やはりあーしの青春ラブコメはどうかしている。 作:Vierres
二学期が始まった。
始業式から数日たった有る日の午後、LHRの開始早々にソレは起きた。
「ええ!」
昼休みの終わりに自販機でコーヒーを買ってくる、と言って部室から別れた比企谷君がホームルームに遅れて教室に戻って来ての第一声の驚きの声。
だから、あーしは言ったんだよ?
『毎回ホームルームに遅れるのは良くないよ。』って・・・。
でも、彼はどうしてもあーし達と一緒に教室に戻るのが苦手みたいだ。
目立つのを気にしてるんだろうけど、もう皆はあんま気にはしてないと思うけどね?
まあ、あーしと雪ノ下さんが比企谷君を取り合いしていたのはクラスの流れる変なメールを差し出した犯人を捜す為のフェイクだったという噂がクラスには蔓延しているんだけどね?
他にも沙希が比企谷君をディスるのは許さない。とハッキリと言ったのも犯人を探し出す演技だったという話が流れている。
まあ、表立っては犯人が見つかって処罰されていないしね、仕方がない部分も有るんだろうけど。
そんな訳で、あーしと比企谷君が仲良くしているのは犯人を牽制するためなのだ。と言う話を皆が信じてしまっているようなのだ。
だからなのか休み時間にあーしが比企谷君の隣でお喋りしているのは、クラスの公認状態なんだけれどさ?
時折、クラスの女子達から『いつもありがとうねー』と声を掛けらるるのはちょっと・・・。
比企谷君に言わせればソレが普通の印象だろ?って言われるんだけどさ?
お陰で夏休みに縮まったあーしと比企谷君の距離も微妙になった。
まさに一進一退って感じ。
どうしてこうなった?
「おう、比企谷。いやなになかなかに成り手が居なかったのでな?異論反論は認めないぞ?これに懲りたら、午後のLHRも遅れず出席する事だ。」
平塚先生はホームルーム開始早々、文化祭実行委員の選出で黒板に比企谷君の名前を書いた。
誰か立候補したいものは居ないかと聞き、誰も反応しないと見るやすかさず教室を見渡して彼の名前を黒板に書き込んだのだ。
まさに電光石火だった。
むしろこのタイミングを見計らってたんじゃないのかと疑うくらい。
平塚先生、絶対に比企谷君を委員にしたかったよね?
どうも平塚先生は毎回、比企谷君へ厄介ごとを持ち込みたいようだ。
夏休みの千葉村のキャンプでも運よく皆が予定が有ったから良かったから被害は無かったけど、参加していたらどんな悲惨なことになっていたやら。
まあ、比企谷君とあーし、雪ノ下さんがアノ場に居れば最悪の事態は避けられたかもだけどさ?
そんな訳で、今回もヤバイ匂がするんだよねー。
「じゃあ、女子はこの後に君達で決めたまえ。後は頼んだぞ?委員長。」
そう、言い残すとさっさと職員室に戻って行ってしまった。
ちょ!
どうせなら、女子はあーしを指名しろし!
「おい、ちょっと横暴すぎんだろ・・・。」
比企谷君も毎回の無茶振りに閉口している。
おかげで、ここからのホームルームが修羅場だった。
「えー、では女子の文化祭実行委員の選出なんだけど・・・。誰かやっても良いって人はいるかな?」
「ねぇ、その委員って大変なの?」
結衣が声を上げた。
「うーん、まあ、女子の方は結果としてちょっと大変かも?」
委員長はチラリと比企谷君を一瞥してから、そう返事する。
失礼な奴だ。
ならば、ここはあーしが・・・。
「じゃ、じゃあさ、あたしやってみようかな?」
「え?結衣・・・、イヤ・・・、それはあーしがやるよ?」
「えー、結衣ちゃんと三浦さんは呼び込みとかしてくれなきゃ~。クラスの花なんだしー。ココは地味なウチが引き受けるからクラスの方を頑張ってよー。」
早速、乙女バトルが始まった。
もちろん、クラスの大多数はこの状況が解っていない。
結衣や相模が何故彼と組みたがっているのかが理解できないのだ。
特に相模は一学期の間は比企谷君に対して冷たい態度を取っていたし、結衣もクラスの中では決して比企谷君と絡まなかった。
けれど、ここにきて3人の女子が比企谷君の隣の席を争う光景を見てクラス中が騒然とする。
家の事情で沙希が名乗らなったのはあーし的には幸いなんだけど。
「えーっと、女子の方は大変だって言ったけど本当に大丈夫なのかな・・・。それなりに責任がある仕事だし、クラスの中との調整とか大変だと思うんだけど・・・。」
委員長君がしきりに大変な仕事だと言うけれど、そんな言葉は既にあーし等には届かない。
たった一つの席を取り合う。
それがあーし等の戦い。
あーしのジャスティス。
「と、いう事は責任感が有ってみんなを纏めていける人が良いって事だよね?」
隼人が纏めに入るってか、巻きに入ってるよね?
