艦これの世界に転生したって早期に気付くのは無理 作:アズレン提督
静かな海だ。冬の日本海は荒れ狂うが、太平洋は荒れ狂うというわけでもない。
本当に静かだ。静かすぎてヒマである。深海棲艦出やがらねぇ。
「ヒマやね」
「ヒマだね」
「……ヒマなんはええことなんやけど、うちらなにしとんやろて思えてくるな……」
「うん……」
通報がすぐにいきわたるよう、CICで待機させられている私と皐月。
自衛官たちがモニターを真剣な顔で見つめる姿はカッコいい。
でも、ずっとそこで待機しているので、居た堪れなさと言うか。
なんだろう、悪いことして立たされてる学生の気分になるのでやめてもらっていいですか?
「皐月っちゃん」
「うん。なに?」
「実はうち忍法使えるんや」
「へぇ~……で、なんて忍法なの?」
「拳で殴りつけて半死半生にする、忍法半殺しの術や」
「それただの暴力じゃん」
「あまりにも高度な暴力は忍法と見分けがつかんのや」
「どういうこと……」
しょうもないことをほざく。それくらいヒマなのだ。
自衛隊の護衛艦、それもイージス艦の探知範囲は300キロを超えるらしい。
実際は深海棲艦は小さく、イージス艦のレーダー高からして半径20キロに入らないと無理っぽいとは言われている。
が、哨戒ヘリも飛ばしており、こちらは上空から対水上レーダーで哨戒をしており、イージス艦単体より格段に広く哨戒出来る。
潜水艦に関しては、ギャグかと思うレベルで水中航行音がやかましいので見落とす方が難しいレベルらしく、何も心配いらないそうだ。
……ヒマだなぁ。
ヒマだなぁ、ヒマだなぁ、ヒマだなぁ……。
そんなことをぼやき続けていたら、硫黄島についていた。
深海棲艦自体は出たのだが、アスロックで瞬殺される潜水艦ばっかりだった。
たまに根性のある航空機が飛んで来たりしたが、イージス艦がドカドカ敵機を落としていて私たちに出番は無かった。
積んできた物資を荷揚げし、妖精さんに資材を、自衛隊に食料を引き渡し……。
イージス艦がおかえりになるので私と皐月が再度ついていき、横須賀に着いたら厚木に行ってまたC-1に乗って空挺降下……。
硫黄島にまた到着し、ヒマだなぁ、ヒマだなぁ……とぼやき続け……。
硫黄島は警備府として完成していた……。
「……波乱は? うちらが帰ってきたら、死屍累々の硫黄島基地が待ってるとか、そう言うドラマティックな展開は?」
「ねぇよ、ンなもん」
天ねーに切って捨てられた。そっかぁ……。
硫黄島周辺殴り殺し隊。
花 血 あ
火 潮 と
も も 、
あ 飛 首
る ぶ も
よ よ ね
ホワイトボードに簡潔に書き連ね、私は艦娘の面々に向き直る。
「そうゆうわけやから、今からあいつら殴りに行こうや」
「これからそいつら殴りに行くんか」
龍驤さんとハイタッチ。
「ええか、うちらは強い」
「おう、俺らは強い!」
「そう、強いだけや。うちらにいい考えとか、いい作戦とか、そんなもんはない」
悲しいけど、それが現実なのよね。
「い、いや、三人寄れば文殊の知恵って言うじゃねーか」
「あほが3人集まっても文殊の知恵にはならんのや。三人寄れば烏合の衆や」
「鳳翔さんとか軍事とか詳しいっぽいじゃねーか!」
「ただのミリオタに作戦立案能力なんかあるわけないやろ」
「はい……」
鳳翔さんが恥ずかし気に肯定した。
「うちら全員……龍驤さんは分からんけど、作戦立案能力とかないんや。自衛官のお人らも、海上での戦闘指揮は無理言う話やし」
実際無理よね。自衛隊の人は状況わかんないんだもん。
私たちが自衛官なら正しく戦闘の状況を伝えられるかもだが、こちとらただの女子中学生ぞ。
「つまり、どういうことか」
「ど、どういうことなんだ……?」
「めいっぱいがんばる」
「それだけ!?」
「それ以外に何ができるんや! うちも必死で考えた! 考えて考えて、纏まった考えは、考えある言うんはそいつのあほさ加減を否定してくれるもんではない言うことだけやった!」
これが素人の限界ってやつよ。
現場でならそれなりにまともな動きできるかもしれないけど、事前の作戦立案とか無理。
「んで……龍驤さん、なんか、ある……?」
「ええと……」
龍驤さんがちら、と後ろを見る。なにもないぞ。
「陸上のことやったら頑張れる言うけど、海上のことは無理らしいわ」
なんで伝聞調なの? まぁ、無理っぽいのはわかった。
私たちはやっぱり頑張るのと我慢するしか戦術が無いのだなぁ。HFOかなにか?
