やはりあーしの青春ラブコメはどうかしている。   作:Vierres

12 / 19
第11話  Vacation 1

 

 

 終業式を翌日に控えた日の放課後。

奉仕部の部室には平塚先生が来ていた。

この先生、顧問の割にはほとんど部室に来ないよね?

まあ、その方があーし達も気兼ねなく過ごせるんだけどさ?

 

「明後日から夏休みなんだがな?顧問として君たちの予定を把握しておきたいのだが皆の予定を教えておいてくれないか?」

「急にどうしたのですか?平塚先生、これまでは殆ど放置だったと思うのですが?」

「まあそういうなよ、雪ノ下。私だって偶には顧問らしいこともするさ。」

 

 

「このノートパソコンのエクセルで奉仕部のカレンダーを作った。各自の予定をこの表に打ち込んでくれ。」

「予定って何を書けばいいんです?俺、基本は妹の受験勉強を見てやらないと行けないから外出の予定とか、あんま無いですよ?」

「そうですよ。あーしも小町ちゃんの家庭教師を任されてるから夏休みは毎日比企谷君の家で過ごすだけですけど?それを書けばいいですか?」

あーしは夏休みの初日から終わりの日まで全部比企谷君の家と入れた。

 

「あー、いや・・・、ほら・・・、お盆には親戚の家に行かないといけないとかも有るだろう?そういう外せない用事を把握しておきたいんだよ。」

 

「そうね?私も今大切な用事が出来たわ?この夏休みは小町さんの為に丸々時間を使わないといけないわ?」

雪ノ下さんも初日から終わりまで比企谷君の家と書き込む。

 

「あー、あたしも小町ちゃんの勉強を見てあげよっかなー。」

「いや、由比ヶ浜は遠慮してくれ。小町を浪人させたくない。」

だよねー。

 

 ほんと、どうやったら結衣が総武に入学できたか解らない。

そのコツが解れば小町ちゃんの受験も安心出来るんだけど?

 

「あたしは毎日バイトと予備校。あとは下の子たちの面倒を見るだけで出かける用事は無いよねー。」

「あ、でも沙希?けーちゃんと一緒にプールの約束してるしさ?何時にする?この予定表に入れておこうよ。」

「そーだね、優美子の都合が悪い日は有る?」

「あーしは何時でもOKだし?小町ちゃんも気分転換に誘うとして土日は混むから平日の何処かにしよう?」

「あ。あたしもソレ行きたい!何時にする?八月のお盆休みの時期は家族で旅行が有るから、その時だけは外して欲しいかな?」

結衣も話に乗って来た。

「あ、あの!ウチも混ぜて?ね?いいよね?」

相模も必死だ。

明日の終業式の後に皆で水着を見に行く約束もした。

今夜はちょっとパパに臨時のお小遣いをねだろう。

「それで、比企谷君はどうなのかしら?念のために聞くのだけれど、どうしても都合の悪い日は有るかしら?」

そうだよね?比企谷君が来られない日には絶対しちゃいけない。

大切な水着回だもん。

 

「あー、俺は第三金曜日は不味いな。通院だし。あと、第一金曜日もだな。」

「比企谷君?脚はまだ疼くの?無理はしないでね?」

雪ノ下さんがさりげなく気遣うけど、脚の事を何時知ったの?

そう言えば、以前から雪ノ下さんが比企谷君を引き攣った顔で見ていたよね?

 

「いや、この処は全く問題ないんだ。そういえば六月からコッチ、疼かなくなったかな?まあ、色々それどころじゃなかったってのも有るんだろうけどな。」

 

「え?比企谷君脚の具合悪いの?」

相模がびっくりして突っ込む。

「あー、高校の入学直後にちょっと怪我をしてな?暫く入院してたんだわ。一応完治はしてるって医者からは言われてるんだけど、時々怪我したところが疼く事があって

な?精神的なモノじゃないかって言われてて、確かにこの二か月ほどは殆ど疼かないんだよ。本当に完治してんのかも知れん。」

「えー!走ったりしても大丈夫なん?知らなかったからさ、テニスの時はゴメン。」

「いや、気にするな。大丈夫だ。多分。」

「比企谷君?でも病院には必ず行くのよ?部活とかそういうのは気にしなくても良いのだからね?」

「ああ、解ってるよ。」

 

 比企谷君と相模、雪ノ下さんの会話に結衣の顔が強張っているので、あーしはそっと結衣の手を握る。

 多分、結衣が罪悪感を持たないようにする為に比企谷君は強がって言っているだけかもしれない。結衣はそう考えているハズだから。

 

