艦これの世界に転生したって早期に気付くのは無理   作:アズレン提督

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2021/10/12 タイトル修正


初めまして、戦友

 自衛隊の救護所はあった。

 あったが、私がそこで休むことは出来なかった。

 自衛隊はイ級やホ級と言った残存戦力と必死の奮闘をしていた。

 

 戦う力のある私が休んでいるわけにはいくまい。

 孤拳ただ一つのみとは言え、チート能力に艦娘の戦闘力がある。

 だが、とにもかくにもコンディションが悪過ぎる。

 そこでそこらの飲食店に入り込み、そのまま食べれるものを頂いた。

 お金は色々終わったら払うので許してほしい。

 

 

 腹いっぱいになるまで詰め込み、5倍の消化吸収能力で余すことなく吸収し尽す。

 最低限、体を動かすだけのコンディションを整え、私は走る。

 

 自衛隊員は自動小銃なども持ち出していたが、小銃ですら深海棲艦にはろくに通じない。

 無反動砲でようやくと言った有様で、高射特科の持ち出した自走式の高射機関砲などが主戦力と言ったところ。

 戦闘車両はまるで足らず、プラスチック爆弾で作った即席の爆発物で自衛官が肉薄攻撃を仕掛けるという地獄めいた状況。

 いったいいつから第二次大戦末期になったんだ。

 

 私も必死で駆けずり回り深海棲艦を倒すも、孤拳ただ一つでブチ極めるのは中々大変である。

 栄養補給はしたが、体のコンディションは刻一刻と悪化している。

 座ったらもう立ち上がれない気がするので、休むこともできない。

 それでも応戦を続け、兵員輸送車で突っ込んでイ級を瓦礫に埋め込んだりと根性の応戦をする自衛隊員と共に戦う。

 

 人型に近いホ級はイ級に比べて小型なので、そこらの車を使って何度も跳ね飛ばす。

 私の蹴りで蹴飛ばせることから分かるように、人間の蹴りでは難しくても、車でなら割と吹っ飛ばせるのだ。

 何回も轢き倒したところで、爆発物を持ち寄って発破して撃破と言う凄いこともやっていた。

 滾る自衛隊魂のお蔭か士気は高く、私も気が滅入ることなく戦うことができた。

 

 そうした戦闘を2日に渡って続け、私は遂に倒れた。

 

 3日3晩、休息も取らずにダメージの入った体を無理やり動かし続けていたのだ。

 そうなるのも当然と言うかなんと言うか。

 

 まぁ、救護所に担ぎ込まれてベッドのお世話になる頃には戦闘はほぼ終息していた。

 残る僅かな深海棲艦も自衛隊の必死の努力で撃破され、遂に戦闘は終わった。

 まぁ、それを知ったのは2日も昏々と眠り続けた後なのだが。

 

 

 

 右腕の本格的な処置も気付けば完了しており、艤装は妖精さん曰く必死の修理中。

 深海棲艦との戦闘も終わったとのことで、私は病院のベッドで暇を持て余していた。

 体が動くなら市街地に駆け付けて被害者の救助でも手伝うのだが、割と真剣に体は動かない。

 5倍の治癒能力を働かせればすぐに動かせるようになるが、病院でそんなガバガバ食べるわけには……ね。

 

 そして、そんなことを出来る状況でもなかった。

 

 なぜかって、病院のベッドの上で私は色々な詰問を受けていたからだ。

 まぁ、戦闘地域で孤拳ただ一つをブチ極めたのを見られていたからなぁ。残った左は特に熱くはなかった。

 

 まず、避難民の命が救われたこと、自衛隊員の命が救われたことに対する感謝を述べられて、詰問スタートである。

 どうしてそんなに戦えるのか、あの謎の機械はなんなのか、と言った質問である。

 

 まぁ、それに応えてるのは私ではなく妖精さんなのだが……。

 しかし、妖精さんの姿は見える人と見えない人が居るようで。

 必然、私が通訳をしないと意思疎通すらできないのである。

 

 そうした諸々を説明する中、私も色々と知らないことを知った。

 妖精さんが各自衛隊の基地を既に勝手に改造し始めていたり、艦娘になれる人間の探索が始まっていたりすること。

 既に私以外に5人の艦娘が誕生しているということ。その艦娘が必死の応戦を続けていること。

 この究極の国難を前に、既に動き始めている人がいるということ。神職関係者などの特別な力を持った人なら艦娘に力を与える提督になれること。

 

