報をなんだと思っているのか。

 そんな会話をしながら移動し、急遽割り当てて貰った部屋で戦闘詳報を書く。

 左手で書かざるを得ないので、とてもやりづらい。ミミズがのたくったような字ですまぬ。

 戦闘詳報自体はテンプレート化されてるので、何が起きた、何をした、何を使った、を書くだけで楽ちんだ。

 これなら小学生にだって十分書けるだろう。

 

「思ったより難しく無かったな」

 

「なんでうちの部屋で書いてるか聞いてもええかな」

 

「分かんないところあったら黒潮が教えてくれんだろ?」

 

 などとのたまう天ねー。学校の勉強もその調子で聞くから困る。本来私が年下だぞ。

 文系方面ならともかく、理系方面はさっぱりだから高校授業は聞かれても困るのに……。

 前世で習ったとは言え、感覚的に言うともう20年以上前だ。殆ど覚えてない。

 

「ねぇねぇ、黒潮。これでいいかな?」

 

「ああ、うん……」

 

 そしてなぜか普通にいる皐月。一応確認するが、問題ないようだ。

 いや、時速300キロ超で現場に急行したとか、12サンチ単装砲で戦艦を撃破したとか正気の沙汰とは思われぬことは書いてるが、事実だ。

 

 戦闘詳報をパパっとリーダーさんに提出し、後は明日まで自由時間。

 鳳翔さんは入れない場所以外を歩き回って見学するとのこと。

 天ねーは昼寝、皐月は買いたいものリストの作成をするとか。

 

 で、私。私は工廠まで来て、妖精さんの作業を眺めていた。

 元々航空基地として妖精さんが勝手に改修していたからか、艦娘戦闘団の基地とは違って航空機がたくさんある。

 

 妖精さんたちは私の義手の再作成に加え、艤装の修理。鳳翔さんと天ねーの艤装の整備もある。

 なかなか大変なのか、てんやわんやの作業だ。私もちょっと手伝った。

 

 なにしろ妖精さんって掌サイズだからね。人間ならちょいと手で持ち上げるものもクレーン使って動かす必要がある。

 私はクレーン代わりにあれ持ったりこれ持ったりと言ったような雑用だ。

 あばらに響くんであんまり重いものはクレーン使ってもらったが。

 

「黒潮さーん」

 

「なんやー」

 

 そちらを見ると、私の艤装の妖精さん。

 

「よびのけんはなんほんいります?」

 

「そやねぇ。まぁ、合計3本あれば前の作戦の時も困らんかったんとちゃうかなぁ」

 

 たぶんだが、それくらいあれば困らなかったと思われる。

 

「わかりました。それと、かれらが黒潮さんのさいすんをしたいそうです」

 

 そう言って妖精さんが示したのは、ねじり鉢巻きの妖精さん。

 腕組みをして、黒の前掛けをつけている。うーん、ラーメン屋の広告かな?

 ラーメン屋の広告の腕組み率は異常。

 

「うちの採寸? なにか作るん?」

 

「黒潮さんせんようのけんをつくります。わたしたちとうこうようせいにおまかせください!」

 

 とうこう妖精……とうこう……? あ、刀工?

 

「刀鍛冶の妖精さんなんかおるん?」

 

「いますよ。ほんもののかたなかじです。ぐんとうのせいぞうにきょうりょくしていたひとたちなんですよ!」

 

「なるほろ……なる、なるほろ? うん?」

 

 軍刀? 艦娘に要るか? たしかに刀使ってる子はいたが……。

 そんなこと考えてるうちに、わらわらと妖精さんに群がられて採寸される。

 採寸と言っても、足の長さや身長、腕の長さと言った部分が主だ。

 

「データはぎしゅのさくせいチームにもまわしてあげてくださいね」

 

「がってんです。黒潮さん、ほかのデータもとらしてください」

 

「はいはい」

 

