やはりあーしの青春ラブコメはどうかしている。   作:Vierres

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幕間 3 ガハマちゃんの憂鬱。

 

 

「結衣ー?早く出かけなさいよー。」

「はーい、今から出かけるところー。」

あたしは愛犬のサブレをキャリーケースに入れると、玄関のドアを開けてサンサンと降り注ぐ太陽の光を浴びながらマリンピアの専門店館に向かう。

 

本当は比企谷君の家で預かってもらって、そのお礼に船橋の花火大会を誘うつもりだったんだけど、結局上手く頼めないままズルズルと時間が過ぎてしまった。

 ゆきのんのマンションので勉強会も帰りは比企谷君と優美子が同じ方向だから、いつも一緒に帰るので、比企谷君と二人きりで話をする機会が中々ない。

 携帯のメールのやり取りも此方から送った内容にいつも素っ気無い返事しか返って来ない(まあ、それはゆきのんも同じなんだけど。)ので、メールを送ること自体を段々やらなくなってしまった。

 嫌われているとかじゃないんだろうけど、あたしには興味がないんだろうコトは普段の態度で充分に良く解る。

 

 彼の事が好きで、積極的なアプローチを掛けている子は多い。

あたしなんかでは、太刀打ち出来ない素敵な子ばかり。

 人の顔色を伺い、言いたいことが言えない、空気を読むのは上手いけれど自分の気持ちを人に伝えられない。そんなあたしには彼を好きになる資格がないのだろうか?

 そんなことすら思ってしまう自分がイヤになるけど、優美子やゆきのんの真っ直ぐな行動を見ていると、自分をさておき彼女たちを応援してしまい、また自己嫌悪に陥るんだ。

 

だから、

『ちょっとお盆の間だけ、うちのサブレを預かって?』

の一言が言えない。

 

 

 そうしているうちに結局は家族旅行の直前になってしまった。

あたしはサブレが入っているペット用のキャリーケースを抱えて、トボトボとマリンピアの別館に向けて歩いていた。

 

 まだ朝の9時前だというのに暑い。

 

「あ、結衣さん。こんにちは。」

声を掛けて来てのは留美ちゃんだ。

そう言えば、留美ちゃんもこの近くの私も昔住んでいた団地に住んでたんだよね。

 

「留美ちゃん、やっはろー。」

あたしは出来るだけ元気に答えて見せる。

 

「どうしたの?ワンちゃんの具合が悪いの?」

「ううん。明日から家族で旅行に行くからね、サブレ、この犬をペットホテルに預けに行くの。」

「誰か預かってくれる友達いなかったの?」

「あーほら、みんなお盆だしさ?ゆきのんは犬が苦手らしいし、優美子とかも犬はちょっとなんだよー。」

「あー、そういえば八幡は家で猫を飼ってるって言ってた。だから?」

えー、この子。比企谷君の家の事いつの間に詳しくなってるの?

猫の事は私も聞いたことあるけど・・・。

 

「ウチが団地じゃなかったら預かってあげたかったけど、ごめんなさい。」

「そんな、留美ちゃんが謝らななくてもさ?」

「どこのペットホテルに行くの?」

「マリンピアの別館にあるペットショップがペットホテルもやってるんだよ。」

「じゃあ、そこまで一緒に付いて行ってもいい?」

「うんうん。一緒に行こう。」

 

 あたしと留美ちゃんは二人でマリンピアを目指して歩く。

と言っても、会った場所が駅南のロータリー近くだから、ほんの300M位なんだけど。

 

「結衣さんって、わたしと同じ団地に住んでたんだよね?いつ頃?」

「うーんと、私が小学校3年の終わり頃に今のマンションに引っ越したから、7年程前かな?」

「そう、じゃあわたしと入れ替わりだね。私は小学校に入るタイミングでコッチに越して来たの。だから、小さい時からの友達とかいないの。」

「そっかー。あたしは生まれた時から団地だったからなー。ずっとこの辺に住んでるんだなー。あたし。」

「結衣さんは中学とか小学校とかの友達と今でも遊んだりする?」

「うーん、そうだなー。高校に入ってからは行き来が有るのは3人くらいかなー。ほら学校が違うと微妙に行事の時期とかズレるしねー。」

「そう、やっぱり八幡の言った通りなんだ。」

「うん?比企谷君?」

「そう『由比ヶ浜は八方美人だけど、それでも小学校の頃の友達なんて多くて3人位のはずだ。普通は精々一人位だろうから小学校の時の友達なんていてもいなくても誤差の範囲だ。』って。」

「え?美人?」

「え・・・?」

 

 あれ?

 

 なんか、空気が重くなった?

 

「でも高校生なったら小学校の時の友達とは縁が切れる人も多いんだよね?」

「あー、そうかも?そう言えば優美子も中学時代の友達で今でも行き来が有るのは一人だけって言ってたし、さがみんも中学時代の友達で、今も会うのは同じ高校の子だけっていってたねー。」

 

 うん?