 

「だったら、比企谷君がもっと元気になるような水着を買うからね!楽しみにしててよね!」

相模のこの一言に奉仕部内は騒然とした。

 雪ノ下さんがスマホで水着のカタログを見せて、どういうのが良いか?好みの水着は有るのか?などとしつこく聞いている。

挙句に・・・。

「結衣ちゃんはダボダボのワンピースの水着以外禁止にしよう!」

と相模が暴走しだす。

「あ、あたしだって大人っぽい水着で比企谷君を悩殺するんだからね!」

結衣もとうとう大胆発言をする始末。

 

 

平塚先生は一人置いてけぼりで悲しそうな表情になっている。

「そ、そうか・・・。比企谷?そういう都合が悪い予定を知りたかったんだよ。お前達のリア充ぶりを把握したかったんじゃないからな?他にそういう都合の悪いタイミングとかしっかり記入してくれたまえよ?」

平塚先生、ちょっと涙目だよ?

大丈夫なん?

平塚先生も水着になったらその辺の男どもが放って置かないからね?

 

「あ、じゃあ予備校の日とかも記入した方がイイですか?」

「うむ、そうしてくれ。」

「予備校は通常授業の他に夏期講習もあるからなぁ・・・、こうやって予定を一覧にすると、俺達ほとんどが勉強漬けだよなー。」

因みにあーしは予備校の時間割も比企谷君とほぼ同じにしている。

いや、志望校に合わせてのカリキュラムで講義を取るとほぼ同じになっただけだよ?

 

あーし達が記入した予定表を見て平塚先生は・・・、

「お、お前らなぁ・・・。もう少し勉強以外の予定はないのか?高校生だろ?夏休みの部活とかはどうするんだ?」

「あー、でも部活に出てくると小町ちゃんの家庭教師出来なくなるんで、あーしはパスします。」

「ええ、私も小町さんの受験対策が最優先ですので。」

「ねぇ、優美子?雪ノ下さん?ウチの弟の大志も総武目指してるからさ、一緒に見てやってくんないかな?なぁ?比企谷?良いだろう?」

「いやだ、アイツをウチに入れるのは無理だ。バレたら父ちゃんに後で折檻されるだろ?俺が。」

 

「なるほど、ならば私のマンションで勉強会をしましょうか?このメンバーに小町さんと大志君とでね?由比ヶ浜さんも期末試験では全科目平均点を上回ったのだし、もう少し頑張ってみましょうか?」

雪ノ下さんは親元を離れて一人暮らしをしているらしい。

結衣は何度か泊まり込みで勉強を見て貰っていたようだ。

 

「なんか、奉仕部の合宿みたいだね!」

結衣はなんか勘違いしてない?

 

 

 

「はぁ・・・。もういい・・・。お前らなりの青春を過ごしてくれて・・・。」

平塚先生はゲンナリして部室を出て行った。

結局何がしたかったのだろう?

あーし達の予定を知りたがったようだけど?

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 翌日。

 

「えーっと・・・、皆の予定は表にまとめてくれたんだけどな?実は七月の末にボランティア活動の依頼が有ってな?どうだろうか?都合は付かないか?」

平塚先生は頬をヒク付かせながら相談を持ち掛けた。

「へー、二泊三日でキャンプ体験かぁ・・・。小学校の時にやったよねー。懐かしいなー。」

結衣は乗り気だけど?

「あたしはその日程だと最終日に模試があるね。」

「あ、模試!予定表に入れるの忘れてた!」

あーしも比企谷君と一緒に受ける予定だ。

「そうだったわね。模試はキャンセルできないわね。私も予定表に入れるのを忘れていたわ?」

「はー、雪ノ下さん、三浦さん、川崎さん、比企谷君は模試かぁ・・・。ウチその辺は全然だったわー。予備校も冬位からって考えてたけど・・・。」

相模?あんた結衣と同じ思考で大丈夫?

 

「じゃ、じゃあ、比企谷はボランティア活動は出来ないのか?」

「ええ、その日程だと俺も模試が受けられなくなりますしね。申し込んだの先月なんで、こういうのは少なくとも一か月以上前に言っておいて貰わないと都合付きませんよ?サボったのバレたら親にどんな目にあわされるか・・・。」

「そ、そうか・・・。そうだよな・・・。全くその通りだよ・・・、もう・・・。」

平塚先生は泣きそうな顔をしながら部室を出て行った。

 

 

 結局、そのボランティアには結衣と姫菜、相模、古淵の四人が参加する事になった。

ってか、こんな直前にそんな依頼とかどうなんだろうね?

