では、プロローグをどうぞ。
プロローグA:とある大人になりきれない青年の始まり
__昔、とある夢を見た。
__それは、少女が父親の蒼竜を帝国から救い、その後辺境の地にてゆっくりと過ごすという、そんなありふれたような物語の夢だった。
__けれど、そんなありふれた夢に対し俺は美しいと感じ、目覚めてからは涙を流し、時が経てども覚えてられるよう記憶し__そしていつしか、そんなありふれたような夢で見た光景を描き物語りたいと思い憧れていた。
そうして、早十数年。
少年だった『僕』の将来の夢は大人になった『俺』の現実とは打って変わっており。
けれども、その根っこの部分とその夢への熱意は変わらずにいた。
まぁ、つまるところ何が言いたいのかと言うと。
「__艦これのデイリーミッション終わったし、ソードアート・オンラインも最新刊まで完読!積みプラも全て崩したことですし…さてと、今日も今日とて、絵を描きますか!」
「…の前にぃ♪ブラック中のブラックで警察案件のことをしていた介護の会社を辞めてから半年…早く半ニート状態から脱却しやがれ!!この駄目ニキがぁ!!」
「にゃ!にゃにゃ!にゃにゃにゃああ!!」【特別意訳:とりゃあ!!就職しろ!!ニート撲滅突進だにゃあああ!!】
「ありがとうございばずっ!?」
俺__小山佑はオタク半ニートと化しながら、再就職を目指していた。
––––
「あははっ!それで?弟と妹(猫)に追い出され?仕方なく定職探しにハロワへ行くも定休日であいておらず?バイトもないからとりあえずゲーセン行くけど?でも財布は家に忘れてて?しかもその上ヤンキーにガン付けられ追いかけたから逃げて?その途中ペンキかけられてペンキ塗れになって?首輪外れた番犬に噛まれ?上から落ちてきた植木鉢にあたり?その挙げ句、信号無視したトラックにぶつかって?ヤンキーに同情され今に至ると?あははっ、どうしたらそうなるのよ!!」
「我ながら生きてるのとほぼ無傷なのが不思議なくらい、ギャグ漫画みたいな凄いことに遭ってるとは思うけれど……それでも口に出して笑わないでよ。姫ちゃん…」
そう言って目の前にいる幼稚園以来からずっと一緒の幼馴染の女の子をジト目で見る。
__確かに第三者視点だったり、漫画とかなら面白いのだろう。実際、俺もその立場だったりしたら笑っていただろう。
だがしかし、当事者からすればとんでもないことなのだ。
何?何で、ペンキをざばーんしてるのおっさん?お陰でびしょびしょなんだけど?しかもしっかりと(?)油性だし……。
てか、なんで犬の首輪外れてんのさ?首輪しっかり付けてろよ、飼い主。飼い犬に逃げられてんぞ?
後、植木鉢。誰だ、あんなベランダの手すりに置いたままにしたの。お陰で頭に落ちてぶつかって血が出たんだけど?頭が硬かった俺だから良かったけど.俺じゃなきゃ絶対死んでるね。あれは。
んで次に車。信号無視良くない。絶対。まぁ、奥さんの出産だって聞いたし、その後謝礼で5万渡されたし、誰も見てなかったから注意して見なかったことにしたけど…。
それとあの目は辞めて!ヤンキーさん!なんでさっきまで金目当てで漫画とかみたいにわざとぶつかってきて因縁付けて追いかけてきた方々がそんな生暖かくて優しい目で見てきて果てには俺に奢ろうとしてんのさ!?お願いだからその優しさは痛いからやめてください、悲しくなります…!
「はぁ……」
「あはは、まっ、まぁどんまい!ゆーちゃん!」
「もうやめて、姫ちゃん……。笑われながら姫ちゃんに慰めたら惨めで死にたくなるから。まぁ死ぬ気はさらさらないし死なないけど……」
そう言ってガックリと肩を落とす俺。
いや本当、嫌になるから…。
「__あっ!そういえばゆーちゃん!」
「ん、何?姫ちゃん。熱海姫ちゃんや」
「なんでフルネームで読んだの……?まぁ、それはいいよ。それでなんだけど……さ?」
「ん?何、姫ちゃん?」
「今度、夏コミあるよね……?えっと、だから行く時、ゆーちゃん家の前で待ち合わせて一緒に行きたいなぁ〜…………なんて」
「いいけど。でも、俺、トライクで行くけど、どうするよ?」
「そっかそりゃダメだよねぇ__って、えっ良いの!?あっ!えっと……だったら私を後ろに乗っけってくれる!?」
「うーん、でも……まぁいいか。うんいいよ」
「やったっ!」
「その代わりちゃんとヘルメット持って来いよな?当日うちの母、バイク使うらしいから、もう一つの奴使えないんだよ」
「あー……そういえば今ゆーちゃんのお母さん近くのスーパーで働いているんだっけ?」
「んだんだ。だから頼んだよ?」
「OK!頼まれました!」
そう言ってビシッと可愛く敬礼する姫ちゃん。
__こうして見ると俺の幼馴染みは本当にお世辞抜きでかなり可愛いと思う。
実際の所、高校ではミスコンで堂々の一位、校外では1日街を歩けばモデルやアイドルなどのスカウトマンが必ず一人は現れ、挙げ句にはお姉様と慕う後輩達が現れたり、今まで優に千を超える告白やラブレターを貰ったり。
もはや国民的アイドル級の可愛さなのだ、この熱海 姫という少女は。
閑話休題(それはともかくとして)。
「それで何時集合する?こっちとしては三時頃に出で六時には向こうに着きたいんだけど…でも姫ちゃん、あんま夜、というか朝6時くらいまでは外を出歩くのは姫ちゃんのお母さん、良い顔してないんでしょ?だからもう少し遅く出ても大丈夫なんだけど、どうする?」
___それに前に夜に外出て誘拐されそうになったから心配だし。
蝉の鳴き声を聴きながらそう心の中で付け足していた。
「ん〜……ううん、3時で大丈夫。お母さんには私から話しておくし、ゆーちゃんと一緒に出ること伝えれば多分安心すると思うから」
「そっか。でも無理そうなら言えよ?別に俺が早く行きたいってだけで、別に少し遅くてもそんなに問題はないからな」
「ありがと」
「どういたしまして。んじゃ……」
「うん、また明日!」
そう言って俺と姫ちゃんは別れた。
まぁ、そうは言っても姫ちゃんの家、俺の二、三件隣なんだけどね。
……にしても。今更ながら気が付いたが。
「__これっさ?デートの……約束……だよなぁ」
そう呟いて見上げた空には積乱雲が泳いでいた。
___もうすぐ蒼い真夏が来る。