 そう言えば私は提督無しで戦っていたなぁ、と思ったが、実際にはいるらしい。

 妖精さんが真っ先にコンタクトを取った神職関係者が力を供給してくれているんだとか。

 この国で最高の力を持っているので、地球の反対側だろうが力を供給できる最強の提督らしい。

 

 誰さそれ? と思ったが、ちょっといえないひと、としか言われなかった。

 そこを何とか教えて欲しい、場合によっては自衛隊が協力を依頼するから、と必死に懇願する自衛隊のお偉いさん。

 あんまりにもしつこい自衛官が、せめて住むところだけでも、と言う要求に、妖精さんは、このくにでいちばんかしこきところにすんでる、と応えた。するとたちどころに鎮静化した。

 

 賢きところ……東大の人とかだろうか? よく分からない。

 自衛隊の人が、そうだよね、ちょっといえないよね、みたいに納得するが、私にはよく分からなかった。

 

 ともあれ、そんな感じで延々と尋問され、急ピッチで事態が進行していく。

 政府の動きは鈍かったが、突然内閣が解散すると、対深海棲艦を御旗にした内閣が成立。

 なんか不自然なくらいの超スピードで政府が再構築され、自衛隊に目ん玉飛び出るほどの臨時予算をぶっ込んできたんだとか。

 

 予算だけぶっこまれても自衛隊も困ったことだろうが、妖精さんと言う頼みの綱が居る。

 妖精さんを頼りにして自衛隊は対深海棲艦部隊を設立。部隊と言うが、規模はとんでもないものらしい。

 予算規模からして、新しい自衛隊が出来たも同然だよ、とお偉いさんは言っていた。航空、陸上、海上に続く、対深海棲艦自衛隊みたいなレベルらしい。

 各基地が再構築され、艦娘を戦闘団として認証する法案まで設立され、日本は深海棲艦と戦う環境を整えた。

 

 環境を整えた。

 

 術はまだ整っていなかった。頼みの綱の艦娘がまだ6人しかいなかった。

 って言うか本州には4人しかいなかった。その4人のうち、私は大怪我で病院である。

 ちなみに残る2人は本州ではなく、北海道と沖縄にいるらしい。四国も仲間に入れて差し上げろ。

 

 そのため、戦える艦娘を探し出し、それまでの間をなんとか保たせる手段が必要である。

 それも、遅くても1年以内にそれを実現する必要があった。

 海上交通網が致命的な打撃を受け、海外からの物流が途絶えた今、輸入大国である日本は激ヤバ状況である。

 

 途絶えたらヤバい資源類は備蓄を行ってこそ居たが、1年や2年ならともかく、10年も20年も続いたら日本は枯死する。

 食料だって激ヤバである。カロリーベースとか言う胡散臭いことこの上ないものは無視するとしても、自給率は高くはないのだ。

 

 あと、もっと切実な状況として。

 

 北海道は深海棲艦を引き込んで陸上戦力で殲滅するという縦深防御戦術が取れ、軍事基地の多さから戦力も豊富と好条件が整っている。

 広すぎることも相まって鬼のような広さの戦線が構築されているが、今のままでも半年は耐久可能だと言う。

 艦娘さんもエナジードリンクとユンケルが半年分あればと社畜みたいなことを語っており、なんとかなりそうではある。

 

 だが沖縄がヤバい。

 

 沖縄には米軍の駐屯地があったので日米連合軍が構築されて必死の応戦を続けているが、有人島が点在する上、縦深を取れるような広い島がない。

 艦娘さんが空母艦娘なので辛うじてなんとかなっているだけで、あと1週間応戦できるかも分からないと悲痛な応援要請が矢のように飛んできているのだとか。

 わりと冗談抜きで洒落にならないし、米軍を見殺しにしたらヤバすぎるのは明白。なんとしてでも応援を送る必要があった。

 

 

 そんなわけで、入院から1か月としないうちに私は退院。

 自衛隊の設立した艦娘戦闘団に所属することとなった。

 かなりウルトラCな法案を設立したらしく、自衛隊員になるわけではないらしいが。

 まぁ、自衛隊員になったら少年兵とかねぇ……徴用ではないけどさ。

 