「と言うわけで、うちらは烏合の衆やと言うことが判明した。めいっぱいがんばって戦うしかない。ふぁいと、おー」
「お、おー?」
皐月だけがちょんと腕を上げて乗ってくれた。
他のみんなは微妙な顔をしている。
でも、本当にそれ以外に手立てがないのよ。
諦めてめいっぱいがんばろうね。
そう言うわけで、こう言うわけで、私たちはめいっぱい頑張った。
と言っても、自衛官の人らが事前予測を立ててくれていたのだが、その予測通り、深海棲艦はほぼ居なかった。
最初の接敵時が大攻勢のそれで、それを真っ向から叩き潰したので、残存戦力は撤退したのだろうと。
そうでなければ不自然な程度には硫黄島近辺は平穏だったようだ。
小規模な駆逐隊がちょろっと偵察モドキを仕掛けて来たりと言った程度だ。
遠方からこっちを確認したら、一目散に逃げ出すというやつらばかり。
皐月が160ノットで追いかけたり、龍驤さんの鬼畜艦爆で殲滅されたりでオシマイである。
硫黄島近辺で索敵をこれ以上しても意味が無いだろう、と結論が出るまで2日。
作戦の二段階目は終了し、三段階目の作戦。沖縄防衛並びに坊ノ岬近辺の深海棲艦撃滅へと移行した。
事態は急ピッチで展開していく。
坊ノ岬近辺に出没が確認されている深海棲艦の規模は大きなものである。
沿岸部への攻撃を執拗に繰り返すも、上陸は行わない、と言う消極的な態度が目立つ艦隊だ。
この点について自衛隊は頭を悩ませていたものの、龍驤さんに意見を仰いで事情が判明した。
「上陸したら、動き鈍りよるからな。煙突にポイッと爆弾放り込んでおしまいや! 楽ちんやね!」
龍驤さんに瞬殺されまくって懲りたということらしい。
そうだよね、海上じゃなくて陸上なら倒しやすいよね、航空機からしてみりゃ。
とは言え、放置していては沿岸部が更地になってしまう。
坊ノ岬へと戦力を集結し、一大攻勢をかける。それが作戦の第三段階。
硫黄島基地は基地航空隊の設営も完了。艦娘ほどの防衛力は期待できないが、以前ほど脆弱でもなし。
沿岸砲台もこれから設立するとのことなので、空挺降下で駆け付けるまでは持ち応えられるだろうとのこと。
不安ではあったが、硫黄島に艦娘を残せるほど戦力に余裕があるわけでもない。
私たちはC-1輸送機で本土へと戻り、厚木から長崎基地へと向かうのだった。
「今作戦において、君たち艦娘の戦闘能力における問題点を確認しておこう」
長崎基地で借りたブリーフィングルームでいつものリーダーさんによるパーフェクトせんそう教室。
「戦闘継続能力の低さ。これが問題だ」
「それ以前に、敵が多過ぎるんやと思うんですけど」
私の名推理が光る。
「そうだね、それもたしかな意見だ。砲弾薬が払底するのはまだしも、砲が焼け付き、破裂するにまで至るというのは……予想だにしていなかった」
まぁ、それはたしかに。
私の場合、チートで強化したせいで倍以上の速度で損耗したせいもあるが。
砲身命数550もあるのに、200発ちょいで命数使い尽くした上に破裂させたからな。
ちなみに、強化状態だと180くらいが命数とのこと。227射目で破裂した。
「ただ、その点に関しては、砲身の交換で対応が可能だということも判明している」
「海上では無理ですよ」
あの砲身って、実はクルッと回せばスポッと外れるらしい。交換は割とすぐいける。
だからダメになったら交換すればいいのだが、海上ではさすがに無理とのこと。
まず予備砲身なんか積んでないし、積むにしても海上で出すのは無理。
妖精さんの腕力だと40~50人がかりになるし、そんなに妖精さんが取り付けるほど大きくないとのことで。
「ああ、その点は踏まえている。今作戦には海上自衛隊の護衛艦も投入される」
「んな無茶な……」
「無茶でもやらねばならない。重装甲の敵には厳しいが、駆逐艦程度ならば海上自衛隊でも対応可能だ。最低限の自衛は可能だろう。必要に応じ、護衛艦に乗り込んで砲身交換作業を行い、魚雷発射管への装填を行ってもらう」
無茶であると言わざるを得ない。
だが、それ以外に手立てがあるかと言われれば、無い。
「また、君たちには重砲を持つ者が居ない。これ自体は極めて強大な攻撃力を有しているという点で補えてはいるのだが……」
「んまぁ、はい。そうですね」
「近付かないと、届かないんだよねぇ……」
問題はそこである。私たちの砲の最大射程は18キロメートルあるらしい。
あるらしいが、そんな超遠距離で撃った弾が当たるかと言うと、うん。
そもそも当たったところで、敵を撃破出来るだけの威力はない。
重砲は射程距離と投射量が大幅に違って来る。
20.3サンチ砲なら8000メートルは投射距離が違う。
そして、重巡ならそれを4基8門とか5基10門とか備えてるのである。
「刀しか使わん石器時代の勇者もおるし、うちら近接戦闘に偏り過ぎなんや」
「おめーだって刀使ってんじゃねーか!」
「うちは砲も魚雷も使うとる。刀しか使わんやつとは違う」
本気で砲と魚雷使えよ。
持ってて嬉しいおもちゃじゃないんだぞ。
「交戦距離が近付けば君たちの危険度も上がる。しかし、近付かなければ有効打が得られない……これは離脱の際の難易度が高いことも意味する」
たしかにその通りである。
至近距離でガスガス殴り合ってるのに離脱するのは難しい。
皐月なら無理やり振り切れる速力がある。160ノットとか正気ですか?