平塚先生は内申点を考慮するって言ってたけど、大丈夫なんかな?

 

 学校を出ようとしてグランドをふと見ると平塚先生がサッカー部の処に居る。

あー、これはあれだな。

 ボランティアの頭数が足らないからサッカー部に泣きついてるんだろうな?

もしかして上から急に言われて、四苦八苦してるのかも?

 いやー、教師も辛い仕事なんだろうね?

あーし公務員志望だけど、教師は除外しとこ。

部活の受け持ちとかサービス残業が多そうだもんねー。

あーしには無理ゲー。

 

 

「優美子さん!みなさん、お招きいただき感謝です!」

小町ちゃんとはプレナで待ち合わせしていた。

「この子が比企谷君の妹さん?はー、かわいいねー。」

「あ、初めまして。兄の妹の小町です。以後よろしくお願いします。」

「あ、ウチ相模南です。比企谷君には中学の時に助けて貰ってね?だから、小町ちゃんはウチの事をおねーちゃんと呼んでね?」

 おい!

だからってなんだよ!

「いや、小町ちゃんはあーしの妹なんだし?アンタには弟がいるからいいじゃん!ソレで!」

「あら、おかしいことを言うのね三浦さん?小町さんは近々に私の妹になるのだけれど?なにか勘違いしていない?」

 

「おい。お前らなぁ!小町は誰にもやらん。小町は俺だけのモンだ。」

比企谷君の独占発言には小町ちゃんもドン引きだ。

「おにーちゃんさ、そういうの外で言わないでって言ってるよね?キモイからさ。」

何気に小町ちゃんキツイ。

比企谷君が涙目だよ?

 でも小町ちゃんも、しかし兄がなぁ・・・いきなりリア充になるとは・・・。とか呟いてるよ。

なんだかんだでこの兄妹は仲がいいよね。

まだ、あーしじゃ入り込めない処はあるんだよね。

 

「じゃあ、小町の事を頼むぞ?三浦。雪ノ下が変なことを言ったら必ず訂正しておいてくれ。アイツは色々前科があるからな?」

雪ノ下さんは水着を比企谷君に選んで欲しがったけど、そんなことをしたら後で酷い事になるのは明白だ。

 あーしも必死に止めた。

沙希の、当日見せるサプライズ感という言葉に納得して引き下がったんだけどね?

 

 

 皆で行くプールは八月の第一月曜日にした。

比企谷君の、小町ちゃんと大志君への勉強会参加のご褒美も兼ねていて、その代わり

に二人には七月中に先ずは宿題を終わらせておき、残りは受験勉強にシフトさせようという案を採用した。

 

「じゃあ、明日から雪ノ下の家に朝九時に集合で良いんだな?」

比企谷君は明日の時間を確認するとそのまま帰っていった。

 

 さて?

どんな水着が比企谷君の好みなんだろう?

姫菜はスク水最強説を唱えていたけれど?

胸の処に平仮名で『ゆみこ』と書いたゼッケンを貼るのがポイントなんだとか?

ホントに比企谷君が喜ぶならやるんだけどさ?

そういうのは、今度二人きりの時の方がイイかもしれないよね?

一応、中学の時の紺のスク水を探しておこう。

 

 で、さてさて、あーしは今日どんな水着を選ぶのでしょうか?

それは、次回のお楽しみに!

 

 

 

 翌日からは雪ノ下さんのマンションで勉強会が始まった。

朝九時から夕方六時まで途中の休憩を入れて約七時間のカリキュラムだ。

 参加者は、雪ノ下さんを筆頭に比企谷君、結衣、小町ちゃん、大志君にあーし。

沙希も来てほしかったけど、下の弟妹の世話が有るのとアルバイトの都合で土日だけの参加となる。

あと、姫菜も美術研究所の合間に週に二回参加をする予定だ。

 

 相模?

そんな子知らないよ?

 

「ちょっと!雪ノ下さん、三浦さん、酷いよ!ウチにも勉強を教えてよ!」

あー、やっぱ相模も参加する様だ。

 

 小町ちゃんと大志君は先に夏休みの課題を終わらせるようにしながらも、合間を縫って雪ノ下さんの手製の問題集も解いている。

結構ハードなカリキュラムなんだけど二人とも必死で頑張っている。

 そんな二人を労う様に、お昼は雪ノ下さんが毎日絶品手料理でもてなしてくれているんだけどさ?