早く終わらせたいん?
なら、あーしを押せし!
「したっけ、そいじゃ相模さんじゃね?クラスの皆と仲が良いし?」
戸部が余計な事を言い出すが、クラスの多数はそれでいいんじゃね?ってなってる?
そう言えば、相模はクラスの中では比較的誰とでも気さくに話をする奴だ。
あーしも最近でこそ青砥君や小岩君とアニメの話をするけど、相模は彼らオタクとも普段から普通に話をしていた。
実は相模が普段、普通に話をしないのは比企谷君だけだ。
なんだかんだ言って、相模はあーしにさえ普通に話掛けてくる事がある。
そういう意味では相模は女子にも男子にも普通に人気がある。
あれ?
あーし相模に負けてる?
「じゃあ、相模さんでどうだろう?」
委員長が戸部の提案に乗ってクラスの皆に確認を取り出す。
戸部!
お前、この後〆る。
「いや!あーしも頑張るし!」
ココで引くわけにはいかない。
「あー、もうジャンケンで決めたら?早くしないと次の授業が始まっちゃうよ?」
とうとう、沙希までがうんざりな様子で場を〆ようとする。
結局、ジャンケンの3回勝負であーしはストレート負けして敗退してしまった・・・。
勝負は相模の勝ちで幕を閉じた。
隼人と戸部・・・。
あんたら二人は当分許さない・・・。
ほら、比企谷君もイヤそうな、残念そうな顔をしてんじゃん?
相模と一緒に実行委員なんて不安だよね?
こうなったら、あーしが内助の功で彼を助けるしかない!
とはいえ、なんとか実行委員に潜り込む方法は無いものか?
実行委員会から奉仕部に手伝いの依頼とかが有ればベストなんだけど?
他のクラスの知り合いで実行委員になってる子とか居ないかを探さないとね?
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「では、F組では比企谷君と相模さんが実行委員になったのね?」
心無し残念そうに雪ノ下さんが確認をしている。
「ああ、なんで文化祭が終わるまで俺は部活を休まないといけないと思う。ちょっと色々と大変になりそうなんだ。」
比企谷君が恨めしそうに相模の顔を睨んでいる。
「いやー、ごめんー。ウチ、つい手を挙げちゃったし?でもさ、比企谷君は副委員長とかピッタリだと思うんだー。」
文化祭実行委員の初日。
その席で実行委員長を、誰がやるかという事が話題に上がった時、事もあろうか相模は自らそのポストに立候補してしまったのだった。
そして、相模は副委員長に比企谷君を強力に推薦した。
元々は殆どの生徒が自主的に参加している訳ではない委員会だ。
相模の推薦は満場一致で可決され、比企谷君は晴れて副委員長だ。
そうなると、文化祭が終わるまで比企谷君は部活動どころではなくなる。
「でも、比企谷君は部活をサボる事を禁止されているのよ?副委員長などは、無効ではなくて?」
「え?そうなの、雪ノ下さん?比企谷君を文化祭実行委員に決めたのは平塚先生だから、この場合はサボりにはカウントされないと思うなー。」
相模は平然と返す。
「平塚先生が?」
雪ノ下さんは絶句している。
「それと、文化祭の顧問は体育の厚木先生と平塚先生だし?公認だよ?」
相模の勝ち誇る笑顔がウザい。
「こんな事なら私も、もっと強く実行委員に立候補すべきだったわ・・・。」
雪ノ下さんのJ組は、一年から三年までが合同で毎年ファッションショーをやっている。女子率の高いクラスだし平均的に可愛い子が多いクラスだからなんだとか。
「ウエディング姿に目が眩んだ私が馬鹿だったわ・・・。エスコートしてくれる相方は自由に選んで良いという甘い誘惑に負けた自分を叱りたい・・・。」
は?
なにやってんの?雪ノ下さん・・・。
でも、あーしもかなり悔しい。
なんとか文化祭実行委員に入り込む方法は無いものか?
だって、クラスの出し物は男子達がメインの劇だし?
あーし等マジで裏方とか当日の呼び込みが仕事じゃん?