私も一応振り切れるだけの速力はあるが、皐月ほど圧倒的ではない。
「そのため、必要に応じ、護衛艦を突出させる。君たちの援護を受けつつ、離脱と補給を同時に行う」
「それこそ無茶ちゃうか……」
「だが、それ以外に手立てがない」
たしかにそうではあるのだが……。
皐月に担いでもらって離脱とか出来ないかな……。
2人も抜けたらヤバいカナ……。
「自衛隊は本来するべきことをするだけだ」
リーダーはそう締めくくって、私たちに反論を許すことは無かった。
それが自衛官なのだなと。私たちは静かに感じる他なかった。
「どうですか。なにかきになるてんはありますか?」
「うーん、天龍の脳味噌の色くらいやね」
「やめろっての! 真剣は危ねぇ!」
ついに私の剣が完成したと報告を受け、工廠へとやってきた。
そして剣を受け取り、その試し切りを天ねーでやろうとしている。
それを捌く天ねー。それでもなお挑みかかる私。
どうして私の剣がレッドクイーンみたいになってるんですか???
最初に見た時は目が点になったし、持ってみれば重さはピッタンコだし、振り心地もいい。
使い心地抜群なのに、見た目が完璧にふざけていらっしゃる。
どうしてこの形状になったか聞けば、天ねーの入れ知恵と判明。
なんでついてくるのか謎だったけど、これが見たかったんだろ! もっと間近で見ろ! 舐めるくらいの距離で!
「ネロ潮にリーチかかってもうたやろが! どないしてくれるんや!」
「いいじゃねーか! カッコいいだろ!」
「そんならおどれも閻魔刀にしてもらえや! 青一色のだっさいコートも着ろ!」
「カッコいいだろーが!?」
「原色ギラギラなコート似合うやつなんざ現実におるかい!」
「いるかもしんねーだろ! キアヌとか!」
「あいつが似合うんは黒やろがい! マトリックス的に!」
ギャインギャイン、ギャリンガキンと本気で剣を交えながら口喧嘩。
剣の使い心地が最高で、文句のつけようも無いのが腹立つぅ……。
「だいたいこの訳の分からんレバーはなんやねん!」
「知らねーよ! ギュンギュンやったらブオンブオン言うんじゃねえのか!」
「なるかい! 固定されとるわ!」
マジでこのレバーなに? クッソ謎なんですけど。
引いてみてもガッチリ固定されてて、動きそうもない。
「それはハンドガードですね。ゆびをほごするパーツです」
「ああ、サーベルとかについとる……」
「とんでもなくぶあついサーベルだとおもってつくったので」
たしかに、レッドクイーンはそう言う感じの形状ではあるが……。
「だいたい、ポジション的に言うたらあんたキリエやろが!」
「嫌なこった! 俺も戦う!」
「わがままぬかすな! うちがマリオ! あんたがピーチ! それでええやろがい!」
「逆に聞くけど、おまえはマリオでいいのかよ! 髭のナイスミドルになっちまってんぞ!」
「構うか! うちはスーパーマリオRPGのリメイクいまだに待っとんのや!」
「だからなんだよ!?」
「それはつまり、うち自身がマリオになる言うことや!」
「なに言ってんだこいつ!? だったら俺がマリオになる!」
「はー!? それやとうちルイージのポジやん! 嫌や! せめてものことヨッシーにしろや!」
「おまえがヨッシー使うとスマブラ異常に強ぇーからダメだ!」
口論がヒートアップして、だんだんとお互いに何言ってんだか分かんなくなってくる。
私と天ねーは日が暮れるまで喧嘩を続けた。
喧嘩が終わると、2人でいっしょに風呂に入る。
そうしたら、いつの間にか仲直りしてて、いっしょの布団で寝る。
朝が来たらいつも通りの2人になっている。
素敵なことなんだけど、色々とうやむやにされてるなぁ、ともちょっと思う。
体調不良気味かつアレコレ忙しいので、不定期更新に戻ります
更新頻度は忙しさ次第