やはりあーしの青春ラブコメはどうかしている。 作:Vierres
月曜日。
土曜日の告白のお陰で、あーしは日曜日を一日ベットの中でモンモンと過ごしてしまっていた。
今日はいつになく、身体が重い。
それに・・・、期末試験まで後一週間。
そろそろ、クラスの中の雰囲気も定期試験モードになるんだけど・・・。
なんだろう?
ちょっと教室の雰囲気が・・・。
で、教室に入って直ぐに相模から携帯にメッセージが入り特別棟のトイレに呼び出されたんで来たんだけど。
相模と一緒に居るのは取り巻きの古淵だっけ?
「三浦さん、実は昨日の夜に匿名のメールで古淵ちゃんのトコにこんなのが来たんだよ。で、クラスの何人かのトコにも同じメールが来てるみたいでさ・・・。」
画像付きのそのメールを見て、あーしは絶句した。
『ヒキタニはロリコン。幼女に手を出す変質者。』
添付されている画像は、見覚えのある女の子・・・。
って、けーちゃんじゃん!
目の処にモザイクが入ってるけど、天使オーラは輝いてるよ!
やっぱ、この子は可愛いよねー。
妹に欲しい!沙希に言ったら殴られそうになったけど・・・。
ただ、比企谷君に異常に懐いてるのは心配だなー。
などと妄想していると相模の声で現実に引き戻される。
「ほら、なんかこの女の子とキスしそうな感じに映ってるでしょ?ちょっとヤバくないかな?」
「あー、けーちゃん、比企谷君にメッチャ懐いてるからねー。」
さすがのあーしもこんな小さい子にはライバル心とか嫉妬とか沸かないよ?
「いや、そうじゃなくてね?比企谷君の事を知らないクラスの人が見てどう思うかなんだけどね?」
あ!確かに知らない人が見たら怪しく見えるかも・・・。
でも、この写真はいつ撮ったんだろう?
比企谷君は制服姿だし、けーちゃんも保育園の園児姿だし・・・。
沙希とかは知ってるのかな?
背景はマリンピアだよね?多分。
「三浦さんもしかして、この女の子を知ってるの?」
「うん。沙希の妹だもん。メッチャ可愛いんだよねー。夏休みになったら一緒にプールに遊びに行く約束してるしねー。」
「なら、比企谷君も良く知ってる子なんだよね?」
「そうだけど?」
「なら、みんなから誤解される前になんとかしないとヤバくない?」
あ!
なるほど、そうか。
悪意を持ってこういうメールを送るヤツなら、また同じようなことするかもしれないしチェーンメールの時の様に必死で拡散しようとするかもしれない。
「ちょっとこのメールをあーしに転送して?沙希にも声を掛けなきゃね。」
「三浦さん、どうしよう・・・。」
「相模、あんた彼の為に泥をかぶる事出来る?下手したら残りの高校生活を棒に振るかもだけど?その覚悟が有るなら昼休みに部室に来て。」
あーしはトイレから駆け出し、沙希を呼び出すと雪ノ下さんの居るJ組に行った。
クラスの雰囲気がおかしかったのは、この為か・・・。
この犯人は絶対に見つけて潰す!
その為なら、雪ノ下さんともがっつりと手を組む。
あーしの覚悟を見せてやる!
もう授業なんて受けている場合じゃない。
「おい!お前たち、なんで授業に出ない?部室で何をやっているんだ?」
時刻は丁度三時間目の授業が始まった頃だろうか?
平塚先生が授業に出ていないあーし等を探しに来た?