マジで戸部を殴りたくなってきた。
「相模さん?奉仕部としても今年の文化祭実行委員の事は全面的にバックアップしようと思うの。奉仕部として何かお手伝いできることはないかしら?」
「もう、水臭いなぁ、雪ノ下さん。比企谷君が居るから大丈夫だよぉ~。雪ノ下さんはファッションショーの方を頑張ってよ!」
相模は満面の笑みでそう答える。
なんか、新学期になってから相模に流れが傾いてない?
あーしの気のせい?
「ほら、安易に人に頼るとか自分自身の成長の為に成らないっていうの?ウチと比企谷君の頑張りを暖かく見守って欲しいというか?」
「いや、俺は楽したいから手伝ってもらえるなら充分に有難いぞ?」
「そう、ならば比企谷君のその依頼、受けるわ。」
「だよね!そういう事なら受けないとダメだよね?」
「え!ちょっと待ってよ!実行委員長のウチが必要無いっていってんじゃん?」
「でも副委員長が必要と言っているのだもの。これは是が非でも手を差し伸ばす案件よね?三浦さん。」
「うんうん。コレは奉仕部として全力でフォローしないといけない案件だよ!雪ノ下さん。」
あーしと雪ノ下さんはがっつりと手を握った。
沙希が視線の片隅で頭を押さえているのは気のせいだろう。
「でもさ?文化祭を盛り上げるように協力してくれるんならさ?奉仕部も何か出店してよ。ほら、ウチの学校って海浜総合と違って文化部の活動が弱いんだよねー。だからココは雪ノ下さんと三浦さんの魅力を最大限に生かした何かをやって文化祭を盛り上げてよ!」
相模は、あくまであーし等の協力を拒むようだ。
そこまでして比企谷君を独占したいのか・・・。
「でもさ?あたしたち奉仕部でもなにかやってみたいかも。ほら、来年はみんな受験で無理だろうしさ?ねぇ、どうかな?ゆきのん。」
結衣は相模の提案に前向きだ。
まあ、確かに3年になったら文化祭のこの時期はもう受験戦争真っただ中だ。
こういうイベントに全力で取り組めるのは今年だけだろう。
気の合う仲間と何かをやり遂げたいって気持ちは、あーしにもある。
とはいえ、肝心の部長である雪ノ下さんや比企谷君は文化祭自体に乗り気ではない。
雪ノ下さんがクラスの出し物と実行委員への参加を天秤に掛けてクラスの出し物を選んだのも多分そう言うことが理由だろう。
「そうだね、このメンツでなにかやるのも面白そうだけど?どうする?雪ノ下さん。あんたが部長なんだし決めてよ。」
「ねぇ、ゆきのん。あたし達の思い出を作ろうよ!」
「そうね・・・。比企谷君はどうなのかしら?こういう事は避けたい方ではないのかしら?」
「ああ、そうだな。元々ぼっちで、こういったイベント事には全く縁が無かったからな。実際なにをすればいいのか全く分からん。」
「まあその辺の事は雪ノ下さんと三浦さんに任せてさ、ウチらはそろそろ実行委員の時間だし、行こうよ比企谷君。」
結局、相模はあーし等の協力を跳ね除けてしまったまま比企谷君を連れて文化祭実行委員の方へ行ってしまった。
「困ったわね・・・。なんとか相模さんを委員長から引き摺り下ろす手段は無いものかしら?」
いや、雪ノ下さん黒いよ!危ないよ!
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あれから数日が経った。
相変わらず奉仕部には依頼らしい依頼もなく、だらけた空気が漂っている。
部室には部長の雪ノ下さんを筆頭にあーしと結衣が居るのだが、沙希はクラスの方でやる演劇の衣装作りを姫菜から任されてしまい、この処は休み時間やお昼休みも衣装作りに大わらわだ。
F組の文化祭の出し物は演劇で『星の王子様』を姫菜風の解釈で腐向けのお話にアレンジした内容だ。
主役の王子様は戸塚。そして準主役のボクが隼人。
あーしと結衣は広報担当。
まあ、ポスターとか作って後は当日の呼び込みが主な仕事だ。
でも告知のポスターはすぐに作ったし、実行委員の方にサンプルを提出しているので許可が出次第、学校の掲示板に貼るだけだ。
それまでは、あーしも結衣もあんまりやる事無いんだよね。
そんな訳で、今日も放課後は部室でダラダラしてる。
「ひゃはろー!」
イキナリ戸が開いたかと思うと、陽乃さんが部室に飛び込んできた。
「姉さん、入る時はノックしてからにして。」
「あ、陽乃さん。こんにちは。」
「やっはろー。陽乃さん。」
「あ、ども・・・。」
あーし等は一応の挨拶をする。
「もー!雪乃ちゃんてば、実行委員じゃないじゃなーい。おかげで実行委員会に私の居場所がないんだけど?居たのは比企谷君と相模ちゃんだけだし。」
「私だって実行委員になるつもりだったのよ。でもクラス中から阻止されたのよ。クラスの出し物に参加してほしいからって。」
「あー、J組は毎年ファッションショーだもんねー。」
「エスコート役を私が指名できると言うから、比企谷君に燕尾服を着てもらってランウェイをエスコートしてもらう予定だったのに・・・。」
え!