 あーしヤバイよね?

雪ノ下さんの料理がマジ旨いのよ。

嫁力で、あーし負けちゃってるよ?

 

 あーしの永久就職活動の最大のピンチかも!

だって、小町ちゃんの胃袋も掴まれたみたいだし?

 

 

  ~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「みんな朝ご飯はちゃんと食べてるん?」

連日の勉強会は結構ハードだし、何よりも結衣や相模は雪ノ下さんから宿題まで出される始末。

 コレをちゃんとやってこないと、雪ノ下さんの冷気スマイルが炸裂する。

そんな訳で、朝からヤツれているメンバーが何人か・・・。

あーしは朝食代わりにと、サンドウィッチを作って持って来るようになった。

だって、あーしが人並みに作れるのって今はコレだけだし?

 

「では、朝だしコーヒーを入れましょうか?」

雪ノ下さんが豆を挽いてコーヒーを入れてくれる。

雪ノ下さんって何時も紅茶を飲んでるから、家でも紅茶しか飲まないのかと思ったらコーヒー豆まで有るんだよねー。

 しかも、コーヒーも美味しいの!

ウチなんかインスタントしかないよ?

 

「優美子さんのサンドウィッチ美味しいです!朝から元気が出ます!」

小町ちゃん、ありがとう。

「雪ノ下もだけど、三浦も悪いな?この人数分だと大変だろう?明日からは俺も手伝うわ。」

「あ、じゃあ小町も!」

「いや、お前は勉強に集中しろ。」

「だよ?小町ちゃん。この合宿は小町ちゃんと大志君の為なんだからね?お返しは総武に合格してからね?」

「そうね、私もこういう合宿みたいなのは初めてだから凄く楽しいのよ?大志君も気にせずね?」

「はい、ありがとうございます。オレ、頑張って総武に合格します!」

こうして毎日が過ぎてゆく。

 

「そういえば、明日から結衣と相模はボランティア活動だよね?調子に乗って怪我とかしないようにね?」

「もー!優美子ってばママみたいなことばっか言うんだからぁ!」

「相模も由比ヶ浜が暴走しないように注意してくれよ?特に飯盒炊爨の時な?」

「比企谷君も酷い!」

まあ、結衣もお菓子は結構作れるようになってるんだけどねー。

 

 

七月の最終週。

 

 小町ちゃんも大志君も夏休みの課題は終わり、受験対策の勉強にシフトしている。

特に、雪ノ下さんがこれまでに作って二人にやらせていた課題で、二人の弱みと強みが把握できていたのは大きい。

雪ノ下さん、比企谷君とあーしの三人が二人を持ち回りで個別指導する。

 雪ノ下さんは理詰めで、何が解らないかを自分で気付かせるよう指導しているし比企谷君は『自分自信で解らな処が解らない』という根本の問題点を把握して相手に気付かせる指導が得意のよう。

 この対照的な二人の指導は、絶妙なバランスで自分の考える力を育てているようだ。

小町ちゃんも大志君も伸びる時期なんだろうけど伸び幅が大きい。

教えているあーし達もやっていてメッチャ楽しいんだけどさ?

 

 考えたら・・・、あれ?

あーし、あんまり役に立っていない?

 

「大丈夫です!優美子さんは癒し枠です!優しいお姉さん枠です!」

小町ちゃんも大志君もそう言ってくれるんだけどね?

いまいち役に立っている気がしない。

 

「けーちゃんもまた遊んで欲しいって毎日言ってます。」

そうだった!

模試が終わって八月になったらすぐにプールだもんね?

あーしも勉強を頑張らなきゃね?

 

 

「あー、八月と言えば・・・。」

「ん?どうしたん?小町ちゃん。」

小町ちゃんが何かを思い出したようなんだけど・・・。

「おい、小町。余計なことは言うなよ?」

すかさず比企谷君から制止が入る。

「えー・・・。」

小町ちゃんは言いたそうにウズウズしてるんだけど?

