艦これの世界に転生したって早期に気付くのは無理   作:アズレン提督

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艦隊抜錨

「君たちの回収と出撃はヘリボーンを用いることになっている」

 

「へ、ヘリボーン……? 黒潮、ヘリボーンってなんだ?」

 

「ガチャピンがやってたやつや」

 

「逆にガチャピンがやってないことってなんだよ」

 

 なんだろう……ガチャピンがやったことないこと……。

 って言うかヘリボーンやったことあんのかな、ガチャピン……。

 いや、でもガチャピンだからな……きっとやってるだろう。

 

「そのため、君たちにはヘリボーン訓練を受けてもらう」

 

 日本各地から戦力を集結するまでの間、私たちは訓練を受けている。

 内容はズバリ、リーダーさんが言う通りにヘリボーン。

 

 当たり前の話なんだけど、甲板から海に飛び降りるのはとても危険だ。

 人間ならそこまで危険ではない。場合によってはスクリューに巻き込まれてミンチ肉になったりもするが。

 そう言うのを度外視すれば、水に飛び込むので下手なことをしなければ怪我をすることはない。

 

 が、私たちは艦娘。水上に立つ存在だ。つまり、地面に落ちたのとまったく同じ衝撃を受ける。

 護衛艦の甲板から水面までの高さは艦によってまちまちだが、ザラに5~6メートルはある。

 私なら余裕だが、骨折なんかの大怪我もありえるし、頭から落ちたら普通に死ぬ。

 

 回収を受ける時も、そんな高い壁よじ登れない。

 そのため、ヘリでの回収と降下は必須の能力と言うことになる。

 まぁ、ぶっちゃけ、私と皐月は護衛戦の時に何回もやったのだが。

 

 

 

 訓練に関しては大して面白みもないので省略する。

 天ねーにビスケット・オリバごっこやれとか言われたが、誰がやるか。

 あれは漫画だから出来ることだ。現実でやったらさすがの私でも腕がもげるわ。

 ただまぁ、天ねーの空中自爆ストリップショーはなかなかの見物だったな。

 

 そうして訓練を積み、基地に押し寄せるマスコミに辟易したりして日々を過ごすうちに、戦力の集結が完了した。

 私たちは燃料弾薬の節約のため、護衛艦へと乗り込んでの出撃となる。

 

「はぁー……なんや。えらい緊張してきたわ」

 

「んだよ、らしくねぇな。いっつも楽勝だぜ、って顔で試合もやって来たじゃねえか」

 

「それはボクシングだからや。相手はいつだってうちより弱い」

 

 ボクシングなら負ける余地がない。ノーガード戦法で無理やりぶん殴りに行けばそれで勝てる。

 だが、艦娘としての戦闘ではそうもいかないのだ。

 

「洒落にならんような戦力、揃えてるんやろな……」

 

 当たり前のように駆逐棲姫や軽巡棲姫がボロボロ出てくる世界だ。

 戦艦棲姫×6みたいなわけの分からん編成が出てきても私は驚かんぞ。

 

「そうだとして、引き下がる理由になるか?」

 

「ならんね」

 

「んで、死んでやる理由になるか?」

 

「うん、ならんね」

 

「なら、勝てねぇわけがあるか?」

 

「はっ、上等やわ」

 

 天ねーが突き出して来た拳に、私も拳を合わせる。

 

「死んだやつは、うちが墓石に未開封返品って刻んだるから覚悟せぇよ」

 

「そりゃ死ねねーな。黒潮が死んだらどうすんだ?」

 

「うちが死ぬわけないやろ」

 

 なんて、なんの確証もないことを言って、私と天ねーは笑い合う。

 

「うちもまだ死ねんからなぁ。ぎょーさん給料もろてるんやから、死ぬ前にバァーッと豪遊せな死んでも死に切れんわ! そやろ、黒潮!」

 

「そやねぇ。うち、牝馬買い漁って片っ端からクワイトファインの種付けるのが夢なんや……」

 

 名血は決して枯れないと言うが、やはり直系子孫が残って欲しいところ……。

 

「クワイトファイン……? ようわからんけど、なんや豪遊する予定がある言うことやな!」

 

「そや」

 

 まぁ、1億円程度の給料ではとてもではないが無理だったりするのだが。

 適当な牝馬ならともかく、良血の牝馬を買い漁ろうとしたらそうもなる。

 