 その後、あれ持ってこれ持って、これ振り回してみろ、こっちもやってみろと散々データ取られた。

 その都度、にんげんじゃない……と人間じゃない妖精さんに驚嘆されたりしつつ。

 そんなことやってたら余計に熱出て来たが、解熱能力5倍強化で抑え込んだ。

 

「すごいですね。ちょっとなみじゃないごうけつですよ」

 

「ふつうのかたなだとぎゃくにあしかせですね」

 

「せんようのけんとはいいましたが、ふつうのぐんとうのちょうせいでイケるとおもってたのですが……」

 

「ここまでくるとほんとうにせんようのけんのせいぞうがひつようですね」

 

「わんりょくもすごいのですが、たいかんをいじするきんにくもすごいです。だいとうもへいきでふりまわすなんて」

 

「とはいえたいじゅうはふつうです。それにたいかくがたいかくですので、ながすぎるかたなもよくありませんね」

 

「となると、ぶあつくてがんじょうなものにしたほうがよさそうです。いっかんめくらいのかたなでもよさそうでは?」

 

「なみのかたな4ほんぶんですか。いけそうです。じゅうしんのちょうせいがむずかしそうですね」

 

「おもさをくわえるほうこうでちょうせいできるのでは? トップヘビーぎみだとあつかいがむずかしいかと」

 

「かたなのとりあつかいはなみですしね。あつかいやすくてがんじょうでぶあつい、こういうかんじです」

 

 なんて喧々諤々、意見を交わし合う妖精さん。

 うーん、専用装備。なんとなく滾るものがあるな。

 

「うちはもうよさそうなんで、ここらでおいとまするわ~」

 

「はーい。あっ、黒潮さん、天龍さんにことづてをおねがいします」

 

「うん? なになに?」

 

「天龍さんのかたなもちょうせいしますので、あとでじかんをつくってここにくるようおねがいします」

 

「はいな~」

 

 天ねーの刀も調整するのか。まぁ、天ねーちょっと使い難そうにしてたしな、あの刀。

 柄が短いし、重心が独特らしい。天ねー剣道しかしたことないから竹刀と木刀以外握ったことないしな。

 天ねーに伝えたところ、すっ飛んで行ったので、そのうち新生天龍剣を見れることだろう。

 

 

 

 工廠で雑用したりなんだりかんだりした後、夕食。

 輸送機には私たち以外にも物資を積載していたので、久方ぶりに豪勢な食事なんだとか。

 基地に居た人数が少なかったから辛うじて間に合ったようなものとのことらしいが。

 ちなみにメニューはカレー。別に今日は金曜日ではないが、みんな大好きらしい。

 右手が使えない都合上、食事に難儀するのでスプーンを使うカレーはありがたいところだ。

 

「これが、本物の自衛隊のカレー……! おいしいですね!」

 

 ちなみに鳳翔さんが一番はしゃいでた。鳳翔さんが楽しそうでなによりです。

 私たちもカレーに舌鼓を打つ。アルマイトの皿に載ったカレーは自衛隊と言うより学校給食味のある外見だ。

 味は美味。カレールゥを使ったのとはまた別の味がするので、カレー粉を使って作ってるんだろう。

 サラダやらっきょう、福神漬けと言った付け合わせも充実しているので、これは余裕で金取れる出来栄えだな。

 

「海自のカレーは艦ごとにレシピがあるんですよ。これは硫黄島基地の伝統レシピなんでしょうか?」

 

 なんて鳳翔さんのうんちくを聞きつつ、大満足のカレーを食べ終える。おいしゅうございました。

 周囲にいる自衛官たちも、久し振りのカレーなのか大層嬉しそうに食べていた。

 サラダはまたしばらく食べれないから、しっかり味わっておくように、なんて食堂からのお触れも。

 生鮮食品も積んでたけど、日持ちしないからさっさと使ってしまったらしい。

 

 ちなみに、自衛官はあんまり話しかけてこない。

 仕事が忙しいのもあるけど、年若い女の子にどう話しかけたらいいか分かんないというのもあるそうだ。

 情報ソースは塩田さん。

 

 食事後はやることもないのでさっさと寝る。

 明日の朝7時に集合とのことだが、起床ラッパは6時に鳴る。

 それで起きなければいけないわけではないが、起きないとなんとなく居心地が悪い気がする。

 ので、6時前には起きて、身嗜みを整えて、6時になったら部屋から出るという生活スタイルになるので早く寝なきゃなのだ。

 女の子は身嗜みに時間がかかるんですのよ!