今この部室には雪ノ下さんを筆頭に、あーし、沙希、姫菜の四人が居る。
結衣と戸塚、相模には事情を話してクラスの雰囲気やメールの拡散の状況を調べてもらっている。
特に相模は最近あーし等と交流が有るってことを殆どのクラスメイトは知らないから情報収集にはうってつけなのだ。
当然、比企谷君は今回のメールの件はまだ知らないだろうから普通に授業を受けているハズ。
「平塚先生、入るときはノックをとお願いしていますよね?」
「待ちたまえ、雪ノ下まで・・・。授業中の部活動の許可を出した覚えは無いんだが?どういうつもりだ?何をやってるんだ?」
雪ノ下さんはあーし等の顔を見やると、平塚先生に今朝のメールを見せた。
「おい、このメールはどういう事なんだ?」
「画像に映っているのは比企谷君と川崎さんの妹さんです。撮影されたのは金曜日の放課後。場所はこの学校の近くのショッピングモールの広場です。これには映っていませんが直ぐ近くに川崎さんと私が一緒に居ました。」
「なるほど、ただの捏造の画像ではなくコレを撮影したのは状況を解っていて敢えてこの場面を撮影しというのだね?」
「この悪意あるメールを放置すれば先生の依頼である、比企谷君の更生は出来なくなる可能性があります。事態は急を要します。」
「はぁ・・・、本来ならばここまでの事件は我々教師の仕事なんだがな・・・。解った、お前たちの部活を認めよう。ただし、犯人を見つけてもお前たちが糾弾をするなよ?必ず私に報告する事。コレが条件だ。」
「解りました。お約束します、平塚先生。それともう一つお願いがあります。視聴覚室のパソコンの使用許可をお願いします。」
「視聴覚室のパソコン?」
「あー、ハイ。確か視聴覚室のパソコンは画像編集のソフトが入っているハズなんですよ。もしかしたら撮影者を割り出せるかもしれません。」
姫菜は美術部で有るけれど、デジタルイラストも描くので、そう言うことに詳しい。
「あー、視聴覚室の管理は・・・、鶴見先生か・・・、解った。鶴見先生には私から事情を話しておく。視聴覚室のパソコンの使用を許可する。雪ノ下、部屋のカギを取りに行こうか?」
平塚先生は、職員室に雪ノ下さんを連れて行った。
「うーん、やっぱりなぁ・・・。」
視聴覚室のパソコンには画像編集の結構高いソフトが入っているらしい。
姫菜はモニターを見つめて何やらブツブツと呟いている。
「どしたん?姫菜?」
「何か気になる事が有るのかしら?」
「この場面なんだけど?サキサキと雪ノ下さんはどの辺に居たのかな?」
「あ・・・。」
「沙希?どしたん?」
「あたしと雪ノ下さんが居ない。」
「へ?」
「やっぱりね。」
「どういうこと?」
「あたしと雪ノ下さんは先を歩いてて、この画像で言うと比企谷君とけーちゃんの奥
、に映ってる、建物の間に居るはずなんだよ。」
「え?それって?」
「みんなちょっと待ってね。」
姫菜はそう言うと、パソコンの画像を視聴覚室のスクリーンに映すようにした。
そして、画像の色々な場所を拡大して見せる。
「あー、あった。ほらココ。」
「ん?なにが映ってんの?」
「合成の跡だよ。こりゃフリーソフトを使ってるなぁ・・・。この建物の稜線を使って二枚の画像を合成してるねぇ、けどズレてるからこの部分を遠目に見たら少しボヤけて見えてたんだよねー。でも、これで結構な手がかりが見つかったよね。二枚目の撮影をする為には同じ場所で同じように撮影しないといけないんだけどさ?ほら、この建物、同じ建物なのに色が微妙に違うでしょ?多分、翌日とか翌々日に撮影してるよねー。だから小さい画面じゃ解らないけど大きな画面で見ると違和感がハッキリするよねー。最近は携帯用のフリーソフトも良いものが出てるけど、やっぱ本職のPCソフトには敵わないねー。」
さすが姫菜。
じゃあ、金曜日とか土日にその場でに携帯かカメラを構えていたヤツを聞き込みすればいいんじゃね?
「とはいえ、目撃情報を探すのは現実的ではないわよね?防犯カメラの映像を見る事が出来ればいいのでしょうけど・・・。弁護士を通じてなら出来るかしら?」
弁護士って・・・。
まあ、雪ノ下さんの家の力を借りられれば可能なんだろううけどさ?
「もう少し待ってね・・・。んと・・・、ここを拡大して、フィルターを通してからCMYKと輝度を少し・・・。」
おー。比企谷君の瞳のアップきたぁぁぁぁ!
え?誰か映ってる?