「小町さん?今は課題に集中しましょうね?もう少しでお昼だからね?」

「そうだぞ?お盆前にはお前たちも模試が有るだろう?まだまだ気を抜くなよ?」

「比企谷さん、もう少しでお昼の休憩だから頑張ろうよ?」

「そだねー。うん、集中しなきゃね!」

 

 

「あー!今日も終わったー!」

「小町さん、大志君、お疲れ様。明日は私達が模試だから勉強会はお休みだけれどもしっかりと家で復習をしておいてね?日曜日には小テストを行うわよ?」

「雪乃さん、容赦ないなー。」

「でも、俺は今伸び期なんで頑張るっす!で、来週の月曜日はプールっすよね?俺それを励みに頑張っす。」

 

 小町ちゃんと大志君は先に帰って行った。

あーし等は明日の模試の為の勉強をココでもう少し頑張るつもりだ。

「あー、そういえばさ?小町ちゃんが午前中に言いかけてた『八月と言えば』ってさなんだったん?」

「ん?ああ、何でもない。気にするな。」

「そうよ?今は明日の模試の事を気にかけましょう?三浦さん。」

この模試の結果次第で比企谷君は私立文系から国公立文系へコース変更をする。

 当然、あーしも狙っているのは国公立の文系だ。一応地方公務員志望だしね?

千葉大に行けたら、近いから良いんだけどねー。

 

 あー、でも比企谷君と同じなら地方の公立でもいいかな?

一緒に住んで、同じ大学に通うとかさ?

雪ノ下さんなら東京の方の大学へ行けるだろうし?

 

 で、翌日の模試では比企谷君とあーしは結構いい手ごたえを感じた。

雪ノ下さんもだそうだ。

 

 考えたら、こういう夏も良いのかもしんないね?

この前のデートの後は少し比企谷君とギクシャクしたところも有ったけど、変な騒動のせいで返って距離が縮まったしさ?

なんか、少しずつだけどあーしの恋も順調なのかも?

 

 

 模試の帰り道、夕方の五時だとこの時期はまだ太陽が高くて外を歩くだけで汗が止まらない。

あーしと比企谷君、雪ノ下さんの三人は結衣と相模にメールで呼び出されて、マリンピアそばのサイゼに向かっていた。

なにやら緊急の相談が有るって事なんだけど?

 

 

  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 その少女の名前は『鶴見留美』小学六年生。

 千葉村での林間学校に参加していた子だ。

 

 大人びた佇まいはドコか雪ノ下さんを彷彿させる。

何も知らずに見たら、姉妹と思うかもしれない程に雰囲気も容姿も似ている。

彼女はクラスの誰とも話さない。

クラスの子達も彼女が居ないかのように振舞っている。

 

 ウチがそれに気が付いたのは彼を知っていたから。

そう、比企谷君と同じ寂しい目をしていた。

だから、手遅れになる前に何とかしないとイケないと肌で感じていた。

このまま放置すれば大変なことになる。

 

 この子の目を彼の様に腐らせてはいけない。

ウチはこの子をなんとか助けたかった・・・。

けれど、事態はどんどん悪い方に転がり出した。

 

 

 

「って!おい相模。どうしてソコで俺をディスらないといけない?泣くよ俺。」

 

 

 あーし達は稲毛海岸駅に近いサイゼリアに居た。

結衣と相模から相談したいことが有ると呼び出しを受けたからだ。

姫菜と古淵さんは帰りの重苦しい空気のせいもあり、車酔いが酷くて一足先に帰宅したのだそうだ。

 

 相談の内容は一人の少女『鶴見留美』ちゃんの事。

鶴見?

 

 その子はクラス内でハブられていて、林間学校の間じゅうを独りで過ごしていたそうだ。一応は班での行動が基本なのだそうだけど、班の誰とも話をしないし、班のメンバーも居ないかのように振舞っていたそうだ。

 初めにその違和感に気が付いたのが相模。

そして次に気が付いたのは結衣と姫菜。

 とはいえ、小学六年生ともなると扱いは微妙な時期だ。

あーし達もそうだったけど、この頃の子らは結構大人びていてズルい。

女の狡さが身に付き始める頃なのだ。

 

 正攻法での対処ではかえって孤立してしまうのは明白だ。

だから、相模と結衣は見守りつつ切っ掛けが無いかを慎重に探していた。

 飯盒炊さんでは、敢えて留美ちゃんを皆と引き離して雑用を言いつけたそうだ。

包丁を持っている時に騒動が起きたら大変だしね。

さすが、二人とも比企谷君を普段からよく見ている。

ボッチの子への対処方法は適度な距離感が大事。

 それと、周りの子にも留美ちゃんを特別扱いしていることが解らないようにしないと行けない。

 

 けど、その微妙な空気感が解らないヤツが居る。

まあ、戸部と隼人とバスケ部の二人なんだそうだけどね?