 

 留美ちゃんどうしたんだろう?

花火大会の後に少し人間関係が良くなったように聞いていたんだけど・・・。

「留美ちゃん、どうかした?」

「お盆休みにある、習志野の花火大会に誘われたんだ。でも、わたし休みの日にまであの子達と遊ぶとか、ちょっと・・・。」

あっりゃー。

なんか、比企谷君やゆきのんみたいになってきてない?

「あの子達とは学校の中だけの付き合いで良いんじゃないのかな?」

 

あー。

ダメだ。

完全にあの二人に毒されてるよー。

 

 とはいえ、あたしも強くは言えないんだよねー。

実際、あたしも小学校の時の友達で同じ団地の子とはもう会わない様にしてるしね?留美ちゃんの場合は余計にそう思っても仕方がないよね。

 

「それにお盆休みは雪ノ下さんのマンションでアニメの上映会が有るからそっちに行きたいたいし。」

 

 ちょーーー!!

 

 待って?

 

 それ、ダメになるヤツじゃない?

まあ、一緒に居るのはゆきのん、優美子、比企谷君だろうから学校の成績はトップクラスを維持できるだろうけどさ?

「えーっと、その上映会ってもしかして優美子達が最近嵌まってる、ななはちゃんとかいうやつ?」

「うん。えーっと優美子さん、南さんと八幡が来るの。」

「ええ?さがみんも?」

あー、さがみんはホント凄いなー。

どんどん距離を詰める為の布石を打って来てるなー。

やっぱり、あたしじゃダメだよね。

 

 あたしは比企谷君と付き合う資格が無い。

だってあたしは・・・。

 

「結衣さんは家族旅行が有るから、上映会に来られないの?」

「まあ、ソレも有るけどさ、あたしはアニメとかあんま興味ないっていうかさ?ラノベ?っていうのも読まないしね。」

「結衣さん、アニメはともかく本は読んだ方が良いと思うよ。」

 

 あー、あたし小学生から言われてしまった。

 

「結衣さん?どうやったら総武に入れるの?」

「え?入試で合格出来たら入れるけど?」

「結衣さんは?」

「は?」

「結衣さん、本当に試験に合格出来たの?」

「あ、あたしだって中学の時は学年で常に10番以内だったよ!そりゃー、総武は背伸びして受験したけどさ?ちゃんと試験に合格したんだよ!」

 

「ホントに?」

あたしは留美ちゃんから完全に疑いの目で見られているようだ。

 

「もう、留美ちゃんまで酷いし!」

 

結局、留美ちゃんは大笑いをしながら帰って行った。

 

「あれ?結衣ちゃんどうしたの?」

サブレを預けた後にあんまり暑いからマリンピアの本館の方で涼んでいたら、さがみんから声を掛けられた。

 

「あ、さがみん。どうしたの?」

「うん、ちょっとココの本屋に買い物でねー。」

 

 あたしとさがみんは一階のサンマルクカフェでお茶することにした。

 

「へー、結衣ちゃんって犬を飼ってたんだねー。一年の時はそういう話って出なかったんじゃない?」

そう、あたしは比企谷君の事故の事があり友人にも家で犬を飼っている事を話していなかった。

「えー、そうだっけかな?」

「そうだよー。ほら、入学式の時もさこの近くで犬が飛び出して車に魅かれそうになったって話あるじゃん?結衣ちゃんはおっちょこちょいだから、散歩の時は気を付けなよ?」

 

 あー、それって、あたしとサブレの事だ・・・。

 

「でもさ?そういう見ず知らずの子犬を身を挺して助ける男子ってさ、ステキだと思わない?」

え?

さがみんはあたしと比企谷君とゆきのんの事故の事を知ってる?

それとも、知ってるのは事故の噂だけ?

 

「実は比企谷君がね?その入学式の時に子犬を助けて怪我をしたらしいんだよ。夏休み前にチラっと事故で入院してたって言ってたけどさ。まさか子犬を助ける為だったとはねー。なんか、恰好良くない?」

「あー、うん、そうだよねー。」

「ウチさ、比企谷君に間接的だけど助けて貰ったじゃん?でもさ、もし自分の飼ってるペットが彼に助けられたらさ、ウチその瞬間に即落ちしてるよー。」

さがみんは屈託のない笑顔でそう言った。

 

 あたしだって、比企谷君には一目惚れしている。

けれど、あたしは彼に取り返しのつかないことをしてしまったのかもしれない。

そう思うと一歩を踏み出す勇気が出ない。

 

 あたしもさがみんやゆきのんみたいな勇気が欲しい。

優美子みたいな直向きになれる強さが欲しい。

 

 あたしは何時も自分に無いものをねだってばかリだ。

 

 だから、あたしにはラブコメなんてまだまだ早いのかもしれない。

 

 

 

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