「コレが撮影した人だよねー。元々の高画質版だったら多分顔も解ったろうけど、メールの添付用に画質がダウンしてるから解るのは背格好とか持ち物位だけどね?」
「でも、総武高校の男子でこの鞄の大きさからして運動部の部活帰りかしら?鞄が特徴あるから、撮影者がF組と絞れば探し出すのは難しくないわね?」
「だね。けどさ、一応保険を掛けておかない?もう直ぐ4時間目の授業が終わるしさあたしと雪ノ下さんでF組で一芝居打とうよ。」
あーし等は沙希の提案を聞き、準備をすると教室に向かう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
四時間目の授業が終わると同時にあーし達は教室に戻る。
数学の先生には平塚先生から部活で授業を欠席することが、ちゃんと伝わっていたようで特に何も言われない。
あーしはさっき相模に送ったメールを相模がちゃんと読んでいてくれたかを確認するために相模を一瞥し、さりげなくアイコンタクトを送る。
相模も周りに解らないようにコクリと小さく頷いた。
作戦開始だ。
「ねぇ?ヒキタニってさロリコンな訳?なんか、普段から雰囲気暗いし危ないよねぇ~。ウチ、クラスから犯罪者とか出たら否なんだけど~?」
「あー、この写真ね?昨日匿名で来たんだけどさぁ~。」
古淵も調子を合わせてくれたようだ。
「あら?相模さん?私の大切な部員である比企谷君に何か言いたいことでも有るのかしら?」
「え?雪ノ下さん?!なんでココに?」
「私が大切な部員である比企谷君の顔を見に来るのはそんなに可笑しいかしら?」
ちょっと!
雪ノ下さん!
セリフ微妙に違ってません?
私の大切なってなんだよ!
「昨日の夜にこんな画像付きのメールが来て・・・、えっと・・・。」
「あら?この女の子。けーちゃんね?川崎さんの妹さんの。」
「え?あたしの妹?どんな写真?」
沙希も写真を覗きこむ。
「うーん、これ金曜日にあたしが比企谷とデートした時の写真だと思うんだけどさ?なんで、あたしが映ってないの?」
「少し待って?川崎さん。比企谷君と金曜日にマリンピアでデートしていたのは私なのだけれど?貴女はたまたま妹さんと一緒に通りかかっただけでしょう?」
ちょっと!
そもそもの台本と違うんですけど?
そこで二人で比企谷君を取り合わないでよ!
「でも、この写真はおかしいわね?どうして私が映っていないのかしら?それと後ろの建物の稜線が微妙にズレているわね?もしかして合成かしら?」
「あーだね。あたしも映ってないしねー。」
「「え?そうなの?この写真って合成?デマなの?」」
相模と古淵が見事にハモった。
「ええ、この写真は真っ赤なウソ。質の悪い捏造ね。まあ、これ以上私の比企谷君になにか悪さをしたら、家の顧問弁護士に出てきてもらってそれなりの報復をさせていただくのだけれど?」
「あたしも、大事な男を侮辱されたんだし、この正拳をお見舞いしなくちゃね。」
沙希はそう言うと、あーしの目にも見えない早い速度で正拳突きの構えをする。
「べ、別にウチたちがやったわけじゃないよ?こんなメールが来たって話だけだし?ウチたちもへんなメールが来て迷惑してるんだからね?」
相模と雪ノ下さん、沙希の遣り取りの間に周りを見渡してみる。
比企谷君は完全に訳が分からなくなって、石の様に固まっている。
他のクラスの男子は・・・?
何人か反応が怪しいヤツがいるけど?
「あー、ちょっと?雪ノ下さん?沙希?本当に比企谷君と付き合ってるのは、あーしなんだけど?あーし、もうご両親にもご挨拶してるし?妹の小町ちゃんの専任家庭教師の座も掴んでんですけど?この前も家族みんなで一緒に食事したし?」
「ちょ、三浦!その話はココじゃ・・・。」
比企谷君は咄嗟にあーしを制止しようと再起動したが・・・。
「あら?ご両親と会った位で彼女宣言?案外三浦さんもお子様なのね?私は、既に彼と一緒に下着を選ぶ程の仲なのよ?この意味、解るわよね?」
「ちょ!雪ノ下!そんな事したことないだろう?みんなどうしたんだよ?俺をこのクラスから締め出したいの?いい加減に泣くよ?俺。」
「そうね?ここは外野が多いものね?ではいつもの処で一緒にお昼を食べに行きましょうか?私の手作りのお弁当を一緒に食べましょう?比企谷君?」
そう言うと、雪ノ下さんは比企谷君と腕を組んで教室を出て行った・・・。
比企谷君も既に抵抗する気力がなくなっているのか、されるがままだった。
思わずそのまま見送ってしまった・・・。
おい!