 

 徴用ではない関係で、自衛隊は有り余る予算を使って目ん玉飛び出るような待遇を出して来た。

 年収1億円とか言う小学生の考えたような給与に加え、基地内にある施設全部タダで使い放題! 資格も取り放題! と迫真の好待遇である。

 毎食デザートつけちゃう! 部屋は個室! テレビもインターネットも使い放題! と自衛隊基準では超好待遇らしきものも提示された。

 別にこっちは給料もらえなくても深海棲艦と戦う気満々だったので素直に頷いた。なお待遇はありがたくいただく。

 金が欲しいからプロボクサーになろうとしていたのであって、艦娘やって毎年1億円もらえるなら艦娘になるよ私は。

 

 なお天才ボクシング美少女が徴兵されて云々、みたいなマスコミさんの報道もあったらしい。

 強烈にバッシングされてたけど。知る権利が云々、と言うお決まりの反論もしてたが。

 そこまでなら良かったんだけど、私の戦闘情報が漏れていたらしく、ドーピングどうこうステロイドどうこうなんてのも流れていた。

 ドーピングはともかく、ステロイド使ったくらいで身体能力5倍になるんだったら誰も苦労しないと思うんですけど。

 なお政府が「誤った情報を意図的に流すのは国民の知る権利を阻害してますゥー」と言う理屈でマスコミを潰しにかかった模様。

 

 

 そんなこんなで艦娘戦闘団に配属された私を待っていたのは、天ねーとの再会だった。

 

「天ねー!」

 

「潮ー!」

 

 ひっしとお互いに抱き合う。うわぁ、天ねーおっぱい大きい。

 窒息する! 窒息する! 死ぬぅ! 殺さえぅ!

 

「ぶはぁ! 天ねー、死ぬ! 死ぬ!」

 

「お、おう、悪い」

 

 危うく天ねーの巨乳で殺されるところだったが事なきを得た。

 ちなみに私は大きくない。黒潮ですのでね。

 

「天ねーも艦娘になったん?」

 

「ああ。気付いたら救護所にいてな。そこで妖精さんに艦娘になって欲しいって頼まれて艦娘になったんだ」

 

「そうやったんかぁ……」

 

「しかし、俺はどこで気絶したんだろうな? 潮も近くにいなかったしよ……」

 

 あ、これはいい感じに気絶しましたね……。

 気絶すると、前後数分間の記憶が飛んだりするのよね。

 まったく飛ばなかったりもするんだけど、飛ぶこともある。

 心臓発作みたいな病的な奴だと数時間単位で飛ぶこともあるそうだ。

 よし、天ねー殴ったことは誤魔化しておこう。

 

「うーん、うちもよう分からんのやわ。うちも気絶したみたいで、気付いたら駅前におったんよ。そこで艦娘になったんや」

 

「そうだったのか……これも、そうなのか?」

 

 悲痛な表情で天ねーが私の服の右袖を掴む。

 ひらひらと揺れる右袖は、私の右腕が喪われていることを如実に示している。

 

「ん、まぁ、そやね。天ねーも……その眼、どうしたん?」

 

 天ねーの左目を覆っている眼帯。紐ではなく貼るタイプの医療用眼帯だ。

 見た感じなのだが、左目、残っていない、のではないのかと思われた。

 

「ああ、まぁ、ちょっと、な」

 

 お互いにあまり言いたくないことであるらしい。

 私も天ねーも、体の負傷について言及することは無かった。

 

「えーと、あ、そうや。天ねーはなんて艦なん?」

 

 正直言って予想ついてるっちゃついてるのだが、一応聞く。

 

「へへ、教えてやるよ。俺の名は天龍! ふふん、かっこいいだろ?」

 

「うーん、ちょい惜しいな。うちは黒潮や、よろしゅうなー」

 

「惜しいってなにがだよ?」

 

「まぁまぁ、まぁ、そやねぇ。まぁ、まぁ、まぁ、そうやわ」

 

「だからなにが!?」

 

 天ねーのことは適当に煙に巻いた。

 

 

 

 さて、ここで突然だが艦娘戦闘団のメンバーを紹介しよう!

 

 駆逐艦黒潮!

 

 軽巡洋艦天龍!

 

 駆逐艦皐月!

 

 軽空母鳳翔!