 

 林間学校のボランティア活動には結衣達四人以外にサッカー部から戸部と隼人。バスケ部からは三郷君と八潮君の二名が参加していたそうだ。

平塚先生、よっぽどメンツ集めに苦労したんだろうねー。

 よりによって男子のメンツがこの四人とは・・・。

まあ、この四人なら強く押せば逆らえないだろうしなんだけどさ・・・。

 

 結局はこの男子の人選が大変な事態を巻き起こしたのだそうだ。

 

 あー、あーし達その場に居なくて良かった。

まあ、比企谷君と雪ノ下さんが居たら解決できたかもしんないけど?

 ただ、斜め下の解決案で下手したら今回より酷い問題に成ってたかもしれないしね?

 

「要約すると、その鶴見留美さんを皆の輪の中に入れようとして葉山隼人君がお節介を焼いて、空回り。業を煮やしたバスケ部の三郷君と八潮君が小学生に暴力を振るいかけてしまい、厳重注意となってしまったのね?で、肝心の鶴見留美さんは更に立場が悪くなったと言う訳ね?」

「うん、そんな感じ・・・。」

結衣は元気なく返す。

「でね?その子さ、結衣ちゃんが前に住んでた団地に住んでる子らしいんだよ。この近くの団地なんだよ。」

「いじめってた他の女の子たちも近くに住んでるんだよね?この近くの小学校なんでしょ?なんとかしてあげたいけどさー、あーし達には難しくない?」

「う、うん・・・。」

「どしたん?結衣?」

「団地の子供ってさ、ちょっとした閉鎖空間って言うのかな・・・、小さい時から一緒に遊ぶ事も多いからさ、ハブられるとその後が辛いんだよね・・・、だから、あたしも何時もビクビクして空気読んで、オママゴトでもいつもポチの役とか無難なのをやってたんだ・・・。高校生とかになれば学校も別れるから良いんだけどさ?それまでは辛いと思うんだ・・・。」

「けどなぁ・・・、俺達がそのボランティアに参加していればチャンスは有っただろうけど既に接点がないんじゃないのか?コレもう詰んでんじゃね?」

「相模さん?相談に来た位なのだから、その鶴見留美さんの連絡先位は聞いているわよね?」

 

「うん。一応初日にコッソリ聞けたよ?あとイジメていたグループの子達は葉山君とはアドレスの交換をしてたよ。」

え?相模って意外に有能だったりする?

「相模、お前良くそんな事に気が付いたな?」

「あー、前に比企谷君の連絡先を聞かなかったのを後悔したからねー。念のために聞いておいたんだー。あ、ついでに比企谷君のアドレスとかも教えておいてよ!」

 

 ほい。と言ってまたもや比企谷君は携帯を相模に渡してしまう。

ちょっと!軽すぎない?

貴方に告白した女子が傍にいるんですけど?

 

「えへへ・・・。比企谷君の番号とアドレスだ・・・。」

相模!

自分の携帯を胸に握り締めて、その乙女の顔を止めろよ!

 

 

「しっかし、どうやったら関係を改善出来る?恐らく数少ないチャンスを壊しちまってるぞ?葉山と三郷、八潮は・・・。」

「そうね?関係を改善するにしても壊すにしても、切っ掛けが無くなっているわよね?小学生の夏休みって登校日とか、プールの開放とかじゃなければ皆と会わないで過ごせるのだしね?」

「だろ?もう打つ手はないな・・・。」

 

 まったく、運動部の人間って少し位成績が良くても基本は脳筋なん?

確か隼人って、一年の時からずっと学年二位って言ってたよね?

 

「じゃ・・・、じゃあ、せめてウチらが一緒に過ごして少しは気持ちを落ち着かせるとかは?」

「お前、小学生が高校生と一緒に遊んでも、向こうが気を遣うだけだろ?俺だったら家で独りでずっと過ごす方がイイけどな?」

「でも、イザという時に相談できる人が居ると解っていたら気分は少し楽になるんじゃないかなー。」

 

 多分、留美ちゃんは強がっていても心の底では誰にも相談出来ず、寂しいはずだ。

 後ろで支えてくれる人が居ると知っていたら、最悪の事態だけは回避できると思うんだ。

 

 結局、今回の件については誰もいい案を思いつかなかった。

 

 結衣と相模がなんとかしたいと言い張るので、一先ずはその子を月曜日のプールに誘って見たんだけど、隼人が居ないのなら行ってもいいとの返事だった。

よっぽど隼人には懲りたんだろうねー。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。