雪ノ下!
お前、役得過ぎるだろ!
「へ?え?え?なに?うそ・・・。」
相模ですら呆然としている。
当然、のクラスの人間はどうして良いか分からない様子だが、アイツ雪ノ下さんと付き合ってたのか?とか、三浦さん、川崎さんと三股か?とかヒソヒソ話が聞こえてくる。
「はぁ・・・、優美子?結衣?お昼だし、あたし達もお昼に行こうか?」
沙希があーしと結衣に声を掛ける。
「う、うん・・・。」
結衣も魂が抜けたみたいになってるし?
ってか、ドサクサに紛れて彼女宣言とか!
雪ノ下雪乃。
恐ろしい奴。
あと、沙希?
あんたもだったのか?
「な、なんか凄いことになってるけど、あのメールは嘘みたいだよね・・・。」
古淵がポツリと呟くとクラス中の女子がコクコクと頷いた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「おい、お前らなんの真似だ?コレってイジメじゃないのか?俺もう明日から学校に来れなくなるだろう?」
あーしが部室に入ると、比企谷君が雪ノ下さんと沙希に文句を言ってくる。
「なにを言っているのかしら?この男は。私と川崎さんは貴方の危機を救うべく一芝居を打っただけなのだけれど?まあ、三浦さんの暴走は予想外だったのだけれどね?とはいえ、三浦さんのお陰で貴重な情報が手に入ったのだし、今日のミッションは一先ず成功なのかしら?」
イヤ、なんだか、元々の話から大きく逸れているよ!
雪ノ下さん、ポンコツ過ぎんでしょ?
「あー、比企谷君?ごめんね、今朝さウチが三浦さんに変なメールの事で相談しててさ?流れでこういう事に成っちゃったんだけど・・・。」
再起動した相模が部室に来て事情を説明した。
「事情は分かった、けどだったら俺にも前もって一声掛けてくれ。この程度のメールでの中傷にはもう慣れてるんだ。お前らを巻き揉んで何とかしたとは思わない。」
比企谷君は中学時代に結構酷い誹謗中傷を浴びていたと小町ちゃんから聞いている。
だからこそ、あーしは彼がこれ以上傷ついて欲しくない。
彼の傷みの僅かばかりでもあーしが受け止められたらそれで良い。
「あら?ナニか勘違いしていない?コレは相模さんの依頼の一環なのよ?そんな事も解らないのかしら?」
「相模の依頼の?」
「そうよ。だから午後の授業は注意してほしいの。私が見た限りでは私と川崎さんの乱入で態度を変えなかったのに、三浦さんが割って入った時に明らかに態度が変わった男子が3人ほどいたわよ?犯人の目的が三浦さんだったとしたら、これまでの事は全部つながるわよ?」
雪ノ下さんは、あの騒動の中でクラス中の男子の表情を観察していたようだ。
「あー、そうだね。確かにあたしと雪ノ下さんの言い争いの時には態度を変えてないってことは、金曜日の事を目撃していて知ってった事だしね?」
ちょ!
金曜日にあーしが知らない処でアンタ等に何が有った?
あーし等は昼食を摂った後、直ぐに教室も戻った。
まあ、比企谷君はベストプレイスでギリギリまで休憩してるっていってたけどね。
教室では、あーしも沙希も主に女子達から質問攻めに合った。
殆どが、比企谷君が誰と付き合ってるのかという内容だ。
「あー、ゴメン。あたしはアイツとは付き合ってないよ?デートも嘘。ただ、金曜日に妹と三人で一緒に居たのは本当だよ。丁度あの写真を撮られた位に雪ノ下さんとも会ったんだけどね?」
早々に沙希が女子達に種明かしをする。
やっぱりねー。川崎さんとか雪ノ下さんがあんなのと付き合う訳ないよねー。
女子達が笑いあう。
「あたしは付き合ってないけど、雪ノ下の事は知らないよ?前もららぽで腕を組んでウインドショッピングしてたしさ?」
ええええ!!