 

 以上だ。

 

 

 ……重砲艦が1人もいないのだが?????

 

 駆逐2人、軽巡1人、軽空母1人。軽空母が居なければ遠征艦隊かと思うレベルである。

 だが、全員あの激動の初戦を戦い抜き、ここまで生き残った猛者でもある。

 きっとみんな頼りになるハズだ。なら、それはもう凄い艦娘に違いない……!

 

 もしかしたら皐月も身長190センチある史上最強の女みたいなやつかもしれない!

 鳳翔さんは身長168メートル、体重9500キロの途轍もない巨女かもしれない!

 天ねーはゲッター炉とかブラックホールエンジンとかGSライドで動いてたりするのかもしれない!

 勇気がエネルギー源、つまり精神論で動くエンジン。日本海軍にはピッタリだな!

 でも主要物質が大和魂だからGSライドには適してないかも。敵の潜水艦を発見。

 

 

 

「皐月だよっ、よろしくな!」

 

 なんて自己紹介をするのは金髪に金の瞳をしたお嬢さん。

 私よりいくつか年下に見える……この子、もしや小学生なのでは?

 いや、よそう。私の勝手な予想でみんなを混乱させたくない。

 残念ながら身長は150センチに足りないくらいであり、史上最強の女風味はない。

 

「鳳翔です。よろしくお願いしますね」

 

 そしてみんなのお艦、鳳翔さん。

 が、見た感じどう見ても天ねーと同い年くらいである。高校生くらいだろうか?

 天を衝くほどの巨女と言うことはまるでなく、私よりちょっと背の高い普通の女子高生。

 まぁ、もしかしたらメタモルフォーゼして鳳エアクラフトキャリアー翔みたいな感じになるかもしれないし。

 

「俺は天龍。よろしく頼むぜ」

 

 で、こちらも自己紹介。

 まず乳のでかい天ねー。

 残念ながら私の知る限りではゲッター線、勇気、アイスセカンドと言ったようなもので動いているという事実はない。

 ただ、胴体にでかい球体が2つついてるんで、なんらかのツインドライブシステムの可能性がある。人類を巨乳に変革してくれるに違いない。

 

「黒潮や。よろしゅうな」

 

 次に乳の小さい黒潮。以上だ。

 

「えーと……なんでみんな艦名なん? 割と謎なんやけど。ちな、うちは黒川潮言います」

 

「んぉ、そう言えば。俺は龍田川天音ってんだ」

 

 天ねーは特に意識していなかったのに天龍と名乗ったらしい。

 艦娘になると何かしらの精神汚染でもあるというのだろうか……。

 

「あれぇ? そう言えばなんで……えっと、ボクは如月さつきって言うんだ」

 

 2月か5月かハッキリせぇよ。

 

「ええと……鳳翔(おおとりかける)と言います」

 

 鳳翔さんが恥ずかしそうに名乗る。

 

「その、お父さんがおっちょこちょいで! 生まれる前にエコー検査で男の子だと思っていたので、男の子の名前しか考えてなかった上に、生まれてすぐに出生届を出してしまったんです!」

 

 そして名前の自己弁護を始めた。

 そんな必死に弁護しなくても女だってわかるよ。

 

「奇遇やね。うちもやよ」

 

 そう、実は私も男の子だと思われて出生届が出されている。

 私の場合、生まれてくるまで知らない方が楽しみだから、と言う理由で性別を聞いてなかったそうな。

 そして、生まれて来た私は元気な女の子。生まれてすぐの私は混乱してチート全開であった。

 

 あまりに力強い動きに、これは凄い男の子になると父は確信。

 女の子ですよ、と言う看護師の発言を綺麗さっぱり忘れ、出生届を出しに行ったのである。

 なお母にボコボコにされた模様。私の母は空手の有段者である。父は鳴かず飛ばずの元プロボクサー。

 

「まぁ、うちはそこまで男っぽい名前言うわけでもないんやけど……」

 

 男に多いかと言われると、そもそも潮と言う名前の人間自体が早々いないという……。

 そんな調子で、私たちがしばらく談笑を交わしていると、私をここに連れてきてくれた自衛官が大講堂に集合と指示を持ってきた。

 この基地に居る自衛官の人らとの顔合わせ、と言うわけだ。ううん、ちょっと緊張してきた。

 

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