「鳳翔さんも、なんや豪遊する予定は?」

 

「私ですか? そうですね……零戦の保存活動などにお金を使いたいですね」

 

「渋ゥ! な、なんや、意外な趣味出てきよったな……皐月はどない?」

 

「ボク? ボクは……うーん……1億円なんて想像したこともないから思いつかないや!」

 

 まぁ、普通はそうだわな。

 

「なるほどなぁ。天龍はどうなん?」

 

「俺か? まず、俺ん家の建て直しかな……地震とかでガタ来てっから、開かねぇふすまとかあんだよな……」

 

「堅実なところ突いてきよんな……」

 

 ちなみに天ねーの家の幾つかは開かないふすまのせいでガチ開かずの間になっている部屋が2つある。

 ふすまを突き破って往来可能にした部屋があるくらいである。私が開けようとしても開かなかったので、あれは常人には開けるのは無理だ。

 

「うーん、よし。誰も死亡フラグ立てへんかったな。完璧や」

 

「なんや、うち実は婚約者がおって、この戦争が終わったら結婚するんや……とか言うたらよかったか?」

 

「龍驤さんに婚約者?」

 

 上から下まで見下ろす。

 ちんちくりんなので、フィクションだと逆に相手は高身長……。

 あるいは、龍驤さんより小さい合法ショタだな。

 

「やっぱり、フィクションの定番として高身長な相手やったりするんかな? 逆に龍驤さんよりちんちくりんとか」

 

「おー、めっちゃ背ぇ高いで。通天閣より高いわ。肩幅も50メートルあるからな」

 

「いくらなんでもでかすぎひん? 店入る時頭やなくて向う脛ぶつけてまうやろ」

 

 龍驤さんの婚約者はガンバスターかなんかなの?

 

「まさにそこが泣き所やね。手ぇ繋ぐとか出来ひんし……ってそんなにデカいやつがおるわけないやろ!」

 

「おお、これが本場のノリ突っ込みか~」

 

 天龍が感心したように言う。悪かったな、私は産地偽装品で。

 ふと、気付けば私の胸に凝っていた緊張感は無くなっていた。

 龍驤さんは狙ったんだろうか? そうなのかもしれない。

 私は気負い過ぎていた自分にちょっとだけ苦笑した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「各護衛艦乗員に告ぐ」

 

「先の騒乱において、我々自衛隊はなんらの働きをも示すことは出来なかった」

 

「自衛官の奮戦虚しく、多くの民間人の命が奪われ、数多くの文物が喪われた」

 

「戦い、数多くの深海棲艦を葬ったのは、艦娘の少女たちだった」

 

「……それを、私たち自衛官は悲しく思わねばならない」

 

「民間人の少女たちを戦わせてしまったことを」

 

「私たち自衛官が、民間人に守られたことを、恥じねばならない」

 

「自衛官は決して無意味などではないと、証明せねばならない」

 

「それは、予算を得るためでも、自衛官の意地でもない」

 

「自衛隊の、存在意義を問う話だ」

 

「自衛隊は日本国を防衛するための組織だ」

 

「それが果たせないのならば、我々が存在する意味はない」

 

「無駄飯喰らい、税金泥棒と誹られるのは、当然のことだ」

 

 

「私たちはなにもできなかった」

 

「私たちはなにも守れなかった」

 

「私たちは彼女たちに守られた」

 

 

「だから、私たちは戦わなければならない」

 

「だから、私たちは守らなければならない」

 

「だから、私たちは往かなければならない」

 

 

「歴史が、私たちを無能と言うのだとしても」

 

「名誉欲に駆られた下衆と言われるとしても」

 

「私たちは、戦わなければならないのだ」

 

「私たちが全滅するとしても」

 

「艦娘のみんなを絶対に守らなくてはならないのだから」

 

 

「艦娘のみんな」

 

「私たちを許さないでくれ」

 

「君たちを戦わせる私たちの無能を許さないでくれ」

 

「私たちのような情けない自衛官を、許すな」

 

「以上だ」

 

 

 

「艦隊、抜錨。目標、坊ノ岬沖」

 

「全艦、兵装使用自由。各自の判断で回避行動、迎撃行動を取れ」

 

「各員、その命がある限り、最善を尽くせ」

 

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