女子達の黄色い声。
「あのねー、雪ノ下さんと比企谷君は何でもないんだよ?ソコはあーしが保証するし?まあ、あーしは彼の家にも行ったけどね?」
え?じゃあ、三浦さんって比企谷君と付き合ってるの?
葉山君の事は?
「隼人?うーん、まあ話をしてて楽しい部分も有るけどさ?あーしはタイプじゃないなぁ~。偶々席が近くて良く話するってだけだよ?」
えー?お似合いだと思ってたのに・・・。
あーし女子達にそういう風に見られたのか・・・。
うん。
これからは隼人と話するの止めよう。
でも、三浦さん特殊な趣味なの?あんなのがイイなんて。
「アイツの事を見下してるんなら、止めなよ?これ以上アイツを酷く言うならあたしが許さない。あいつはそこら辺の見栄えだけの男よりよっぽど良い男だよ。」
沙希のこの一言で女子達は静まった。
あーし等は雪ノ下さんの計画通り女子達と昼の騒動の事で質問攻めに合い、それに答え、その間に結衣と姫菜、相模がクラスの3人の男子の様子を伺っている。
雪ノ下さんが絞り込んだ3人だ。
午後の授業が終わり、あーし等はいつもはバラバラに部室に集合するのだが今日は雪ノ下さんからの大事なミッションがある。
「比企谷君。さあ、部活に行こう?」
あーしは笑顔で比企谷君の腕を取り、そのまま腕を組んで教室を一番に出る。
一連の騒動の犯人の目的があーしならば、この瞬間。
ハッキリと態度に出るはずだと。
~~~~~~~~~~~~~~~~
コンコン。
ノックの音。
「どうぞ。」
雪ノ下さんの凛とした声に反応して戸が開くとやって来たのは、あーしには意外な人物だった。
「やはり、来たのね?葉山隼人君?」
「え?隼人君がなんで?」
結衣がびっくりしている。
雪ノ下さんはこの事を予想していたようだけど?
どうして?
「あなたの処にもメールが来ていたのよね?葉山隼人君?」
「え?」
「どういう事?葉山君?」
「しっかり見透かされてたか・・・、さすが雪ノ下さんだ・・・。」
隼人は新しく買い替えた最新のスマホの画面を皆に見せた。
『葉山隼人、うっとおしい取り巻きを上手く蹴落として三浦の横の席を独占したかったのだろうけど、残念だったな?けど、お前はもうお終いだ。』
「なんなん?コレって相模に来たのと同じような内容じゃん?」
「え?相模さんの処にもこんなメールが来てたのかい?」
「うん、先週なんだけどさ・・・。葉山君のは・・・、金曜の放課後・・・?」
やっぱり犯人の目的はあーし?
あーしに近づきたいってのが目的なん?