 

 私たちは個室を割り当てて貰っているので、各々部屋に戻り……。

 

「で、なんでうちの部屋に集合してるんか、聞いてええかな」

 

 8時じゃないが全員集合してる面々を椅子に座りながら詰問する。

 

「着替えとか大変だろ。朝に手伝ってやろうと思ったけど、部屋から出るのアレだしな。いっしょに寝りゃいいだろ」

 

 天ねーはそう言う善意のお申し出らしい。ありがとう。

 

「えと、ボクはちょっと1人で寝るのさびしくて……院だと1人部屋じゃなかったし……」

 

 皐月かわわぁ~! ゆるす!

 

「な、なにかいます。いるんです」

 

 そして最後に顔色の悪い鳳翔さん。何かって何よ。

 宿舎の部屋の前に水入りペットボトルを置いてることが関係あるんだろうか。

 猫避けかな、と思ったがよく考えたら猫なんかいないし。猫が居ない、素晴らしい。

 

「よう分からんけど、うちのベッドは満員御礼言うことやな。はぁ~、モテモテで困っちゃうわ」

 

 まぁ、ベッドではなくて布団なのだが。私たちに割り当てられてる部屋は元々4人用の部屋だ。

 それを1人1人に割り当てているので、部屋のスペースも寝具も余裕がある。

 なので寝具を敷いて、みんなで雑魚寝である。

 

「なんか修学旅行みてーでちょっと楽しいな」

 

「ふふ、お菓子の持ち込みが出来なかったのがちょっと残念ですね」

 

「修学旅行か~。ボクまだ行ったことないんだ」

 

 皐月に小学5年生疑惑出て来たんだが、大丈夫か?

 いやでも家庭の事情で修学旅行行けなかった可能性もあるし……。

 

「修学旅行かぁ。こん戦いが終わったら、みんなで旅行でも行きたいなぁ」

 

「いいな。どこ行くよ? 俺、北海道でカニ食いてぇ」

 

「ええねぇ、北海道……」

 

「ボクはディズニーランド行ってみたいなぁ」

 

「ディズニーランドもええね。あそこほど金かかる遊び場も早々無いけど、うちらは年収1億円やぞ」

 

 ちなみに給与体系が気になって詳しく確認したが、正確には年俸1億円扱いらしい。

 それを16分割して支払う形になるそうだ。夏冬のボーナスが2か月分+毎月の支給と言うこと。

 ありがたいことに額面1億円ではなく、手取り1億円になるように調整してくれてたりする。

 毎月約600万円の給料と言うことだ。すごい好待遇だな。

 

「鳳翔さんは?」

 

「私は京都でしょうか……修学旅行先が沖縄だったので、行ったこと無いんです」

 

「ほえ~、そうやったんかぁ」

 

 ちなみに私は中学の修学旅行が奈良だったので、実は京都は行ったことない。

 天ねーの通う学校の修学旅行は北海道で、私も進学する予定なので楽しみにしてたのだが。

 

「京都か。寺がいっぱいあるんだよな」

 

「限りなく認識が雑~」

 

 まぁ、私も似たようなもんだが。あそこは坊主と寺がいっぱいあるんだろう?

 寺生まれのTさんだっているに違いない。

 

「楽しみやねぇ……みんなで旅行。龍驤さんと、北海道にいるらしい大淀さんとも、いっしょにいけたらええなぁ」

 

 そんな他愛もない話をしながら私たちは眠りについた。

 希望は忘れていないし、未来への約束はたしかなものにしたい。

 私たちはなにも諦めてなどいないのだから。

 

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