雪ノ下さん、そんなつもりだったん?
これは、比企谷君が副実行委員長になっておいてくれてよかったかも!
「そうだわ、姉さん?今からちょっと実行委員会に行って進行を滅茶苦茶にしてきてくれないかしら?そうすれば相模さんも私達、奉仕部を頼ろうとするわ!」
雪ノ下さん、だんだん酷くなってね?
「あー、それは無理なんじゃないかな?生徒会長のめぐりも言ってたけど、今年の実行委員は滅茶苦茶優秀で私が委員長をやってた時よりも三割前倒しで進行してるって、びっくりしてたよ。相模ちゃんも頑張ってるけど、比企谷君のアシストが的確で会議の席ではドンドン案件が片付いていくそうだよ?それに過去の問題点を纏めた資料が出来ていてね?大体はそれを読んだら誰でも出来る様にはなってるみたい。」
詰んだ。
そうだよねー。
相模ってヤツは変態でちょっと可笑しいところを除けば、対人関係の構築があーしよりも上手い。
それに比企谷君。
彼は自分が楽をする為には労力を惜しまない。
文化祭実行委員?
そんなの毎年やってる事のルーチンワークが七割だろ?
だったら、過去数年分の履歴を纏めておけば大体がどのへんで躓くか予想ができるだろ?その辺を予めタイムテーブルに纏めておいて過去の対処方法をTIPSにしておけば、後は寝てても委員会は回るはずだ。
飲食関係が保健所との折衝で面倒だけど、これも過去の事象を参考資料として纏めておけば役所向けの資料なんて直ぐに作れるしな。
今までに無い突拍子もない事を提案してくる団体が無い限り、事務手続きってのは過去事例を参考にしたルーチンワークで済むんだよ。
比企谷君はそう言っていたけど・・・。
まさか過去の資料の纏めをやって、そういう資料を本当に作るとは。
恐らく比企谷君が提案して相模が取り巻きの子らに資料を纏めさせたんだろう。
枯れても総武高校の生徒の偏差値はかなり高い。
こういう頭脳労働は本来は、みな得意なはずなのだから。
「そうね・・・。ならば私達がその突拍子もない事やりましょう。そうすれば相模さんも私達を頼ろうとするはず!」
いや、それ多分逆効果だと思うよ?
「突拍子もない事って?文化祭の出し物ってガイドラインが厳しいし、そういう重箱の隅を突いたり、揚げ足を取るようなアイデアってあたし達で考えられるかな?」
なんか、結衣が珍しくマトモな事を言っている。
そうだよねー。
そう言うんは、比企谷君の独壇場だもんねー。
「ちょっと実行委員の処に行って部活動での出し物についての資料が無いかを聞いてくるわね。」
雪ノ下さんはそう言うと部室を出て行った。
奉仕部として文化祭に参加?
なんかもう滅茶苦茶な未来しか見えないんですけど?
「あー、雪乃ちゃん行っちゃった。まあ、でもこの処の雪乃ちゃんはなんかダメダメで好きだなー。」
「え?」
「ほら、あの子って小学校の低学年からいつも孤立していて常に周りに気を張ってたんだよねー。だから表情も乏しかったしね。比企谷君や三浦ちゃんと一緒に部活をするようになってからは人間味が出てきたよね。」
「でも、ポンコツになってますよ?なんか隙だらけですよ?」
「まあ、それはコレから自分で学んでいくでしょ?私の妹だしね。」
「そんなもんですか・・・。」
「そんなモンだよ。」
「大変よ!三浦さん!由比ヶ浜さん!」
文化祭実行委員に行っていた雪ノ下さんが慌てて戻って来た。
「どうしたの?ゆきのん。」
「雪ノ下さん、なにかあったの?」
「そ、それが・・・。」
雪ノ下さんが持ってきた話に、あーしは愕然としたのだった。