「葉山隼人君?これでも未だみんな仲良くとか言ってられるのかしら?あなたの周りは疑心暗鬼が渦巻いていて誰もが他人を疑っているのよ?」
「そ、それでも俺は・・・。」
「あら?ここまで来ても未だ懲りないのかしら?」
「・・・。」
「まあ、もういいわ?犯人の目星は付いたし、平塚先生にも報告済みよ。もうこんな馬鹿なことは二度としないでしょうから。良かったわね?葉山隼人君、あなたが望む穏便な収束よ?」
「こうなる前に止めたかったよ・・・。俺なりに頑張ったんだよ・・・。」
隼人はチェーンメールの事件以来クラスの雰囲気を良くしようと頑張っていた。
けど、犯人を探して止めさせるのでは無くクラスの不満を取り除くことで犯人の心変わりを望んだ。
結果、事件は水面下でどんどん大きく、陰湿になっていった。
「俺はまた間違ったのかい?雪ノ下さん・・・。」
「そうね、全く成長していないわね。収束だけを望むなら、貴方が全ての泥を被ってしまえば、ここまで酷くならなかったわよ?犯人は貴方を三浦さんから遠ざける事が元々の目的だったのだし。まあ、でも直ぐに次の事件は起きたでしょうから泥の被り損ではあったのだけれどね?」
「比企谷の事かい?」
「そうね、多分犯人は何処かで三浦さんと比企谷君のデートを目撃したのでしょうね?おそらくは相模さんと貴方へメールを出した後にね?で、慌てて比企谷君の事を貶めるメールを匿名で送ったのでしょうね。もしかして初めに写真を撮ったのは只の偶然か私か川崎さんを撮りたかったのかもしれないわよ?」
「もしかして雪ノ下さんは犯人が誰か判ったの?ウチ被害者だし教えて欲しいんだけど?文句も言ってやりたいし!」
「そーだし!雪ノ下さん、教えてよ!」
「でも、それは葉山隼人君が望むことではないのでしょうしね?」
「雪ノ下さん!ウチ被害者だよ?文句を言う権利は有ると思うんだけど?」
「まあ、まてよ。相模。雪ノ下、それは平塚先生からのお達しか?」
あーしもなんとなく犯人は絞れて来てはいるけれど、このままっていうのは少し気持ちが悪いし相模の言う事ももっともだ。けど、比企谷君は更にその奥の事情を把握したようだ。
「け、けど!比企谷君だって被害者じゃん?ソレでいいの?」
あーしは未だ納得いかないんだけど?
「俺は元々あの程度の中傷メールでは傷つかん。それよりお前たちの暴走の方が俺への影響がデカイからな?俺、明日から学校に来たくないまである。」
「いや、比企谷はもうリア充の王で良いんじゃないのかい?雪ノ下さん、優美子、結衣に相模さん、川崎さんと総武の美女達からアプローチされているんだろう?もしかして他に狙ってる女子も居るかもしれないしさ?」
「おい葉山、俺はお前達リア充とは対極の存在なんだ。一緒にするな。」
「ラノベとかならハーレム設定って言うんだろう?うらやましいよ。俺がいくら優美子にアプローチを掛けても全くなびかない訳だ。」
「え?葉山君って三浦さんを狙ってたの?」
「いい雰囲気には成ってるとおもってたんだけどなー。今回の犯人は許せない処も有るけど、犯人の気持ちが今解った気がするよ。いや、まあ完敗だ。」
隼人は部室に来た時の暗い顔と違ってさわやかな笑顔で『リア充爆発しろ!』と言い放ち笑いながら部室を出て行った。
「あいつ、いつか〆る。俺がコイツ等と釣り合う訳がないだろうに。」
一人比企谷君だけが隼人に恨み言を言ってるけど?
「まあ、葉山君も少しは今回の事で懲りたのではないかしら?彼は世界は自分の周りを回っていると思っている節があるもの。良い教訓だったはずよ?他人から見たら自分は只のわき役でしかないって事を少しは理解できたのではなくて?」
この、総武高校は偏差値もそれなりに高くて有名大学への進学率も九割を超える。
おかしなメールの事件は迫りくる定期試験への追い込みで沈下し、期末試験が明けたころにはクラスの中の雰囲気も少しづつだけど良くはなって行った。
あーしは休み時間になると比企谷君の席の隣を陣取り、ラノベやアニメの話をするようになった。
その中には青砥君や小岩君が話に混じることもある。
そして姫菜も。
戸部も時々は話に乗っかり鬱陶しいけど、そんな時間も悪くない。
まあ、J組の雪ノ下さんまで乱入するのはどうかと思うけど?
チェーンメールの事件が発端の今回の事件。
色々と禍根はあるけど、あーしと比企谷君の距離を縮める切っ掛けになったのならば、それは良い通過点だったのかもしれない。とあーしは思えるようになっていった。
「もう直ぐ梅雨も明けるし、夏休みだねー。夏休みと言えばさ?やっぱ『ななはちゃん』の全話視聴フルマラソンだよね?」
「おー!マラソン?夏に?やっぱ、優美子ぱねーわ。」
「おい戸部?マラソンの意味が違うけどな?」
比企谷君も少しずつ戸部やクラスの男子と話をするようになっている。
そしてあーしは、この週末に小町ちゃんの家庭教師として比企谷家にお泊りの予定だ。
あーしは密に、この夏への期待で胸を膨らますのだ。